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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  F16K
管理番号 1006144
異議申立番号 異議1998-76010  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-02-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-15 
確定日 1999-11-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2766190号「無しゅう動真空ゲートバルブ」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2766190号の特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2766190号に係る出願は、平成6年7月28日に特許出願されたものであって、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、同10年4月3日に設定登録された。その後、その特許請求の範囲の請求項1について特許異議の申立て、及び取消理由の通知がなされ、取消理由通知の指定期間内である同11年7月19日に願書に添付した明細書及び図面について訂正請求がなされたが、当該訂正請求は同平成11年10月12日付けで取り下げされ、2回目の取消理由通知の指定期間内である同11年10月12日に願書に添付した明細書及び図面について訂正請求がなされたものである。
2.訂正の要旨
上記訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めたものであるが、その要旨は次の▲1▼〜▲5▼のとおりである。
▲1▼特許請求の範囲の請求項1の記載を、特許請求の範囲の減縮、及び誤記の訂正を目的として、
「【請求項1】弁箱1の弁座1Baを有する開口1Bを、前記弁箱1にその一端が設けられたシールベローズ13を介して移動しかつ傾動する弁棒9に設けられた弁体8で開閉するようにした無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、前記弁箱1上に設けられた複数のシリンダ2,3の各ロッド端2a,3aに設けられた連結体4と、前記弁体8に設けられたOリング8aと、前記連結体4に設けられカム孔6を有するカム体7と、前記弁棒9の端部に設けられ前記カム孔6と係合するカムフォロワ10と、前記カム体7にスプリング11を介して接続され前記シールベローズ13の他端が接続されたスライド体12と、前記カム体7の下面に形成され前記スプリング11の上端を受ける第1凹部7aと、前記スライド体12の上面に形成され前記スプリング11の下端を受ける第2凹部12cとを備え、前記スプリング11の長手方向は前記弁棒9の長手方向に沿って配置され、前記カム体7の直動により前記弁棒9及び弁体8が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダ2,3の内側にはガイド孔50を有する一対のガイド体51が設けられ、前記スライド体12に設けられたガイドローラ52が前記ガイド孔50に係合され、前記カム孔6は、前記カムフォロワ10を直線案内する直線案内部6aと前記カムフォロワ10をロックするためのロック部6bとを有すると共に前記直線案内部は互いに傾斜角度が異なる第1カムリードD1及び第2カムリードD2を有し、前記弁体8が閉弁時には、前記第1カムリードD1で前記Oリング8aが前記弁座1Baに接し、前記第2カムリードD2で前記Oリング8aが締められ、開弁時には前記第2カムリードD2で前記Oリング8aの前記弁座1Baに対する粘着力に抗して前記Oリング8aをはがすように構成したことを特徴とする無しゅう動真空ゲートバルブ。」
と訂正する。
▲2▼段落番号【0005】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【課題を解決するための手段】
本発明による無しゅう動真空ゲートバルブは、弁箱の弁座を有する開口を、前記弁箱にその一端が設けられたシールベローズを介して移動しかつ傾動する弁棒に設けられた弁体で開閉するようにした無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、前記弁箱上に設けられた複数のシリンダの各ロッド端に設けられた連結体と、前記弁体に設けられたOリングと、前記連結体に設けられカム孔を有するカム体と、前記弁棒の端部に設けられ前記カム孔と係合するカムフォロワと、前記カム体にスプリングを介して接続され前記シールベローズの他端が接続されたスライド体と、前記カム体の下面に形成され前記スプリングの上端を受ける第1凹部と、前記スライド体の上面に形成され前記スプリングの下端を受ける第2凹部とを備え、前記スプリングの長手方向は前記弁棒の長手方向に沿って配置され、前記カム体の直動により前記弁棒及び弁体が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダの内側にはガイド孔を有する一対のガイド体が設けられ、前記スライド体に設けられたガイドローラが前記ガイド孔に係合され、前記カム孔は、前記カムフォロワを直線案内する直線案内部と前記カムフォロワをロックするためのロック部とを有すると共に前記直線案内部は互いに傾斜角度が異なる第1カムリード及び第2カムリードを有し、前記弁体が閉弁時には、前記第1カムリードで前記Oリングが前記弁座に接し、前記第2カムリードで前記Oリングが締められ、開弁時には前記第2カムリードで前記Oリングの前記弁座に対する粘着力に抗して前記Oリングをはがすようにした構成である。」
と訂正する。
▲3▼段落番号【0009】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0009】 前記カム体7には、複数のスプリング11を介して断面コ型をなすスライド体12が接続され、前記弁棒9はこのスライド体12の貫通孔12aを貫通している。前記スライド体12と弁棒9は密合状に一体化接続され、このスライド体12の凹部12b内には、前記弁箱1のボンネットフランジ1a上にその一端13aを固定したシールベローズ13の他端13bが接続されている。従って、弁棒9が貫通する弁箱1の貫通孔1Aは、前述のシールベローズ13及びスライド体12によって密閉状に保持され、弁棒9作動時における弁箱1内の機密が保持される。
また、前記スプリング11は、カム体7の下面に形成され前記スプリング11の上端を受ける第1凹部7aと、前記スライド体12の上面に形成され前記スプリング11の下端を受ける第2凹部12cとの間に伸縮自在に位置決め配置されていると共に、前記スプリング11の長手方向は前記弁棒9の長手に沿って配置される。」
と訂正する。
▲4▼段落番号【0010】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0010】前記カム孔6は、図2から図4で示すように、カムフォロワ10を直線案内する直線案内部6aと、このカムフォロワ10をメカニカルにロックするためこの直線案内部6aと連続形式のロック部6bと、から構成されており、このロック部6bにカムフォロワ10が係合すると、弁棒9はロックされた状態となるように構成されている。また、前記各シリンダ2,3の内側に設けた縦孔50内には、図5で示すように、前記スライドたい12の外側に設けたガイドローラ52が係合されている。
前記カム孔6の前記直線案内部6aにおける第1カムリードD1及びD2に相当する部分の傾斜角度は、後述の図6で示されるように、互いに異なって形成されている。」
と訂正する。
▲5▼願書に添付した図面の【図1】、【図2】、【図3】、【図4】、及び【図6】の記載を、明瞭でない記載の釈明、及び誤記の訂正を目的として、添付図面の通り訂正する。
3.訂正の適否
(あ)訂正の目的、新規事項・拡張又は変更の存否
(1).上記▲1▼の訂正について
上記▲1▼の訂正は、特許請求の範囲の請求項1において、
「弁箱1の開口1B」を「弁箱1の弁座1Baを有する開口1B」と、
「連結体4と、」を「連結体4と、前記弁体8に設けられたOリング8aと、」と、
「スライド体12と、を備え、」を「スライド体12と、前記カム体7の下面に形成され前記スプリング11の上端を受ける第1凹部7aと、前記スライド体12の上面に形成され前記スプリング11の下端を受ける第2凹部12cとを備え、前記スプリング11の長手方向は前記弁棒9の長手方向に沿って配置され、」と、
「直線案内部6aと、前記カムフォロワ6をロックするためのロック部6bと、からなること」を「直線案内部6aと前記カムフォロワ10をロックするためのロック部6bとを有すると共に前記直線案内部6aは互いに傾斜角度が異なる第1カムリードD1及び第2カムリードD2を有し、前記弁体8が閉弁時には、前記第1カムリードD1で前記Oリング8aが前記弁座1Baに接し、前記第2カムリードD2で前記Oリング8aが締められ、開弁時には前記第2カムリードD2で前記Oリング8aの前記弁座1Baに対する粘着力に抗して前記Oリング8aをはがすように構成したこと」と訂正することによって、構成要件を附加して構成を限定するものであり、特許請求の範囲の請求項1を減縮するものと認められる。
そして、この▲1▼の訂正に関連する記載は、特許明細書の段落番号【0009】、【0012】、【0013】、及び図1〜6に示されているので、上記▲1▼の訂正は、特許明細書及び図面に記載された事項の範囲内において、訂正したものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2).上記▲2▼〜▲4▼の訂正について
上記▲2▼〜▲4▼の訂正は、上記▲1▼の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と整合させるために発明の詳細な説明の訂正をするものであり、明瞭でない記載の釈明に相当する。そして、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内であり、又、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3).上記▲5▼の訂正について
上記▲5▼の訂正は、上記▲1▼〜▲4▼の特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載の訂正に伴って、図面の符号の追加訂正をし、更に図面の符号の誤記を訂正するものであり、明瞭でない記載の釈明、及び誤記の訂正に相当する。そして、この訂正は、特許明細書に記載した事項の範囲内であり、又、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(い)、独立特許要件について
(1).上記平成11年10月12日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、同訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。
(2).これに対して、当審で通知した取消理由で引用した先願発明(特願平5-342760号(特開平7-83336号)・特許異議申立の理由に引用された甲第1号証)の明細書及び図面には、以下の事項が記載されている。
第2頁第2欄第1〜22行中(請求項4)には、「弁箱と、この弁箱内に設けた弁座に対接されるよう上記弁箱内に配置した弁デスクと、この弁デスクに連結した、上記弁箱内から弁箱外にベローズを介して上下動及び傾動自在に気密に突出する弁ロッドと、この弁ロッドを介して上記デスクを上記弁座に対向する位置と対向しない位置に移動自在ならしめ、上記弁デスクが上記弁座にこれから離間して対向する位置となった後、上記ロッドを傾動して上記弁デスクが上記弁座に押圧されるようにした、弁箱外部に設けた移動手段とより成り、上記移動手段が、ピストンシリンダと、このピストンシリンダのピストンロッドに連結されたヨークと、上記弁ロッドの上部に連結されたブロックと、上記ヨークとブロックを互いに連結する、ピン及びこのピンに係合する傾斜長孔と、上記ヨーク及びブロックを軸方向の相対移動を抑制するよう互いに連結するばねと、上記ブロックを上下動及び移動自在にガイドするため上記ピストンシリンダの側面に形成したガイドとより成り、上記ヨークを上記ブロックに対して接近するよう押圧した際、上記ピン及び傾斜長孔を介して上記弁ロッドが上記ブロックを中心として傾斜し、上記弁デスクが上記弁座に押圧されるようになることを特徴とするゲートバルブ。」、
第4頁第6欄第17〜26行中に「【0025】図8は本発明の更に他の実施例を示し、この例においては、板状カム17やリンク18を用いずブロック10の上部に上記枢軸11の向きと直角の向きに突出するピン19を設け、このピン19に係合する斜めの長孔20を有する袖片21を上記ヨーク7の下端から垂下せしめる。
【0026】この例においてはヨーク7をブロック10に接近するように移動せしめた際、上記斜めの長孔20によってブロック10の上部が上記各実施例と同様横方向に移動されるようになる。」
そして、上記記載、及び第1,2図の記載を併せて見ると、先願発明の明細書及び図面には、
「弁箱1の弁座2を有する開口を、前記弁箱1にその一端が設けられた筒状ベローズ9を介して移動しかつ傾動する弁ロッド8に設けられた弁デスク3で開閉するようにしたゲートバルブにおいて、前記弁箱1上に設けられた複数のシリンダ4の各ピストンロッド6端に設けられたヨーク7と、前記ヨーク7に設けられ傾斜長孔20を有する袖片21と、前記弁ロッド8の端部に設けられ前記傾斜長孔20と係合するピン19と、前記袖片21にばね15を介して接続され前記筒状ベローズ9の他端が接続されたブロック10とを備え、前記袖片21の直動により前記弁ロッド8及び弁デスク3が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダ4の内側にはガイド溝12を有する一対のシリンダ4が設けられ、前記ブロック10に設けられた枢軸11が前記ガイド溝12に係合され、前記長孔20は、傾斜しており、ピン19を案内することによって弁デスク3を開閉するように構成した無しゅう動ゲートバルブ。」
が記載されていると認められる。
(3).対比・判断
(3-1).本件発明と、上記先願明細書及び図面に記載された発明とを対比する。
上記刊行物1に記載された発明の「弁座2」、「筒状ベローズ9」、「弁ロッド8」、「弁デスク3」、「ゲートバルブ」、「シリンダ4」、「ピストンロッド6」、「ヨーク7」、「傾斜長孔20」、「袖片21」、「ピン19」、「ばね15」、「ブロック10」、「ガイド溝12」、「枢軸11」は、それぞれ本件発明の「弁座1Ba」、「シールベローズ13」、「弁棒9」、「弁体8」、「無しゅう動真空ゲートバルブ」、「シリンダ2,3」、「ロッド端2a,3a」、「連結体4」、「カム孔6」、「カム体7」、「カムフォロワ10」、「スプリング11」、「スライド体12」、「ガイド孔50」、「ガイドローラ52」に相当する
したがって、両者は、
「弁箱の弁座を有する開口を、前記弁箱にその一端が設けられたシールベローズを介して移動しかつ傾動する弁棒に設けられた弁体で開閉するようにした無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、前記弁箱上に設けられた複数のシリンダの各ロッド端に設けられた連結体と、前記連結体に設けられカム孔を有するカム体と、前記弁棒の端部に設けられ前記カム孔と係合するカムフォロワと、前記カム体にスプリングを介して接続され前記シールベローズの他端が接続されたスライド体とを備え、前記カム体の直動により前記弁棒及び弁体が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダの内側には一対のガイド孔が設けられ、前記スライド体に設けられたガイドローラが前記ガイド孔に係合され、前記カム孔は、傾斜した長孔であり、カムフォロワを案内することによって弁体を開閉するように構成した無しゅう動ゲートバルブ。」
の点で一致するものの、
先願発明は、本件発明の構成に欠くことのできない事項である▲1▼「カム体の下面に形成されスプリングの上端を受ける第1凹部と、スライド体の上面に形成され前記スプリングの下端を受ける第2凹部とを備え、前記スプリングの長手方向は弁棒の長手方向に沿って配置した」構成、▲2▼「カム孔は、カムフォロワを直線案内する直線案内部と前記カムフォロワをロックするためのロック部とを有すると共に前記直線案内部は互いに傾斜角度が異なる第1カムリード及び第2カムリードを有し、弁体が閉弁時には、前記第1カムリードでOリングが弁座に接し、前記第2カムリードで前記Oリングが締められ、開弁時には前記第2カムリードで前記Oリングの前記弁座に対する粘着力に抗して前記Oリングをはがすように構成した」構成を備えていない点で相違している。
そして、上記▲1▼▲2▼の構成が従来周知及び自明の事項であると見ることはできない。
本件発明は、上記▲1▼▲2▼の構成を備えたものであることにより、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願平5-342760号(特開平7-83336号)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明(先願発明)と同一であるとは認められない。
したがって、本件発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。
(3-2).上記に示すとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合するものであり、当該訂正を認める。
4.特許異議の申立ての判断
(あ)、本件発明
本件特許第2766190号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認める。
(い)、申立ての理由の概要・判断
特許異議申立人は、上記先願発明を提示し、本件発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された先願発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものでり、本件特許を取り消すべき旨主張している。
これに対して、本件発明は、前記「3.訂正の適否についての判断」の「(い)、独立特許要件の判断」において検討したとおり、特許異議申立人が提示した上記先願発明と同一とすることができない。
5.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求は合法になされたものであり、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
無しゅう動真空ゲートバルブ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】弁箱(1)の弁座(1Ba)を有する開口(1B)を、前記弁箱(1)にその一端が設けられたシールベローズ(13)を介して移動しかつ傾動する弁棒(9)に設けられた弁体(8)で開閉するようにした無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、前記弁箱(1)上に設けられた複数のシリンダ(2,3)の各ロッド端(2a,3a)に設けられた連結体(4)と、前記弁体(8)に設けられたOリング(8a)と、前記連結体(4)に設けられカム孔(6)を有するカム体(7)と、前記弁棒(9)の端部に設けられ前記カム孔(6)と係合するカムフォロワ(10)と、前記カム体(7)にスプリング(11)を介して接続され前記シールベローズ(13)の他端が接続されたスライド体(12)と、前記カム体(7)の下面に形成され前記スプリング(11)の上端を受ける第1凹部(7a)と、前記スライド体(12)の上面に形成され前記スプリング(11)の下端を受ける第2凹部(12c)とを備え、前記スプリング(11)の長手方向は前記弁棒(9)の長手方向に沿って配置され、前記カム体(7)の直動により前記弁棒(9)及び弁体(8)が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダ(2,3)の内側にはガイド孔(50)を有する一対のガイド体(51)が設けられ、前記スライド体(12)に設けられたガイドローラ(52)が前記ガイド孔(50)に係合され、前記カム孔(6)は、前記カムフォロワ(10)を直線案内する直線案内部(6a)と前記カムフォロワ(10)をロックするためのロック部(6b)とを有すると共に前記直線案内部(6a)は互いに傾斜角度が異なる第1カムリード(D1)及び第2カムリード(D2)を有し、前記弁体(8)が閉弁時には、前記第1カムリード(D1)で前記Oリング(8a)が前記弁座(1Ba)に接し、前記第2カムリード(D2)で前記Oリング(8a)が締められ、開弁時には前記第2カムリード(D2)で前記Oリング(8a)の前記弁座(1Ba)に対する粘着力に抗して前記Oリング(8a)をはがすように構成したことを特徴とする無しゅう動真空ゲートバルブ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、無しゅう動真空ゲートバルブに関し、特に、パーティクルの発生を極小とするための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、用いられていたこの種の無しゅう動真空ゲートバルブとしては、例えば、本出願人による特公平5-49866号公報に開示された構成を挙げることができる。
すなわち、この特公平5-49866号公報に開示された構成では、弁棒を下げて弁体を開口の弁座位置に位置させ、この弁棒を傾動させることによって弁体を弁座に押圧させ、弁箱の開口を閉じるようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の無しゅう動真空ゲートバルブは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、弁棒が最長時に閉弁するため、大型のバルブの場合、弁棒の径が大形化し、バルブ自体も大形化することになっていた。
また、弁棒と弁体とはスプリングを介して作動自在な状態で結合されているため、作動時のパーティクルの発生を避けることは不可能であり、より高クリーン度を要求される半導体製造装置のチャンバには不適であった。
また、エアシリンダと腕部材により弁棒を傾動させる際に、押圧部材と腕部材との当接部分からのパーティクルの発生を防止することは不可能であった。
また、従来構成では、直動動作と傾動動作とを連係して行っていたため、開閉速度が遅くなっていた。
【0004】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、パーティクルの発生を極小とした無しゅう動真空ゲートバルブを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明による無しゅう動真空ゲートバルブは、弁箱の弁座を有する開口を、前記弁箱にその一端が設けられたシールベローズを介して移動しかつ傾動する弁棒に設けられた弁体で開閉するようにした無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、前記弁箱上に設けられた複数のシリンダの各ロッド端に設けられた連結体と、前記弁体に設けられたOリングと、前記連結体に設けられカム孔を有するカム体と、前記弁棒の端部に設けられ前記カム孔と係合するカムフォロワと、前記カム体にスプリングを介して接続され前記シールベローズの他端が接続されたスライド体と、前記カム体の下面に形成され前記スプリングの上端を受ける第1凹部と、前記スライド体の上面に形成され前記スプリングの下端を受ける第2凹部とを備え、前記スプリングの長手方向は前記弁棒の長手方向に沿って配置され、前記カム体の直動により前記弁棒及び弁体が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダの内側にはガイド孔を有する一対のガイド体が設けられ、前記スライド体に設けられたガイドローラが前記ガイド孔に係合され、前記カム孔は、前記カムフォロワを直線案内する直線案内部と前記カムフォロワをロックするためのロック部とを有すると共に前記直線案内部は互いに傾斜角度が異なる第1カムリード及び第2カムリードを有し、前記弁体が閉弁時には、前記第1カムリードで前記Oリングが前記弁座に接し、前記第2カムリードで前記Oリングが締められ、開弁時には前記第2カムリードで前記Oリングの前記弁座に対する粘着力に抗して前記Oリングをはがすようにした構成である。
【0006】
【作用】
本発明による無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、各シリンダを作動させることにより、各ロッド、連結体、カム体、スライド体を介して弁棒及び弁体が上昇又は下降の直動を行い、弁体は弁箱の開口に対応した状態となる。
前述の状態下で、さらに、シリンダを作動させてカム体を直動させると、弁棒の端部のカムフォロワがカム体のカム孔の直線案内部に沿って移動するため弁棒は傾動し、同時に、弁体も傾動して開口の弁座に密合することによって開口の閉弁が行われる。
さらに、シリンダを作動させるカム体を直動させると、カムフォロワはカム孔の曲折したロック部に係合し、弁棒は傾動したままのロック状態を維持し、シリンダの駆動状態を解除した後も弁棒の傾動による開口の閉弁を維持することができる。
また、開口の閉弁を開弁に切換える場合は、各シリンダを逆モードに作動させて、連結体、カム体及びスライド体を前述とは逆方向に直動させることによって開弁することができる。
【0007】
【実施例】
以下、図面と共に本発明による無しゅう動真空ゲートバルブの好適な実施例について詳細に説明する。
図1において符号1で示されるものは、周知の開口1Bを有する弁箱であり、この弁箱1は、クリーンルームで用いられる半導体製造装置のチャンバ間に配設されている。
前記弁箱1のボンネットフランジ1a上には複数のエア型のシリンダ2,3が設けられ、この各シリンダ2,3の各ロッド2a,3aの端部には板状の連結体4がねじ5により固定されている。
【0008】
前記連結体4の一面4aには、その側部にシリンダ2,3の軸線に対して傾斜した形状のカム孔6を有するカム体7が設けられ、このカム体7の凹部7a内には、前記弁箱1内の弁体8に接続された弁棒9の端部に形成されたローラ型のカムフォロワ10が係合して配設されている。
【0009】
前記カム体7には、複数のスプリング11を介して断面コ型をなすスライド体12が接続され、前記弁棒9はこのスライド体12の貫通孔12aを貫通している。前記スライド体12と弁棒9は密合状に一体化接続され、このスライド体12の凹部12b内には、前記弁箱1のボンネットフランジ1a上にその一端13aを固定したシールベローズ13の他端13bが接続されている。従って、弁棒9が貫通する弁箱1の貫通孔1Aは、前述のシールベローズ13及びスライド体12によって密閉状に保持され、弁棒9作動時における弁箱1内の気密が保持されている。
また、前記スプリング11は、カム体7の下面に形成され前記スプリング11の上端を受ける第1凹部7aと、前記スライド体12の上面に形成され前記スプリング11の下端を受ける第2凹部12cとの間に伸縮自在に位置決め配置されていると共に、前記スプリング11の長手方向は前記弁棒9の長手方向に沿って配置されている。
【0010】
前述カム孔6は、図2から図4で示すように、カムフォロワ10を直線案内する直線案内部6aと、このカムフォロワ10をメカニカルにロックするためこの直線案内部6aと連続形成のロック部6bと、から構成されており、このロック部6bにカムフォロワ10が係合すると、弁棒9はロックされた状態となるように構成されている。また、前記各シリンダ2,3の内側に設けた縦孔50内には、図5で示すように、前記スライド体12の外側に設けたガイドローラ52が係合されている。
前記カム孔6の前記直線案内部6aにおける第1カムリードD1及びD2に相当する部分の傾斜角度は、後述の図6で示されるように、互いに異なって形成されている。
【0011】
次に、動作について述べる。
まず、図1及び図2の開弁状態において、各シリンダ2,3を作動させることにより、各ロッド2a,3a、連結体4、カム体7及びスライド体12を介して弁棒9及び弁体8が図2から図3のように下降し、同時に、シールベローズ13が図3のように縮小すると共に、弁体8は弁箱1の開口1Bに対応した状態となる。
【0012】
前述の状態下で、さらに、シリンダ2,3を作動させてカム体7を下降させると、弁棒9の端部のカムフォロワ10がカム体7のカム孔6の直線案内部6aに沿って移動するため弁棒9は傾動し、同時に、弁体8も図4で示すように傾動して開口1Bの弁座1Baに密合することによって開口1Bの閉弁が行われる。
【0013】
さらに、シリンダを作動させてカム体7を直動させると、カムフォロワ10はカム孔6の曲折したロック部6bに係合し、弁棒9は傾動したままのロック状態を維持し、各シリンダ2,3の駆動状態を解除した後も弁棒9の傾動による開口1Bの閉弁を維持することができる。また、開口1Bの閉弁を開弁に切換える場合は、各シリンダ2,3を逆モードに作動させて、連結体4、カム体7及びスライド体12を前述と逆方向に直動させることによって開弁することができる。なお、前述の動作においては、図6で示すように、弁体8の閉弁時は、第1カムリードD1でOリング8aが弁座1Baに接し、第2カムリードD2でOリング8aが締められ、開弁時は第2カムリードD2でOリング8aの弁座1Baに対する粘着力に抗してOリング8aをはがすための作用をなしている。
【0014】
【発明の効果】
本発明による無しゅう動真空ゲートバルブは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、シリンダによる連結体、カム体及びスライド体の直動のみで、カム孔に係合するカムフォロワを介して弁棒を直動と傾動の両方を行わせることができ、パーティクルの発生が少なく、スーパークリーンルームでの使用に対して従来のような特別な防塵対策も必要がなく、大幅なコストダウンを達成することができる。また、カム体とカム孔を介して1動作で直動と傾動を行うため、従来よりも大幅に高速の開閉動作を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による無しゅう動真空ゲートバルブを示す正面構成図である。
【図2】
図1のA-A断面図である。
【図3】
図2の半閉弁動作の構成図である。
【図4】
図2の完全閉弁動作の構成図である。
【図5】
図1の開弁状態を示す断面図である。
【図6】
カム孔を示す構成図である。
【符号の説明】
1 弁箱
1B 開口
2,3 シリンダ
4 連結体
6 カム孔
6a 直線案内部
6b ロック部
7 カム体
8 弁体
9 弁棒
10 カムフォロワ
11 スプリング
12 スライド体
13 シールベローズ
50 ガイド孔
52 ガイドローラ
【図面】
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

 
訂正の要旨 ▲1▼特許請求の範囲の請求項1の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
【請求項1】弁箱1の弁座1Baを有する開口1Bを、前記弁箱1にその一端が設けられたシールベローズ13を介して移動しかつ傾動する弁棒9に設けられ一た弁体8で開閉するようにした無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、前記弁箱1上に設けられた複数のシリンダ2,3の各ロッド端2a,3aに設けられた連、結体4と、前記弁体8に設けられたOリング8aと、前記連結体4に設けられカム孔6を有するカム体7と、前記弁棒9の端部に設けられ前記カム孔6と係合するカムフォロワ10と、前記カム体7にスプリング11を介して接続され前記シールベローズ13の他端が接続されたスライド体12と、前記カム体7の下面に形成され前記スプリング11の上端を受ける第1凹部7aと、前記スライド体12の上面に形成され前記スプリング11の下端を受ける第2凹部12cとを備え、前記スプリング11の長手方向は前記弁棒9の長手方向に沿って配置され、前記カム体7の直動により前記弁棒9及び弁体8が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダ2,3の内側にはガイド孔50を有する一対のガイド体51が設けられ、前記スライド体12に設けられたガイドローラ52が前記ガイド孔50に係合され、前記カム孔6は、前記カムフォロワ10を直線案内する直線案内部6aと前記カムフォロワ10をロックするためのロック部6bとを有すると共に前記直線案内部は互いに傾斜角度が異なる第1カムリードD1及び第2カムリードD2を有し、前記弁体8が閉弁時には、前記第1カムリードD1で前記Oリング8aが前記弁座1Baに接し、前記第2カムリードD2で前記Oリング8aが締められ、開弁時には前記第2カムリードD2で前記Oリング8aの前記弁座1Baに対する粘着力に抗して前記Oリング8aをはがすように構成したことを特徴とする無しゅう動真空ゲートバルブ。」
と訂正する。
▲2▼段落番号【0005】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【課題を解決するための手段】
本発明による無しゅう動真空ゲートバルブは、弁箱の弁座を有する開口を、前記弁箱にその一端が設けられたシールベローズを介して移動しかつ傾動する弁棒に設けられた弁体で開閉するようにした無しゅう動真空ゲートバルブにおいて、前記弁箱上に設けられた複数のシリンダの各ロッド端に設けられた連結体と、前記弁体に設けられたOリングと、前記連結体に設けられカム孔を有するカム体と、前記弁棒の端部に設けられ前記カム孔と係合するカムフォロワと、前記カム体にスプリングを介して接続され前記シールベローズの他端が接続されたスライド体と、前記カム体の下面に形成され前記スプリングの上端を受ける第1凹部と、前記スライド体の上面に形成され前記スプリングの下端を受ける第2凹部とを備え、前記スプリングの長手方向は前記弁棒の長手方向に沿って配置され、前記カム体の直動により前記弁棒及び弁体が直動及び傾動を行うと共に、前記各シリンダの内側にはガイド孔を有する一対のガイド体が設けられ、前記スライド体に設けられたガイドローラが前記ガイド孔に係合され、前記カム孔は、前記カムフォロワを直線案内する直線案内部と前記カムフォロワをロックするためのロック部とを有すると共に前記直線案内部は互いに傾斜角度が異なる第1カムリード及び第2カムリードを有し、前記弁体が閉弁時には、前記第1カムリードで前記Oリングが前記弁座に接し、前記第2カムリードで前記Oリングが締められ、開弁時には.一前記第2カムリードで前記Oリングの前記弁座に対する粘着力に抗して前記Oリングをはがすようにした構成である。」
と訂正する。
▲3▼段落番号【0009】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0009】前記カム体7には、複数のスプリング11を介して断面コ型をなすスライド体12が接続され、前記弁棒9はこのスライド体12の貫通孔12aを貫通している。前記スライド体12と弁棒9は密合状に一体化接続され、このスライド体12の凹部12b内には、前記弁箱1のボンネットフランジ1a上にその一端13aを固定したシールベローズ13の他端13bが接続されている。従って、弁棒9が貫通する弁箱1の貫通孔1Aは、前述のシールベローズ13及びスライド体12によって密閉状に保持され、弁棒9作動時における弁箱1内の機密が保持される。
また、前記スプリング11は、カム体7の下面に形成され前記スプリング11の上端を受ける第1凹部7aと、前記スライド体12の上面に形成され前記スプリング11の下端を受ける第2凹部12cとの間に伸縮自在に位置決め配置されていると共に、前記スプリング11の長手方向は前記弁棒9の長手に沿って配置される。」
と訂正する。
▲4▼段落番号【0010】の記載を、明瞭でない記載の釈明を目的として、
「【0010】前記カム孔6は、図2から図4で示すように、カムフォロワ10を直線案内する直線案内部6aと、このカムフォロワ10をメカニカルにロックするためこの直線案内部6aと連続形式のロック部6bと、から構成されており、このロック部6bにカムフォロワ10が係合すると、弁棒9はロックされた状態となるように構成されている。また、前記各シリンダ2,3の内側に設けた縦孔50内には、図5で示すように、前記スライドたい12の外側に設けたガイドローラ52が係合されている。
前記カム孔6の前記直線案内部6aにおける第1カムリードD1及びD2に相当する部分の傾斜角度は、後述の図6で示されるように、互いに異なって形成されている。」
と訂正する。
▲5▼願書に添付した図面の【図1】、【図2】、【図3】、【図4】、及び【図6】の記載を、明瞭でない記載の釈明、及び誤記の訂正を目的として、添付図面の通り訂正する。
異議決定日 1999-10-27 
出願番号 特願平6-176899
審決分類 P 1 651・ 161- YA (F16K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 山口 直
清水 信行
登録日 1998-04-03 
登録番号 特許第2766190号(P2766190)
権利者 入江工研株式会社
発明の名称 無しゅう動真空ゲートバルブ  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 池谷 豊  
代理人 古川 秀利  
代理人 池谷 豊  
代理人 曾我 道治  
代理人 古川 秀利  
代理人 福井 宏司  
代理人 澤木 紀一  
代理人 曾我 道照  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 曾我 道治  
代理人 澤木 誠一  
代理人 福井 宏司  
代理人 長谷 正久  
代理人 曾我 道照  
代理人 長谷 正久  

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