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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01K
管理番号 1004866
審判番号 審判1999-1570  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1988-12-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-02-04 
確定日 1999-10-01 
事件の表示 昭和62年特許願第127973号「反射鏡付き管球」拒絶査定に対する審判事件(平成7年7月19日出願公告、特公平7-66784)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の要旨
本願は、昭和62年5月27日の出願であって、その発明の要旨は、出願公告後の平成8年7月1日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「口金部を有する反射鏡と;
この反射鏡に形成された反射膜と;
上記口金部に被着した上記反射膜を形成する反射膜物質と;
上記口金部の内部に基端部を位置させて配設させた管球と;
反射膜物質上に配設され、上記基端部と口金部とを固定するpH10以上の接着剤と;
を具備していることを特徴とする反射鏡付き管球。」
2.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶理由である特許異議の決定の理由に引用された、甲第2号証の刊行物(「工業材料」第33巻第13号、1985年11月臨時増刊号、108頁乃至112頁、以下、引用例という。)には、耐熱性無機接着剤に関して下記の事項が記載されている。
「1.シリケート系接着剤
結合剤には、一般式M2O・XSiO2・YH2Oで表わされるアルカリ金属シリケートが用いられる。
接着特性は金属種類(M),モル比(SiO2/M2O)によって異なり,接着性はNa>K>Liの順であり,耐水性はLi>K>Naの順となる。
・・・中略・・・接着剤の硬化は水分の揮散とともにシラノール基の脱水縮合によりシロキサン結合が生じ,さらに150℃程度の加熱により反応は一段と促進される。」(第109頁左欄7行乃至右欄2行)
「接着性能
市販品アロンセラミック(東亜合成化学:表2)を例にとり,耐熱性無機接着剤の一般的性質および性能などを以下に示す。」(第110頁左欄9行乃至右欄1行)
「用途
耐熱性無機接着剤の用途は,その特性を活かして、主に高温材料の接着またはポッティングなどに用い、図5にその代表的な使用例をあげる。
(1)電気,電子材料:圧電素子,点火プラグ,抵抗器コイル,ヒータコイル,電子レンジ,蛍光表示管電極,ハロゲンランプロ金,熱電対」(第112頁左欄1行乃至7行)
さらに、「表2アロンセラミックのグレードと物性」には、アロンセラミックE、アロンセラミックD、アロンセラミックC及びアロンセラミックWのpHが12であることが記載されており、「図5アロンセラミックの主な使用例」のハゲロンランプ(ハロゲンランプの誤字と認める)の図からは、石英ガラス(管球)の基端部とパイレックスガラス(反射鏡)の口金部との間にアロンセラミック(接着剤)を配設して石英ガラスの基端部とパイレックスガラスの口金部とを固定したハロゲンランプがみてとれる。
3.本願発明と引用例との対比
上記引用例の記載事項からみて、引用例に記載された「パイレックスガラス」、「石英ガラス」、「アロンセラミック」及び「ハロゲンランプ」は、各々本願発明の「反射鏡」、「管球」、「pH10以上の接着剤」及び「反射鏡付き管球」に相当するから、本願発明の用語を使用して本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、両者は、「口金部を有する反射鏡と口金部の内部に基端部を位置させて配設させた管球と基端部と口金部とを固定するpH10以上の接着剤とを具備している反射鏡付き管球。」である点で一致しており、次の各点で相違している。
相違点1;本願発明では、反射鏡には反射膜が形成されているのに対して、引用例に記載された発明では、パイレックスガラスに反射膜を形成しているか不明である点。
相違点2;本願発明では、反射鏡の口金部に反射膜を形成する反射膜物質が被着しており、接着剤が反射膜物質上に配設されるのに対して、引用例に記載された発明では、パイレックスガラスの口金部に反射膜を形成する反射膜物質が被着しているか不明ではあるが、パイレックスガラスの口金部と石英ガラスの基端部との間にアロンセラミックを配設している点。
4.当審の判断
上記相違点1について検討するに、引用例には、パイレックスガラス(反射鏡)に反射膜を形成しているか不明ではあるが、ハロゲンランプのガラス製の反射鏡に反射膜を形成することは、本願出願前普通に採用されている技術事項(例えば、特開昭59-177850号公報、特開昭60-70662号公報等参照)にすぎないものであるから、引用例に記載されたハロゲンランプのパイレックスガラス(反射鏡)に反射膜を形成することは、当業者であれば普通に採用することができる程度の技術事項にすぎないものである。
上記相違点2について検討すると、本願発明の「口金部に被着した反射膜を形成する反射膜物質」とは、発明の詳細な説明からも理解できるように、「ガラス製反射鏡の内面にダイクロイック反射膜などを(口金部のマスキング等の手段を施さないで)形成するとき、反射膜物質の一部が筒形の口金部内面に回り込んで形成される厚さ数千Å程度の皮膜」であるから、引用例に記載されたハロゲンランプのパイレックスガラス(反射鏡)に反射膜を形成すれば、反射膜を形成する反射膜物質はパイレックスガラス(反射鏡)の口金部にも被着するものである。
そして、接着剤のpHが10以上であれば接着剤を反射膜物質上に配設しても接着強度が所定の強度を有することは強度試験等により当業者であれば容易に理解することができる程度の技術事項であるから、パイレックスガラス(反射鏡)に反射膜を形成した際に、反射鏡の口金部に被着した反射膜物質について特段の処理(例えば、除去)を行うことなく、本願発明のように反射膜物質上にアロンセラミック(接着剤)を配設して、パイレックスガラス(反射鏡)の口金部と石英ガラス(管球)の基端部とを固定することは、当業者であれば必要に応じて容易に想到することができる程度の技術事項と認める。
また、本願発明の効果も、引用例に記載された発明及び本願出願前普通に採用されている技術事項から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
5.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び本願出願前普通に採用されている技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-06-21 
結審通知日 1999-07-02 
審決日 1999-07-15 
出願番号 特願昭62-127973
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 村本 佳史
特許庁審判官 森 雅之
柏木 悠三
発明の名称 反射鏡付き管球  
代理人 和泉 順一  

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