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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61M
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61M
管理番号 1005100
異議申立番号 異議1998-72157  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-04-30 
確定日 1999-09-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2681236号「トルクチューブ」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2681236号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
特許第2681236号の請求項1ないし6に係る発明は、平成3年8月22日に出願され、平成9年8月8日にその発明について特許の設定登録がなされたが、その特許について、特許異議申立人神由美子、テルモ株式会社、加藤厚子より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年11月12日に訂正請求がなされ前記訂正請求に対して訂正拒絶理由を通知したところ、その指定された期間内である平成11年4月15日に手続補正書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正請求に対する補正の適否について
特許権者は、訂正請求書の請求項2及び請求項3を削除し、請求項1及び請求項4乃至6に記載された「チューブ本体の外周に巻回したコイル」の記載を「チューブ本体の外周に少なくとも左右2層巻きにて巻回したコイル」とし、請求項4乃至6は請求項2及び3の削除に伴い請求項2乃至4とする補正を求めるものである。
上記補正は、特許明細書の【0009】の記載「コイル11は、チューブ本体10に右巻きあるいは左巻きのいずれかの一層巻きまたは左(右)巻きと右(左)巻きの少なくとも層巻にて巻回してある。図は、左右2層巻き状態を表しており、特に好ましい態様である。」に基づくものであり、かつ、訂正後の特許請求の範囲を減縮するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。よって、上記補正を認める。
イ.独立特許要件の判断
a.補正後の訂正明細書の請求項1に係る発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、本件訂正発明1という)は、上記手続補正書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された下記のとおりのものである。

【請求項1】チューブ本体と、このチューブ本体の外周に少なくとも左右2層巻きにて巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた平角線を編んで構成された編組体とを備えたチューブ。
b.引用刊行物の記載事項
上記本件訂正発明1に対して、当審が通知した訂正拒絶理由通知書で引用した刊行物1乃至8には下記のとおりの記載がある。
刊行物1:特表平3-500626号公報
「本発明は、中間構造体に少なくとも1本の強1化材を螺旋状に巻き付け、かつ最終製品の選定された物理的特性を制御するために螺旋形の巻付け角を制御しながら強化材が適用されるカテーテルなどの強化管状構造体を製造する方法に関する。」(公報3頁右下欄13-17行)
「また、特殊の型式の管状製品は、この技術分野でよく知られているように、医療の分野に適用されるカテーテルである。企図された型式のカテーテルは、プラスチック製の内層および外層を含み、かつ内層と外層との間にシーズ線を埋封した比較的に薄くかつ可撓性のチューブである。シーズ線は、最大の振り剛性および十分に満足な長手方向の可撓性を得るために、編組されるかまたは綾に巻かれている。」(公報4頁左上欄3-10行)
刊行物2:特開昭60-21767号公報
「上記カテーテル10の製造方法について・・芯棒としての、例えば銀線、銅線等からなる芯金15上に、第3図(A)に示すように、可撓性の比較的小なる第1の樹脂層12を被覆形成する。・・
次に、芯金15上および上記第1の樹脂層12上に、第1の樹脂層12に比して可撓性の比較的大なる樹脂材料からなる第2の樹脂層14を被覆形成する。・・
第4図は本発明の第2実施例に係るカテーテル20を示す断面図、第5図(A)および(B)は同カテーテル20の製造過程を示す断面図であり、前記カテーテル10における同一部分は同一符号を付すものとする。
このカテーテル20が前記カテーテル10と異なる点は、第1の樹脂層12と第2の樹脂層14との間に、例えば線径0.08mmのステンレス鋼線からなるワイヤ層21を例えばピッチ1mmで編んだ点にのみにある。」(公報3頁左下欄4行-4頁左上欄7行)
刊行物3:特開平3-141958号公報
「そして、この実施例のカテーテル1では、カテーテル本体2は、基端より先端まで貫通するルーメン10を形成する内層11と、この内層11を被覆する中間層13と、この中間層13を被覆する外層12により形成されている。そして、本体部4における内層11は、合成付与体15を有している。
内層11の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく・・
さらに、内層11には、上述のようにその基端部より柔軟部付近まで伸びる剛性付与体15が設けられている。柔軟部3および先端部5には、第4図に示すように、剛性付与体および補強体は設けられていない。
剛性付与体15は、第2図に示すように、複数本の線状体により、網目状に形成されている。そして、この剛性付与体15は、内層11を形成する樹脂の外面または肉厚内に埋没しており、特に、第2図に示すものでは、内層11が、熱可塑性樹脂により形成され、上記剛性付与体を巻き付けた後、内層11を外層より加熱し、(例えば、内層11を加熱ダイスに挿通する)ことにより、内層11の外壁に剛性付与体15を埋没させている。」(公報3頁左上欄8行-左下欄2行)
「補強体16は、上述の剛性付与体15と同様に、剛性付与体15を埋設させた内層11の外面に埋没させてもよい。また、剛性付与体15と補強体16との設けられる位置は、逆でもよく、補強体16を内層11に設け、その上に、剛性付与体15を設けてもよい。・・
中間層13は、第2図ないし第4図に示すように、内層11を被覆している。中間層13の形成材料としては、内層11と接着性を有するものが好ましく、内層11の形成に用いた樹脂と同質または近似したものが好ましい。・・
外層12は、第2図ないし第4図に示すように、中間層13を被覆し、カテーテル1の外表面を形成する。外層12の形成材料としては、中間層13と接着性を有するものが好ましく、中間層13の形成に用いた樹脂と同質または近似したものが好ましい。例えば、・・熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき」(公報4頁右上欄11行-右下欄16行)
刊行物4:実公昭63-34641号公報
「内視鏡の可撓管3の構造を第2図に示す。13は屈曲自在の螺旋管、14は螺旋管13の外表面に密着させ螺旋管13の伸長を防止する網状管である。また、15は網状管14の外表面に被覆して、可撓管3の表面を円滑にし且つ体液等が可撓管内へ進入するのを防止するための合成樹脂製外皮である。」(公報1欄26行-2欄5行)
そして、第2図を見ると、螺旋管13からはその上方および下方に引き出し線が伸びて、図番の13が付されており、上方に伸びた引き出し線の図番13で表される螺旋管は、左上から右下に向かい螺旋が描かれていることから、同図の右から見ると左巻きに螺旋が形成されており、同、下方に伸びた引き出し線の図番13で表される螺旋管は左下から右上に向かって螺旋が描かれているから、同図の右から見れば螺旋は右巻きに形成されていることが見て取れる。
刊行物5:特開平1-107729号公報
「周知のように、内視鏡の体腔内挿入部をなす可撓管は通常、少なくとも一重のフレックス(螺旋管)と、金属細線および/または合成繊維で編組されていて、上記フレックスの外周面を覆うブレード(網管)と、このブレードを被覆する高分子材料からなる外皮とで構成されている。」(公報1頁左下欄17行-右下欄2行)
刊行物6:国際公開WO91/02489号パンフレット
「トルクケーブルの長手方向の強度を増大させる(すなわち、長手方向の剛性を増大させる)ためには、ワイヤの隣接する巻同体間の隙間を、低濃度から中濃度までのポリエチレンの如き熱可塑性ポリマーで含漬するのが好ましい。含漬ポリマーは第4図に65にて示すが、ポリマー65はまた、サブケーブル62,64のここのワイヤ巻同体間の小さな隙間にも介在させるのが好ましい。
・・
トルクケーブル60に対するポリマーの含漬は任意の便利なまたは便宜的な方法で行うとよい。「例えば、(融点又はそれより高い温度での)溶融ポリマーをトルクケーブル60上に散布、浸漬又はパジングして、次いで(空冷や水冷により)ポリマーを冷却して、トルクケーブルの巻回体間の隙間内で固化させる。しかし、現段階で好ましい技術は、含漬ポリマーで作った小径のチューブをトルクケーブル60上で入れ子式に位置決めし、次いでポリマーチューブおよびトルクケーブルを十分に加熱し、ポリマーチューブを溶かして、溶融ポリマーをトルクケーブル60の巻同体間の隙間に流入させる方法である。
1以上の細長い繊維素子により付加的な長手方向の剛性を提供してもよい。」(明細書21頁23行-23頁6行)
刊行物7:特公昭61-37932号公報
「外皮を合成樹脂等のデイッピングで形成し」(公報1欄18行)
「第1図は、本発明の一実施例を示す内視鏡用可撓管であって、この可撓管1内には、収納チューブ2内に把束されたイメージガイド用の光学繊維束3,収納チューブ4内に把束されたライトガイド用の光学繊維束5、送気・送水チャンネルを形成する送気・送水パイプ6,吸気・吸液チャンネルを形成する吸引パイプ7、コイルチューブ8にそれぞれ挿通された彎曲作動ワイヤ9等の内蔵物が連接する内管10〜12を通して配設される。・・これら内管10〜12の外周には、薄い鋼板等をコイル状に巻いて成形したパイプ状のフレックス13が嵌着されており、このフレックス13の外周には金網上のブレード14が嵌着されていて、さらにこのブレード14の外周に外皮15がデイツピング法や熱収縮性を有するチューブ等で密着するように形成されている。」(公報3欄10-34行)
「第4図は、本発明の他の実施例を示す内視鏡用可撓管を示しており、この可撓管31は、第1図に示した可撓管1のフレックス13を省略するようにしたものである。」(公報4欄10-13行)
刊行物8:特公昭64-1136号公報
「内視鏡用可撓管」(発明の名称)
「上記挿入部3の可撓管4は第2図で示すように金属製の帯状材10を平織りに編成した帯状材網管11の外側から熱可塑性樹脂を加圧して成型することによりその帯状材網管11に含浸させた状態で、外被層12を形成してなり、帯状材網管11と外被層12とを互いに緊密に結合させた2柔構造に構成されている。・・
しかして、上記可撓管4の強度や性能の確保を各構成部材がどのように分担しているかを明確に区別することはできないが、帯状材網管11は従来、主として螺旋管が有していた弾撥性、潰れや屈曲に対する耐力性と主として網状管が有していた追従性や耐引っ張り性などの強度や性能を合わせ有している」(公報3欄18行一4欄1行)
C.対比・判断
上記刊行物7には、「内管と、この内管の外周に1層巻きにコイル状に巻回したフレックスとこのフレックスの外周に、金網状のブレードを備えた可撓管」が記載されている。
そして、金網状のブレードは通常編んで構成された編組体であることは自明のことである。
したがって、本件訂正発明1と上記刊行物7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物7に記載された「内管」、「内管の外周に巻回したフレックス」、「金網状のブレード」、「可撓管」は、それぞれ、本件訂正発明1の「チューブ本体」、「チューブ本体の外周に巻回したコイル」、「コイルの外周に巻いた編組体」、「チューブ」に相当するから、本件訂正発明1と刊行物7に記載された発明とは「チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体とを備えたチューブ。」で一致し以下の点で相違する。
(相違点)
▲1▼本件訂正発明1のコイルは「少なくとも左右2層巻きにて巻回したコイル」であるのに対し、上記刊行物7に記載されたフレックスは「一層巻き」である点。
▲2▼本件訂正発明1の編組体は「平角線を編んで構成された編組体」であるのに対し、上記刊行物7のものは単に金網状のブレードの記載があるのみである点。
相違点▲1▼について
上記刊行物4に記載された、内視鏡用可撓管の、網状管の内層に設けられる螺旋管が「左右2層巻きにて巻回したコイル」であることは、その図から当業者には自明である。刊行物4のものは単に図面に記載があるのみであるが、例えば、実願昭62-161265号(実開平1-65002号公報)のマイクロフィルムを参酌すれば、上記刊行物4の第2図に記載のものが「左右2層巻きにて巻回したコイル」であることは疑う余地もない。
相違点▲2▼について
内視鏡用可擁管の網状管を帯状材で形成することは上記刊行物8に記載されている。上記帯状材も本件訂正発明1の平角線と実質的に相違するところはないから、上記相違点▲2▼に相当する「平角線を編んで構成された編組体」は上記刊行物8に記載されている。
上記刊行物7、4および8の文献はいずれも、内視鏡に用いるチューブの構成に関するものであり、上記刊行物7に記載された発明に、上記刊行物4および8に記載された発明を単に組み合わせることになんら困難性を見いだせず、又これらを組み合わせることによる格別な効果もない。
以上のとおりであるから、本件訂正発明1は上記刊行物7,4及び8に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
ロ.むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の14第3項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、上記規定に適合しない訂正を含む平成10年11月12日付け訂正請求による訂正は認められない。
3.特許異議申立についての判断
ア.本件発明
上記のとおり平成10年11月12日付け訂正は認められなかったため、請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ本件発明1ないし6という)は訂正前の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された下記の事項によって特定されるとおりのものである。

【請求項1】チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体とを備えたチューブ。
【請求項2】チューブ本体と、このチューブ本体の外周に編組体を備えたチューブであって、当該編組体に樹脂を含浸させてなるチューブ。
【請求項3】チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻いた編組体と、この編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えたチューブ。
【請求項4】チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体とを備え、かつコイルおよび編組体に樹脂を含浸させてなるチューブ。
【請求項5】チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体と、この編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えたチューブ。
【請求項6】チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体とを備え、かつコイルおよび編組体に樹脂を含浸させ、さらに編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えたチューブ。
イ.引用刊行物の記載事項
上記本件発明1ないし6に対して当審が通知した取消理由通知書で引用した刊行物1乃至7には、上記2.イ.bの刊行物1乃至7について記載したとおりの発明が記載されている。
ウ.対比・判断
a.本件発明1について
上記刊行物7には下記のとおりの発明が、記載されている。

内管と、この内管の外周にコイル状に巻回したフレックスとこのフレックスの外周に、金網状のブレードを備えた可撓管。
そして、本件発明1と上記刊行物7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物7に記載された「内管」、「この内管の外周にコイル状に巻回したフレックス」、「このフレックスの外周に、金網状のブレードを備えた」、「可撓管」は、それぞれ、本件発明1の「チューブ本体」、「このチューブ本体の外周に巻回したコイル」、「このコイルの外周に巻いた編組体とを備えた」、「チューブ」と対応するから、本件発明1と刊行物7に記載された発明とは「チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体とを備えたチューブ。」で一致し相違するところがない。
b.本件発明2について
上記刊行物7には下記のとおりの発明が記載されている。

内管と、内管の外周に金網状のブレードを備え、上記ブレードの外側にデイッピング法で合成樹脂の外皮を形成した可撓管。
そして、本件発明2と上記刊行物7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物7に記載された「内管」、「内管の外周に金網状のブレードを備え」、「上記ブレードの外側にデイッピング法で合成樹脂の外皮を形成した」、「可撓管」は、それぞれ、本件発明2の「チューブ本体」、「このチューブ本体の外周に編組体を備え」、「編組体に樹脂を含浸させてなる」、「チューブ」に相当するから、本件発明2と刊行物7に記載された発明とは「チューブ本体と、このチューブ本体の外周に編組体を備えたチューブであって、当該編組体に樹脂を含浸させてなるチューブ。」で一致し相違するところがない。
c.本件発明3について
上記刊行物7には下記のとおりの発明が記載されている。

内管と、内管の外周に金網状のブレードを備え、上記ブレードの外側に熱収縮性を有するチューブで外皮を形成した可撓管。
そして、本件発明3と上記刊行物7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物7に記載された「内管」、「内管の外周に金網状のブレードを備え」、「ブレードの外側に熱収縮性を有するチューブで外皮を形成した」、「可撓管」は、それぞれ、本件発明3の「チューブ本体」、「このチューブ本体の外周に巻いた編組体」、「編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えた」、「チューブ」に相当するから、本件発明3と刊行物7に記載された発明とは「チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻いた編組体と、この編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えたチューブ」で一致し相違するところがない。
d.本件発明4について
上記刊行物7には下記のとおりの発明が記載されている。

内管と、この内管の外周にコイル状に巻回したフレックスとこのフレックスの外周に、金網状のブレードを備え、上記ブレードの外側にデイッピング法で合成樹脂の外皮を形成した可撓管。
そして、本件発明4と上記刊行物7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物7に記載された「内管」、「この内管の外周にコイル状に巻回したフレックス」、「このフレックスの外周に、金網状のブレードを備え」、「上記ブレードの外側にデイッピング法で合成樹脂の外皮を形成した」、「可撓管」は、それぞれ、本件発明4の」「チューブ本体」、「このチューブ本体の外周に下巻回したコイル」、「このコイルの外周に巻いた編組体とを備え」、「編組体に樹脂を含浸させてなる」、「チューブ」と対応するから、本件発明1と刊行物7に記載された発明とは「チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体とを備え、かつ編組体に樹脂を含浸させてなるチューブ。」で一致し、本件発明4のものはコイルにも樹脂が含浸させてあるのに対し、上記刊行物7に記載されたものはコイルに樹脂を含浸させることについては格別記載はない点で相違する。
しかし、コイル状の回転体の間に合成樹脂を含浸させたチューブは刊行物6に記載されている。
上記刊行物7、および6の文献は、いずれも、内視鏡に用いるチューブの構成に関するものであり、上記7の文献に記載された発明に、上記6の文献に記載された発明を単に組み合わせることになんら困難性を見いだせず、又これらを組み合わせることによる格別な効果もない。
したがって、上記刊行物7に記載されたチューブのコイルにも合成樹脂を含浸させることは、刊行物6に記載された発明を転用することにより当業者が容易に発明できたことである。
e.本件発明5について
上記刊行物7には下記のとおりの発明が記載されている。

内管と、この内管の外周にコイル状に巻回したフレックスとこのフレックスの外周に、金網状のブレードを備え、上記ブレードの外側に熱収縮性を有するチューブで外皮を形成した可撓管
そして、本件発明5と上記刊行物7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物7に記載された「内管」、「この内管の外周にコイル状に巻回したフレックス」、「このフレックスの外周に、金網状のブレード」、「ブレードの外側に熱収縮性を有するチューブで外皮を形成した」、「可撓管」は、それぞれ、本件発明5の「チューブ本体」、「このチューブ本体の外周に巻回したコイル」、「このコイルの外周に巻いた編組体」、「この編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えた」、「チューブ」に相当するから、本件発明5と刊行物7に記載された発明とは「チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体と、この編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えたチューブ」で一致し相違するところがない。
f.本件発明6について
上記刊行物7には下記のとおりの発明が記載されている。

内管と、この内管の外周にコイル状に巻回したフレックスとこのフレックスの外周に、金網状のブレードを備え、上記ブレードの外側にデイッピング法で合成樹脂の外皮を形成した、もしくは、上記ブレードの外側に熱収縮性を有するチューブで外皮を形成した可撓管。
そして、本件発明6と上記刊行物7に記載された発明とを対比すると、上記刊行物7に記載された「内管」、「この内管の外周にコイル状に巻回したフレックス」、「このフレックスの外周に、金網状のブレードを備え」、「上記ブレードの外側に熱収縮性を有するチューブで外皮を形成した」、「可撓管」は、それぞれ、本件発明6の「チューブ本体」、「このチューブ本体の外周に巻回したコイル」、「このコイルの外周に巻いた編組体とを備え」、「編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えた」、「チューブ」と対応するから、本件発明1と刊行物7に記載された発明とは「チューブ本体と、このチューブ本体の外周に巻回したコイルと、このコイルの外周に巻いた編組体とを備え、かつ編組体の外周に被覆した熱収縮被覆層とを備えたチューブ。」で一致し、本件発明6のものは、熱収縮被覆層を有するものに加えて、コイルおよび編組体に樹脂が含浸させているのに対し、上記刊行物7に記載されたものは、熱収縮被覆層を有するものにあっては、コイルおよび編組体に樹脂を含浸させる構成が適用されていない点で相違する。
上記刊行物3には、内層と該内層に埋没させた網目状の金属線からなる剛性付与体を有するチューブにおいて、該内層の外周に中間層を設け、該中間層のさらに外周に外層を設けたものが記載されている。また、上記刊行物6には、コイル状の回転体の間に合成樹脂を含浸させたチューブが記載されている。
上記刊行物7に記載された熱収縮被膜層を有するチューブに、さらに内部に設けた編組体に樹脂を含浸させ、加えて、該樹脂はコイルにも含浸させるようにすることは、上記刊行物7に記載された発明に、上記刊行物3および6に記載された発明を単に寄せ集めただけのものである。
そして、上記刊行物7、3および6の文献は、いずれも、内視鏡に用いるチューブの構成に関するものであり、上記7の文献に記載された発明に、上記3および6の文献に記載された発明を単に組み合わせることになんら困難性を見いだせず、又これらを組み合わせることによる格別な効果もない。
エ.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1乃至3および5は、上記刊行物7に記載された発明と実質的に同一であり、本件発明1乃至3および5についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、また、本件発明4および6は、上記刊行物3,6,および7に記載された発明に基づき当業者が容易に発明できたものであり、本件発明4および6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-08-16 
出願番号 特願平3-237156
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (A61M)
P 1 651・ 121- ZB (A61M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山中 真  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 渡邊 聡
森 雅之
登録日 1997-08-08 
登録番号 特許第2681236号(P2681236)
権利者 三菱電線工業株式会社
発明の名称 トルクチューブ  
代理人 辻 良子  
代理人 辻 邦夫  
代理人 岡 賢美  

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