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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B05C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B05C
管理番号 1006020
異議申立番号 異議1998-76220  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-03-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-21 
確定日 1999-09-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2772243号「液体塗布ノズルの高さ検知装置およびそれを用いたノズルの高さ制御方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2772243号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2772243号は、平成6年8月18日の出願であって、平成10年4月17日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、特許異議申立人 日立テクノエンジニアリング株式会社は、甲第1号証[特開平5-24179号公報]及び甲第2号証[特開平6-114313号公報]を提出し、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、2に係る発明は、甲第1号証の記載に基いて、又請求項3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証の記載に基いて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反しているから、請求項1〜3に係る特許を取り消すべきであるとする特許異議の申立を行った。
そして、その後、当審において、請求項1及び2に対して取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年6月19日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否について
2-1.訂正請求における訂正の要旨
訂正の要旨は、以下のとおりである。
▲1▼特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1における「そのノズルと一体的に移動する少なくとも一対の高さセンサ」を、「ノズルと一体的に移動する一対の高さセンサ」と訂正する。
▲2▼特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項2における「複数個の高さセンサ」、「少なくとも一の高さセンサ」を、それぞれ、「一対の高さセンサ」、「一の高さセンサ」と訂正する。
▲3▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0012】欄の「なおここにおいて、三個以上の高さセンサを、・・・こともできる。」を削除する。
▲4▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0013】、【0014】及び【0015】を削除し、【0016】以降を繰り上げる。
▲5▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0016】(繰り上げ後の【0013】)の「図5は、」を、「図3は、」と訂正する。
▲6▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0019】(繰り上げ後の【0016】)の「なおこの場合にあって、・・・回避することができる。」を削除する。
▲7▼明瞭でない記載の釈明を目的として、【図面の簡単な説明】の【図3】【図4】を削除し、【図5】を【図3】に、【図6】を【図4】にそれぞれ繰り上げる。
▲8▼明瞭でない記載の釈明を目的として、図3及び図4を削除し、図5を図3に図6を図4にそれぞれ繰り上げる。
2-2.訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否等
上記訂正▲1▼、▲2▼は、それぞれ、請求項1、2における構成要件を更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。
訂正▲3▼〜▲8▼は、訂正された特許請求の範囲の記載に整合するように発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。
また、上記いずれの訂正も、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでないし、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであることは明らかである。
2-3.独立特許要件の判断
訂正後の本件発明は、以下のとおりである。
【請求項1】板状ワーク上で、それから所定の間隔をおいて移動されて、ワーク表面に液体材料を塗布するノズルと、このノズルに隣接し、ノズルの運動軌跡と重ならない位置に、ノズル中心に対して点対称に配置されて、ノズルと一体的に移動する一対の高さセンサとを具えてなる液体塗布ノズルの高さ検知装置。
【請求項2】液体塗布ノズルを、板状ワーク上で、その板状ワークの各辺縁に沿って、一対の高さセンサと一体的に並進運動させ、板状ワークの上方に位置する一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールすることを特徴とする液体塗布ノズルの高さ制御方法。
【請求項3】液体塗布ノズルを板状ワーク上で、複数個の高さセンサと一体的に移動させ、板状ワークの上方に位置する少なくとも一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールするとともに、全ての高さセンサが板状ワークの外側にはみだしたときには、液体塗布ノズルの高さコントロールを中断して、そのノズルの水平方向移動だけを行うことを特徴とする液体塗布ノズルの高さ制御方法。
これに対し、取消理由で引用した引用例(異議申立人の提出した甲第1号証)には、基板とノズルを相対的に移動させて該基板上にペーストを塗布し、所望の形状のペーストパターンを描画する塗布描画装置について記載されており(【0001】欄)、ノズル、基板間の間隔を計測するセンサである変位計測手段の基板面での測定点を、該ノズルのペースト塗布点からみて、該基板に対する該ノズルの移動方向とは異なる方向に位置するようにすることが記載され(【0006】欄)、実施例の一つとして、第12図、第13図及びその説明である【0041】〜【0046】欄には、4つのファイバー対19a、19b、19c、19dが、その先端がペースト収納筒先端を中心とする同一円周上に等間隔に配置された装置が記載され、19a、19cのファイバー対に対する測定点a、cがX軸方向に、19b、19dのファイバー対に対する測定点b、dがY軸方向に配置されることにより、ノズルがY軸方向に移動するときにはa、cの計測結果を、X軸方向に移動するときはb、dの計測結果を取り込むことも記載されており、この装置は、ノズルの移動方向に応じて、二対のファイバーのうちのある一対はノズルの運動軌跡と重ならない位置にあるものの、引用例は「一対の高さセンサ」を具えた高さ検知装置について記載するものではないから、訂正後の本件請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明であるとはいえない。
また、引用例は、二対の変位計のうち、ノズルの運動軌跡と重ならない位置にある一対の変位計からの計測結果を取り込むこと(第12図及び第13図)、ただ一つの光学変位計を移動させてノズルに対する測定点の位置を変化させること(第6図〜第11図)を示しているにすぎず、一対の高さセンサを設けてそのうちの「板状ワークの上方に位置する一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールする」ことについて示唆するものではないから、訂正後の本件請求項2に係る発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、他に、訂正後の本件請求項1、2に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとすべき理由を発見しない。
したがって、訂正後の本件請求項1、2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであると認められる。
2-4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、第120条の4第2項、同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、上記訂正は認める。
3.異議申立について
2-3.で検討したとおり、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明でない。また、甲第1号証の第6〜11図記載の装置は、ただ一つの光学変位計を移動させてノズルに対する測定点の位置を変化させるものであるから、光学変位計を対にして設ける必要のないものであるし、甲第1号証の第12図及び第13図記載の装置を、一対の高さセンサのみとした場合には、ノズルが特定の方向に移動する場合に、必ずノズルの移動方向に重なることになるので、請求項1に係る発明のように「ノズルの運用軌跡と重ならない位置に、」「一対の高さセンサ」を具えることが、甲第1号証の記載に基いて当業者が容易に想到することであるとすることはできない。
また、請求項2に係る発明が、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることがでないことは2-3.で検討したとおりである。
さらに、甲第1号証には、請求項3に係る発明の「全ての高さセンサが板状ワークの外側にはみだしたときには、液体塗布ノズルの高さコントロールを中断して、そのノズルの水平方向移動だけを行う」という構成要件について記載も示唆もされていないし、甲第2号証も、「ノズルのペースト吐出口と基板の表面との間隙を計測する計測手段と、該計測手段の計測値が予め設定された閾値を越える期間、該ノズルのペースト吐出口と該基板の表面との間隙を該計測手段の計測値が該閾値を越える直前の値に保持する間隙保持手段と、該計測手段の計測値が該閾値を越えないとき、該ノズルのペースト吐出口と該基板の表面との間隙を予め指定された所定の値に調整する間隙調整手段とを設ける。」(【0006】欄)と記載されているものの、これは、距離センサの計測位置が描画済みのペーストパターン上を間隙計測を行いつつ通過しても、ノズルと基板を所望の間隙に保持することができて所望のパターンを描画することができるようにすることを目的とするものであって(【0005】欄)、「全ての高さセンサが板状ワークの外側にはみだしたとき」についての課題の認識がない上、この課題の解決手段を示すものでもないから、請求項3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証を組み合わせても、当業者が容易に想到することができたものであるとすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液体塗布ノズルの高さ検知装置およびそれを用いたノズルの高さ制御方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 板状ワーク上で、それから所定の間隔をおいて移動されて、ワーク表面に液体材料を塗布するノズルと、このノズルに隣接し、ノズルの運動軌跡と重ならない位置に、ノズル中心に対して点対称に配置されて、ノズルとー体的に移動する一対の高さセンサとを具えてなる液体塗布ノズルの高さ検知装置。
【請求項2】 液体塗布ノズルを、板状ワーク上で、その板状ワークの各辺縁に沿って、一対の高さセンサと一体的に並進運動させ、板状ワークの上方に位置する一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールすることを特徴とする液体塗布ノズルの高さ制御方法。
【請求項3】 液体塗布ノズルを板状ワーク上で、複数個の高さセンサと一体的に移動させ、板状ワークの上方に位置する少なくとも一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールするとともに、全ての高さセンサが板状ワークの外側にはみだしたときには、液体塗布ノズルの高さコントロールを中断して、そのノズルの水平方向移動だけを行うことを特徴とする液体塗布ノズルの高さ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、液体塗布ノズルの高さ検知装置および、それを用いたノズル高さ制御方法に関するものであり、液状、ペースト状、クリーム状等を呈する電子材料、接着剤その他の液体材料を、プリント基板、セラミック基板、ガラス基板などの板状ワークに対し、それの反り等の変形に影響されることのない、定常塗布を可能にするものである。
【0002】
【従来の技術】
液体塗布ノズルから吐出した液体材料を、板状ワークの表面に、連続的もしくは間欠的に定常塗布するに際し、板状ワークに反り等の変形があって、ノズル先端と板状ワークとの距離が変化すると、吐出された液量、吐出形状等が不安定になることから、ノズル先端と、板状ワークの表面との間の距離の変動を防止すべく、たとえば、特開平2-169062号公報および特開平6-114313号公報に開示されているように、一の高さセンサを用いてノズル先端の高さをコントロールすることが行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このような従来技術において、塗布ノズルに隣接させて配置した高さセンサと、その塗布ノズルとの相対位置が一定のものにあっては、たとえば方形形状をなす板状ワークに液体を塗布するに際し、高さセンサを常に十分に機能させてその塗布を行うためには、板状ワークの輪郭形状よりも相当狭い領域内にしか液体を塗布することができないとう不都合があった。
【0004】
このことを図4に基づいてより具体的に説明する。板状ワークWが図に実線で示すような方形の輪郭線形状を有する場合において、その板状ワークW上にノズルNによって液体材料を塗布するに当り、ノズルNと高さセンサSとが図示のような相対位置関係にあって、その相対位置は不変であるとすると、センサSで、板状ワークWからのノズル高さを検知しつつ、ノズルNから液体を塗布することのできる最大領域は図に斜線を施して示す領域となり、従って、板状ワークWの、図の上辺および右辺の近傍部分には液体材料を塗布することが実質的に不可能であった。
【0005】
ところでこれに対し、特開平6-114313号公報に開示されているように、一の高さセンサの、ノズルに対する相対位置を変更可能ならしめた場合には、液体の塗布領域を、図4に示す板状ワークWの、輪郭線で囲まれる全領域にまで拡大することが可能となる。しかしながら、この場合には、ノズルを移動させる軸と、センサ移動機構との平坦度を数μm以内に抑えないと、ノズルの高さを所要の精度でコントロールすることができないという、機構部の加工精度上の問題があった。
【0006】
この発明は、従来技術の有するこのような問題点を解決することを課題として検討した結果なされたものであり、この発明の目的は、板状ワークの反り等の変形に十分に対処し得ることはもちろん、厳しい加工精度を必要とすることなしに、たとえば方形の板状ワークに対し、輪郭線で囲まれる全領域への液体の塗布を可能ならしめる、液体塗布ノズルの高さ検知装置および、それを用いたノズル高さ制御方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明の、液体塗布ノズルの高さ検知装置は、プリント基板、ガラス基板等の、多くは方形形状をなす板状ワークの上方で、そこから所定の間隔をおいて移動されて、ワーク表面に液体材料を塗布するノズルを設けるとともに、ノズルに隣接して、ノズルの運動軌跡と重ならない位置に、ノズル中心に対して点対称に配置され、そのノズルと一体的に移動される少なくとも一対の高さセンサを設けたものである。ところで、ここにおける高さセンサとしては、光を使用するもの、渦電流を検出するものなどを必要に応じて選択することができる。また、この発明のノズル高さ制御方法は、板状ワークの上方で、液体塗布ノズルを、板状ワークの各辺縁に沿って、少なくとも二個の高さセンサと一体的に並進運動させ、この運動に当って、板状ワークの上方に位置する少なくとも一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールするものである。そして他の方法は、液体塗布ノズルを板状ワーク上で、複数個の高さセンサと一体的に移動させ、板状ワークの上方に位置する少なくとも一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールするとともに、全ての高さセンサが板状ワークの外側にはみ出したときには、液体塗布ノズルの高さコントロールを中断して、そのノズルの水平方向移動だけを行うものである。
【0008】
【作用】
この種の装置では、液体塗布ノズルの真上および真下のいずれにも高さセンサを配設することができず、従って、そのノズルと隣接する位置に、多くは数mmの間隔をおいて高さセンサを配設することが一般的である。かかる状況の下で、この発明の装置では、液体塗布ノズルと一体的に移動する、ノズル中心に対して点対称に位置する少なくとも一対の高さセンサを設けていることから、一の高さセンサを除く他のセンサの全てが、板状ワークの外側にはみ出してもなお、残りの一のセンサをもって、板状ワークに対するノズル高さを十分に検知することができるので、板状ワークがたとえば矩形形状をなすものである場合に、液体塗布ノズルによる液体塗布領域を、その板状ワークの輪郭線位置まで拡大することができる。ところでこの場合には、計測演算部において、高さデータを取り込む、センサの少なくとも一つを選択するだけで各センサを必要に応じて使い分けることができるので、一の高さセンサを、ノズルに対して相対変位させる従来技術に比し、特別な作動機構部を設けることが不要であって、装置の小型、軽量化および装置構造の簡素化を実現し得ることはもちろん、加工精度に対する厳しい要求を総て不要ならしめて、装置コストを有効に低減させることができる。
【0009】
またここで、少なくとも一対の高さセンサを、通常は並進運動を行うノズルの運動軌跡と重ならない位置に、ノズル中心に対して点対称に配設することで、対をなす高さセンサのそれぞれに、それ本来の機能を十分に発揮させることができる。これをいいかえれば、たとえば一対の高さセンサを、ノズルの運動軌跡に一致させた場合には、ノズルに先行するセンサはその機能を有効に発揮することはできるも、ノズルに後行するセンサからの高さ信号は、多くは、そのノズルによって塗布された液体材料の影響を含んでいるので、高い測定精度を期待することができない。しかもこの場合において、とくに、板状ワークの輪郭線に沿って液体材料を塗布するときは、ノズルに先行する一方のセンサが、その輪郭線をなぞって移動して高さを検知することになるが、ワークの輪郭線部分は一般に、高さ、平坦度ともに安定性に欠けることから、高い検知精度を得ることが困難である。
【0010】
また、この発明の方法において、少なくとも一の高さセンサからの信号に基づいて液体塗布ノズルの高さをコントロールするときは、板状ワークの全表面にわたる塗布を、高い精度で制御して、各塗布部分での塗布量、塗布形状等を所期した通りのものとすることができる。
【0011】
なおこの方法において、高さセンサの配設個数、配設態様などとの関連の下で、全ての高さセンサが板状ワークの外側にはみ出した状態となったときに、ノズルの高さコントロールを中断して、ノズルの水平方向移動だけを行う場合には、その中断中の移動距離は、ノズルと、それの移動方向前方側に位置するセンサとの間の、通常は数mm程度のわずかな距離であることから、特別のコントロールを行うまでもなく、塗布量、塗布形状等に及ぼす影響を十分少ならしめることができる。
【0012】
【実施例】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1はこの発明の実施例を示す略線正面図であり、図2はその略線平面図である。ここで、板状ワーク1に対し、その上方へ所定の間隔をおいて配置され、たとえば、そこで、二次元直交座標軸XおよびYの方向へ移動されて、その板状ワーク1の表面上に液体材料を塗布するノズル2を設けるとともに、このノズル2に隣接する位置で該ノズル2と一体的に移動する、図では、二個一対の高さセンサ3,4を、ノズル2に対し、それの通常の運動方向である、図のX軸方向およびY軸方向のいずれにも重なり合わない位置で、ノズル中心に対して点対称に配置する。またここでは、それぞれの高さセンサ3,4は計測演算部5に接続され、いずれか一方のセンサ信号が択一的に取り込まれるよう構成されている。
【0013】
図3は、図1および図2に示す実施例装置の、板状ワーク1に対する最大塗布軌跡を示す略線平面図である。ここでは、ワーク1の一の隅部である点aから、隣接隅部である点cの近傍部分までは、高さセンサ3によって、ワーク辺縁より幾分内側部分の高さを検知することで、ノズル2の高さを高精度にコントロールしつつ、そのノズル2をワーク辺縁上に移動させて、そこに液体材料を所期した通りに塗布することができる。なお、ノズル2が点cの近傍部分に達して、センサ3がワーク1の辺縁からはみ出すと、両センサ3,4がともにワーク1の外側に位置することになって高さ検知ができなくなるので、その後は、ノズル2が点cに至るまでは、ノズル2の高さコントロールを中断したままノズル2を水平移動させることによって液体材料の塗布を行う。この場合に、ノズル2に生じることのある高さコントロール誤差は、たとえば板状ワーク1の寸法が300×300mm、そのワーク1の、長さ300mm当りの反りが約0.1mm、ノズル2とセンサ3との間のノズル移動方向の距離が10mmであるときは、ノズル2がその10mmを移動する間に生じることのあるワークの反り量は、0.1×10/300=3.3(μm)として表わすことができ、その値は極めて小さいものであるから、ノズル2の高さコントロールをしなくとも塗布量等への影響はほとんどない。従って、点cへの塗布もまた所期した通りに行われることになる。
【0014】
その後は、ノズル2の移動方向を、ノズル中心の周りでのセンサ3,4の回動運動をもたらすことなく並進的に変更して、他方の高さセンサ4からの検知信号に基づいてノズル2の高さをコントロールすることにより、ノズル2は、図の右辺上を移動して、その辺縁上に液体材料を高い精度で塗布することができる。そしてこのことは、図の下辺辺縁上へ液体材料の塗布に当ってもまたほぼ同様であり、ノズル2が点gの近傍部分に至るまでは、センサ4によって、辺縁位置より幾分内側部分の高さ検知を行うことで、その下辺辺縁上に、高い精度で液体材料を塗布することができる。ところで、この場合もまた、ノズル2が点gの近傍部分に達すると、センサ3の他にセンサ4もワーク1の辺縁から外側へはみ出すことになるので、この場合もまた、そのはみ出しの後は、ノズル2の高さコントロールを中断して、ノズル2の水平塗布運動だけを行うことによって、点cについて述べたと同様に、点g上への高精度の塗布を行うことができる。
【0015】
そしてさらに、図の左辺に対しては、高さセンサ3を機能させてノズル2の高さをコントロールすることで、その辺縁上へ、これもまた所期した通りに高い精度で液体材料を塗布することができる。
【0016】
従って、この場合においては、最大塗布軌跡を、板状ワーク1の方形輪郭線に一致させることができるのみならず、ワーク表面のいかなる部分に対しても、液体材料を十分高い精度で塗布することが可能となる。
【0017】
以上、いずれか一方のセンサの作用下で、最大塗布軌跡をもたらす場合について説明したが、その最大塗布軌跡に囲まれる領域内での塗布に当っては、両センサ3,4を同時に機能させ、計測値の平均値、差などをもとに高さコントロールを行うこともできる。
【0018】
【発明の効果】
かくしてこの発明によれば、高さセンサの作用下で、板状ワークに対するノズル高さを検知することにより、その板状ワークの反り等の変形に十分に対応することができ、また、通常は並進運動を行うノズルの運動軌跡に重ならない位置に、ノズル中心に対して点対称に配置した少なくとも一対のセンサを使い分けることより、たとえば方形形状をなす板状ワークの全ての部分に、液体材料を十分高い精度で塗布することが可能となる。そして、ここにおけるセンサの使い分けは、計測演算部でのセンサの選択によって行われるので、一の高さセンサ位置をノズルに対して相対変位させる従来技術に比し、特別の作動機構を不要にして、装置の小型、軽量化および製造の簡素化をもたらし得ることはもちろん、その作動機構に対する厳しい加工精度の要求を全く不要とすることができる。そしてまた、高さセンサの総てが、板状ワークの外側にはみ出した場合に、ノズルの高さコントロールを中断して、そのノズルに水平移動だけを行わせるときは、塗布精度にほとんど影響を及ぼすことなしに、ノズルの設置個数を必要最少限のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
発明装置を例示する略線正面図である。
【図2】
図1の略線平面図である。
【図3】
図1、2に示す装置の最大塗布軌跡を示す略線平面図である。
【図4】
従来装置の最大塗布軌跡を示す略線平面図である。
【符号の説明】
1 板状ワーク
2 ノズル
3、4 高さセンサ
5 計測演算部
【図面】
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

 
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項1における「そのノズルと一体的に移動する少なくとも一対の高さセンサ」を、「ノズルと一体的に移動する一対の高さセンサ」と訂正する。
▲2▼特許請求の範囲の減縮を目的として、請求項2における[複数個の高さセンサ」、「少なくとも一の高さセンサ」を、それぞれ、「一対の高さセンサ」、「一の高さセンサ」と訂正する。
▲3▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0012】欄の「なおここにおいて、三個以上のセンサを、・・・こともできる。」を削除する。
▲4▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0013】、【0014】及び【0015】を削除し、【0016】以降を繰り上げる。
▲5▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0016】(繰り上げ後の【0013】)の「図5は、」を、「図3は、」と訂正する。
▲6▼明瞭でない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明【0019】(繰り上げ後の【0016])の「なおこの場合にあって、・・・回避することができる。」を削除する。
▲7▼明瞭でない記載の釈明を目的として、【図面の簡単な説明】の【図3】【図4】を削除し、【図5】を【図3】に、【図6】を【図4】にそれぞれ繰り上げる。
▲8▼明瞭でない記載の釈明を目的として、図3及び図4を削除し、図5を図3に図6を図4にそれぞれ繰り上げる。
異議決定日 1999-08-26 
出願番号 特願平6-194173
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B05C)
P 1 651・ 113- YA (B05C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 小林 正巳
特許庁審判官 今村 玲英子
中川 隆司
登録日 1998-04-17 
登録番号 特許第2772243号(P2772243)
権利者 武蔵エンジニアリング株式会社
発明の名称 液体塗布ノズルの高さ検知装置およびそれを用いたノズルの高さ制御方法  
代理人 藤 文夫  
代理人 藤 文夫  
代理人 武 顕次郎  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 須藤 阿佐子  

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