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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01C
管理番号 1005727
審判番号 審判1999-1179  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-03-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-21 
確定日 1999-12-13 
事件の表示 昭和63年 特許願 第227740号「歪ゲージ用薄膜抵抗体」拒絶査定に対する審判事件〔(平成7年7月31日出願公告、特公平7-70367)、特許請求の範囲に記載された請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許をすべきものとする。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明の要旨
本願は、昭和63年9月12日の出願であって、その発明の要旨は、出願公告後の平成11年10月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める。
「クロムと該クロムの伝導電子の流れを妨げる散乱体として作用する酸素あるいは該酸素と半導体とで物理的蒸着法または化学的蒸着法によって形成された、該クロム70〜98原子%、酸素2〜30原子%、半導体0〜10原子%が均一に分布した薄膜であって、膜厚が0.01〜10μmであり、かつゲージ率が5以上であることを特徴とする歪ゲージ用薄膜抵抗体。」
2.原査定の理由
一方、原査定の拒絶の理由となった特許異議の決定の理由の概要は、本願発明は、甲第1号証(JOURNAL OF PHYSICS E Scientific Instruments.1984年9月号第755〜759頁、以下、引用例という)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項に規定する発明に該当し、特許を受けることができない、というにある。
3.引用例の記載
引用例には、以下の点の記載がある。
・このレポートはCr-Si0サーメット薄膜のゲージ率と抵抗温度係数に対する組成と膜抵抗との効果について述べていること、膜は滑らかな顕微スライドガラスの上にフラッシュ蒸着かRFスパッタリングで成膜されていること、測定されたゲージ率と抵抗温度係数は、クロム濃度を下げると増加することがわかったこと、さらにゲージ率と抵抗温度係数の間にある一定の関係を見つけだしたこと、オージェ電子分光分析法で深さ別の組成を分析したこと、薄膜の構成物質は、クロムとシリコン単体と酸化シリコンでこの酸化シリコンは成膜中に作られた酸化物ではないこと、(第755頁左欄第8〜23行)
・サーメット膜は、電子の伝導構造が連続した金属膜とは異なるので、それらのもつゲージ率よりも非常に大きなゲージ率をもつ可能性があること、サーメット膜の電子の伝導の仕方は半導体や不連続金属膜の伝導の仕方に似ており、トンネル効果が関係してくること、これがひずみ感度を大きくしている原因であること、(同頁左欄第34〜41行)
・クロムとシリコン酸化物の原子百分率で、73.4/26.6,63.9/36.1,54.6/45.4の異なる3種類のCr-Si0サーメットで実験を行なったこと、(同頁左欄第46〜50行)
・実験の結果は、図1ないし図6と表1ないし表6にまとめられていること、これらの図において、図1及び図2はCr-Si0 73.4/26.6組成のシート抵抗に対するゲージ率及びシート抵抗に対する抵抗温度係数のグラフであり、図3及び図4はCr-Si063.9/36.1組成のシート抵抗に対するゲージ率及びシート抵抗に対する抵抗温度係数のグラフであり、図5及び図6はCr-Si0 54.6/45.4組成のシート抵抗に対するゲージ率及びシート抵抗に対する抵抗温度係数のグラフであること、また前記表では、オージェ電子分光分析法による深さ0nm、8nm、16nmにおける組成の分析結果が示されており、表1ないし表3はフラッシュ蒸着されたCr-Si0 73.4/26.6組成、Cr-Si0 63.9/36.1組成、Cr-Si0 54.6/45.4組成の分析結果が、表4ないし表6は、RFスパッタリングされたCr-Si0 73.4/26.6組成、Cr-Si0 63.9/36.1組成、Cr-Si0 54.6/45.4組成の分析結果が、それぞれ2つの膜について示されていること、(第756〜758頁)
4.対比・判断
本願発明と引用例に記載された事項とを対比すると、引用例の表1に記載されている膜A及び膜Bの各8nm、16nm深さにおける元素組成が本願発明において規定する「クロム70〜98原子%、酸素2〜30原子%、半導体0〜10原子%」なる組成範囲に含まれているが、その他の表2ないし表6に記載されている膜Cないし膜Lはいずれも、本願発明における前記組成範囲に含まれていない。一方、図1を参照すると、前記膜A及び膜Bに相当するフラッシュ蒸着膜のゲージ率の測定結果が“○”で示してあるが、これらはいずれも2よりも小さい値であり、本願発明において規定している「ゲージ率が5以上」を満たしていない。したがって、引用例に記載されている膜はいずれも、本願発明で規定する「クロム70〜98原子%、酸素2〜30原子%、半導体0〜10原子%」でかつ「ゲージ率が5以上」なる要件を満たしていない。さらに、引用例における薄膜は、引用例に明記しているとおりCr-Si0サーメット薄膜であるが、本願発明における薄膜では、半導体元素であるSiは必ずしも必要な成分ではなく、また本願発明の実施例である試料No.1ないし4を参照しても、Si成分の有無により同程度の特性が得られていること、薄膜の製造プロセスにおいてCr-Si0サーメットを使用していないことを勘案すると、本願発明において、Cr-0-Siの3成分系からなる場合においても、当該薄膜はCr-Si0サーメット薄膜ではないと認められる。
したがって、本願発明が引用例に記載された発明であると認めることはできない。
そして、前記したように、本願発明に係る薄膜と引用例記載の薄膜とは異なるものものであり、かつ引用例には、Cr-Si0サーメットでない薄膜においてどのような特性が得られるかについて示唆する記載を見出すことができないから、本願発明が引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認めることができない。
5.むすび
したがって、本願発明は引用例に記載された発明であるから特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない、とした原審の判断は妥当でない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 1999-11-09 
出願番号 特願昭63-227740
審決分類 P 1 8・ 113- WY (H01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 瀧 廣往高瀬 勤飯高 勉張谷 雅人  
特許庁審判長 下野 和行
特許庁審判官 片岡 栄一
木村 勇夫
発明の名称 歪ゲージ用薄膜抵抗体  
代理人 大川 宏  
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