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審決分類 |
審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:2 H04N |
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管理番号 | 1006867 |
審判番号 | 補正審判1999-50103 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-02-05 |
種別 | 補正却下不服の審決 |
審判請求日 | 1999-08-26 |
確定日 | 1999-12-15 |
事件の表示 | 平成3年特許願第206276号「信号処理装置」において、平成10年4月20日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原決定を取り消す。 |
理由 |
1.本願の経緯 本願は平成3年7月23日の出願であって、その後、平成10年4月20日付けで明細書の補正がなされたところ、この補正は、明細書の要旨を変更するものとして、平成11年7月12日付けで補正の却下の決定がなされた。 2.補正却下の決定の概要 この決定の理由の概要は、補正された次に掲げる事項▲1▼▲2▼が、本願出願当初の明細書及び図面に記載された事項の範囲内でないとの理由である。 ▲1▼シフトクロックfSHIFTが、NTSC方式においてはfsc(=3.58MHz)で、PAL方式においては4fsc/5(=3.55MHz)であること ▲2▼メモリを、NTSC方式とPAL方式で共用すること 3.補正された事項▲1▼▲2▼についての検討 そこで、上記補正事項▲1▼▲2▼について検討する。 ▲1▼補正事項▲1▼について、本願出願当初の明細書及び図面、特に、図1,2及びその説明である段落【0013】【0015】【0016】【0018】【0021】【0026】には、次のとおりのことが記載されている。 段落【0013】には、「Y信号のサンプリング周波数fsとして、NTSC方式の場合には4fsc(=14.31818MHz=14.3MHz)を用い、PAL方式の場合には16fsc/5(=14.18758MHz=14.2MHz)を用いるものとする。」 段落【0015】には、「NTSC方式に対応するように動作させる場合にはY信号は、サンプリング周波数信号4fsc(=14.3MHz)でディジタル化され、PAL方式に対応するように動作させる場合にはY信号は、サンプリング周波数信号16fsc/5(=14.2MHz)でディジタル化されフレームメモリ21に記憶される。」 段落【0016】には、「信号処理装置をNTSC方式に対応するように動作させる場合には、色差信号R-Y、B-Yは、サンプリング周波数信号fsc(=3.58MHz)でディジタル化され、PAL方式に対応するように動作させる場合には色差信号R-Y、B-Yは、サンプリング周波数信号4fsc/5(=3.62MHz(3.55MHzの誤り))でディジタル化されフレームメモリ22,23に記憶される。」 段落【0018】には、「発振器(OSC)100は、Y信号のサンプリング周波数信号fs、すなわち図1に示した信号処理装置をNTSC方式に対応するように動作させる場合のサンプリング周波数信号4fsc(=14.31818MHz)と、PAL方式に対応するように動作させる場合のサンプリング周波数信号16fsc/5(=14.18758MHz)を選択的に出力するように構成されている。」 段落【0021】には、「電圧制御発振器(VCO)111は、前記位相誤差電圧に応じて制御される周波数信号(4fsc=17.734475MHz)をスイッチ101の入力端子Pと5分周器112に出力する。5分周器112は、前記VCO111より供給される信号を1/5に分周し、位相比較器109に供給するとともに、PAL方式に対応するように動作させる場合におけるシフトクロックfSHIFTとしてスイッチ108の入力端子Pを介して図1のレジスタ33、34に供給される。したがって、位相比較器109と、LPF110とVC0111と5分周器112は、4分周器107より出力される信号と5分周器112より出力される信号との位相をロックさせるPLL回路を構成している。」 段落【0026】には、「PAL方式に対応したクロマ信号を形成する場合の動作を説明する。先ず、図1において説明したように、PAL方式に対応した色差信号R-Y、B-Yは、サンプリング周波数fs/4(=4fsc/5=3.62MHz(3.55MHzの誤り))でそれぞれA/D変換器12、13によりディジタル化され、それぞれフレームメモリ22、23に記憶される。」 これらの記載から、図2において、OSC(100)の発振周波数「fs」が、NTSC方式の場合には、4fsc(fsc=3.58MHz)で、PAL方式の場合には、16fsc/5(fsc=4.43MHz)であり、VCO(111)はPAL方式において使用されるものであって、その発振周波数は4fsc(fsc=4.43MHz)である。 そうすると、NTSC方式においては、OSC(100)からの4fsc(fsc=3.58MHz)が4分周されてfSHIFTとなるから、このfSHIFTはfsc(=3.58MHz)であり、PAL方式においては、VCO(111)からの4fsc(fsc=4.43MHz)が5分周されてfSHIFTとなるから、このfSHIFTは4fsc/5(=3.55MHz)(fsc=4.43MHz)である。 したがって、上記補正事項▲1▼は、本願出願当初の明細書及び図面に記載されているといえる。 なお、シフトクロックfSHIFTが、NTSC方式の場合には周波数fsc/4(=0.895MHz)であり、PAL方式の場合には周波数fsc/5(=0.887MHz)であることも記載されており、この補正によって、fSHIFTを明確にしたと認められる。 ▲2▼補正事項▲2▼について、本願出願当初の明細書及び図面、特に、図1及び段落【0007】【0015】【0016】には、次のとおりのことが記載されている。 段落【0007】には、「PAL方式に対応させた場合には、Y信号のサンプリング周波数fsは4fsc(=17.7MHz)となり、水平解像度が620本程度となり、フレームメモリ2Yの容量は1サンプル当り8ビットとして3.5Mビット必要となるので、NTSC方式に対応させた場合に比べ、より大きな容量のフレームメモリ2Yが必要になる。」 段落【0015】と【0016】については、上記3.▲1▼段落【0015】と【0016】を参照。 これらの記載から、図1において、PAL方式においても、NTSC方式においても、Mem(21)には、Y信号を記憶し、Mem(22,23)には、色差信号(R-Y,B-Y)を記憶することが記載されている。 すなわち、メモリ(21,22,23)を、NTSC方式とPAL方式で共用することが記載されている。 したがって、上記補正事項▲2▼は、本願出願当初の明細書及び図面に記載されているといえる。 4.本願発明の実施例についての検討 なお、本願出願当初の明細書(特に、特許請求の範囲及び段落【0027】)及び図面(特に、図1,2,3)に記載された事項をみると、本願発明の実施例は、次に掲げるものと認められるところ、補正された特許請求の範囲には、このようなものは記載されていない。 「PALカラーテレビジョン方式の色副搬送波周波数(fsc)の4倍の周波数(fs)を有する第1のクロック信号を発生する第1の発振器(111)と、 前記第1の発振器から発生される第1のクロック信号の周波数(fs)の4/5倍の周波数を有する第2のクロック信号を発生する第2の発振器(100)と、 前記第1の発振器から発生される第1のクロック信号の位相を、前記第2の発振器から発生される第2のクロック信号の位相に同期させる位相同期制御回路(109)と、 2種類の色差信号を入力し、入力された2種類の色差信号を夫々、前記第2の発振器から発生される第2のクロック信号を4分周したクロック信号でディジタル化し、2種類の色差データを出力する変換回路(12,13)と、 前記変換回路より出力される2種類の色差データを一時記憶する為のメモリ(22,23)と、 前記メモリから出力される2種類の色差データを入力し、入力された2種類の色差データを夫々、前記位相同期制御回路によって前記第2の発振器から発生される第2のクロック信号を4分周したクロック信号に位相同期された前記第1の発振器から発生される第1のクロック信号を5分周したクロック信号を用いて、出力するシフトレジスタ回路(33,34)と、 前記シフトレジスタ回路から出力される2種類の色差データを入力し、入力された2種類の色差データから前記第1の発振器から発生される第1のクロック信号でPALカラーテレビジョン方式のクロマ信号をエンコードするエンコード回路(40)とを有することを特徴とする信号処理装置」 すなわち、本願出願当初の特許請求の範囲に記載された第1の発振器(100)と第2の発振器(111)は、補正された特許請求の範囲の記載では、第2の発振器(100)と第1の発振器(111)と記載され、符号(100)を第1の発振器から第2の発振器と補正し、符号(111)を第2の発振器から第1の発振器と補正しているため、用語が統一して記載されていない。 さらに、補正された特許請求の範囲の記載によると、第1の発振器から発生される第1のクロック信号でA/D変換(12,13)し、この第1のクロック信号でエンコード(40)しているが、同じクロック信号でA/D変換(12,13)しエンコード(40)することは、本願出願当初の明細書及び図面には記載されていない。 以上のとおり、本願は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する記載要件を満たしていないといえる。 5.むすび したがって、本願明細書の記載要件についてはともかく、上記事項▲1▼▲2▼とする補正は、本願出願当初の明細書及び図面に記載された事項の範囲内の補正であるから、原決定は妥当でない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 1999-11-24 |
出願番号 | 特願平3-206276 |
審決分類 |
P
1
7・
2-
W
(H04N)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 乾 雅浩 |
特許庁審判長 |
谷川 洋 |
特許庁審判官 |
小林 秀美 鈴木 朗 |
発明の名称 | 信号処理装置 |
代理人 | 渡部 敏彦 |