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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1004847
審判番号 審判1997-9440  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-06-05 
確定日 1999-10-04 
事件の表示 平成6年特許願第338720号「半導体装置の製造方法」拒絶査定に対する審判事件(平成8年7月16日出願公開、特開平8-186110)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年12月28日の出願であって、その発明の要旨は、平成9年2月7日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された「半導体装置の製造方法」にあるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「第1発明」という)は、次のとおりのものである。
「半導体基板上にアルミニウム合金膜を形成する工程と、前記アルミニウム合金膜の上層にマスク酸化膜を形成後直ちに急冷する工程と、前記マスク酸化膜をパターニングし前記アルミニウム合金膜をエッチングして配線を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」
2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開昭63-308914号公報(以下、「引用例1」という)には、「半導体基板上にアルミニウム合金膜を形成する工程と、前記半導体基板を高温から急冷する工程と、フォトリソグラフィ技術により前記合金膜をエッチング除去する工程とを含むことを特徴とするアルミニウム合金配線の形成方法。」(「特許請求の範囲」の欄)、「従来のAl合金配線の形成方法では、半導体基板にAl合金膜を形成する際、半導体基板を200℃乃至400℃に加熱し、Al合金膜を形成後、特に冷却することはなく自然冷却していた。」(「従来の技術」の欄)、「前述した従来のAl合金配線の形成方法では、Al合金膜を半導体基板に形成する際、室温で固溶限界以上の添加物がAl中に含まれている場合、この固溶限界以上の添加物が半導体基板が冷却されるに従い、主に粒界や基板とAl合金膜の界面に析出してしまう。その後、この添加物が析出したAl合金膜を、リソグラフィ技術により必要な部分を残しエッチング除去する際、この添加物の析出が残さとして残り、Al合金配線を形成することが困難となる欠点を有していた。たとえば、Al中に銅(Cu)を1%添加したAl-Cu合金で、Al合金配線を形成する場合を例にとると、・・・粒界に析出したCuはエッチングされず、半導体基板上に残さとして残り、この残さでAl配線間がショートしてしまい、Al-Cu合金配線の形成が困難となる欠点を有する。」(「発明が解決しようとする問題点」の欄)、「第1図(a)乃至第1図(c)は本発明の第1の実施例のAl-Cu合金配線形成の主要工程を順にした断面図である。・・・シリコン基板1を400℃に加熱し、スパッタリング法によりAl-Cu合金膜3を形成する。・・・Al-Cu合金膜3が形成された後、ただちに加熱をやめ、基板ホルダに液体窒素を流し、シリコン基板1全体を急冷し、室温に戻す。この時、第1図(b)に示すようにAl-Cu合金膜3中のCuは、急冷のため、400℃での分布から変化することなく、Al-Cu合金膜3中にはぼ均一に分布している。その後、第1図(c)に示すように、通常のリソグラフィ技術を用い、Al-Cu合金膜3を必要な部分を残してエッチング除去し、Al-Cu合金配線4を形成する。」(第2頁右上欄第12行〜左下欄第14行)、「第2図(a)乃至第2図(c)は本発明の第2の実施例のアルミニウム合金配線の形成方法を主要工程順に示す断面図である。・・・シリコン基板11を200℃に加熱し、スパッタリング法によりAl-Cu合金膜13を所望の膜厚に形成し、室温に戻す。・・・その後、新たにシリコン基板11を炉心管や電気オーブンなどにより400℃に加熱し、第2図(b)に示すように、水冷により基板を急冷する。この時、室温でも、CuはAl-Cu合金膜15に均一に分布している。その後、通常のリソグラフィ技術によりAl-Cu合金を必要な部分を残しエッチング除去し、第2図(c)に示すように、Al-Cu合金配線16を形成する。」(第2頁左下欄第15行〜右下欄第11行)、「本発明はAl合金膜を半導体基板に形成後、このAl合金膜をフォトリソグラフィ技術により必要な部分を残しエッチング除去する前に、半導体基板を高温から急冷する工程を含むことで、Al合金中の添加物がA1中にほぼ均一に分布し、析出しているところがないため、通常のAlのエッチング技術により添加物も同時にエッチング除去され、Al合金配線を容易に形成できるという効果がある。」(「発明の効果」の欄)が、第1図、第2図と共に記載されている。
したがって、上記各記載から、引用例1には、半導体基板上に形成されたアルミニウム合金膜中に室温での固溶限界以上の添加物が含まれている場合、半導体基板を自然冷却すると添加物が粒界等に析出し、この析出がエッチング後に残滓として残り、アルミニウム合金配線を形成することが困難となるという問題を生じること、及び、エッチング前に半導体基板を高温から急冷することで、この問題を解決できることが開示されていると認1められる。
同じく原審の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特開平5-136127号公報(以下、「引用例2」という)には、「パターニングされる配線用金属膜上に第2マスク及びフォトレジストからなる第1マスクを順次積層形成して、前記配線用金属膜のエッチングを行う半導体装置の製造プロセスにおける金属配線パターンの形成方法であって、前記第2マスクは、その前記配線用金属膜に対する選択比が、前記第1マスクのフォトレジストのそれより大きい材料から形成されることを特徴とする金属配線パターンの形成方法。」(「特許請求の範囲」の欄)、「第1の工程(図1A)では、…アルミニウム合金膜からなる上層配線用金属膜15及びシリコン酸化膜からなる第2マスク16をそれぞれ平坦部において600nm、800nm及び50nmの膜厚になるように順次積層形成し、・・・本工程において、上層配線用金属膜15の成膜は、アルミニウムAl一シリコンSi(1.0%)一銅Cu(0.5%)をスパッタ法により積層形成する。・・・第2の工程(図1B)では、・・・反応性イオン・エッチング法により、第2マスク16のパターニングを行う。第3の工程(図1C)では、前工程に引き続いて、同じエッチング・ガス18を用いた同じ反応性イオン・エッチング法により、上層配線用金属膜15のエッチングを第2マスク16のパターニングに連続して行う。」(【0013】〜【0016】)が、図1と共に記載されている。
したがって、上記各記載から、引用例2には、半導体基板上にアルミニウムAl一シリコンSi(1.0%)一銅Cu(0.5%)からなるアルミニウム合金膜をスパッタ法により形成する工程と、前記アルミニウム合金膜の上層にシリコン酸化膜からなる第2マスクを形成する工程と、前記シリコン酸化膜からなるマスクをパターニングし前記アルミニウム合金膜をエッチングして配線を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が記載されているものと認められる。
3.対比
本願第1発明と引用例2に記載の発明とを対比すると、本願第1発明の「マスク酸化膜」は引用例2に記載された発明の「シリコン酸化膜からなる第2マスク」に相当するから、結局両者は、「半導体基板上にアルミニウム合金膜を形成する工程と、前記アルミニウム合金膜の上層にマスク酸化膜を形成する工程と、前記マスク酸化膜をパターニングし前記アルミニウム合金膜をエッチングして配線を形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」である点で一致し、本願第1発明では、マスク酸化膜を形成後直ちに急冷するのに対して、引用例2にはこのような記載がない点で相違する。
4.当審の判断
上記相違点について検討する。
引用例1には、半導体基板上に形成されたアルミニウム合金膜中に室温での固溶限界以上の添加物が含まれている場合、半導体基板を自然冷却すると添加物が粒界等に析出し、この析出がエッチング後に残滓として残り、アルミニウム合金配線を形成することが困難となるという問題を生じることが示されている。ところで、引用例2に記載された発明において半導体基板上にスパッタ法により形成されたアルミニウム合金膜の組成は、アルミニウムAl一シリコンSi(1.0%)一銅Cu(0.5%)であり、その添加物の量が室温での固溶限界を超えていることは明らかである。してみれば、該半導体基板の冷却を自然に任せた場合に、固溶限界以上の添加物が粒界等に析出し、この析出がエッチング後に残滓として残り、アルミニウム合金配線を形成することが困難となるという問題を生じるであろうことは当然に予測される。
しかも、引用例2に記載された発明では、アルミニウム合金膜上にシリコン酸化膜が形成されているから、該酸化膜が形成されていない時に比べて冷却速度が低下して添加物が析出し易くなっていることは明らかであり、また審判請求人が参考文献として審判請求書に添付した刊行物である第40回応用物理学関係連合講演会講演予稿集No.2(1993年、726頁、30p-ZY-116)によれば、アルミニウム合金膜上の絶縁膜が該アルミニウム合金の配向性を低下させ、添加物が析出しやすい結晶粒界を増加させることが本願出願日前において知られていたのであるから、引用例2に記載された発明におけるアルミニウム合金膜上のシリコン酸化膜の存在が、前記基板の冷却を自然に任せた場合に生じるアルミニウム合金配線を形成する際の困難を一層増大させる要因となることは明らかである。
してみれば、この困難を解決するために引用例1に開示された手段、すなわちエッチング前に半導体基板を高温から急冷することを採用することは当業者が容易に想起し得たことである。そして、引用例2に記載された発明において、エッチング前に半導体基板が高温となる最後の工程はマスク酸化膜の形成工程であるから、引用例2に記載された発明に引用例1記載の技術を採用する場合、急冷工程はマスク酸化膜の形成工程の直後に行われることとなることは明らかである。
なお、本願明細書に記載された効果のうち、アルミニウム合金膜中に含まれる添加物の結晶粒界への拡散を抑制することができること、及びエッチング残滓の要因となる添加物のノジュール成長を抑制し、残津の生じない高信頼性のアルミニウム合金配線を形成することが可能であることは、引用例1に記載されている。そして、配線抵抗の増大、マイグレーション耐性の劣化を抑制することができ高信頼性の微細配線加工を実現することができるという効果は、前記ノジュールの成長の抑制という現象から当業者が予測する範囲の効果にすぎない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、上記引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-06-01 
結審通知日 1999-06-11 
審決日 1999-06-25 
出願番号 特願平6-338720
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀧内 健夫  
特許庁審判長 今野 朗
特許庁審判官 加藤 浩一
橋本 武
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 京本 直樹  

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