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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 D05C 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 D05C |
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管理番号 | 1006182 |
異議申立番号 | 異議1998-75710 |
総通号数 | 6 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-06-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-11-24 |
確定日 | 1999-09-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2756842号「タフテッド一次基布」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2756842号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続きの経緯 特許第2756842号の請求項1及び2に係る発明は、平成1年10月27日に特許出願され、平成10年3月13日にその特許の設定登録がなされ、その後、萩原工業株式会社により特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年4月16日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 (1)訂正事項 a.特許請求の範囲の請求項1,2にそれぞれ記載された「加撚した」を「加撚して丸味を帯びて収束した形態の」に訂正する。 b.明細書第5頁第9〜10行の「加撚した糸条」を、「加撚して丸味を帯びて収束した形態の糸条」と訂正する。 c.明細書第6頁第7行の「・・・完成した。」の後に、改行して「ここに本発明おいて、“加撚”とは、扁平断面のプラスチックテープを捩って断面が丸味を帯びて収束した形態の糸条にすることを意味する。」を追加して訂正する。 d.明細書第12頁第3〜5行目の「第2図は本発明に係るタフテッド一次基布を構成するプラスチックテープの拡大断面図」を、「第2図は本発明に係るタフテッド一次基布を構成する糸条を加撚される前の扁平断面のプラスチックテープの拡大断面図」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存在 上記訂正事項aは特許請求の範囲の減縮にを目的とする訂正であり、また、上記訂正事項b〜dは明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)訂正明細書請求項1及び2に係る発明 訂正明細書の請求項1及び2に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されとおりの次のものである。 「1.長さ方向Nに延伸された扁平断面のプラスチックテープ11を加撚して丸味を帯びて収束した形態の糸状12を経糸13と緯糸14を用いて織成した基布であり、そのプラスチックテープ11の幅方向Wに5本/mm以上の密度本数をもって厚みtが薄くなる筋溝15が長さ方向Nに連続して多数形成されており、経糸間13・13′と緯糸間14・14′がそれぞれ密着しておらず、経糸13・13′と緯糸14・14′に囲まれた布目隙間16の形成されていることを特徴とするタフテッド一次基布。」 「2.厚みtが2〜300μで幅wが1〜20mmの長さ方向Nに延伸されたプラスチックテープ11を0.2〜2回/cmに加撚して丸味を帯びて収束した形態の太さdが300〜5000デニールの糸状12を経て糸13と緯糸14を用いて織成した基布であり、そのプラスチックテープ11の幅方向wに5本/mm以上の密度本数をもって厚みsが(s≦0.8t)と薄くなる筋溝15が長さ方向Nに連続して多数形成されており、その幅aが左右の筋溝15に挟まれて太くなる畝18の幅bよりも狭く、その畝18が3〜100デニールのマルチフィラメント相応の太さになっており、経糸間13・13′と緯糸間14・14′がそれぞれ密着しておらず、経糸13・13′と緯糸14・l4に囲まれた大きさgが経糸13(緯糸14)の織上間隔P(P’)の3/10以上(≧0.3P)の布目隙間16が全面に形成されていることを特徴とするタフテッド一次基布。」 (4)独立特許要件の判断 訂正明細書の請求項1および2に係る発明(以下、「本件発明1」「本件発明2」という)に対して、当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭50-147125号公報)には、タフテッドカーペット用一次基布に関して、「甘撚された扁平糸を経糸、あるいは緯糸、または経糸および緯糸に用い、大小異なる可視隙間が基布全面に亘って分布していることを本発明の特徴とする」(第2頁左上欄第19行〜右上欄第2行)と記載されている。 また、当審が通知した取消理由で引用した刊行物2(実公昭59-28053号公報)には、タフテッドカーペット用一次基布等の一次基布用フラットヤーンに関して、「延伸方向に連続した溝部を0.1〜0.4mm間隔で複数本有する延伸ポリオレフィンフィルムよりなる基布用フラットヤーン」(第1頁第2欄第28〜30行)と記載されている。 また、当審が通知した取消理由で引用した刊行物3(実願昭60-203660号(実開昭62-110282号)のマイクロフィルム)は、カーペット用二次基布に関するもので、「延伸方向に連続した複数本の溝を有するポリオレフインの延伸フィルムを・・・・加撚して得た繊維(ヤーン)を経糸に用い、・・・・所望の良好なカーペット用二次基布が得られる」(第3頁第12〜19行)と記載されており、さらに、「このような筋入り延伸フィルムより得たヤーンは、カーペット用二次基布の経糸として使用した場合に、前記したポリオレフィンのフラットヤーンあるいはモノフィラメントに比べて、接着剤の保持が良好でカーペット裏地との接着強度が改善される・・・・」(第4頁第13〜18行)と記載されている。 <対比・判断> (a)本件発明1の独立特許要件について ここで、本件発明1と上記刊行物1乃至3に記載されている発明とを対比する。 刊行物1には、タフテッドカーペット用一次基布を形成する扁平糸を甘撚する点は記載されいるものの、「加撚して丸味を帯びて収束した形態」にすることは記載されていない。さらに、扁平糸に「筋溝が長さ方向に連続して多数形成」されている点も記載されていない。 刊行物2には、タフテッドカーペット用一次基布を形成する扁平糸に筋溝を形成する点は記載されているものの、扁平糸を加撚することは全く記載されておらず、当然「加撚して丸味を帯びて収束した形態」にすることも記載されていない。 刊行物3は、二次基布に関するもので、技術の対象を異にし、また、上記のように筋溝を形成する目的等も異なるから、本件発明を示唆するものではない。 すなわち、上記刊行物1乃至3には、本件発明1の構成要件である「(タフテッドカーペット用一次基布を形成する扁平糸を)加撚して丸味を帯びて収束した形態」にすることは記載されておらず、本件発明1はこの構成要件により明細書記載の顕著な効果を有するから、本件発明1は、上記刊行物1乃至3に記載された発明から容易に想到し得るものとは認められない。 また、他に本件発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明1は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (b)本件発明2の独立特許要件について 本件発明2も「(タフテッドカーペット用一次基布を形成する扁平糸を)加撚して丸味を帯びて収束した形態」を発明の構成要件とするものであるのに対し、上記刊行物1乃至3には該構成要件が記載されていないから、本件発明1の場合と全く同様の理由で、本件発明2は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議の申立てについての判断 (1)申立の理由の概要 申立人、萩原工業株式会社は、本件発明1及び本件発明2は、甲第1号証(特開昭50-147125号公報;上記刊行物1と同じ)、甲第2号証(実公昭59-28053号公報;上記刊行物2と同じ)、甲第3号証(実開昭61-73679号公報;上記刊行物3の公開公報であり、実質的に刊行物3と同じ)、甲第4号証((特開平1-132864号公報)、甲第5号証(実開昭61-73679号公報)及び甲第6号証(特公昭61-27510号公報)をもとに容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。 また、請求項1,2に記載の「加撚」の概念が不明確であり、特許を受けようとする発明が明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を取り消すべきと主張している。さらに、請求項2の記載において、厚みsの上限のみを示す数値限定がなされており下限が示されていない点、および布目隙間の大きさgの下限のみを示す数値限定がなされており上限が示されていない点から、特許を受けようとする発明が明確でないとし、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を取り消すべきと主張している。 (2)判断 本件発明1,2は、上記II.(3)で示したように、甲第1乃至3号証(刊行物1乃至3)に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとすることはできない。また、甲第4乃至6号証のいずれの刊行物にも、本件発明1および2の構成要件である「(タフテッドカーペット用一次基布を形成する扁平糸を)加撚して丸味を帯びて収束した形態」にすることは記載されていないから、結局、本件発明1,2は、上記II.(3)で示したのと同様の理由で、甲第1乃至6号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとすることはできない。 また、訂正により「加撚」が「扁平断面のプラスチックテープを捩って断面が丸味を帯びて収束した形態の糸状にすることを意味する」ことが明確になった。よって「加撚」の概念が明確になり、「加撚」の概念の不明確に基づく特許取消の主張はその根拠を失った。また、上限または下限のみを示す数値限定は、それによって、特許を受けようとする発明の構成を不明瞭にするものであるものと認められないから、この点に関する異議申立人の主張は失当である。 (3)むすび したがって、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1,2の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1,2の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 タフテッド一次基布 (57)【特許請求の範囲】 1, 長さ方向Nに延伸された扁平断面のプラスチックテープ11を加撚して丸味を帯びて収束した形態の糸条12を経糸13と緯糸14に用いて織成した基布であり、そのプラスチックテープ11の幅方向wに5本/mm以上の密度本数をもって厚みtが薄くなる筋溝15が長さ方向Nに連続して多数形成されており、経糸間13・13′と緯糸間14・14′がそれぞれ密着しておらず、経糸13・13′と緯糸14・14′に囲まれた布目隙間16の形成されていることを特徴とするタフテッド一次基布。 2, 厚みtが2〜300μで幅wが1〜20mmの長さ方向Nに延伸されたプラスチックテープ11を撚数0.2〜2回/cmに加撚して丸味を帯びて収束した形態の太さdが300〜5000デニールの糸条12を経糸13と緯糸14に用いて織成した基布であり、そのプラスチックテープ11の幅方向Wに5本/mm以上の密度をもって厚みSが(S≦0.8t)と薄くなる筋溝15が長さ方向Nに連続して多数形成されており、その幅aが左右の筋溝15に挟まれて太くなる畝18の幅bよりも狭く、その畝18が3〜100デニールのマルチフイラメント相応の太さになっており、経糸間13・13′と緯糸間14・14′がそれぞれ密着しておらず、経糸13・13′と緯糸14・14′に囲まれた大きさgが経糸13(緯糸14)の織上間隔P(P′)の3/10以上(≧0.3P)の布目隙間16が全面に形成されていることを特徴とするタフテッド一次基布。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、ニードルによってパイル糸を突き差してパイルを形成し、カットや人工芝生等のパイル地を作るためのタフテッド一次基布に関するものである。 〔従来の技術〕 当初タフテッド一次基布(以下、単に基布とも言う。)にはジュート基布が使用されていたが、近時はジュートと異なり腐食せず衛生的で工場生産により安定供給し得る安価なポリプロピレン・テープヤーンを経緯に用いた基布が汎用されている。 この基布は、それを開示した特公昭42-826が示す通り、ポリプロピレン・テープヤーンがニードルを差し込んだときに長さ方向に長く引き裂かれ易く切断し難いと言う利点を生かし、そのパイル保持力を高めるために加撚せず扁平なテープのままの状態で経緯に用い、経糸間や緯糸間に布目隙間が出来ないように緻密に織成して作られている。 〔発明が解決しようとする課題〕 このような訳で、ポリプロピレン以外のナイロン等のテープヤーンで一次基布を作る場合にも、それを長さ方向に延伸させて縦割れし易くして緻密に織成することになるのであるが、その様に延伸処理したテープヤーンは余りに細かく縦割れし易いので、その縦割れした割れ目20の周辺には細かく引き裂かれた繊維毛羽19が出来易い。 ところでタフテイング時には、ニードルの表面が如何に滑らかに仕上げられ、又、その先端が如何に尖鋭になっているとしても、基布17に突き刺さるのはニードル22だけではなく、その先端を貫通したパイル糸21も同時に差し込まれので、第3図に図示する如く縦割れしてテープヤーン23の割れ目20に沿って出来る繊維は、それが細かくなればなる程ニードルやパイル糸からの衝撃を受け、特に緯糸には多数のニードルが同時に差し込まれるので、そのニードル間で引っ張られて引きちぎられ易くなる。 この様な割れ目の周辺ではテープヤーンに細かい破断が起きるので基布17の強度は弱くなり、又、パイル長が5mm前後の簡易敷物程度のパイル地では破断したテープヤーンの一部が毛羽19となってパイル面に突き出され、特にシャーリング工程を通さないループパイルのパイル地では、その毛羽19が不精髭の様にパイル面に残るので外観を見苦しくしてしまう。 〔発明の目的〕 そこで本発明は、タフテッドによる強度低下を少なくし、パイル面に破断毛羽の出ないテープヤーンに成るタフテッド一次基布を得ることを目的とする。 〔発明の構成〕 本発明に係るタフテッド一次基布17は上記の目的を達成するものであり、長さ方向Nに延伸された扁平断面のプラスチックテープ11を加撚して丸味帯びて収束した形態の糸条12を経糸13と緯糸14に用いて織成した基布であり、そのプラスチックテープ11の幅方向wに5本/mm以上の密度本数をもって厚みtが薄くなる長さ方向Nに連続した筋溝15が多数形成されており、経糸間13・13′と緯糸間14・14′がそれぞれ密着しておらず、経糸13・13′と緯糸14・14′に囲まれた布目隙間16が形成されていることを特徴とするものである。 即ち本発明は、本願発明者が先に開示した特公昭63-14121に係る目粗な基布にタフテイングする場合や特開昭58-208459に係るマルチフイラメント糸を緯糸に用いた緻密な基布にタフテイングする場合には基布の強度低下や基布繊維の毛羽立ち等の問題が生じないことからして、経緯間に経糸・緯糸の目ずれを許す所要の隙間を開けて基布を織成すると共に、テープヤーンが余り細かく縦割れしないようにすれば上記の問題が解決されるであろうと知見を得て完成された。 ここに本発明において、“加撚”とは、扁平断面のプラスチックテープを捩って断面が丸味を帯びて収束した形態の糸条にすることを意味する。 テープ11の厚みtは2〜300μで好ましくは10〜100μ、テープ11の幅wは1〜20mmで好ましくは3〜10mmとし、それによって300〜5000デニール好ましくは500〜3000デニールのマルチフイラメント糸相応の太さの糸条12が出来るようにする。 テープ11の素材には主としてポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンの各繊維樹脂が適用される。 本発明において「筋溝(15)」とは、テープ11の長さ方向Nに連続しで薄くなる部分を意味し、必ずしも第2図に図示する如く鋭利に縁取って付ける必要はない。 この筋溝15の密度本数は、それを表裏同じ位置に付けるときは表裏の筋溝を合わせて1本と数え、表裏に位置を変えて付けるときはその表裏の各筋溝をそれぞれ1本と数える。 筋溝の密度本数が5本/mm以上とは、延伸されてテープの長さ方向に配向した繊維分子の数に相応する程の筋溝を付けることを意味するものではなく、テープを溶融紡糸する金口に刻設し得る限度内で筋溝を形成すべきものと解されるべきであり、具体的に言えば左右の筋溝15に挟まれて太くなる畝18が筋溝に沿って引き裂くとき太さが3〜100デニール好ましくは10〜30デニール程度のフイラメントに引き裂けるように紡糸金口に刻設する筋溝の数を設定する。 筋溝15の深さは、その付設された部分のテープの厚みsがテープ全体ないし畝18の部分の厚みtの4/5以下(s≦0.8t)好ましくは2/3以下(3s≦2t)になるようにし、筋溝15の幅aを畝部分18の幅bよりも狭くなるようにするとよい。 テープ18の加撚は、テープ11がそれ相応の太さ(デニール)のマルチフーイラメント糸の様に丸く収束した形態をとる0.2〜2回/cm程度にすればよく、例えば幅wが4〜5mmで太さが500〜1500デニールのテープ11では撚数が長さ1cmにつき1回程度になる様にすればよい。 布目隙間16の幅g(g′)と経糸13(緯糸14)の織上間隔P(P′)の3/10以上(g≧0.3P)にするとよく、人工芝生用パイル地の基布17では織上間隔Pと同等以上か1mm以上(g≧1mm)にするとよい。 〔発明の効果〕 本発明によると、 (1)一次基布の経糸と緯糸が共に毛羽立たず滑り易い延伸したプラスチックテープに成り、経緯各糸間に布目隙間16があり、而も、経緯各糸が加撚されて丸味を帯びているのでタフテイング時にニードルを避けるように経緯に目ズレを起こす。 このためニードルは、緯糸14と緯糸14′との間の隙間16に差し込まれ、緯糸に突き刺さる度合いが少なくなり、タフテイングによる基布の強度低下が避けられる。 (2)ニードルが経糸や緯糸に突き刺さる場合でも、ニードルから受ける応力は強度の弱い筋溝15に集中し、その筋溝に沿って綺麗に経割れを生じ、その割れ目の周縁で細かく割れるとしても筋溝15に沿って畝18の太さ相応のフイラメントに開繊される様に割れ、それ以下に細かく割れることがないので、経緯各糸内で長さ方向に細かく破断すると言うことがなく、従って、この点でもタフテイングによる基布の強度低下が避けられ、タフテイングによって破断毛羽がパイル面に突き出されると言うこともなくなる。 この様に、筋溝15は糸条12が大きく綺麗に経割れし易いようにプラスチックテープ11の長さ方向Nに連続した強弱を付けるものであるから、筋溝15の深さは、その付設された部分のテープの厚みsがテープ全体ないし畝18の部分の厚みtの4/5以下(s≦0.8t)好ましくは2/3以下(3s≦2t)になるようにし、又、筋溝15の幅aが広くなると筋溝15の中で細かく引き裂かれてしまうので、それを防ぐうえで筋溝15の密度本数を多くし、その幅aを畝部分18の幅bよりも狭くする。 (3)テープ11は加撚されており、テープ11自体の伸縮量xは加撚により捩れた角度分(捩れ角α)だけ少なくなって経緯糸13・14の長さ方向Nでの伸縮量y(=x×cosα)となって現われることになるので、基布17の経緯各方向Lでの伸縮が少なくなり、それによってパイル地は強く寸法安定性のあるものとなる。 (4)経緯各糸13・14には筋溝15と加撚による撚溝(筋)24があり、それらは裏打加工によって塗布されるバッキング剤のアンカリングをよくするので、経緯各糸13・14はバッキング剤に補強され一層伸縮し難くなり、又、その積層したバッキング層も剥離し難く、この点で本発明の基布17はパイル地に暑いバッキング層を積層してタイルカットや人工芝生を作る場合に特に有効である。 (5)前記の如く経緯各糸が滑り易く目ズレを起こし易いので、人工芝生用のパイル糸の様に太いパイルをタフテイングする場合には、その差し込まれた緯糸間g′が広げられてパイルの太さ相応の大きな隙間がステッチ間、つまりタフテイングされて左右隣合うパイル糸のステッチ列とステッチ列の間に出来る。 このため本発明の基布17は、透水性の人工芝生や通気・透湿性のある屋内カーペットを作るのに最適である。 尚、特に透水性を要求される人工芝生用のパイル地を得る場合には、布目隙間16の大きさgを経緯各糸の太さ相応分または1mm以上にしておくとよい。 以上の通り本発明に係るタフテイング一次基布17は、パイル面に基布の破断毛羽が突き出たりせず、伸縮し難く引張強度の強い寸法安定性に優れた耐久性のある高品質のタフテッドパイル地を得るに好都合である。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明に係るタフテッド一次基布の断面拡大斜視図、第2図は本発明に係るタフテッド一次基布を構成する糸条の加撚される前の扁平断面のプラスチックテープの拡大断面図、第3図は従来のタフテッド一次基布のニードル差し込み箇所での一部切截拡大斜視図である。 11…テープ、 12…糸条、 13…経糸、 14…緯糸、 15…筋溝、 16…布目隙間、 17…タフテッド一次基布、 18…畝、 19…破断毛羽、 20…割れ目、 21…パイル糸、 22…ニードル、 23…テープヤーン、 24…撚溝、 g…布目隙間の大きさ、 L…経・緯方向、 N…長さ、 P…経緯密度間隔、 s…厚み、 t…厚み、 w…幅、 α…捩れ角。 |
訂正の要旨 |
<訂正の要旨> ▲1▼訂正事項a 特許第2756842号明細書の特許請求の範囲の請求項1,2を、特許請求の範囲の減縮を目的として、それぞれ、 「1.長さ方向Nに延伸された扁平断面のプラスチックテープ11を加撚して丸味を帯びて収束した形態の糸状12を経て糸13と緯糸14を用いて織成した基布であり、そのプラスチックテープ11の幅方向wに5本/mm以上の密度本数をもって厚みtが薄くなる筋溝15が長さ方向Nに連続して多数形成されており、経糸間13・13′と緯糸間14・14′がそれぞれ密着しておらず、経糸13・13′と緯糸14・14′に囲まれた布目隙間16の形成されていることを特徴とするタフテッド一次基布。」 「2.厚みtが2〜300μで幅wが1〜20mmの長さ方向Nに延伸されたプラスチックテープ11を0.2〜2回/cmに加撚して丸味を帯びて収束した形態の太さdが300〜5000デニールの糸状12を経て糸13と緯糸14を用いて織成した基布であり、そのプラスチックテープ11の幅方向Wに5本/mm以上の密度本数をもって厚みsが(s≦0.8t)と薄くなる筋溝15が長さ方向Nに連続して多数形成されており、その幅aが左右の筋溝15に挟まれて太くなる畝18の幅bよりも狭く、その畝18が3〜100デニールのマルチフィラメント相応の太さになっており、経糸間13・13′と緯糸間14・14′がそれぞれ密着しておらず、経糸13・13′と緯糸14・14′に囲また大きさgが経糸13(緯糸14)の織上間隔P(P’)の3/10以上(≧0.3P)の布目隙間16が全面に形成されていることを特徴とするタフテッド一次基布。」と訂正する。 ▲2▼訂正事項b 明細書第5頁第9〜10行の「加撚した糸条」を、不明瞭な記載の釈明を目的として、「加撚して丸味を帯びて収束した形態の糸条」と訂正する。 ▲3▼訂正事項c 明細書第6頁第7行の「・・・完成した。」の後に、不明瞭な記載の釈明を目的として、改行して「ここに本発明おいて、“加撚”とは、扁平断面のプラスチックテープを捩って断面が丸味を帯びて収束した形態の糸条にすることを意味する。」を追加して訂正する。 ▲4▼訂正事項d 明細書第12頁第3〜5行目の「第2図は本発明に係るタフテッド一次基布を構成するプラスチックテープの拡大断面図」を、不明瞭な記載の釈明を目的として、「第2図は本発明に係るタフテッド一次基布を構成する糸条を加撚される前の扁平断面のプラスチックテープの拡大断面図」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-09-10 |
出願番号 | 特願平1-280346 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(D05C)
P 1 651・ 534- YA (D05C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松縄 正登 |
特許庁審判長 |
石井 勝徳 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 西村 綾子 |
登録日 | 1998-03-13 |
登録番号 | 特許第2756842号(P2756842) |
権利者 | 森田産業株式会社 |
発明の名称 | タフテッド一次基布 |
代理人 | 千葉 茂雄 |
代理人 | 笠原 英俊 |
代理人 | 千葉 茂雄 |