• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C04B
管理番号 1007153
審判番号 審判1998-9474  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-06-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-06-18 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 平成1年特許願第156374号「セラミック基板およびその製造方法」拒絶査定に対する審判事件(平成3年1月31日出願公開、特開平3-23254)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1、手続の経緯、本願発明
本願は、平成1年6月19日に出願されたものであって、本願の請求項1、2に係る発明は、平成11年8月27日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであるところ、請求項2に係る発明は次のとおりである。
「(2)アルミナを主成分とするセラミック原料粉末を所定形状に成形してなる生成形体に対し、ブラッシング処理によってバリの除去や角部の曲面加工などを施した後、この生成形体を棚板に載置しローラーハースキルンを用いて焼成することを特徴とするセラミック基板の製造方法。」(以下、本願第2発明という。)
2、引用例
これに対して、当審の拒絶理由に引用された実願昭61-175015号(実開昭63-80106号)のマイクロフイルム(以下、引用例1という。)には、焼成前のセラミック生成形体の面取り装置が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(a)、「「考案が解決しようとする問題点」しかし、焼成後の面取りは長時間を要するうえに、歩留りが悪いほか、バレル研摩等の従来の量産向け面取り手段は小型基板にしか適用できないという問題点があった。かといって焼成前の段階で短時間で大量に面取りする手段は未だ知られていない。本考案は叙上の情勢に鑑みてなされたもので焼成前のセラミック生成形体の稜線部を面取りする装置を提供することを目的とする。」(第2頁第5〜14行)
(b)、「セラミック生成形体の稜線部を面取りするものにおいて、該セラミック生成形体を主面方向に移送する手段と、該セラミック生成形体の移送過程途中に該セラミック生成形体の幅よりもわずかにせまい間隔で配置され、前記セラミック生成形体よりも厚い、弾性高分子材料よりなる一対の回転式円板を具備してなることを特徴とするセラミック生成形体の面取り装置。」(実用新案登録請求の範囲)
(c)、「「実施例」・・・別途Al2O397重量%、SiO21.5重量%、CaO0.75重量%及びMgO0.75重量%よりなる配合粉末100重量部にPVA8重量部、可塑剤12重量部及び溶剤20重量部を添加し、アセトン中で混合し、ドクターブレード法にて厚さ0.9mmにシート成形後、60×75mmに切断し生成形体1とし、無端ベルト4の供給側に載置した。回転式円板5,5の間隔を55mmに固定し、3600rpmで回転させておき、無端ベルト2,4を駆動させ、生成形体1を長手方向に進ませて回転式円板5,5の間を移送速度0.2〔m/sec〕で通過させたところ、生成形体1の稜線部に0.5mmのアールが付けられていた。・・・・面取りされた生成形体1は高温焼成され、HIC基板などに好適な稜線部アール付きのセラミック基板となった。」(第5頁第13行〜第8頁第3行)
(d)、「短時間で歩留り良く面取りを行うことができしかも焼成後には研摩の必要がないため、量産性が向上する。」(第8頁第13〜15行)
同じく特開昭63-227303号公報(以下、引用例2という。)には、セラミック成形体のバリ取り装置が記載されており、特に次のことが記載されている。
(e)、「板状のセラミック成形体を一方向へ直線状に搬送するベルトコンベアとシャフトホルダに回転自在に保持されてセラミック成形体の搬送方向に沿いベルトコンベア上方に配置されたシャフトに取り付けられてなる螺旋形状のバリ取りブラシと、ベルトコンベアに対して上記シャフトホルダを高さ調節自在に支持し、上記バリ取りブラシのベルトコンベアのセラミック成形体の搬送面に対する高さを調節するブラシ高さ調節機構と、上記バリ取りブラシのシャフトを回転駆動するブラシ駆動装置とを備えていることを特徴とするセラミック成形体のバリ取り装置。」(特許請求の範囲第1項)
(f)、「一般に、各種のセラミック電子部品の製造に使用されるセラミック成形体はセラミック原料粉末を金型に入れてプレスすることにより製造される。しかし、金型には、通常、クリアランスが存在し、このクリアランスのためにセラミック成形体には周縁部にバリが発生する。」(第1頁右欄第3〜8行)
同じく特開昭55-14228号公報(以下、引用例3という。)には、タイルのバリとり方法とその装置が記載されており、特に次のことが記載されている。
(g)、「タイルを搬送するコンベヤ走路上の適当な位置に、コンベヤ上のタイルに当接する面をブラシ面とするバリとり用の可動体を設置し、この可動体のブラシ面をコンベヤ上のタイル面に接触させることにより、該タイルのバリを除去するタイルのバリとり方法において、」(第1頁左欄第5〜10行)
(h)、「尚、この発明において、いわゆるバリとは、タイルの圧縮成形時などに該タイルの上面や外周側面などに付着する原料屑や「ほこり」などを指称したものである。」(第3頁左上欄第5〜8行」
同じく実願昭61-98301号(実開昭63-3408号)のマイクロフィルム(以下、引用例4という。)には、煉瓦坏土の払い落し装置が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(i)、「煉瓦成形機で成形し搬送装置に搭載して搬送する煉瓦の上面部に付着しているバリや坏土を除去するために、煉瓦の上面部に当接するブラシを複数列搬送装置の上方部に並設するとともに、少なくとも1列のブラシを煉瓦の搬送方向に対して直角方向に高速度で往復駆動自在に配設したことを特徴とする煉瓦杯土の払い落し装置。」(実用新案登録請求の範囲第1項)
(j)、「しかし、煉瓦はまだ十分に固化していないため、坏土の払い落しによって角部が欠けたり、また坏土が払い落されなかった場合に台車に積載すると、残った坏土によって焼成の際などに角欠けが生じるものであった。」(第2頁第4〜8行)
(k)「以上のように本考案にあっては、成形した煉瓦に付着したバリや坏土を自動的に確実に払い落すことができ、後工程で角欠けが発生するのを防止できて歩留りの向上がはかれ、生産能率を飛躍的に高めることができるものである。」(第6頁第12〜16行)
同じく特開昭63-236767号公報(以下、引用例5という。)には、セラミックス配線基板の焼成方法が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(l)、「焼成しようとするセラミックス配線基板が、複数段に段積みされたセッターの上に並べられて炉内を炉長方向に移動し、セラミックス配線基板の移動方向に対して逆方向に本焼用ガスを流通させる一方、本焼用ガスの流通経路途中において炉側方よりセラミックス配線基板移動路上方の炉内空間に仮焼用雰囲気調整ガスを吹き込み、セラミックス配線基板を同一炉内で連続して仮焼成および本焼成することを特徴とするセラミックス配線基板の焼成方法。」(特許請求の範囲第1項)
(m)、「ところで、このような連続焼成において、セラミックス配線基板は、第3図(イ)の側面図および(ロ)の正面図に示されるように、セッターと呼ばれる台板2上に並べられ、このセッター2を台車3上に隙間を設けながら上方に複数枚積み重ね、台車3をプッシャー等で前進させることにより、炉内を移動する。これはセラミックス配線基板を炉内移動させる際の常法である。」(第2頁右下欄第1〜8行)
3、対比・判断
そこで、本願第2発明と引用例1記載の発明を対比すると、上記(b)、(c)の記載からみて引用例1には、「アルミナ97重量%よりなる配合粉末をシートに成形し、該シートを切断してなる生成形体に対し、弾性高分子材料よりなる回転式円板による処理によって、生成形体の稜線部に0.5mmのアールを付けた後、焼成するセラミック基板の製造方法」が記載されていると云え、この引用例1記載の発明の「アルミナ97重量%よりなる配合粉末」、「シートに成形し、該シートを切断し」、「稜線部に0.5mmのアールを付けた」は、それぞれ本願第2発明の「アルミナを主成分とするセラミック原料粉末」、「所定形状に成形し」、「角部の曲面加工」に相当するから、両者は「アルミナを主成分とするセラミック原料粉末を所定形状に成形してなる生成形体に対し、角部の曲面加工を施した後、この生成形体を焼成するセラミック基板の製造方法。」で一致し、ただ、▲1▼本願第2発明では、ブラッシング処理によってバリの除去や角部の曲面加工などを施しているのに対して、引用例1記載の発明では、弾性高分子材料よりなる回転式円板による処理によって角部の曲面加工を施している点、▲2▼本願第2発明では、生成形体を棚板に載置しローラーハースキルンを用いて焼成しているのに対し、引用例1記載の発明では、その点に直接触れた記載のない点で一応相違する。
そこで相違点▲1▼について検討する。
ブラッシング処理は、一般に、研摩処理の一つとしてバリ取りや角部の曲面加工のために行われている。セラミック製品の製造においても、この処理を施すことは本件出願前周知の事項(必要ならば、引用例2〜4参照。)であるから、引用例1記載の発明において、角部の曲面加工やバリの除去のために、回転式円板による処理に替えてこの周知のブラッシング処理を施すことに格別の困難性があるとは云えない。
次に相違点▲2▼について検討する。
セラミック基板の生成形体を焼成する際に棚板(セッター)に載置して焼成することは、本件出願前周知の事項(必要ならば、引用例5参照。)であるし、また、ローラーハースキルンもセラミックス製品焼成装置として普通に使用されているものであるから、引用例1記載の発明において、その生成形体の焼成をこれら周知手段を利用して行うことも、当業者が容易に想到し得ることである。
以上のとおり、上記相違点▲1▼▲2▼はいずれも周知手段から容易に想到し得る程度のものであり、また、これらによって奏される効果も当業者が当然に予測できる範囲内のものであると云える。
4、むすび
したがって、本願第2発明は、上記引用例1記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-09-27 
結審通知日 1999-10-12 
審決日 1999-10-22 
出願番号 特願平1-156374
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志  
特許庁審判長 沼澤 幸雄
特許庁審判官 森竹 義昭
野田 直人
発明の名称 セラミック基板およびその製造方法  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ