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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1006910
審判番号 審判1998-7761  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-05-14 
確定日 1999-11-17 
事件の表示 平成1年特許願第139519号「ビデオ映像を用いた三次元計測方法および装置」拒絶査定に対する審判事件(平成3年1月10日出願公開、特開平3-4106)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成1年6月1日に出願されたものであって、その請求項に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「(1)計測すべき所望のルートに沿う連続画像をビデオカメラにて撮影し、該撮影されたビデオ映像をステレオ・ペアとなる視差を生ずる時間差を持たせて再生し、所望の計測点を含む再生画面を静止させ、該静止された再生画面から前記所望計測点に関する情報を取り込み、該取り込んだ情報を演算処理して前記所望計測点の長さ、面積、体積等の計測値を得ることを特徴とするビデオ映像を用いた三次元計測方法。」(以下、「本願発明」という。)
2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-209315号公報(以下、「引用例1」という)には、次のことが図面とともに記載されている。
「(1)ステレオ画像を形成する第1画像データと第2画像データとを記憶する記憶部と、第1の画像データに関して測定点が設定される設定部と、上記測定点に対する第2画像データにおける対応点を相関処理によって求める相関部と、上記設定部からの測定点に関するデータに基づき上記第1画像データに測定点マークデータを加え、上記相関部からの対応点のデータに基づき上記第2画像データに対応点マークデータを加え出力するマーカ部と、上記マーカ部の出力を受け測定点マークが加わった第1画像と対応点マークが加わった第2画像とに基づき画像形成する画像形成部と、上記測定点のデータと、上記相関部により求められた対応点のデータとによって3次元データを求め表示する表示部とを有することを特徴とする座標測定装置。」(特許請求の範囲第1項)、
「本発明は座標測定方法及び装置、さらに詳しくは、物体上の測定点の3次元座標あるいはステレオ画像中に任意に設けた測定点の3次元座標を非接触で測定するための方法及び装置に関する。」(2頁右上欄2〜6行)、
「〔実施例〕
以下、本発明の実施例を、データ読取り系及び処理出力系に分けて説明する。
(データ読取り系)
データ読取り系100は、第1図に示すように、測定の対象物体3の光学像を得るための光学系と該光学像を光電式に検出する手段からなる検出部10と、検出部10からデータを得てこれを処理する制御部20と、制御部20により得られたデータを記憶する記憶部30とからなる。
まず、対象物体3を考慮して、第1図に示すようにx、y、z座標を定める。検出部10は、対象物体3の上方位置に2つの対物レンズ105、106をx軸方向に並べて配置し、さらに対物レンズ105、106による対象物体3の結像位置にリニアCCD(電荷結合素子)103、104を、検出方向がx軸方向と平行となるように配置する。CCD103、104、対物レンズ105、106はそれぞれ検出部(A)101及び検出部(B)102を構成し、検出装置101、102は一体となってパルスモータ107によってy軸方向に移動可能である。
・・・
記憶部30は、一走査分のデジタル信号を記憶するRAM(A)123、RAM(B)124、及び全走査分のデータを記憶するディスク2からなる。」(3頁右上欄5行〜同頁右下欄10行)、「発振ループの作動によりCCD103、104の走査が実行され、その出力信号はそれぞれA/D変換器121、122によってデジタル信号に変換されてRAM123、124に入力される。」(4頁左上欄6〜10行)、
「一方、上記最大値(Amax)、(Bmax)の大きい方のデータが所定の範囲内に含まれている場合には、主制御部1は、RAM123、124に記憶されている一対の一走査分の画像データ(A)、(B)を、アドレスデータ線ADRと読取り信号線RR1、RR2とを通してRAM123、124を制御することにより、データ線DATを通して制御部1に移し、ディスク2に入力させる。主制御部1は・・・検出部101、102をy軸方向に移動させて、再びx軸方向について走査がなされる。このようにして、対象物体3についてx、y軸に関する画像データ(A)、(B)がディスク2に記憶される。」(5頁左上欄10行〜同頁右上欄4行)、
「(処理出力系)
処理出力系200は、第2図に示すように、ディスク2に記憶された一対の画像データ(A)、(B)から、対象物体3の画像をモニタTV254上に交互に表示し、これを左右交互に開閉するシャッターを有する分離用メガネ259によって観察して対象物体画像を立体視するとともに、対象物体3上の任意の測定点のx、y、z軸の座標を演算して表示する。
処理出力系200は、第2図に示すように、ステレオ画像を形成する画像データ(A)、(B)を記憶する記憶部210と、画像データ(A)における測定点を設定する測定点設定部220と、上記測定点に対する画像データ(B)における対応点を相関処理によって求める相関部230と、設定部220によって設定された測定点に基づいて画像データ(A)に測定点マークデータを加え、かつ相関部230からの対応点に基づいて画像データ(B)に対応点マークデータを加えて出力するマーカ部240と、マーカ部240から出力された上記測定点マークデータを含む画像データ(A)と上記対応点マークデータを含む画像データ(B)によって画像を形成する画像形成部250と、上記測定点マークデータと上記対応点マークデータから測定点を表示する表示部260とから構成される。上記構成の処理出力系200は主制御装置によって制御され、主制御部1は、所望の制御を行うように入力装置4と接続される。」(5頁右上欄5行〜同頁右下欄12行)、
「マーカ(A)243、(B)244から出力されたマークデータを含む画像データ(A)、(B)は、切換器256、ブランキング257、D/A変換器258を介してモニタTV254に入力されて、モニタTV254に対象物体像として表示され、該対象物体像は分離用メガネ259を通して立体的に観察される。この時、もし上述の相関処理結果が正しくなければ、測定点のマークは対象物体像の表面から浮上るか又は沈んで観察されることになるから、該マークを観察することにより相関処理の正否を判別することができる。
一方、測定点の座標(X,Y,Z)を計算するための表示部260は、演算部(Y)262及び演算部(X,Z)264を包含する。演算部(Y)262は設定部222からの座標yPの信号を受け、Y=αyP+Y0を演算する。ここで、αはパルスモータ107によるY軸方向の移動ピッチを示し、Y0は対象物体3を置く台に任意に定められた原点に対するVRAM(A)213の基準アドレス(例えば、x=0、y=0)Y軸方向の位置を示す。
演算部(X,Z)264は、設定部222から座標xPの信号と相関器232からの座標xP′の信号を受取り、・・・の演算を行い、X,Zの値を出力する。・・・
なお、座標(X、Y、Z)の演算は、データyP、xP、xP′を主制御部1を構成するマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータに入力して演算させてもよい。」(7頁左上欄16行〜同頁右下欄8行)
同じく、特開昭59-85909号公報(以下、「引用例2」という)には、次のことが図面とともに記載されている。
「本発明は、送電線ルート等の現況を短時間にて観測するのに適用しうるような実体像監視方法に関するものである。」(1頁右下欄3〜5行)、「先ず、第3図に示すような単写真の幾何的関係について説明する。高さHの位置から鉛直下方に向けて写真を撮影する。・・・左右の写真9A及び9B上でその影像8A及び8Bの位置が異る。この位置の差pを、「視差(…)」と言う。・・・そして、対象物8の高低差hは、視差差Δp=θ’-θ0と、対象物8の底部の視差p0と底部までの距離Hにより、
h=H(Δp/p0)
で与えられる。
カメラとHの距離にある対象物の高低差をhとすると、立体写真より計測されるhの測定精度h/Hは、
h/H=(H/B)・(Δp/f)
で与えられる。」(2頁右下欄3行〜3頁右上欄2行)、
「第5図は、本発明の実体像監視方法を適用して送電線ルートの観測を行なう場合の第1段階としてのヘリコプターにてのビデオカメラによる垂直撮影の様子を略示している。・・・ビデオカメラにて、送電線ルート11に沿っての連続垂直撮影を行なう。こうして、その送電線ルート11の全長に亘るビデオカメラによる垂直撮影が終わったら、地上に戻る。そして、その撮影済みのビデオテープを原画として周知方法にて別のビデオテープヘの複写を行なう。次に、2台の陰極線管表示装置を左右に並べて配置しておき、・・・一方のビデオテープからの連続画像を一方の陰極線管表示装置上に再生表示させ、他方のビデオテープからの連続画像を他方の陰極線管表示装置上に再生表示させる。この時、他方のビデオテープからの再生を、一方のビデオテープからの再生に対して、視差を生ずる時間差だけ遅延させる。・・・
このようにして2つの並置された陰極線管表示装置に表示される連続画像を、監視者が例えば実体鏡を用いて見れば、前述の実体視の原理に基づいて、送電線ルートに沿って真上から見た実体像と同様の像を見ることができる。」(3頁右上欄11行〜4頁左上欄3行)、
「送電線ルートの1つの特定の地点の実体像を詳細に観察するのに適した本発明の実体監視方法の一実施例について次に説明する。・・・ビデオテープを・・・表示装置の表示画面上に再生表示していく。そして、特に詳細に観測分析したい送電線ルートの目的の地点の画像のところにきたとき、その表示画像を・・・カメラ等にてスチル撮影して、一枚のスチル写真を作成する。次いで、そのスチル写真を撮った画像の表示から、前述したような視差を生ずる時間だけ間隔を置いた後にその表示装置の表示面上に再生表示される画像を、もう一度同様にスチル撮影して、もう一枚別のスチル写真を作成する。こうして作成した2枚のスチル写真を並置して実体鏡を用いて監視者がこれを観測すれば、前述の実体視の原理に基づいて、送電線ルートのその目的とする地点を真上から見た静止実体像と同様の像を見ることができる。・・・また、こうして作成された2枚のスチル写真を解析図化機にかけて分析を行なえば、きわめて容易にその目的の地点の情況を図化することもできる。」(4頁右上欄16行〜同頁右下欄2行)
3.対比・判断
そこで、本願発明と引用例1に記載された発明とを比較すると、引用例1の「一対の画像データ(A),(B)」「検出装置101,102」がそれぞれ本願発明の「計測すべき画像」「カメラ」に相当することは明らかである。また引用例1には、「演算部(X,Z)264は、設定部222から座標xPの信号と相関器232からの座標xP′の信号を受取り、・・・の演算を行い、X,Zの値を出力する。・・・座標(X、Y、Z)の演算は、データyP、xP、xP′を主制御部1を構成するマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータに入力して演算させてもよい。」との記載があり、その際に本願発明の「計測値」に係る「長さ、面積、体積等の」との記載は計測値の種類を単に例示するものであって、計測値を具体的に限定するものではないことを勘案すれば、該引用例1は、本願発明の「所望の計測点を含む再生画面から前記所望計測点に関する情報を取り込み、該取り込んだ情報を演算処理して前記所望計測点の長さ、面積、体積等の計測値を得る」との技術的事項を示すものである。さらに引用例1には、「一対の画像データ(A)、(B)から、対象物体3の画像をモニタTV254上に交互に表示し、これを左右交互に開閉するシャッターを有する分離用メガネ259によって観察して対象物体画像を立体視する」との記載があることから、該引用例1は、本願発明の「撮影された映像をステレオ・ペアとなる視差を持たせて再生」するとの技術的事項を示すものである。そして、引用例1の「ディスク2」及び本願発明の「ビデオカメラ」がともに記録装置の一種であって、その映像は「記録映像」といえることは明らかであるから、両者は、「計測すべき画像をカメラにて撮影し、該撮影された映像をステレオ・ペアとなる視差を持たせて再生し、所望の計測点を含む再生画面から前記所望計測点に関する情報を取り込み、該取り込んだ情報を演算処理して前記所望計測点の長さ、面積、体積等の計測値を得る記録映像を用いた三次元計測方法」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:
▲1▼本願発明のものは、カメラか「ビデオカメラ」であり、したがって記録映像は「ビデオ映像」であって、それにより「再生画面を静止させ、該静止された」再生画面から、所望計測点に関する情報を取り込むのに対し、引用例1のものは、リニアCCD(電荷結合素子)103、104を有する検出部101,102により撮影され、ディスク2に記憶された一対の画像データ(A)、(B)を処理するものではあるが、ビデオカメラにより撮影され、静止された再生画面から、所望計測点に関する情報を取り込むものではなく、したがって記録映像はビデオ映像ではない点。
▲2▼本願発明のものは、「所望のルートに沿う連続画像」を撮影し、該撮影された映像をステレオ・ペアとなる視差を生ずる「時間差」を持たせて再生するのに対し、引用例1のものは、所定間隔を設けて配置した検出部101,102により撮影するものであるが、上記のように計測すべき所望のルートに沿う連続画像を時間差を持たせて再生するものではない点。
上記相違点について検討する。
相違点▲1▼について:
記録装置として、ビデオカメラを用いることは周知のことにすぎず、またビデオカメラにおいて再生画面を静止させることは通常のことにすぎない。また引用例1において、RAM123,124に記憶され、ディスク2に記憶された一対の一走査分の画像データ(A)、(B)が再生時に静止画面となることは明らかであり、該画面から計測点に関する情報を取り込み座標演算が行われるものであるから、記録装置として周知のビデオカメラを用い、該ビデオカメラの通常の機能を用いて作成された静止画面により所望計測点に関する情報を取り込むことにより、上記相違点▲1▼の技術的事項とすることは当業者が適宜なし得る事項である。
相違点▲2▼について:
引用例2に、「計測すべき所望のルートに沿う連続画像をビデオカメラにて撮影し、該撮影されたビデオ映像をステレオ・ペアとなる視差を生ずる時間差を持たせて再生」することが記載されていることは上記のとおりであるから、引用例1の一対の画像データ(A)、(B)として、引用例2のステレオ・ペアとなる視差を生ずる時間差を持たせて再生された再生画像を使用することにより上記相違点▲2▼の技術的事項とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
そして、本願発明が奏する作用効果は引用例1,2に記載された発明から予測しうる程度のものである。
4.むすび
したがって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-07-22 
結審通知日 1999-08-06 
審決日 1999-08-17 
出願番号 特願平1-139519
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋田 将行居島 一仁  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 渡邊 聡
森 雅之
発明の名称 ビデオ映像を用いた三次元計測方法および装置  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 村社 厚夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 今城 俊夫  
代理人 竹内 英人  
代理人 小川 信夫  

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