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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E02D
管理番号 1005949
審判番号 審判1997-14713  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-08-29 
確定日 1999-12-22 
事件の表示 平成7年特許願第176850号「簡易土留装置」拒絶査定に対する審判事件(平成9年1月7日出願公開、特開平9-3901)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年6月20日の出願であって、平成9年7月18日付けで拒絶査定された後、特許法第17条の2第1項第3号の規定により平成9年8月29日付けで手続補正がなされ、その後前置審査において平成10年2月13日付け(起案日)で拒絶理由が通知され、これに対する出願人からの応答はなかったものである。
2.本願請求項1の発明
上記特許法第17条の2第1項第3号の規定による平成9年8月29日付けの手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたもので、また明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、適法なものと認められるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願請求項1の発明」という。)は、上記平成9年8月29日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 一対の支柱間に切梁を梯子状に横架させた複数組の枠体と、各支柱の両側に縦方向に形成されたガイド溝に嵌装する土留板とよりなる簡易土留装置において、
支柱のガイド溝の溝底に、前記土留板の側端面に当接して該土留板に水平回動の自由度を付与する突起体を設け、
一対の支柱の対向する側面に切梁を装着可能な縦梁を設けたことを特徴とする、簡易土留装置。」
3.先願明細書記載の発明
これに対して、上記前置審査の拒絶理由に引用された、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平6-239433号(特開平8-74256号公報参照)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、
「【請求項1】両面に向けてパネル受け溝を設け、このパネル受け溝の内面には鉛直に突起を設けた支柱と、端面に平面状の翼板を取り付けたパネルとを使用し、この支柱の2本の間を切梁によって連結してH字型に支柱枠を組み立て、この支柱枠を地盤に立て込み、支柱枠のパネル受け溝の突起に沿ってパネル一端の翼板を挿入し、両側のパネルの間の地盤を掘削しつつパネルの他端の翼板に沿って次の支柱枠のパネル受け溝を挿入して立て込み、さらに地盤を掘削しつつ支柱とパネルとを地盤に沈設して行う、土止め工法」(公報第2頁第1欄第2行〜第15行【請求項1】)、
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、土止め工法に関するものであり、特に掘削平行型と事前組み立て型とを兼用できる土止め工法に関するものである。」(公報第2頁第1欄第29〜32行段落【0001】)、
「【0011】
【本発明の構成】……
【0012】<イ>支柱(図3)
支柱1は断面C字状の鋼材を使用し、このC字状鋼材2本を背中合わせに溶接して構成する。このC字状の鋼材がパネル受け溝11を形成するが、2本のC字状の鋼材が背中合わせに溶接してあるから、前後の両面に向けてパネル受け溝11が設けられていることになる。両パネル受け溝11の側面には、切梁取り付け用に角パイプ12あるいはC字状の鋼材を取り付ける。
【0013】<ロ>溝底突起
このパネル受け溝11の内面には溝底突起12を突設する。この溝底突起12は、例えば断面C字状の受け溝11の底に相当する位置に、……半円型の鋼材、あるいは山型鋼などを、その頂部を溝の開放部側へ向けた状態で溶接して固定する。この溝底突起12は、支柱1を立てた状態で鉛直方向に連続して形成する……
【0014】<ハ>パネル
パネル2は土砂の崩壊を直接阻止する板体であり、その外面は平面状に形成してある。パネル2は、その端面に翼板21を取り付けてある。……本発明の工法に使用するパネル2の翼板21は従来のパネルのように山型鋼材を取り付けておらず、平面状に形成してある。」(公報第3頁第3欄第15〜42行段落【0011】〜【0014】及び図1、3)及び
「【0016】<イ>支柱1枠の組み立て
まず『掘削平行型』を施工する場合について説明する。
(図1)
上記した構成の支柱1を2本、平行に立てる。そしてその支柱1の間を切梁3によって連結する。この切梁3は例えばスクリュージャッキによって構成し、間隔を自由に調整できるものとする。こうして2本の支柱1と、中間の1本または複数本の切梁3によってH字型、梯子型の支柱枠が完成する。
【0017】<ロ>支柱枠、パネルの立て込み
事前に多少の掘削を行っておき、このH字状の支柱枠を地盤に立て込む。ついで延長方向に掘削を行い、パネル2を設置する。この場合に、支柱枠のパネル受け溝11の溝底突起12に沿ってパネル2一端の翼板21を挿入し、徐々に下降させる、するとパネル2は事前に多少掘削した地盤内に沈設され、外部の壁面の崩壊を阻止する。こうして両側のパネル2の間の地盤を掘削しつつ、掘削機を利用して支柱1、パネル2を押し下げて地中に沈下させる。
【0018】<ハ>次の支柱1の立て込み
一定の深さまでパネル2が沈下して位置が確保されたら、パネル2の他端の翼板21に沿って次の支柱枠のパネル受け溝11を挿入して立て込む。こうして両側のパネル2の両端が、支柱枠の支持された安定した土止めが構成される。その後は所定の深さまで、さらに地盤を掘削しつつ支柱1とパネル2とを地盤に沈設する。さらに溝を延長するために、次のスパンを掘削しつつ次のパネル2の沈設を行う。このようにして順次、掘削作業とパネル2、支柱枠の設置作業とを平行して上下水管などに沿った長い距離の掘削、土止めを行う。
【0019】<ニ>曲線の通過
以上は直線状態の溝を掘削してその壁面の崩壊を防止する方法を説明した。直線ではなく、曲線を通過する場合には支柱1のパネル受け溝11の溝底の溝底突起12が有効に作用する。すなわち図3に示すようにパネル2の翼板21は平滑面であるが、溝底に溝底突起12が形成してあるから、間隔には十分な余裕があり、1枚のパネル2と次のパネル2とを同一平面以外の、交差した状態で配置することが可能となる。」(公報第3頁第3欄第45行〜第4欄第33行段落【0016】〜【0019】及び図1、3)と記載されている。
以上の明細書及び図面の記載からみて、先願明細書には、以下の発明が記載されていると認められる。
「一対の支柱間に切梁を梯子状に横架させた複数組の支柱枠と、各支柱の両側に縦方向に形成されたパネル受け溝に挿入するパネルとよりなる土止め装置において、支柱のパネル受け溝の溝底に、前記パネルの側端面に当接して、1枚のパネルと次のパネルとを同一平面以外の、交差した状態で配置することができ、曲線の溝を形成できる突起を設け、一対の支柱の対向する側面に切梁を装着可能な角パイプを設けた土止め装置。」
4.対比
本願請求項1の発明と先願明細書記載の発明とを比較すると、
先願明細書記載の発明の「支柱枠」、「パネル受け溝」、「挿入」、「パネル」、「土止め装置」、「突起」及び「角パイプ」は、夫々本願請求項1の発明の「枠体」、「ガイド溝」、「嵌装」、「土留板」、「簡易土留装置」、「突起体」及び「縦梁」に相当しているから、
本願請求項1の発明と先願明細書記載の発明とは、
「一対の支柱間に切梁を梯子状に横架させた複数組の枠体と、各支柱の両側に縦方向に形成されたガイド溝に嵌装する土留板とよりなる簡易土留装置において、支柱のガイド溝の溝底に、前記土留板の側端面に当接する突起体を設け、一対の支柱の対向する側面に切梁を装着可能な縦梁を設けたことを特徴とする、簡易土留装置。」
である点で一致するが、下記の点で相違している。
(相違点)
突起体は、本願請求項1の発明では、土留板の側端面に当接して該土留板に水平回動の自由度を付与するものであるのに対して、先願明細書記載の発明は、1枚のパネル(土留板)と次のパネル(土留板)とを同一平面以外の、交差した状態で配置することができ、曲線の溝を形成できるものとしている点。
5.当審の判断
上記相違点について検討すると、
本願請求項1の発明も、明細書及び図面には、「また開削溝がカーブする箇所は、図1に示すように支柱10のガイド溝11の溝底に形成した突起体15が支柱10に対する土留板40の水平回動を許容するから、カーブに沿って土留板40を設置することができる。」(段落【0012】及び図1参照)と記載され、先願明細書記載の発明の「1枚のパネル(土留板)と次のパネル(土留板)とを同一平面以外の、交差した状態で配置することができ、曲線の通過に対応できる。」とは、単に表現が相違するのみで、実質上機能、作用に差異がなく、効果も同一のものと認められる。
よって、上記相違点において、本願請求項1の発明と先願明細書記載の発明とは、単に表現を変えたものにすぎず、実質上同一のものにすぎないということができる。
6.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、上記先願明細書に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本願の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また本願の出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められれないので、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-09-28 
結審通知日 1999-10-19 
審決日 1999-10-29 
出願番号 特願平7-176850
審決分類 P 1 8・ 161- WZ (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎鈴木 憲子徳廣 正道前川 慎喜浅香 理  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 藤枝 洋
小野 忠悦
発明の名称 簡易土留装置  
代理人 河西 祐一  
代理人 山口 朔生  

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