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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1007014 |
審判番号 | 審判1998-10265 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-05-13 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-07-02 |
確定日 | 1999-10-30 |
事件の表示 | 平成1年特許願第250049号「食品容器」拒絶査定に対する審判事件(平成6年12月7日出願公告、特公平6-98982)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・請求項1に係る発明 本願は、平成1年9月25日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、出願公告後の平成7年12月15日付け及び平成10年8月3日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「1.結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡シートの少なくとも一面に、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、又はエチレン-ビニルアルコール共重合体の非発泡フィルムを貼り合わせてなる複合シートを材料とし、非発泡フィルムを内がわに向けて容器状に成形してなり、水蒸気の浸透を防ぎ、容器の変形のないことを特徴とする食品容器。」 2.原査定の理由 これに対して、原査定の拒絶の理由となった特許異議の決定に記載した理由の概要は、請求項1及び2に係る発明は、特許異議申立人鐘淵化学工業株式会社が提出した甲第1、2号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、というにある。 3.引用例の記載事項 甲第1号証刊行物である特開昭59-135237号公報(以下、引用例1という。)には、軽量のオーブン加熱可能食品容器に特に有用である耐熱性で発泡させた結晶性ポリエステルに関して、下記の事項が記載されている。 「16.芳香族ジカルボン酸とグリコールとの重縮合生成物である発泡した結晶性高分子量の線状ポリエステルで構成された、オーブン加熱可能食品容器であって、結晶度がこの発泡ポリエステルヘ204℃(400°F)の温度における熱的誘起変形に対する抵抗性を付与するのに十分なものであり、かつ、発泡度が起泡の存在しないポリエステルと比較して少くとも5%の密度低下を達成するのに十分なものである;食品容器。」(第3頁右上欄3行乃至11行) 「本発明による発泡ポリエステルの結晶化度は、ポリエステル並びに特にそれから形成される物体に、少くとも204℃(400°F)あるいは260℃(500°F)の温度まで熱的誘起変形に耐えさせるのに十分であってよい。この結晶性の、発泡させたポリエステルから形成された食品容器はそれゆえその中に容れた食品を料理するのに十分な時間と温度でオーブン中に置くことができる。オーブン加熱可能であることのほかに、これらの食品容器は食品を冷凍庫中で保持することができる。このように、本発明による食品容器は広い範囲の温度にわたつて寸法的に安定のままであることができる。」(第5頁左上欄11行乃至右上欄3行) 甲第2号証刊行物である実公昭63-31957号公報(以下、引用例2という。)には、合成樹脂発泡シートを主材とする食品容器、特に電子レンジでそのまま加熱調理するのに好適な食品容器に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。 「最近、電子レンジでそのまま加熱調理(加温処理も含む)できる食品収納容器が種々の食品についての包装容器として市場に供されている。このような食品容器について通常望まれる性能は、 (イ)食品収納状態で加熱しても実質的に寸法変化や変形を生じない耐熱性を有すること。 (ロ)食品収納状態で片端を持って保持できる程度の剛性を有すること。 (ハ)加熱調理後、直接手で持てる程度の断熱性を有すること。 (ニ)いったん加熱したら収納食品の保温性がよいこと。 (ホ)耐水性、耐油性を有すること。 (へ)食品衛生上問題のないこと。 (ト)外観上好ましい印象を与えること。 等である。」(第1欄23行乃至第2欄13行) 「次に本考案の実施例を図面に基いて説明する。図において、Aは本考案に係る食品容器を示し、ポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン系樹脂との混合樹脂を押出し発泡成形して得られた発泡シート1の少なくとも片面に、ガラス転移点が100℃以上の熱可塑性樹脂フイルム2または同フイルム2を含む合成樹脂の複層フイルムを積層した複合シートを素材とし、これをプレス成形、真空成形等の適宜の成形手段により第1図あるいは第3図、第4図その他の所望の容器形状に一体に成形してなる。」(第3欄41行乃至第4欄7行) 「上記の発泡シート1に積層するガラス転移点100℃以上の熱可塑性樹脂フイルム2としては、ポリカーボネートのほか、ポリフェニレンオキサイド、ポリサルフオン、高重度ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルホルマール、セルロースアセテート、セルロースブチレート、ポリ-p-ビニルベンジルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリ-tert-ブチルスチレン等の熱可塑性樹脂を例示でき、中でもガラス転移点105℃以上のものが好適に用いられる。」(第5欄8行乃至19行) 「この熱可塑性樹脂フイルム2は、第1図または第2図に示すように、これを単層で上記発泡シート1の片面もしくは両面に積層して食品容器Aの構成素材である複合シートとして実施するほか、第5図または第6図に示すように前記熱可塑性樹脂フイルム2と他の樹脂フイルム層3との複層フイルム4とし、該複層フイルム4を発泡シート1に積層して実施することもできる。食品容器としての耐油性やガスバリヤー性等をさらに改善するということから、前記樹脂フイルム層3として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の比較的耐油性やガスバリヤー性(水分や蒸気に対するバリヤー性も含む)等のよい合成樹脂のフイルムを用い、該樹脂フイルム層3が表面層となるように発泡シートの片面(第5図)もしくは両面(第6図)に積層するのが好ましく、特に前記積層が発泡シート片面である場合、第5図のように前記樹脂フイルム層3を容器内面側に向けて成形するのが好ましい。また熱可塑性樹脂フイルム2を単層で発泡シートに積層した場合にも、表面層として少なくとも容器内面に前記樹脂フイルム層3と同様の合成樹脂をフイルム積層またはコーティングしておくのが望ましい。このように少なくとも容器内側表面層として耐油性やガスバリヤー性のよい樹脂フイルム層が設けられていると、加熱時に生じる食用油等による悪影響を防止できかつ収納された食品の保存性を一層高めることができる。」(第5欄43行乃至第6欄27行) 「殊に前記熱可塑性樹脂フイルム2が発泡シート1の両面に積層されている場合、いわゆるスキン・コア・スキンのサンドイッチ構造となり、力学的な見地からも耐熱剛性発揮の上でさらに有効である。しかも前記積層フイルムの層によって発泡シート単独のものに比し耐水性や耐油性等の他の属性も改善され、もちろん、発泡シート1による断熱性や加熱された食品の保温性も良好である。従って、本考案の容器は、この種加熱調理用食品容器として望まれる上記性能イ、ロ、ハ、ニ、ホ、へおよびトをいずれも満足するものであり、電子レンジで加熱調理できる食品容器として好適に使用できる。」(第8欄5行乃至17行) 4.請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明との対比 そこで、請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「芳香族ジカルボン酸とグリコールとの重縮合生成物である発泡した結晶性高分子量の線状ポリエステル」は請求項1に係る発明の「結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡シート」に相当するものであるから、両者は、「結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡シートを材料とし、容器状に成形してなる食品容器」で一致しており、次の点で相違している。 相違点;請求項1に係る発明では、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡シートの少なくとも一面に、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、又はエチレン-ビニルアルコール共重合体の非発泡フィルムを貼り合わせてなる複合シートを材料とし、非発泡フィルムを内がわに向けて容器状に成形してなり、水蒸気の浸透を防ぎ、容器の変形のない食品容器としているのに対して、引用例1に記載された発明では、芳香族ジカルボン酸とグリコールとの重縮合生成物である発泡した結晶性高分子量の線状ポリエステル(結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡シート)から構成された食品容器であって、上記請求項1に係る発明のような複合シートを材料とし、非発泡フイルムを内がわに向けて容器状に成形して、水蒸気の浸透を防ぎ、容器の変形のない食品容器としたものではない点。 5.上記相違点に対する当審の判断 上記相違点について検討するに、引用例2には、上記「3.引用例の記載事項」で摘記した技術事項が記載されており、特に、発泡シートで形成した食品容器の加熱調理時における耐油性やガスバリヤー性等をさらに改善することに関し、 (1)複層フイルム4の他の樹脂フイルム層3として、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の比較的耐油性やガスバリヤー性(水分や蒸気に対するバリヤー性も含む)等のよい合成樹脂のフイルム(非発泡フイルムに相当)を用い、該樹脂フイルム層3が表面層となるように発泡シートの片面もしくは両面に積層するのが好ましいこと。 (2)特に積層が発泡シート片面である場合、樹脂フイルム層3を容器内面側に向けて成形するのが好ましいこと。 (3)また熱可塑性樹脂フイルム2を単層で発泡シートに積層した場合にも、表面層として少なくとも容器内面に樹脂フイルム層3と同様の合成樹脂をフイルム積層またはコーティングしておくのが望ましいこと。 (4)このように少なくとも容器内側表面層として耐油性やガスバリヤー性のよい樹脂フイルム層が設けられていると、加熱時に生じる食用油等による悪影響を防止できかつ収納された食品の保存性を一層高めることができること。 等が記載されている。 そして、引用例1に記載された発明の食品容器(結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡シート)の内側表面層も、引用例2に記載された発泡シート1を単独で使用した食品容器と同様にオーブン(電子レンジに相当)での食品の加熱調理時に、食品に含まれる油や水分の影響を受けるものであって、引用例1に記載された発明の食品容器に対しても、内側表面層として耐油性やガスバリヤー性のよい樹脂フイルム(非発泡フイルムに相当)を積層すれば、引用例2に記載された発明の食品容器と同様に食品の加熱調理時に生じる食用油や水分等による発泡シートヘの悪影響を防止できることは、引用例2に記載された上記技術事項(1)乃至(4)から当業者であれば容易に理解することができる程度の技術事項と認められるから、引用例1に記載された発明の食品容器に用いる結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂の発泡シートの一面に耐油性やガスバリヤー性のよい樹脂フイルム層を貼り合わせて複合シートとし、耐油性やガスバリヤー性のよい樹脂フイルム層を内側に向けて容器状に成形して水蒸気の浸透を防ぎ、容器の変形のない食品容器とすることは、当業者であれば格別創意を要することではない。 また、請求項1に係る発明の効果も、引用例1及び2に記載された発明から当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 6.むすび したがって、請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-08-09 |
結審通知日 | 1999-08-20 |
審決日 | 1999-09-03 |
出願番号 | 特願平1-250049 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大久保 好二、伏見 隆夫 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
船越 巧子 鈴木 美知子 |
発明の名称 | 食品容器 |