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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01L |
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管理番号 | 1005102 |
異議申立番号 | 異議1998-73398 |
総通号数 | 5 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-07-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-07-21 |
確定日 | 1999-09-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2697932号「真空度測定装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2697932号の特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2697932号に係る発明の特許は、その出願が平成1年12月1日の出願であって、平成9年9月19日に設定の登録があり、異議申立人日本真空技術株式会社より特許異議申立があり、平成10年9月29日付けで取消理由を通知したところ、平成10年12月15日付けで訂正請求があり、平成11年2月25日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、その指定した期間内に特許権者から何らの応答もなかった。 2.訂正拒絶理由通知の概要 訂正明細書に記載された発明は、刊行物1(石井博 中山勝矢著、真空技術講座3「真空度測定」日刊工業新聞社、昭和43年10月20日発行、第63頁〜第69頁)及び刊行物2(実願昭52-127937号(実開昭54-54387号)のマイクロフイルム)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正明細書に記載された発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反し、出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件訂正は特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反している。 3.訂正請求に対する当審の判断 特許権者に対して上記訂正拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定した期間内に特許権者から何らの応答もない。 そして、上記訂正拒絶理由通知の内容は妥当なものである。 よって、本件訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反しているから、当該訂正を認容することができない。 4.本件発明 上記3.において述べたように、平成10年12月15日付け訂正請求が認容されなかったので、本件発明は、特許明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された下記の事項により特定されるものである。 請求項1 被測定部の残留気体にエミッターより放出された電子を衝突させて該気体をイオン化すると共に、該イオンを捕収して前記被測定部の真空度を測定する真空度測定装置において、被測定部の真空度に応じて前記エミッターからのエミッション電流を制御するための手段を設けたことを特徴とする真空度測定装置。 5.取消理由通知の概要 本件発明は、刊行物1(石井博 中山勝矢著、真空技術講座3「真空度測定」日刊工業新聞社、昭和43年10月20日発行、第63頁〜第69頁)及び刊行物2(実願昭52-127937号(実開昭54-54387号)のマイクロフィルム)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反し、取り消されるべきである。 6.刊行物の記載事項 上記取消理由通知において引用された刊行物1及び刊行物2には下記の事項が記載されている。 刊行物1について 「電離真空計というと熱電極をもったものを指すような習慣ができている。この真空計には、三極管型、ついたて型、逆三極管型などあるが、いずれも電子を加速し捕捉する集電子電極(アノード)および生成イオンを集める集イオン電極(コレクタ)のほかに、かならず熱フィラメントを電子源としてもっている。図5.1は、この基本的構造を模式的に書いたものである。」(第63頁16行〜25行) 「低真空ではフィラメント保護のためIe(電子電流)を減らし、高真空では直流増幅器の感度を補う意味でIeをふやすことは(5.5)式の関係で広く行われる」(第66頁27行〜28行) 上記記載によれば刊行物1には、真空計の熱フィラメントを電子源とし、加速された電子により生成したイオンを集イオン電極(コレクタ)に集める真空計において、真空度に応じ、低真空ではフィラメント保護のため電子電流Ieを減らし、高真空では直流増幅器の感度を補う意味で電子電流Ieを増やす点が記載されている。 刊行物2について 「真空計の圧力測定は主として熱陰極電離真空計(通常これを略して電離真空計と言う。)によっている。この測定球はフィラメント、アノード、コレクタの三極管構造をしており、該測定球を真空計に取り付けると共に、真空計電源により前記フィラメント、アノード間に熱電子電流(以下エミッション電流と言う。)を流し、該熱電子の衝突により、真空中の残留ガス分子(原子)をイオン化し、このイオンを前記コレクタで捕捉し、そのイオン電流により圧力を求めるものである。」(第2頁12行〜第3頁1行) 「圧力測定においてエミッション電流値を変化させて測定する場合もあり、」(第3頁7行〜8行) 「前記コレクタ4に電流増巾器7を接続して、その出力に抵抗6を介して演算増巾器7を接続すると共に、該演算増巾器7の出力にメータ8を接続し、メータ8を接地してイオン電流増巾回路を構成する。前記演算増巾器7にはフィードバック回路が設けてあり、該回路は切換スイッチ9及び該切換スイッチによって断接される三本の抵抗器10a、10b、10cよりなっている。」(第4頁3行〜10行) 「一方前記フィラメント2にはフィラメント加熱電源11を接続してフィラメント回路を構成すると共に、フィラメント2を抵抗器12及び電池13を直列に介して接地し、前記アノード3は電池14を介して接地することによりエミッション電流回路を構成する。前記エミッション電流回路に流れるエミッション電流値は抵抗器12の電位差により求めることができ、この抵抗器12に対してエミッション電流制御回路を構成する。」(第4頁14行〜第5頁2行) 「マイナス電源入力端子に三本の抵抗器18a、18b、18cを並列に接続し、該抵抗器18a、18b、18cに対して断接可能な、前記切換スイッチ9と連動する切換スイッチ19を設け、・・・上記のエミッション電流制御回路は前記切換スイッチ19による抵抗器18a、18b、18cの断接により、エミッション電流が定められ、それによってフィラメント加熱電源11によるフィラメント2の温度が制御される。」(第5頁7行〜18行) 「エミッション電流値が0.1mAの時の演算増巾器7の増巾率βは100倍、1mAの時の増巾率は10倍、10mAの時の増巾率は1倍となる」(第8頁12行〜15行) 7.本件発明と刊行物1に記載の発明との対比、判断 (1)対比 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1の「熱フィラメント」、「電子電流Ie」、は、本件発明の「エミッター」、「エミッション電流」に相当し、刊行物1の電離真空計が真空度測定装置であることは明らかであるから、両者は 「被測定物の残留気体にエミッターより放出された電子を衝突させて該気体をイオン化すると共に、該イオンを補収して前記被測定部の真空度を計測する電離真空計を備えた真空度測定装置において、被測定部の真空度に応じてエミッターからのエミッション電流を変化させる真空度測定装置。」の点で一致し、 本件発明は、刊行物1に記載の発明と下記の点で相違する。 相違点 本件発明は、エミッターからのエミッション電流を制御する手段を備えているのに対し、刊行物1に記載の発明は、低真空では電子電流Ieを減らし、高真空では電子電流Ieを増やすことが記載されているものの、前記増減を行うための制御手段について明示されていない点。 (2)相違点の判断 刊行物2には、切換スイッチによって抵抗器が切換可能なフィードバック回路を設けたイオン電流増巾回路と、抵抗器の切換によりエミッション電流値が定められるエミッション電流制御回路を設け、両者の切換を連動するようにしてエミッション電流とイオン電流増幅回路の増幅率との積を一定にした点が記載されているから、相違点1は刊行物1に記載の発明に刊行物2に記載のエミッション電流制御回路を適用することにより当業者が容易に想到しうる程度のことに過ぎない。 そして、本件発明の「コレクタの消耗を防止することができ」との作用効果は、低真空の被測定部内において起きる事象であるから、刊行物1の「フィラメントの保護」の記載から予期でき、また、検出電流値の増加に伴い増幅率を低下させることが結果としてノイズの低減に寄与することは、明らかであるから、「高真空乃至超高真空領域での真空度測定時には増幅器などの雑音の影響を受けずに高精度で真空度の測定を行うことができる」との本件発明の作用効果は、刊行物2に記載の制御回路を刊行物1に記載の発明に適用する際に、当業者が当然予期しうるものである。 したがって、本件発明は、刊行物1および刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 8.むすび 以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第113条第1項第2項の規定に該当する。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-08-16 |
出願番号 | 特願平1-312798 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(G01L)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 山川 雅也 |
特許庁審判長 |
高瀬 浩一 |
特許庁審判官 |
森 雅之 柏木 悠三 |
登録日 | 1997-09-19 |
登録番号 | 特許第2697932号(P2697932) |
権利者 | 日本電子株式会社 |
発明の名称 | 真空度測定装置 |
代理人 | 浜野 孝雄 |
代理人 | 森田 哲二 |
代理人 | 平井 輝一 |
代理人 | 八木田 茂 |