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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1005612
審判番号 審判1998-13060  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-08-27 
確定日 1999-11-26 
事件の表示 平成1年特許願第138868号「共起データ作成方法および装置」拒絶査定に対する審判事件(平成3年1月10日出願公開、特開平3-4358)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成元年5月31日に出願されたものであって、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成10年9月25日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりの
「かな漢字変換時に複数の同音異義語の中から1つの語を選択させる手段と、
この手段で選択された被選択語とかな漢字変換された文中の他の語とが予め設定された文法的関係にあるか否かを判定する判定手段と、
この判定手段で文法的関係にあると判定された前記他の語が存在する場合、前記被選択語を示す情報と該他の語を示す情報とを組にして記憶するための記憶手段とを有することを特徴とする共起データ作成装置。」
にあるものと認める。
また、本願発明の効果については、明細書に次の記載がある。
「本発明によれば、かな漢字変換の過程で共起関係を持つ語を学習して共起データを記憶することによって、共起表を蓄積することにより、予め多数の共起データを共起表として大容量のメモリに用意しておくことなく、同音異義語の選択を容易にすることができる。
また、本発明により蓄積される共起表は、実際にかな漢字変換システムを使用するユーザの語彙使用傾向を学習した結果を強く反映したものとなるため、記憶される共起データの数が少なくとも効果は大きい。
しかも、本発明のかな漢字変換システムは、同音異義語について選択を行うにつれて共起データが蓄積されてゆき、使い込むほど性能が向上すると言う特徴がある。」(明細書第15頁第15行〜第16頁第9行)
2.引用例
原査定における拒絶の理由に引用された特開昭64-41971号公報(平成元年2月14日発行。以下「引用例」という。)には、以下の記載がある。
「最近、機械翻訳システムが実用化されつつあるが、翻訳精度の面では種々の問題点がある。
それらの問題点の一つには、入力言語の単語に対して適切な訳語を割り当てることが難しいという点が挙げられる。
この問題点の対策としては、例えば特願昭61-280033号に記載されているように、”語と語の共起”に関する制約を利用して訳語選択を行う方法が提案されている。
また、このような共起関係の利用は、カナ漢字変換において同音異義語の中から適切な語を選択する際に有効であり、ワープロの高機能化にも必要である。」(引用例第1頁右下欄第13行〜第2頁左上欄第5行)
「共起関係辞書記憶装置5は共起関係辞書を格納し、共起関係辞書は、第4図のように、英語の2単語の組から構成されるレコードを備える。」(引用例第3頁左下欄第2行〜第4行)
「本実施例における訳語選択ステップ(13)は、第6図のように、日本文解釈結果の2項関係の中から1個の2項関係(A、B)を取り出す(131)。
次に、語彙辞書の内容を参照することにより、A、およびBの候補訳語の数iO、jOを調べる(132)。
次に、Aの候補訳語aiとBの候補bjとを取り出し(133)、aiとbjとの組が共起関係辞書に含まれるか否かを調べる(134)。
この動作をi=1,…,i0 ;j=1,…j0 に対して繰り返し、共起関係辞書に含まれる候補の組が見つかれば、それを訳語に決定する(135)。
また、共起関係辞書に含まれる候補訳語の組が見つからなければ、A,Bの訳語として、それぞれの第1候補訳語、つまり、語彙辞書中、1番目に書かれた訳語を選択する(136)」(引用例第4頁左上欄第3行〜第19行)
「例えば、第3図のような語彙辞書と、第4図のような共起関係辞書を用いた場合、入力日本文「ファイルを割り当てる」の翻訳結果「allot a file」が得られるが、これに対して、′allot′を′allocate′に置換する修正が施される。
この場合の共起関係辞書更新については、′allot′と′file′の組は共起関係辞書に含まれていないため、削除すべきデータはない。また、′allocate′は′割り当てる’の第1候補訳語ではないため、′allocate′と′file′の組が共起関係辞書に新たに登録される。」(引用例第4頁右下欄第5行〜第15行)
「本実施例では、共起関係辞書に登録する語の組の格関係、つまり、意味的な役割について、特に制限しなかったが、一般には、対象格等、一部の格が訳語選択に深く関与しているため、登録する組の格関係を制限することも有効である。格関係の制限により、誤りの原因ともなる無駄なデータの登録が防止され、共起関係辞書の小容量化、および訳語選択の精度向上につながるからである。このように格関係を制限する場合、全ての述語に共通の制限を行う方法の他に、述語ごとに共起関係を持つ格を規定する方法も考えられる。」(引用例第5頁左上欄第7行〜第17行)
なお、上記「格関係を制限する」という記載から、予め設定された格関係にあるか否かを判定する判定手段が存在することは、自明の事項であると認められる。
「本発明によれば、予め、共起関係辞書を作成することなく、言語変換システムの変換結果を修正する過程を通じて、自動的に共起関係データを蓄積することができるため、容易に言語変換システムの精度を向上することが可能である。また、ユーザ側にとっても、使用時間が増すにつれて精度が向上し、変換結果に対する修正頻度が減少するため、システムに対する信頼度が向上する。」(引用例第5頁右上欄第12行〜第20行)
以上の記載から、引用例には、「機械翻訳時に訳語を置換させる手段と、この手段で置換された訳語と2項関係にある他の訳語とが予め設定された格関係にあるか否かを判定する判定手段と、この判定手段で格関係にあると判断された前記他の訳語が存在する場合、前記選択された訳語と該他の訳語とを組にして記憶するための共起関係辞書記憶装置を有することを特徴とする共起関係辞書学習方式」が開示されている。
3.対比
そこで、本願発明(以下「前者」と言う。)と引用例記載の発明(以下「後者」と言う。)とを対比する。
後者の「機械翻訳時に訳語を置換させる手段」は、変換時に被選択語を選択させる手段である点で、前者の「かな漢字変換時に複数の同音異義語の中から1つの語を選択させる手段」に相当する。また、後者における「置換された訳語」は、前者における「被選択語」に相当する。さらに、後者における「2項関係にある他の訳語」は、変換された文中の他の語である点で、前者における「かな漢字変換された文中の他の語」に相当する。また、後者における「共起関係辞書学習方式」は、前者における「共起データ作成装置」に相当する。
そして、後者における「予め設定された格関係にあるか否かを判定する判定手段」、「共起関係辞書記憶装置」は、それぞれ前者における「予め設定された文法的関係にあるか否かを判定する判定手段」「記憶手段」に包摂されるものと認められる。
以上の点を考慮すると、本願発明と引用例記載の発明は「変換時に被選択語を選択させる手段と、この手段で選択された被選択語と変換された文中の他の語とが予め設定された文法的関係にあるか否かを判定する判定手段と、この判定手段で文法関係にあると判定された前記他の語が存在する場合、前記被選択語を示す情報と該他の語を示す情報とを組にして記憶するための記憶手段とを有する共起データ作成装置」である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。
(1)本願発明は、かな漢字変換に関する共起データを作成するものであるのに対して、引用例記載の発明は、機械翻訳の訳語に関する共起データを作成するものである点。
(2)本願発明では、変換時に複数の同音異義語の中から1つの語を選択させるのに対して、引用例記載の発明は、訳語を置換させている点。
4.当審の判断
(イ)相違点(1)について
「共起関係の利用は、カナ漢字変換において同音異義語の中から適切な語を選択する際に有効であり、ワープロの高機能化にも必要である」ことは既に指摘したように引用例にも記載されているとおりであり、共起関係の技術をかな漢字変換に利用できることは明らかであるから、共起関係辞書の作成に関する引用例開示の発明をかな漢字変換に適用し、本願発明のように構成することは、当業者であれば容易になし得たことである。
(ロ)相違点(2)について
機械翻訳において、訳語を置換させるに当たって、複数の訳語群の中から適切な訳語を選択することは、必然的技術事項であり、かつ、かな漢字変換において、複数の同音異義語の中から1つの語を選択させることは、例を示すまでもなく本願出願当時、当業者に周知の技術である。
したがって、引用例記載の発明をワードプロセッサに適用して、その際、かな漢字変換において、複数の同音異義語の中から1つの語を選択させて、本願発明のように構成することは当業者が容易になし得たことである。
(ニ)効果に関して
前記本願発明の効果についても、予め共起関係辞書を作成する必要がなく、使用時間が増すにつれて精度が向上するという引用例記載の発明の効果と同程度のものであって、格別のものとは認めることができない。
5.結び
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に開示された発明および上記周知の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 1999-09-08 
結審通知日 1999-09-24 
審決日 1999-09-28 
出願番号 特願平1-138868
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一石井 茂和久保 正典  
特許庁審判長 森田 信一
特許庁審判官 鶴谷 裕二
岡 千代子
発明の名称 共起データ作成方法および装置  
代理人 外川 英明  

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