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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1006904
審判番号 審判1995-8544  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1995-04-26 
確定日 1999-11-24 
事件の表示 平成3年特許願第103800号「ビデオ表示システムおけるオーバレイの制御装置及び制御方法」拒絶査定に対する審判事件(平成4年8月17日出願公開、特開平4-226495)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は平成3年4月9日(パリ条約による優先権主張1990年5月10日、米国)に出願され、平成7年1月20日付けで拒絶査定がなされたところ、平成7年4月26日付けで審判請求がなされ、同日に手続補正書が提出された。
そして、請求項に係る発明は、上記審判請求時の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1にかかる発明(以下「本願発明」という)は下記のとおりのものである。

【請求項1】
ビデオ表示システムにおいてオーバレイパターンを定義された領域に関連づけるための装置であって、
複数の表示領域を定義するための手段と、
前記表示領域に適用されるオーバレイパターンを定義するための手段と、
前記オーバレイパターンの操作を前記表示領域毎に選択的に制御するための手段と、
を含むビデオ表示システムにおけるオーバレイの制御装置。
2.引用文献の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用した引用文献1には以下のとおりの記載がある。
引用文献1:特開昭60-176093号公報
「複数の画像情報の重ね合せ表示が可能な画像表示装置において、
画像情報を記憶する複数個の画像メモリと、
複数の画像情報により発生する重ね合せ領域にどの画像情報を表示するかの画像選択情報を記憶する画像選択メモリと、
前記画像メモリからの画像信号及び画像選択メモリからの画像選択信号に基づき1又は2以上の所望の画像情報を選択する画像表示制御回路と、を含み、
重ね合せ領域においては、1又は2以上の所望の画像情報が選択表示されることを特徴とする画像表示装置。」(特許請求の範囲)
「第1図において、画像情報を記憶するために、7個の画像メモリ10-1〜10-7が設けられ、更に、複数の画像情報により発生する重ね合せ領域にどの画像情報を表示するかの画像選択情報を記憶するために、画像選択メモリ12-1〜12-3が設けられている。画像メモリ10-1〜10-7からの画像信号100-1〜100-7は、それぞれ、並直列変換器14-1〜14-7を介して画像表示制御回路16に供給され、同様にして、画像選択メモリ12-1〜12-3からの画像選択信号102-1〜102-3は、それぞれ、並直列変換器18-1〜18-3を介して画像表示制御回路16に供給される。そして、画像表示制御回路16は、画像信号100-1〜100-7及び画像選択信号102-1〜102-3に基づいて所望の画像情報を選択し、表示信号104を表示器20に供給し、これにより、表示器20の重ね合せ領域においては、所望の画像情報が選択表示されることとなる。
・・
第2A,2B,2C図には、画像メモリ10-1,10-2,10-3の設定状況が示され、第2D図には、画像メモリ10-1,10-2,10-3による表示器20上の重ね合せ領域が示されている。また、第3A,3B,3C図には、画像選択メモリ12-1〜12-3によるθV領域の設定状況が示され、同様に、3D,3E,3F図には、画像選択メモリ12-1〜12-3によるθV’領域の設定状況が示されている。
第2A図において、画像メモリ10-1(以下FM10-1という)には画像情報Aが記憶され、第2B図において、画像メモリ10-2(以下FM10-2という)には画像情報Bが記憶され、同様にして、第2C図において、画像メモリ10-3(以下FM10-3という)には画像情報Cが記憶されている。そして、FM10-1,10-2,10-3内の画像情報A,B,Cを全て表示器20上に表示すると、第2D図に示されるように重ね合せ領域が発生し、第2D図においては、重ね合せ領域は斜線部で示されている。以下、重ね合せ領域をθVと記し、画像情報Cの重ね合せ領域を特にθV’と記す。このθV領域の表示パターンには、次の4つの場合がある。
(I)画像情報Aを表示する場合、
(II)画像情報Bを表示する場合、
(III)θV’領域には画像情報Cを表示し、θV領域からθV’領域を差し引いた領域θV-θV’には画像情報Aを表示する場合、
(IV)θV’領域には画像情報Cを表示し、θV領域からθV’領域を差し引いた領域θV-θV’には画像情報Bを表示する場合、
まず、(I)画像情報Aを表示する場合について説明する。
この場合には、予め初期化されている画像選択メモリ12-3,12-2,12-1(以下θM12-3、θM12-2、θM12-1という)により、画像情報Aの記憶されているFM10-1の内容をθV領域に表示するために、画像選択情報(θI-3、θI-2、θI-1)=(0,0,1)を画像選択メモリ(θM12-3、θM12-2、θM12-1)のθV対応領域(θVM-3、θVM-2、θVM-1)に設定し、すなわち(θVM-3、θVM-2、θVM-1)=(θI-3、θI-2、θI-1)と設定する。これにより、画像選択メモリ(θM12-3、θM12-2、θM12-1)のθV対応領域(θVM-3、θVM-2、θVM-1)では、画像選択情報(θI-3、θI-2、θI-1)は(0,0,1)となり、このため、θV領域では、画像情報Aが表示されることとなる。
・・
次に、(III)θV’領域には画像情報Cを表示し、θV-θV’には画像情報Aを表示する場合について説明する。
この場合には、前記と同様にして、θV-θV’領域に画像情報Aを表示する。更に、画像情報Cの記憶されているFM10-3の内容をθV’領域に表示するために、画像選択メモリ(θM12-3、θM12-2、θM12-1)のθV’対応領域(θV’M-3、θV’M-2、θV’M-1)では画像選択情報(θI-3、θI-2、θI-1)を(0,1,1)に設定する。これにより、θV’領域では、画像情報Cが表示されることとなる。
・・
以上のように、画像選択メモリ(θM12-3、θM12-2、θM12-1)のθV対応領域(θVM-3、θVM-2、θVM-1)、あるいは、θV’対応領域(θV’M-3、θV’M-2、θV’M-1)において、画像選択情報(θI-3、θI-2、θI-1)を適当に設定することにより、前記4通りの表示パターンを得ることができる。」(公報2頁右上欄16行-3頁左下欄最下行)
「次に、第1図において、画像メモリ(FM10-1〜FM10-7)、画像選択メモリ(θM12-1〜θM12-3)は、それぞれ並列にラスタスキャン方向に同期し、画像信号100-1〜100-7、画像選択信号102-1〜102-3は、その画素単位にドット情報として読み出され、画像表示制御回路16に供給される。この画像表示制御回路16は、第4図に示されるように、判定回路22と、画像表示回路24と、を含み、判定回路22は、画像選択信号102-1〜102-3に基づき、表示許可信号106-1〜106-7を画像表示回路24に供給し、該表示許可信号106-1〜106-7により、所望の画像信号100-1〜100-7を有効状態とすることができる。すなわち、判定回路22は、画像選択信号102-1〜102-3の画像選択情報(θI-1,θI-2,θI-3)に基づいて所定の処理を行い、表示許可信号106-1〜106-7の1又は複数の信号を「1」レベルとして該信号を有効状態とし、これにより、画像表示回路24では、所望の画像信号100-1〜100-7が有効状態となり、所望の選択表示が行われることとなる。
例えば、画像選択情報(θI-3,θI-2,θI-1)が(0,0,0)である場合には、表示許可信号106-1〜106-7は全て「1」レベルとなり、全ての画像メモリ10-1〜10-7からの画像信号100-1〜100-7が表示器20に供給される。」(公報4頁右上欄1行-左下欄9行)
3.対比
上記引用文献1の記載において、実施例を参酌すると、各表示領域の選択表示の制御が、各画素位置に対応する、複数の画像選択メモリに記憶されたビットの組み合わせで決定されるから、その動作は画素位置毎に選択表示されている。
しかし、第2A乃至Dもしくは第3A乃至Fの図または、公報の「重ね合わせ領域」の表現を参酌すればわかるとおり、各画像の重ね合わせの選択は各表示領域毎に行うことを目的としており、その制御は実質的には表示領域毎に行われているといえる。
よって、引用文献1には「画像情報を表示する装置で、一つの表示領域に1又は2以上の所望の画像信号が選択表示されるよう、該画像をそれぞれの領域に関連づけるための装置であって、複数の表示領域を有し、前記表示領域に表示される1又は2以上の画像を決定するための手段と、前記1又は2以上の画像の決定が表示領域ごとに異なるように選択可能な制御手段を有する、画像表示装置の1又は2以上の表示を制御する装置」が記載されている。
そして、本願発明と上記引用文献1に記載された発明とを対比すると、ビデオ表示も画像情報表示の一つであり、また、当該技術分野において、2以上の画像を重ね合わせて表示することをオーバレイ表示ということは明らかであるから、引用文献1の「画像情報を表示する装置」、「一つの表示領域に1又は2以上の所望の画像信号が選択表示されるよう、該画像をそれぞれの領域に関連づけるための装置」、「複数の表示領域を有し」、「前記表示領域に表示される1又は2以上の画像を決定するための手段」、「前記1又は2以上の画像の決定が表示領域ごとに異なるように選択可能な制御手段」、「画像表示装置の1又は2以上の表示を制御する装置」は、それぞれ、本願発明の「ビデオ表示システム」、「オーバレイパターンを定義された領域に関連づけるための装置」、「複数の表示領域を定義」、「前記表示領域に適用されるオーバレイパターンを定義するための手段」、「前記オーバレイパターンの操作を前記表示領域毎に選択的に制御するための手段」、「ビデオ表示システムにおけるオーバレイの制御装置。」に相当するから、本願発明と上記引用文献1に記載された発明とは「ビデオ表示システムにおいてオーバレイパターンを定義された領域に関連づけるための装置であって、複数の表示領域を定義しており、前記表示領域に適用されるオーバレイパターンを定義するための手段と、前記オーバレイパターンの操作を前記表示領域毎に選択的に制御するための手段と、を含むビデオ表示システムにおけるオーバレイの制御装置。」
である点で一致し、下記の点で相違する。

▲1▼本願発明のものは複数の表示領域を定義するための手段があるのに対し、上記引用文献1のものは、手段として格別記載されていない点。
4.上記相違点に対する当審の判断
a.相違点▲1▼について
上記装置において複数の表示領域があれば、該表示領域はどの範囲であるかを定義するための表示領域を定義するための手段が必要であることは自明のことであるから、上記相違点▲1▼のように「定義するための手段」を設けることは当業者が任意になし得たことである。
なお、出願人は審判請求時に「本願発明におけるオーバレイパターンは、複数の表示領域(ウィンドゥ)に適用されるもので、その表示領域毎に(請求項1)・・選択的に制御されるようになっており、明らかに引用例に記載の如き画像同士ないしウィンドゥ同士の重ね合わせとは異なっている」と主張している。
しかし、当該技術分野において、通常、一つの画像領域に複数の画像信号を重ねて表示することをオーバーレイ表示ということから、上記引用文献1に記載された2以上の表示を行うことが、本願発明のオーバーレイに相当すると認められるのは上記のとおりである。
そして、上記引用文献1の実施例を見れば、各画像の表示領域において、選択しうる画像表示のパターンとして、各画像メモリの中から一つのみを選択して該画像を表示する、もしくは、各画像メモリに記憶された画像を全て選択して表示する、のいずれかが選択できるようになっている。したがって、一つの画像表示領域に複数の画像メモリの画像信号から任意の複数画像を組み合わせてオーバーレイ表示を行うようにすることは、上記引用文献に記載された画像選択の組み合わせを単に変えるだけのことであり、該一つの画像表示領域に、複数の画像メモリの画像信号から任意の複数画像を組み合わせて、オーバーレイ表示を行うようにすることは当業者が任意設計し得た事項であり、したがって、複数の表示領域で、かつ、任意の画像信号の組み合わせでオーバレイ表示を可能とすることも当業者が任意になし得たことであるから、請求人の上記主張は採用に足らないものである。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用文献1に記載された発明から予測しうる程度のものである。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は上記引用文献1に記載の発明から当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-05-26 
結審通知日 1999-06-08 
審決日 1999-06-15 
出願番号 特願平3-103800
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 達也  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 森 雅之
渡邊 聡
発明の名称 ビデオ表示システムおけるオーバレイの制御装置及び制御方法  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 坂口 博  

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