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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1007046
審判番号 審判1997-10602  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-11-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-06-27 
確定日 1999-12-20 
事件の表示 昭和63年特許願第110742号「パチンコ機の過電流保護回路」拒絶査定に対する審判事件(平成1年11月10日出願公開、特開平1-280487)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1・手続の経緯及びこの出願の発明
この出願は、昭和63年5月7日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成9年3月10日付け及び平成9年6月27日付けの各手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの、
「駆動部と制御部とを有し、パチンコ機の電気的負荷を前記駆動部に直列に接続した出力制御回路、前記電気的負荷の過電流を検出して所定の検出信号を出力させる電流検出回路および、該電流検出回路の前記検出信号を入力し前記制御部を停止させる出力停止保持回路を備え、
前記駆動部の過電流時に、前記出力制御回路の制御部を停止状態にさせると共に前記駆動部の回線を開状態にしたことを特徴とするパチンコ機の過電流保護回路」
にあるものと認められる。
2・引用例に記載された発明
原査定の拒絶理由において引用された、この出願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開昭61-244381号公報(以下、引用例という)には、
特に、
▲1▼第1図(第4頁)、
▲2▼「ダーリントン接続されたトランジスタTr2、Tr3」(第3頁右上欄第19,20行)、
▲3▼「端子B(BASE)に入力される信号SG8(又はSG9)がローになると、トランジスタTr1がOFFし、そのコレクタの電圧が上昇する」ので、トランジスタTr2、Tr3が共にONになってソレノイド22(又はVランプ23)に電流が流れる」(第3頁左下欄第2ないし7行)、
▲4▼「ソレノイドやランプの出力回路は露出部が多く、外部で短絡することにより出力回路中のトランジスタが破壊されてしまう」(第1頁右下欄第19行ないし第2頁左上欄第2行)、
▲5▼「トランジスタTr3を流れる電流I2が徐々に増加していったと仮定すると、この電流I2は抵抗R2(これは本例では0・1Ωに設定されている)を流れているので、この抵抗R2の両端に発生する電圧値が徐々に高くなる・・・保護回路21は・・・抵抗R2の両端に発生する電圧が0・6V以上になるとシリコントランジスタのスレッシュホールド電圧を越えることになるので、保護回路21がONになってその端子C1とE1との間の抵抗がほぼゼロとなる。するとトランジスタTr2にはベース電流I1が流れなくなるのでトランジスタTr2,Tr3はOFFになる。即ち、トランジスタTr3に流れる電流が所定値以上になると、これを抵抗R2の両端に発生する電圧によって保護回路21がこれを感知して瞬間的にトランジスタTr3をOFFにする」(第3頁左下欄第9行ないし右下欄第6行)、
▲6▼「ソレノイド駆動回路18とランプ駆動回路19は・・・本例では第1図に示すような回路が用いられている」(第3頁左上欄第17ないし19行)、
からみて、
「ダーリントン接続されたトランジスタTr2、Tr3とコレクタがトランジスタTr2のベースに接続されるトランジスタTr1とを有し、パチンコ機のソレノイド22又はVランプ23を前記トランジスタTr3に直列に接続し、前記ソレノイド22又はVランプ23の所定値以上の電流を感知してその両端に0・6V以上の電圧を発生する抵抗R2および、該抵抗R2の前記0・6V以上の電圧を越えるとONになって端子C1とE1との間の抵抗をほぼゼロにし前記トランジスタTr2にはベース電流I1が流れなくする保護回路21を備え、
前記トランジスタTr3に流れる電流が所定値以上になると、前記トランジスタTr2にはベース電流I1が流れなくすると共に前記トランジスタTr3をOFFにするパチンコ機の駆動回路18又は19」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
3・この出願の請求項1に係る発明と引用例に記載された発明との対比
この出願の請求項1に係る発明(前者)と引用例に記載された発明(後者)とを対比すると、
後者の
「ソレノイド22又はVランプ23」、「所定値以上の電流」、「感知」及び「OFF」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「電気的負荷」、「過電流」、「検出」及び「開状態」
に相当し、
又、
後者の前記▲2▼及び▲3▼の記載並びにこの出願の明細書の「トランジスタTr3,Tr4がダーリントン接続され、その出力はランプL3・・・と直列に配線され」(平成9年3月10日付け手続補正書第4頁第21,22行)の記載からみて、後者の「トランジスタTr3」の機能と、前者の「トランジスタTr4」の機能とが符合するものと認められるから、
後者の
「ダーリントン接続されたトランジスタTr2、Tr3」、「トランジスタTr3に流れる電流が所定値以上になると」及び「トランジスタTr3」
がそれぞれ
前者の
「駆動部」、「駆動部の過電流時に」及び「駆動部の回線」
に相当し、
又、
後者の前記▲3▼及び前記▲5▼の特に「保護回路21がONになってその端子C1とE1との間の抵抗がほぼゼロとなる。するとトランジスタTr2にはベース電流I1が流れなくなるのでトランジスタTr2,Tr3はOFFになる」と、この出願の明細書の「トランジスタTr7はON状態となり、制御部6の入力を強制的にL電位とする。これによってトランジスタTr3,Tr4が働かず(OFF状態)出力端に電流は流れない」(同手続補正書第5頁第20ないし22行)とが符合することからみて、後者のトランジスタTr2のベース部が制御部としての機能を有しているものと認められるから、
後者の
「コレクタがトランジスタTr2のベースに接続されるトランジスタTr1」、「越えるとONになって端子C1とE1との間の抵抗をほぼゼロにし前記トランジスタTr2にはベース電流I1が流れなくする」及び「トランジスタTr2にはベース電流I1が流れなくする」
がそれぞれ
前者の
「制御部」、「入力し前記制御部を停止させる」
及び「制御部を停止状態にさせる」
に相当し、

後者の前記▲5▼の特に「低抗R2の両端に発生する電圧が0・6V以上になるとシリコントランジスタのスレッシュホールド電圧を越えることになるので、保護回路21がONになってその端子C1とE1との間の抵抗がほぼゼロとなる。するとトランジスタTr2にはベース電流I1、が流れなくなる」と、この出願の明細書の「出力に過電流が流れると抵抗R3の電位があがる・・・そして・・・トランジスタTr7はON状態となり、制御部6の入力を強制的にL電位とする」(同手続補正書第5頁17ないし21行)とが符合することからみて、
後者の
「抵抗R2の両端に発生する電圧が0・6V以上になるとシリコントランジスタのスレッシュホールド電圧を越える」及び「該シリコントランジスタの出力」
がそれぞれ
前者の
「所定の検出信号を出力させる電流検出回路」及び「検出信号」
に相当し、
又、
後者の「従来ではソレノイド駆動回路18とランプ駆動回路19は・・・外部で短絡すると・・・トランジスタが・・・破壊される恐れがあった」(第3頁左上欄第20行ないし右上欄第4行)及び同「ところが本例では・・・保護回路21付の回路構成としたので、前述した・・・故障は全く生じなくすることができる」(第3頁右上欄第13ないし15行)の記載からみて、
後者の
「駆動回路18又は19」

前者の
「過電流保護回路」
に相当するものと認められ、
したがって、
両者は、
「駆動部と制御部とを有し、パチンコ機の電気的負荷を前記駆動部に直列に接続し、前記電気的負荷の過電流を検出して所定の検出信号を出力させる電流検出回路および、該電流検出回路の前記検出信号を入力し前記制御部を停止させる手段を備え、
前記駆動部の過電流時に、前記制御部を停止状態にさせると共に前記駆動部の回線を開状態にするパチンコ機の過電流保護回路」である、
点において一致し、
(1)出力制御回路が、
前者には備わっている、
のに対し、
後者には明らかではない、
(2)過電流を検出して制御部を停止させる手段が、
前者は、出力停止保持回路であって、この出願の明細書の「ランプL3に過電流が流れている時には・・・トランジスタTr7がON状態になったときにこれを保持する。このため・・・過電流の原因の解除をしないかぎりこの状態を維持する」(同手続補正書第5頁22ないし26行)からみて、停止状態を保持するものと認められる、
のに対し、
後者は、保護回路であって、停止状態を保持し得るのか否か明らかではない、
点において相違しているものと認められる。
4・相違点についての判断
先ず、相違点(1)についてみるに、
この出願の明細書の「出力制御回路5は制御部6と駆動部7とで構成されている」(同手続補正書第4頁13,14行)からみて、前者における出力制御部とは、単に制御部と駆動部とを総称するにすぎず、そうすると、後者も制御部と駆動部とを備えている以上、出力制御部が備わっているか否かが実質的な相違とはいえない。
次いで、相違点(2)についてみるに、
要するにこの点は、過電流保護回路において、出力の停止状態を保持し得るか否かの相違であるものと認められるところ、
過電流保護回路において、出力の停止状態を保持し得るようにすることは、周知の技術的事項にすぎないものと認められる(必要ならば、実願昭53-76398号(実開昭54-177534号)のマイクロフィルム(特に、明細書第6頁第1ないし9行「出力電流I0が過電流の状態に増大し、抵抗R1の両端の電圧が約1・4Vに達すると、保護用トランジスタQ3がオンし、瞬間的に主トランジスタQ1をオフする。つぎに、保護用トランジスタQ3のベース電位か下がり、ダイオードD2がオンすると、再びこのトランジスタQ3のベース電位が上がり、トランジスタQ3のオンが持続されることにより主トランジスタQ1はオフされ続け」参照)、実願昭60-200506号(実開昭62-107526号)のマイクロフイルム(特に、明細書第6頁第6行ないし第7頁第4行「過大電流I0’が抵抗R3を流れ、斯る抵抗R3における電圧降下・・・がスイッチングトランジスタQ3のベースエミッタ間電圧・・・に達すると、上記スイッチングトランジスタQ3がオンし・・・コンデンサC3が充電され、斯るコンデンサC3からの電圧がサイリスタSのゲートに加わり、斯るサイリスタSがオンする。すると、上記サイリスタSは制御トランジスタQ4のベースを短絡することになり、斯る制御トランジスタQ4がオフするため、出力端・・・の出力電圧及び出力電流を共に零にすることができる・・・勿論、上記サイリスタSは一旦オンすると、主電源をオフしない限りオン状態を保持するものであるから、一度過大電流が流れると、その後は上記制御トランジスタQ4のオフ状態を保持することになる」参照)を参照されたい)から、
停止状態を保持するのか否かが明らかではない後者に、前記周知の技術的事項を適用し、後者を、
停止状態を保持するものとすることは、
拒絶査定の備考欄にも「過電流保護回路において、出力停止保持回路を設ける程度のことに何ら困難性は認められない」と記載されているように、
当業者が何ら困難性を要することではないというべきである。
そして、前者の効果が、後者及び周知の技術的事項のそれぞれの効果の総和以上の格別なものであるとも認められない。
なお、請求人は、審判請求書において、引用例では、電流の流れがトランジスタTr3と保護回路21とで設計条件により分配されるものであり、もし、設計条件があっていない場合には熱暴走により負荷に適しない電流が流れ、負荷に対し何ら保護するものではない旨主張しているところ、引用例第3頁左下欄第20行、右下欄第1行の「トランジスタTr2にはベース電流I1が流れなくなる」及び第4頁の第1図からも明らかなように、保護回路21側には、せいぜいトランジスタTr2のベース電流程度の制御電流が流れるにすぎないものと認められるから、かかる主張は採用することができない。
5・むすび
したがって、この出願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-09-21 
結審通知日 1999-10-08 
審決日 1999-10-12 
出願番号 特願昭63-110742
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 馬場 清
特許庁審判官 新井 重雄
吉村 尚
発明の名称 パチンコ機の過電流保護回路  
代理人 萼 経夫  

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