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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1005605 |
審判番号 | 審判1998-10199 |
総通号数 | 6 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1989-12-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-07-08 |
確定日 | 1999-11-26 |
事件の表示 | 昭和63年特許願第137012号「ファクシミリ装置」拒絶査定に対する審判事件(平成1年12月11日出願公開、特開平1-305763)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
[手続の経緯、本願発明] 本願は、昭和63年6月3日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願第1発明」という。)は、平成9年6月2日付け、平成10年8月4日付け及び平成11年8月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により特定されるとおりのものである。 「複数種類のメッセージを格納するメッセージ格納手段と、このメッセージ格納手段に格納されるメッセージを印刷する印刷手段と、受信したMFトーンを検出するMFトーン検出手段と、このMFトーン検出手段によりMFトーンを検出し、前記メッセージ格納手段から対応するメッセージを読み出すとともに、複数のメッセージを編集して合成メッセージとして印刷する制御手段とを備えるファクシミリ装置。」 [引用例] これに対して、当審における平成11年6月1日付けの拒絶の理由で引用した特開昭62-82753号公報(昭和62年4月16日出願公開。以下「引用例」という。)には、 (a)目的が、「印字手段を有する通信機であれば、留守中に伝言することができる通信装置を提供すること」(2頁左上欄2行乃至同4行)であり、 (b)構成が、「制御手段30は、制御部31と、相手装置からの自動受信信号を検出する自動受信検出回路32と、相手装置からの特定信号を検出する特定信号検出回路33とを有する。固定情報記憶部20は、*キーと1つのテンキーとに対応して、所定情報を記憶するメモリ21,22,・・・を有するものである。たとえば、*キーとテンキー「1」とに対応して、「健一、帰宅時間」の文字情報が記憶され、*キーとテンキー「2」とに対応して、「パパ泊まり連絡先」という文字情報が記憶されている。相手側キーボード40は、相手装置として使用されるプッシュ型電話機のキーボードである。このキーボード40は、「1」〜「0」のテンキーと、*キー41と、#キー42とを有する。」(2頁左上欄19行乃至同右上欄13行)というものであり、 (c)相手側オペレータが行う動作が、「電話機から電話をかける(S41)。この場合、キーボード40を使用して電話をかける。(中略)S43においてメモが必要な場合には、*キー41を押す(S47)。こちら側の通信装置からのアンサー音が確認できれば(S48)、必要な固定情報を選択する(S49)。この場合、たとえばキーボード40におけるテンキーのうち「2」を選択したとする。そして再び上記アンサー音が確認できれば(S4A)、連絡先の電話番号を、キーボード40のテンキーを使用して入力する(S4B)。そして、終了音を確認したならば(S4C)、上記一連の動作を終了する。」(2頁左下欄4行乃至同右下欄7行)というものであり、 (d)自局における通信装置の動作が、「相手側から自動受信信号がきたときに、自局においては、制御手段30における自動受信検出回路32がその自動受信信号を検出することによって、自局の装置が立ち上がる(S51)。(中略)特定信号検出回路33によって*キー41に基づく選択信号が検出された場合には、アンサー音の出力を行なう(S5A)。そして、固定情報記憶部20に記憶されている複数の固定情報の中から、選択された情報がどれであるかを判別する(S5B)。上記の例においては、固定情報記憶部の中で「2」が選択されているので例えば「パパ泊まり連絡先」の情報が印字部10に送られる。そして、次に相手装置において、連絡先電話番号が入力され(S5C)、その番号が、「03-123-4567」であったとする。そして、終了音を相手装置に出力し(S5D)、メモを印字部10によってプリントする(S5E)。このプリント例を、第3図に示してある。」(2頁右下欄10行乃至3頁右上欄4行)というものである、 印字手段を有する通信装置(1頁右下欄4行乃至同5行)が図面と共に記載されている。 [対比] 本願第1発明と引用例に記載された発明とを対比すると、 ▲1▼引用例に記載された発明の「固定情報記憶部20」は、メモリ21,22,・・・を有し、たとえば、「健一、帰宅時間」、「パパ泊まり連絡先」などという、留守中に伝言するための文字情報、すなわち複数種類のメッセージを記憶するものである(上記(a)及び(b)参照)から、本願第1発明の「メッセージ格納手段」に相当する、 ▲2▼引用例に記載された発明の「印字部10」は、固定情報記憶部20に記憶される文字情報を印字するものである(上記(d)参照)から、本願第1発明の「印刷手段」に相当する、 ▲3▼引用例に記載された発明の「特定信号検出回路33」は、相手装置からの特定信号を検出するものであり、相手装置として使用されるプッシュ型電話機のキーボード40からは特定信号としてMFトーンが送出されると認められる(上記(b)及び(d)参照)から、本願第1発明の「MFトーン検出手段」に相当する、 ▲4▼引用例に記載された発明の「制御部31」は、特定信号検出回路33により特定信号が検出されたとき、固定情報記憶部20からその特定情報に対応する文字情報を読み出し、印字させるように制御することは明らかである(上記(d)参照)から、本願第1発明と引用例に記載された発明とは、「MFトーン検出手段(特定信号検出回路33)によりMFトーン(特定信号)を検出し、メッセージ格納手段(固定情報記憶部20)から対応するメッセージ(文字情報)を読み出すとともに、印刷する制御手段を備える」という点で差異がない。なお、本願第1発明の制御手段は、「複数のメッセージを編集して合成メッセージとして印刷する」ものであるから、本願第1発明は、MFトーン検出に基づいてメッセージ格納手段から読み出されるメッセージが複数あることを前提としていると認められる。 以上の▲1▼乃至▲4▼を踏生えると、両者は、 「複数種類のメッセージを格納するメッセージ格納手段と、このメッセージ格納手段に格納されるメッセージを印刷する印刷手段と、受信したMFトーンを検出するMFトーン検出手段と、このMFトーン検出手段によりMFトーンを検出し、前記メッセージ格納手段から対応するメッセージを読み出すとともに、印刷する制御手段とを備える通信装置。」 である点で一致し、次の(1)及び(2)の点で相違する。 (1)通信装置が、本願第1発明は、ファクシミリ装置であるのに対し、引用例に記載された発明は、印字手段を有する通信装置である点。 (2)本願第1発明は、MFトーン検出に基づいてメッセージ格納手段から読み出されるメッセージが複数あることを前提とし、制御手段が、それら複数のメッセージを編集して合成メッセージとして印刷するのに対し、引用例に記載された発明は、MFトーン検出に基づいてメッセージ格納手段から読み出されるメッセージが1つであり、制御手段が、その1つのメッセージを印刷するものであって、複数のメッセージを編集して合成メッセージとして印刷することを行わない点。 [当審の判断] まず、相違点(1)について検討すると、印字手段を有する通信装置として、ファクシミリ装置は、慣用されているものであり、引用例に「相手側がファクシミリ装置であるならば(S52)、通常のファクシミリ動作を実行する(S53)」(2頁右下欄14行乃至同16行)と記載されていることからも、引用例に記載された発明がファクシミリ装置をも予定していることは明らかであるから、引用例に記載された発明の、印字手段を有する通信装置をファクシミリ装置とすることに何ら困難性はない。 次に、相違点(2)について検討すると、1つのコードに1つのメッセージを対応させて記憶させておき、複数のコードを入力することによりそれらコードに対応するメッセージを読み出し、組み合わせて合成メッセージとして出力させるようにすることは、例えば、特開昭62-59456号公報、特開昭62-122454号公報、あるいは特開昭62-154940号公報に記載されているように周知である。そして、本願明細書には編集される複数のメッセージ、編集に際して外出先等のプッシュホン電話機から送られるMFトーン及び編集のための構成について何ら具体的記載はなく、本願明細書の記載からは、本願第1発明の「メッセージ」は、メッセージとして格納されているものを意味し、「編集」は、複数のメッセージを組み合わせる程度のことを意味すると認められ、また、複数のメッセージの編集に際して送られ、検出されるMFトーンにも特徴的限定はないから、相違点(2)における本願第1発明の構成は、上記周知の技術の域を超えるものではなく、当業者が適宜採用し得るものである。 さらに、本願第1発明によってもたらされる効果も、引用例に記載された発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 [むすび] したがって、本願第1発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 以上のとおりであるから、本願は、特許請求の範囲の他の請求項に係る発明について審理するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-09-13 |
結審通知日 | 1999-09-28 |
審決日 | 1999-09-30 |
出願番号 | 特願昭63-137012 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畑中 高行 |
特許庁審判長 |
田邉 壽二 |
特許庁審判官 |
江頭 信彦 宮島 郁美 |
発明の名称 | ファクシミリ装置 |
代理人 | 鷲田 公一 |