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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23B
管理番号 1005818
審判番号 審判1997-6092  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-04-18 
確定日 1999-12-06 
事件の表示 平成1年特許願第287193号「食肉の包装方法及び保存方法」拒絶査定に対する審判事件〔(平成5年11月25日出願公告、特公平5-83214)、特許請求の範囲に記載された請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許をすべきものとする。 
理由 I.手続の経緯、本願発明
本願は、平成1年11月2日の出願であって、本願の請求項1及び請求項2に係る発明は、出願公告後の平成11年9月6日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「1.吸収材が透液シートと非透液シートとで挟持されてなる吸液材を、非透液シートが食肉側に面するように配置すると共に、前記吸液材と前記食肉とを非通気性フイルムで真空包装することで、前記食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙に毛細管現象を働かせ、これによって食肉から漏出した肉汁を、食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙を通して吸液材の吸収材にまで運び吸収させるようにしたことを特徴とする食肉の包装方法。
2.吸収材が透液シートと非透液シートとで挟持されてなる吸液材を、非透液シートが食肉側に面するように配置すると共に、前記吸液材と前記食肉とを非通気性フイルムで真空包装することで、前記食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙に毛細管現象を働かせ、これによって食肉から漏出した肉汁を、食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙を通して吸液材の吸収材にまで運び吸収させるようにし、次いでこれを冷蔵することを特徴とする食肉の保存方法。」
(以下、それぞれ本願発明1及び本願発明2という。)
II.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由である特許異議の決定の理由に引用された米国特許第4,382,507号明細書(以下、引用例1という。)には、次の▲1▼〜▲6▼に示す事項が記載されている。
▲1▼「プラスチックの非透液シートを該マットの一方の側に置き、プラスチックの有孔シートを他方の側に置く。食品を該吸収パッドの上方のシート上に置くと、漏出した液がパッドの周りを流れ、底部シートの有孔口を通って毛細管作用により該マッド中に入り、汁が食品と接触せずに保持され、それにより食品の汚染を最小限にし、外観を維持し、貯蔵寿命が向上する。」(要約)
▲2▼「本発明のこれら及び他の目的及び利点は、本明細書に具体的に例示するように、吸液材マット、該マットの上方の無孔の非透液性上部シート、及び該マットの下方の非透液性の底部シートからなる吸収パットを供給することにより達成される。該上部及び底部シートの周縁は該吸液マットを間に封入するようにシールされ、該底部シートは該吸液材へ液を透過させる多数の開口部を有し、そして食品と接触させることなくマットにより汁を保持するものである。」(第2欄1行〜14行)
▲3▼「一つの態様では、該パッドを支持トレイの底壁上に置き、食品をパッドの非透液性上部シートの上に配置できるように、パッドの該底部シートをトレイの底壁に隣接して配置する。」(第2欄21行〜25行)
▲4▼「食品から漏出した汁は、パッドの縁の周り及びトレイの底壁上を経て、毛細管作用により、該開口部を通じて該マット中に上向きに引き込まれる。」(第2欄25行〜29行)
▲5▼「一旦マット中に入ると、汁は毛細管作用により逆流せずに閉じ込められ、無孔の上部シートは、汁中で繁殖し得るバクテリアが食品中に戻るのを妨げるように作用する。」(第2欄29行〜33行)
▲6▼「他の態様では、該パッドを可撓性の透明プラスチック内に置き、パッドの有孔底部シートを該バッグ壁に接して配置し、それにより食品をパッドの非透液性の上部シートに接触させて該バッグ中に保持し、漏出した汁を上記の方法で集め閉じ込めることができる。」(第2欄33行〜39行)
また、同じく引用された「食品包装便覧」(社団法人 日本包装技術協会、1988年3月1日発行、1358〜1370頁)(以下、引用例2という。)には、食肉の包装形態としてさまざまな形態があるが、業務用および消費者用のいずれにおいても真空包装は本分野において主要に行われている包装形態であること、真空包装の一例であるチルドビーフは牛の部分肉をプラスチックのバッグで真空包装し、これをダンボール詰めにし、0℃前後の冷蔵庫に保存するものであること、及び真空包装におけるプラスチックバッグ(フイルム)の果たす機能として、内容物を衛生的に保護し、目減りや乾燥を防ぎ、ドリップの流出などによる周囲の汚染を防止し、バクテリアの増殖を抑えて肉の品質を良好に保ち、開封後の肉の発色を良好にし、肉からのドリップの発生を最低限に抑え、輸送や取扱い持の衝撃などに耐えて品質を保持することが記載されている。(1360頁1行〜28行、29行〜30行、1363頁4行〜12行)
III.当審の判断
本願発明1と上記引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載の「非透液性上部シート」、「有孔底部シート」、「吸液材マット」、及び「吸収パッド」は、本願発明1における「非透液シート」、「透液シート」、「吸収材」、及び「吸液材」に相当することから、両者は、吸収材が透液シートと非透液シートとで挟持されてなる吸液材を、非透液シートが食肉側に面するように配置すると共に、前記吸液材と前記食肉とを非通気性フイルムで包装する点で一致するものと認められる。
しかしながら、引用例1には、本願発明1の構成要件である「非通気性フイルムを用いて前記吸液材と前記食肉とを真空包装することで、前記食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙に毛細管現象を働かせ、これによって食肉から漏出した肉汁を、食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙を通して吸液材の吸収材にまで運び吸収させるようにする」ことについて何も記載されていない。
もっとも、引用例1には、「底部シートの有孔口を通って毛細管作用により該マット中に入り」と記載され、引用例1においても、肉汁を吸液材マットにまで運び込む際に毛細管現象を利用しているものと認められるが、引用例1に記載の発明は、食肉から自然落下により吸収パッドの縁の周り、トレイの底壁上、あるいはプラスチックバッグ底部に達した肉汁を、毛細管作用により開口部を通じて吸液材マット中に上向きに導き入れるようにしたものである。
引用例1には、本願発明1のように、前記吸液材と前記食肉とを非通気性フイルムで真空包装することで、前記食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙に毛細管現象を働かせ、これによって肉汁を吸液材の吸収材にまで運び込むようにすることを教示する記載は何もない。
この点について、さらに検討するに、ブロック状の食肉を非通気性フイルムで真空包装することが引用例2に記載されていることから、食肉の品質を長期間保持することを目的として、食肉を非通気性フイルムで真空包装することは当業者が容易になし得ることである。
しかしながら、本願発明1において、食肉を非通気性フイルムで真空包装することにより生ずる、「前記食肉と非透液シートとの間隙、非通気性フイルムと食肉との間隙、及び非通気性フイルムと透液シートとの間隙に毛細管現象が有効に働かく」という作用は、引用例2に記載されている真空包装の果たすべき各種機能から当業者が容易に想到し得ることではなく、したがって、前記吸液材と前記食肉とを非通気性フイルムで真空包装することで、上記の如く特定の間隙に毛細管現象を働かせ、これによって食肉から漏出した肉汁を、上記特定の間隙を通して吸液材の吸収材にまで運び吸収させるようにすることは、上記引用例2に基づいて当業者が容易になし得ることではない。
そして、本願発明1は、上記構成を採用することにより、明細書に記載のとおりの、引用例1及び引用例2に記載の発明からは期待することのできない効果を奏するものである。
また、本願発明2は、「食肉の保存方法」に関するものであるが、本願発明1の構成要件のすべてを必須のものとするものであるから、本願発明1と同様の理由で、当業者が容易になし得るものではない。
IV.むすび
したがって、本願発明1及び2は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 1999-09-10 
出願番号 特願平1-287193
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 種村 慈樹  
特許庁審判長 徳廣 正道
特許庁審判官 田中 久直
郡山 順
発明の名称 食肉の包装方法及び保存方法  
代理人 廣江 武典  

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