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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10K
管理番号 1005570
審判番号 審判1996-15285  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-09-09 
確定日 1999-11-25 
事件の表示 平成4年特許願第340252号「LDPカラオケ装置」拒絶査定に対する審判事件(平成6年3月25日出願公開、特開平6-83376)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I【手続きの経緯、本願発明の要旨】
本願は、平成4年12月21日(パリ条約による優先権主張1992年2月28日、韓国)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成8年4月5日付け、および平成8年10月9日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】LDで再生された再生信号から音声が始まるべき時間に応じて出力される音声同期パルスを生成する音声同期パルス生成手段と、
外部から入力されるユーザの音声信号から音声の開始時間に出力される音声パルスを生成し、前記音声同期パルス生成手段で分離された前記音声同期パルスと該音声パルスとを比較し、前記音声同期パルスと該音声パルスとの時間差を検出する時間差検出手段と、
LDで再生されたオーディオ信号の出力速度を、上記時間差検出手段で検出されたパルスの時間差により制御し、モニターのアンプに出力する再生速度制御手段とから構成されたLDPカラオケ装置。」
II【引用例】
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特公平4-7520号公報(以下、「引用例」という。)には、「自動演奏装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次のとおりの記載がある。
▲1▼「また、歌唱のための伴奏手段として、いわゆるカラオケ再生装置が知られているが、これでは予めテンポを設定すると歌の途中でテンポを変更するのが困難であり、歌より伴奏が先行したり、遅れたりすることが多かった。
この発明の目的は、オーディオ入力に応答してテンポ追従制御をなしうる新規な自動演奏装置を提供することにある。」(公報第1頁右欄第23行〜第2頁左欄第3行)
▲2▼「次に、第6図を参照してこの発明の他の実施例を説明する。この実施例は、いわゆるカラオケ再生装置にこの発明を適用したものである。
供袷リール120に巻かれた2トラック磁気テープ122は矢印Pの方向に走行して巻取リール124に巻取られるようになっており、磁気テープ122の第1のトラックには所定の楽曲に関するオーケストラ等の演奏内容に対応したアナログ信号が記録され、第2のトラックには上記楽曲の流れにしたがって歌詞、階名又は音高を表わすデイジタルデータが記録されている。
第1の読取ヘッド126aは磁気テープ122の第1のトラックに対応して配置されるもので、第1のトラックからアナログ信号を読取ってアンプ128に供給するようになっている。アンプ128で増幅されたアナログ信号はスピーカ130に供給され、音響に変換される。
第2の読取ヘッド126bは磁気テープ122の第2のトラックに対応して配置されるもので、発音すべき個々の可聴音についてアナログ信号よりもディジタルデータの読取りを先行させるための第1の読取ヘッド126aより供絡リール120の近くに配置されている。第2の読取ヘッド126bは第2のトラックからディジタルデータを読取ってデータ検出記憶回路134に供給するようになっている。
データ検出記憶回路132は第2の読取ヘッド126bから歌詞、階名又は音高を示すデータが供給されるたびにそれを検出してデータ検出信号DSを発生すると共にそのデータを一時記憶して比較回路134に供給するようになっている。
マイクロホン等からなる音響-電気変換器136は歌詞又は階名による歌声あるいはピアノ、バイオリン等の楽器音をオーディオ信号に変換するためのもので、このオーディオ信号はアンプ128を介してスビーカ130に供給され、音響に変換される。また、音響-電気変換器136からのオーディオ信号は信号変換回路138に供給され、可聴音入力が歌詞による歌声であれば歌われた言葉に対応するディジタル言語データに変換され、可聴音入力が階名による歌声又は楽器音であればその音高を示すディジタル音高データに変換される。そして、信号変換回路138からのディジタルデータは比故回路134に供給され、データ検出記憶回路132からのディジタルデータと比較される。
比較回路134は2つの比較入力データを比較して一致していると、一致信号EQを発生する。この一致信号EQは適正な可聴音が発生されたタイミングを示すもので、ずれ分検出回路140に供給される。
遅延回路142はデータ検出信号DSを第2の読取ヘッド126bから第1の諸取ヘッド126aまでのテープ走行時間に対応する時間だけ遅延させることにより歌声、楽器音等の可聴音を発音すべきタイミングを示すタイミング信号TSを発生するもので、このタイミング信号TSはずれ分検出回路140に供拾される。
ずれ分検出回路140は適当なクロック信号を計数して一致信号EQとタイミング信号TSとの間の時間ずれに対応したずれ分データを発生するもので、このずれ分データはテープ速度制御データ発生回路144に供拾される。
テープ速度制御データ発生回路144はスタートスイッチのオン時に基準となるテープ速度を示すテープ速度制御データを発生し、この後ずれ分検出回路140からずれ分データが供治されると、そのずれ分データに応じてテープ速度制御データを発生するようになっている。この場合、ずれ分データに応じたテープ速度制御データの発生は、早い発音テンポのずれ分についてはそのずれ分に応じてテープ速度を速くし、遅い発音テンポのずれ分についてはそのずれ分に応じてテープ速度を遅くするように行なわれる。
・・・(中略)・・・
テープ速度制御データ発生回路144からのテープ速度制御データはテープ速度制御回路146を介してテープ駆動装置148に供給されるので、磁気テープ122の走行速度は回路144からのテープ速度制御データに応じて制御され、この結果としてスピーカ130から発生される自動演奏音のテンポは歌唱テンポ又は楽器演奏テンポに追従するようになる。」(公報第7頁右欄第20行〜第8頁右欄第21行)
▲3▼「歌い手又は楽器演奏者はスピーカ130からの自動演奏音(特に前奏音)に合わせて歌唱又は楽器演奏を始めるが、これより少し前に第2の読取ヘッド126bが最初に発音すべき可聴音に対応したディジタルデータを読取り、これに応じてデータ検出記憶回路132が最初のデータ検出信号DSを発生する。
このデータ検出信号DSは遅延回路142を介してタイミング信号TSとして送出される。このタイミング信号TSの発生時は歌い手又は楽器演奏者が最初の可聴音を発生すべき時点に対応するが、実際の発音タイミングはタイミング信号TSの発生時点より前又は後にずれることが多い。
最初の可聴音が発生されると、これに対応したオーディオ信号がスピーカ130に供給され、音響に変換される。また、このときのオーディオ信号は信号変換回路138によって言葉又は音高を表わすディジタルデータに変換されて比較回路134に供給され、データ検出記憶回路132からの最初のディジタルデータと比較される。
比較回路134は両データが言葉又は音高において一致していると、最初の一致信号EQを発生する。この一致信号EQの発生タイミングがタイミング信号TSの発生タイミングより早いか遅いかに応じてずれ分検出回路140はそれぞれ早い発音テンポを示すずれ分データ又は遅い発音テンポを示すずれ分データをテープ速度制御データ発生回路144に供給する。
このため、テープ速度制御データ発生回路144は早い発音テンポのずれ分データを受信したならばそのずれ分に応じてテープ速度を速くするようなテープ速度制御データを送出し、遅い発音テンポのずれ分データを受信したならばそのずれ分に応じてテープ速度を遅くするようなテープ速度制御データを送出する。従って、磁気テープ122の走行速度は最初の可聴音の発音テンポが早ければ早くなり、遅ければ遅くなり、この結果としてアナログ信号再生による自動演奏のテンポは最初の可聴音の発音テンポに追従して制御されるようになる。
最初の可聴音について上述したようなテンポ追従制御動作は2番目以降の各可聴音についても同様に行なわれる。」(公報第8頁右欄第32行〜第9頁左欄第30行)
III【対比】
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことが認められる。
1)本願発明は、明細書の記載によれば、カラオケ機能を有するLDP(レーザディスクプレーヤ)に関するもので、特にLD(レーザディスク)で再生される音楽の拍子とマイクを通して入力されるユーザーの歌の拍子を比べて拍子が合わない場合には、LDで再生される音楽の拍子をユーザーの歌の拍子に合わすようにしたLDPカラオケ装置に関するものであり(発明の詳細な説明中の【産業上の利用分野】の項参照)、ユーザーの歌う歌とは何ら係わりなしに、LDPの音楽信号が常に一定拍子で出力されると、不協和音が生じて聞く者に不快感を与えることになる等の問題点に鑑み(発明の詳細な説明中の【発明が解決しようとする課題】の項参照)、特許請求の範囲の請求項1記載の構成を採用したものである。
然るに、引用例には、カラオケ再生装置において、予めテンポを設定すると歌の途中でテンポを変更するのが困難であり、歌より伴奏が先行したり、遅れたりすることが多かったことなどに鑑み、オーディオ入力に応答してテンポ追従制御をなしうる自動演奏装置が記載されており(引用例の上記▲1▼の記載参照)、そこには記録媒体が、LD(レーザディスク)か否かはともかくとして、本願発明と同様、記録媒体から再生される音楽の拍子とマイクを通して入力されるユーザーの歌の拍子を比べて拍子が合わない場合には、記録媒体で再生される音楽の拍子をユーザーの歌の拍子に合わすようにしたカラオケ装置の概要が開示されているといえる。
2)本願発明は、「LDで再生された再生信号から音声が始まるべき時間に応じて出力される音声同期パルスを生成する音声同期パルス生成手段」を有するものであり、その音声同期パルスは、音声が始まるべき時間、すなわち音声が始まるべきタイミングに応じて出力される音声同期タイミング信号といえるところ、引用例には、磁気テープから最初に発音すべき可聴音に対応したディジタルデータを読取り、これに応じてデータ検出記憶回路が最初のデータ検出信号DSを発生し、この信号DSが遅延回路を介してタイミング信号TSとして、すなわち歌い手が最初に可聴音を発生すべき時点に対応したタイミング信号として送出されることが記載されており(引用例の上記▲3▼の記載参照)、それらの記載によると、引用例に記載のものも“記録媒体で再生された再生信号から音声が始まるべき時間に応じて出力される音声同期タイミング信号を生成する音声同期タイミング信号生成手段”を有するといえ、その点では本願発明と共通している。
3)引用例には、マイクロホン等からのオーディオ信号を、信号変換回路でデイジタル言語データに変換し、そのデイジタル言語データとデータ検出記憶回路からの最初のデイジタルデータとを比較し、それらの一致により、最初に可聴音が発生されたタイミングを示す一致信号EQを発生し、この信号EQと上記タイミング信号TSとのずれ分を検出することが記載されており(引用例の上記▲2▼,▲3▼の記載参照)、それらの記載によれば、引用例に記載のものも、“外部から入力されるユーザの音声信号に基づいて音声の開始時間に出力される音声タイミング信号を生成し、前記音声同期タイミング信号生成手段で分離された前記音声同期タイミング信号と該音声タイミング信号とを比較し、前記音声同期タイミング信号と該音声タイミング信号との時間差を検出する時間差検出手段”を有するといえ、その点では本願発明と共通している。
4)引用例には、上記ずれ分を検出したずれ分データに応じてテープ速度制御データを発生し、そのずれ分に応じてテープ速度を速くしたり遅くしたりするテープ速度制御データを送出し、遅い発音テンポのずれ分データを受信したならばそのずれ分に応じてテープ速度を遅くするようなテープ速度制御データを送出すること、そしてそれによって磁気テープの走行速度は最初の可聴音の発音テンポが早ければ早くなり、遅ければ遅くなり、この結果としてアナログ信号再生による自動演奏のテンポは最初の可聴音の発音テンポに追従して制御されるようになることが記載されており(引用例の上記▲2▼,▲3▼の記載参照)、それらの記載によれば引用例に記載のものも“再生されたオーデイオ信号の出力速度を制御する”(例えば、バッファ等を用いて再生後に制御する)ものか否かはともかくとして、“記録媒体からの再生オーディオ信号の出力速度を、上記時間差検出手段で検出された信号の時間差により制御し、アンプに出力する再生速度制御手段”を有するといえ、その点では本願発明と共通している。
5)以上の1)〜4)の点を踏まえると、本願発明は、次の点で引用例記載のものと一応相違するだけで、他に格別の違いはないものと認められる。
1.本願発明は、記録媒体として「LD」を用い、「LD」で再生されたオーディオ信号を「モニター」のアンプに出力する「LDPカラオケ装置」を対象としているのに対して、引用例に記載ものは、磁気テープを用いたカラオケ装置であり、モニターについては示されていない点(相違点1)。
2.音声同期タイミング信号および音声タイミング信号は、本願発明では、それぞれ「音声同期パルス」および「音声パルス」であり、しかもその音声パルスは、ユーザの「音声信号から」生成されるものであるのに対して、引用例に記載のものは、それぞれタイミング信号TSおよび一致信号EQであり、その一致信号は、オーディオ信号からのディジタル言語データとデータ検出記憶回路からのディジタルデータとを比較して発生しているものである点(相違点2)。
3.再生速度制御手段が、本願発明では、「再生されたオーディオ信号の出力速度」を制御するものであるのに対して、引用例に記載のものは、磁気テープの走行速度を制御するものである点(相違点3)。
IV【判断】
そこで、上記各相違点について検討する。
相違点1について
記録媒体としてLDを用いたモニターを有するLDPカラオケ装置は普通に知られており(例えば、特開平3-241581号公報および特開平3-253886号公報参照)、引用例記載のカラオケ装置の記録媒体としてLDを用い、モニターを有するLDPカラオケ装置を構成することは当業者が適宜になし得ることである。
相違点2について
引用例に記載のカラオケ装置において、タイミング信号TS(音声同期タイミング信号)および一致信号(音声タイミング信号)を、パルス状に形成すること、すなわち本願発明のように「音声同期パルス」および「音声パルス」とする程度のことは当業者が設計上適宜になし得ることであり、そしてその音声パルスをユーザの歌う「音声信号から」(例えば、音声信号のみから)生成するようになすことも、音声信号の開始時点を音声信号から検知するという常識的なことにすぎず、当業者が適宜になし得ることといえる。
相違点3について
記録媒体からの再生速度をバッファ等を用いて制御することは周知・慣用手段であり、引用例記載のカラオケ装置において、磁気テープの走行速度を制御する代わりに、上記周知・慣用手段のように記録媒体で「再生されたオーディオ信号の出力速度」を制御するようになす程度のことは当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の効果についてみても格別顕著なものとはいえない。
V【むすび】
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-06-21 
結審通知日 1999-07-02 
審決日 1999-07-16 
出願番号 特願平4-340252
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南 義明張谷 雅人井上 正  
特許庁審判長 村井 誠次
特許庁審判官 橋本 恵一
井上 正
発明の名称 LDPカラオケ装置  
代理人 伊東 忠彦  

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