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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01L 審判 全部申し立て 2項 H01L |
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管理番号 | 1005122 |
異議申立番号 | 異議1999-72035 |
総通号数 | 5 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-01-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-05-25 |
確定日 | 1999-11-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2829415号「熱電半導体材料およびその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2829415号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)本件発明 本件特許第2829415号の請求項1ないし4に係る発明(平成元年6月14日出願、平成10年9月25日設定登録。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりである。 「【請求項1】5μm以下の微粒子を含むことなく、粒径が均一なテルル化ビスマスおよびテルル化アンチモンの固溶体粉末を主成分とした一導電型の粉末焼結体からなることを特徴とする熱電半導体材料。 【請求項2】不純物として1021cm-3以下のVI属元素を添加したものであることを特徴とする請求項1記載の熱半導体材料。 【請求項3】5μm以下の微粒子を含むことなく、粒径が26から74μmにあるテルル化ビスマスおよびテルル化アンチモンの固溶体粉末を主成分とした一導電型の粉末焼結体からなることを特徴とする熱電半導体材料。 【請求項4】所望の組成のビスマス、アンチモン、テルル、セレン、および一導電型の不純物を混合し、加熱溶融せしめる加熱工程と、凝固点直下迄急冷して固溶体を形成する冷却工程と、該インゴットを粉砕し、固溶体粉末を形成する粉砕工程と、前記固溶体粉末の粒径を均一化する整粒工程と、前記整粒工程後、焼成工程に先立ち、微粒子を除去すべく熱処理を行う熱処理工程と、粒径の均一となった前記固溶体を焼結せしめる焼結工程を含むことを特徴とする熱電半導体材料の製造方法」 (2)申立の理由の概要 申立人横田秀昭は、甲第1号証(特開昭64-37456号公報)、甲第2号証(「熱電半導体とその応用」p167-173、昭和63年12月20日発行、日刊工業新聞社刊)、甲第3号証(「日本金属学会誌」第31巻第5号p684-690、1967年5月)、甲第4号証(「最新粉粒体プロセス技術集成、<基礎技術編>p335、昭和49年3月15日発行、産業技術センター刊)を提出し、▲1▼請求項1ないし4に係る発明は、甲第2号証と同一であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、▲2▼請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証乃至甲第4号証に記載された発明から当業者が容易になしえたものであるので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、▲3▼請求項4についてなされた補正は要旨変更であるので、特許法第17条の2第3項の規定に違反するから、特許を取り消すべきであると主張している。 (3)甲各号証記載の発明 甲第1号証(特開昭64-37456号公報)には、粒径が均一で、その粒径範囲が10〜200μmであるテルル化ビスマス、セレン化ビスマス固溶体粉末の粉末焼結体からなる熱電半導体材料が示されている。 甲第2号証(熱電半導体とその応用」p167-173、昭和63年12月20日発行、日刊工業新聞社刊)には、「Bi2Te3-Sb2Te3系化合物の粉末焼結体に用いる出発材料は、溶解後急冷することによって得る。この材料は面摩耗性セラミックス製ポールミルで粉砕して粒径50〜100μmの粉末にする。粉末の歪み取りを兼ねた水素還元は470〜570Kの熱処理温度で数時間行う。…圧粉体の焼結は水素雰囲気中で行われるが、焼結体の密度が最も高くなる焼結温度は650Kである。」と記載されている。 甲第3号証(「日本金属学会誌」第31巻第5号p684-690、1967年5月))には、Bi2Te3系熱電素子として、4wt%の過剰Teを含む25mol%Bi2Te3-76mol%Sb2Te3合金素了のホール係数を測定したことが記載され(この過剰TeはVI族元素である)、この25mol%Bi2Te3-75mol%Sb2Te3合金素子のホールの濃度及び易動度に及ぼす焼結温度の影響が記載されており、図中この熱電材料の粉末粒度が50〜150メッシュであることが記載されている。 甲第4号証(甲第4号証(「最新粉粒体プロセス技術集成、<基礎技術編>p335、昭和49年3月15日発行、産業技術センター刊)には、慣用メッシュと粘度との関係が記載されており、それによると、50〜150メッシュは、約100〜350μmに相当することが示されている。 (4)異議申立人主張の取消理由について ▲1▼について 本件請求項1に係る発明と甲第2号証に記載の発明と対比すると、甲第2号証において、溶解後急冷することによってBi2Te3-Sb2Te3系化合物の粉末焼結体に用いる出発材料を得て、粉砕して粒径50〜100μmの粉末にし、粉末の歪み取りを兼ねた水素還元を470〜570Kの熱処理温度で数時間行い、その後焼結することが示されている。 本件特許明細書(特許公報第4欄40行から44行)によると、「通常の篩をかけたとしても、その粒径範囲にはいるとして選定された粒の周りには、微粒子が多数付着しており、これが不純物濃度制御を不安定にする要因となる。」としており、同じく第5欄15行から18行に「粒径を小さくするとともに、微粒子を含まないようにすることにより、比抵抗の増大を補うほど伝導度を小さくすることができ、性能指数の高い熱電半導体を得ることができる。」と記載し、5μm以下の微粒子を含むことなくした効果を述べている。さらに同欄42行から45行に「焼結に先立ち熱処理を行うことにより、微粒子はさらさらした状態になって結晶粒から脱離しやすくなる。従って、5μm以下の微粒子を含有しない焼結体を得ることができる。」と記載されている。 してみると、甲第2号証における粉末の歪み取りを兼ねた水素還元を470〜570Kの熱処理温度が、微粒子を除去すべく熱処理である証拠はなく、微粒子を除去すべく熱処理であるとすることができない。従って、甲第2号証記載の粒径50〜100μmの粉末の表面に5μm以下の微粒子を付着させていないとはいえないので、本件特許請求項1に係る発明と、甲第2号証記載のものとが同一であるとすることができない。 本件請求項2、3に係る発明と甲第2号証に記載の発明と対比すると、上述したように、甲第2号証記載の粒径50〜100μmの粉末の表面に5μm以下の微粒子を付着させていないとはいえないので、本件請求項2、3に係る発明と、甲第2号証記載のものとが同一であるとすることができない。 本件請求項4に係る発明と甲第2号証に記載の発明と対比すると、上述したように、甲第2号証記載の粉末の歪み取りを兼ねた水素還元を470〜570Kの熱処理温度が、微粒子を除去すべく熱処理である証拠はなく、微粒子を除去すべく熱処理であるとすることができない。従って、本件特許請求項4に係る発明と、甲第2号証記載のものと、が同一であるとすることができない。 ▲2▼について 本件請求項1から3に係る発明における「5μm以下の微粒子を含むことなく」とすることは、甲第1乃至4号証のいずれにも示されておらず、本件請求項1から3に係る発明は、甲第1乃至4号証のいずれとも、同一であるとすることはできない。また、甲第1乃至4号証記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 本件請求項4に係る発明における「微粒子を除去すべく熱処理を行う熱処理工程」は、甲第1乃至4号証のいずれにも示されておらず、本件請求項4係る発明は、甲第1乃至4号証のいずれとも、同一であるとすることはできない。また、甲第1乃至4号証記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 ▲3▼について 異議申立人は、請求項4についてなされた補正は要旨変更であり、特許法第17条の2第3項の規定に違反するから、特許を取り消すべきものと主張している。しかしながら、本件特許は平成元年の出願であり、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める平成7年政令第205号第4条によって、特許法第17条の2第3項は、異議申立理由にならない。 (5)その他の理由について 本件請求項4に係る発明における「微粒子を除去すべく熱処理を行う熱処理工程」は、本件出願当初の明細書には記載されていない。しかも、自明こととも認められないので、「微粒子を除去すべく熱処理を行う熱処理工程」を追加した補正は要旨変更である。従って、旧特許法第40条に規定により、出願日は、上記補正をした平成8年10月28日となるが、その日以前に引用例は見つけられない。本件特許にかかる公開公報にも、当然に「微粒子を除去すべく熱処理を行う熱処理工程」は記載されていないし、その点を容易に発明できたとすることもできない。 (6)まとめ 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし4に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-10-14 |
出願番号 | 特願平1-151380 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01L)
P 1 651・ 581- Y (H01L) P 1 651・ 113- Y (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大日方 和幸 |
特許庁審判長 |
張谷 雅人 |
特許庁審判官 |
岡 和久 橋本 武 |
登録日 | 1998-09-25 |
登録番号 | 特許第2829415号(P2829415) |
権利者 | 株式会社小松製作所 |
発明の名称 | 熱電半導体材料およびその製造方法 |
代理人 | 木村 高久 |
代理人 | 小幡 義之 |