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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61M |
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管理番号 | 1007279 |
異議申立番号 | 異議1998-70855 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-07-05 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-02-25 |
確定日 | 1999-11-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2645203号「膨張可能なステント及びその製造方法」の請求項1ないし23に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2645203号の請求項1ないし23に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 特許第2645203号に係る発明についての出願は、平成4年10月23日(パリ条約による優先権主張1991年10月28日、米国)に出願され、平成9年5月2日にその発明について特許の設定登録がなされたが、その後、その特許について特許異議申立人テルモ株式会社より特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、期間延長請求書により延長された指定期間内である平成10年12月7日に訂正請求がなされた後、上記請求に対する訂正拒絶理由通知がなされ、期間延長請求書により延長された指定期間内である平成11年8月2日に訂正の補正がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 ア.訂正請求に対する補正の適否について 特許権者が求めている訂正の補正の内容は以下のとおりである。 a.平成10年12月7日付け訂正請求書で訂正された請求項1記載の「膨張可能で」(同請求書添付の全文訂正明細書参照。以下同様。)を「膨張可能でかつ塑性変形可能となっており」に補正する。 b.同訂正された請求項5記載の「二極性材料」(同請求項5参照)を「材料」に補正する。 c.同訂正された請求項12記載の「膨張可能で」(同請求項12参照)を「膨張可能でかつ塑性変形可能となっており」に補正する。 d.同訂正された請求項14記載の「二極性材料」(同請求項14参照)を「材料」に補正する。 e.同訂正された請求項16記載の「二極性材料」(同請求項16参照)を「所定材料」に補正する。 f.同訂正された請求項17記載の「膨張可能で」(同請求項17参照)を「膨張可能でかつ塑性変形可能となっており」に補正する。 g.同訂正された請求項23記載の「膨張可能で」(同請求項23参照)を「膨張可能でかつ塑性変形可能となっており」に補正する。 h.同訂正された請求項5及び14記載の「超塑性ニッケルチタニウム合金」(同請求項5及び14参照)を削除する。 i.同訂正された請求項3の「前記複数の円筒形状の要素の各々」の記載を、訂正前の「膨張していない状態の前記半径方向に膨張可能な円筒要素」の記載に戻す。 j.同訂正された請求項5の「請求項1ないし請求項4のいずれか1項の」の記載を、訂正前の「請求項4の」の記載に戻す。 k.同訂正された請求項11の「請求項1」の記載を、訂正前の「請求項10」に戻す。 l.同訂正された請求項12の「相互連結部」の記載を、「相互連結部を互い違いにすること」の記載に訂正する。 m.同訂正された請求項14の「請求項12又は請求項13」の記載を、訂正前の「請求項12」に戻す。 n.同訂正された請求項15の「請求項12ないし請求項14のいずれか1項」の記載を、訂正前の「請求項12」の記載に戻す。 上記a、c、f、gの補正事項に関する記載として願書に添付した明細書(以下特許明細書という)の発明の詳細な説明には以下の記載がある。「ステントの円筒形構造は、膨張したときに(NiTi合金を除く)塑性変形して、ステントは、膨張した状態のままであるので、したがって、使用の際に崩壊するのを防止するために膨張されたときに十分に硬くなければならない。」【0009】したがって、上記補正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、ステントが膨張するときの態様を「塑性変形」により膨張するものであるように限定したものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではなく、また、訂正請求書の要旨を変更するものでもない。 上記b、dの補正については、請求項5,14の「二極性材料」の構成から「二極性」の表現を削除するものである。そして、上記請求の範囲はその材料を、「ステンレス鋼、タングステン、タンタル、及び熱可塑性重合体」に限定し、その中から選択されたものであることが記載されている。 一方、上記の材料において、「二極性」と表現手される性質を有する材料は、一般的には存在しない。したがって、このような技術常識を勘案すれば、「二極性材料」の「二極性」なる表現は、意味のないものであって、誤記の類いであることは当業者であれば理解できる。 さらに付言すれば、本件出願のパリ条約による優先権主張のもととなる出願の明細書を見ると、上記「二極性」なる表現は、本来は全く異なる意味を持つ単語「biocompatible」の誤訳であることも明らかであるから、上記「二極性」なる表現は本件明細書では何ら意味のない記載であると認める。 よって、上記補正は本件明細書において、誤って記載された何ら意味のない「二極性」なる表現を削除するものであるから、誤記の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではなく、また、訂正請求書の要旨を変更するものでもない。 上記eの補正については、「二極性材料」の「二極性」なる、表現を「所定」と補正するものであるが、上記「二極性」が何ら意味のない表現であることは上記(b、dの補正についての判断参照)のとおりである。 したがって、上記補正は本件明細書において、誤って記載された何ら意味のない「二極性」なる表現を「所定」の材料であることを明らかにするものであるから、誤記の訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではなく、また、訂正請求書の要旨を変更するものでもない。 上記hの補正については、円筒形状に用いられる材料の種類のうち「超塑性ニッケルチタニウム合金」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではなく、また、訂正請求書の要旨を変更するものでもない。 上記i乃至k、m、nの補正は、特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正を、訂正前の明細書に記載された表現に戻す補正であるから訂正請求書の要旨を変更するものではない。 上記lの補正は、特許請求の範囲を拡張又は変更する訂正を、訂正前の明細書に記載された構成とし、不明瞭な「相互連結要素」の記載を「相互連結部」の表現にしたものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 よって、上記a乃至nの補正は特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。 イ.訂正の概要及び、その適否の判断 上記補正されたものを除く、特許権者が求める訂正の内容は以下のとおりである。 a.請求項1、12、17、23の「半径方向に独立に膨張可能で」の記載を、それぞれ「送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨張可能で」と訂正する。 b.請求項1(3ヶ所)、6、7、8、11、12(3ヶ所)、17(3ヶ所)、23(3ヶ所)の「連結要素」の記載を、それぞれ、「連結部」と訂正する。 c.請求項2乃至8、9(2ヶ所)、10、11、13、14の「ステント」の記載を、それぞれ「長手方向に可擁性を有するステント」と訂正する。 d.請求項3、5、7、11の「円筒要素」の記載を、それぞれ「円筒形状の要素」と訂正する。 e.請求項4の「横方向に略波状模様の、各半径方向に膨張可能な円筒要素」の記載を「前記複数の円筒形状の要素の各々の横断面」と訂正する。 f.請求項8の「前記半径方向に膨張可能な」の記載を「前記円筒形状の」と訂正する。 g.請求項10の「前記円筒要素の前記波状模様は、」の記載を「前記円筒形状の要素の1つの前記略波状模様は、隣接する円筒形状の要素の前記略波状模様と」と訂正する。 h.請求項14の「タングステン」の記載を削除する。 i.請求項16の「前記ステントは」の記載を「前記円筒形状の要素と前記連結部とは」と訂正する。 j.請求項16の「請求項1のステント」の記載を「請求項1の長手方向に可僥性を有するステント」と訂正する。 k.請求項20、21の「請求項17」の記載を「請求項19」と訂正する。 l.請求項20の「前記コーティング」の記載を「前記抵抗性コーティング」と訂正する。 m.請求項23の「(b)前記」の記載を 「(b)脈管構造の中の送出のために、前記」と訂正する。 n.請求項23の「からなるキット」の記載を「からなるステント送出装置」と訂正する。 上記aに関する記載として、「カテーテルのバルーン14を膨張させて、ステント10を動脈15に向かって膨張させる」【0015】、「ステント10は、カテーテル11を引き抜いた後、動脈15を開いた状態に維持するのに役立つ。」【0016】の記載がある。 したがって、上記aの訂正は、願書に添付した明細書に記載された範囲内で、膨張可能の態様を、実施例に記載された内容となるよう、具体的に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記bの訂正は「連結要素」の表現では他の構成要素と混同するおそれがあるため、「連結部」と表現を改めただけであり、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記c、jの訂正は引用形式で記載された請求項の「ステント」の表現を、引用した請求項に用いられた「長手方向に可撓性を有するステント」の表現に統一するものであるから、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更しするものではない。 上記dの訂正は、引用形式で記載された請求項の「円筒要素」の表現を、引用した請求項に用いられた「円筒形状の要素」の表現に統一するものであるから、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記eの訂正は、当該請求項で限定している縦がどの断面のものであるか明瞭にすると共に、「円筒要素」の表現を引用する請求項1に表現である「円筒形状の要素」に統一するものである。 上記eの訂正において、「横方向に略波状模様の、各半径方向に膨張可能な」の構成が削除されているが、請求項4は請求項1を引用するものであり、「円筒形状の要素」は「横方向に略波状模様の、各半径方向に膨張可能な」ものであることが請求項1で限定されているから、当該構成を削除しても実質的に、特許請求の範囲を拡張するものではない。よって、この上記eの訂正は不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記fの訂正は、訂正前の表現「前記半径方向に膨張可能な要素」では、引用する請求項の対応する構成が不明瞭であり、該不明瞭な記載の釈明のために引用する請求項に記載された構成である「円筒形状の要素」に訂正するものである。よって、上記の訂正は不明瞭な記載の釈明であって、当新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記gの訂正は、同相である対象が訂正前の記載では不明瞭であったものを、明瞭にするものであるから、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記hの訂正は、円筒形状に用いられる材料の種類のうち「タングステン」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではなく、また、訂正請求書の要旨を変更するものでもない。 上記iの訂正は「ステント」をより具体的な「前記円筒形状の要素と前記連結部」に明瞭にするものであるから、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記kの訂正は引用する請求項を下位概念の請求項とすることにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記lの訂正は、請求の範囲に記載された用語を「抵抗性コーティング」に統一するものであるから、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記mの訂正は、ステントの利用分野を「脈管構造の中の送出のため」と限定し、明瞭にするものであり、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 上記nの訂正は「キット」の表現を「ステント送出装置」に改めることにより、請求項に記載された装置をより明瞭にしたものであるから、不明瞭な記載の釈明であって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。 ウ.独立特許要件の判断 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1乃至23に係る発明(以下、それぞれ、本件発明1乃至23という)は、その特許請求の範囲の請求項1乃至23に記載されたとおりのものである。 そして、上記請求項1乃至23項に係る発明は、請求項1、12、17、23に係る発明がその特許請求の範囲に記載された下記の事項により特定されるとおりのものであり、請求項2乃至11、及び16に係る発明が実質的に請求項1を引用するものであり、請求項13乃至15に係る発明が実質的に請求項12を引用するものであり、請求項18乃至22に係る発明が実質的に請求項17を引用するものである。 記 【請求項1】送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨張可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状の要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、ことを特徴とする長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項12】送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨張可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状の要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、長手方向に可僥性を有するステントの製造方法であって、 (a)所定長さの管に、化学的エッチングに抵抗性のあるコーティングを行い、 (b)前記管の部分を露出させるために、前記抵抗性コーティングの部分を選択的に除去し、 (c)露出した前記管の部分を除去する工程からなるステントの製造方法。 【請求項17】送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨張可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状の要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、長手方向に可撓性を有するステントを形成するために管状開放網目構造を製造する方法であって、 (a)所定の別々の長さの薄肉管を提供し、 (b)抵抗性コーティングを前記管の外部に形成し、 (c)抵抗性コーティングで被覆された、完全に開かれ網目状に配置された管状構造の所望のパターンを残し、除去すべき管の部分を露出させるために、前記管の外部の前記抵抗性コーティングの部分を選択的に除去し、 (d)前記管の前記露出部分を除去する工程からなる方法。 【請求項23】(a)近位端及び遠位端と、該遠位端に膨張可能な部材とを有する細長いステント送出カテーテルと、 (b)脈管構造の中の送出のために、前記カテーテルの膨張可能な部材に摺動可能に取り付けられるようになっており、送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨張可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状の要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、長手方向に可擁性を有するステントとからなるステント送出装置。 本件発明1乃至9、及び、12乃至23に対して当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物1乃至6には下記のとおりの記載がある。 刊行物1:特開平1-299550号公報 「管状部材を製造するのに適当な材料には銀、タンタル、ステンレス鋼、金、チタン又は前記した必要な特性を有する任意のプラスチック材料が包含される。」(公報第7頁左下欄第13行〜16行) 「隣接管状部材71間に又は隣接移植片又はプロテーゼ70間に配置されているのは、隣接管状部材71又は移植片もしくはプロテーゼ70を柔軟に接続するための少なくとも1つのコネクタ部材100である。コネクタ部材100は、好ましくは、前記したような、移植片70と同じ材料から形成され、そしてコネクタ部材100は、第7図に示された如く、隣接移植片70又は管状部材71かんで一体的に形成されてもよい。」(明細書第11頁右上欄第20行〜左下欄第8行) 刊行物2:特開平3-151983号公報 「少なくとも2以上の金属性の管状ステント分節部と、当該ステント分節部同士を接合するための生体適応材料よりなる柔軟なヒンジ部とを有することを特徴とする関節接合型ステント」(特許請求の範囲第1項) 「人間やその他の動物の冠状動脈や抹消動脈等の血管の開通を維持するための血管内ステントに関するもの」(公報2頁左上欄第1行〜3行) 「ヒンジ部22は、それぞれの屈曲の外方に位置するよう、ステントの軸線に対して交互に反対側に位置することが効果的である。」(公報第3頁左下欄第14行〜17行) 「ステント分節部の形状、直径、長さ、強度、配置及びヒンジ部の柔軟度(弾性)長さ及び接合位置を決定するために、管状動脈整形術等に先立って、支えられるべき動脈壁は精密に解析される。」(公報第4頁左上欄第7行〜10行) また、第1図ないし8図を参酌すると、管状ステント分節部が長手方向軸線に直行して複数の山谷を含む略波状模様に形成されていることがみてとれる。 刊行物3:日本医学放射線学会雑誌第48巻第9号、PP.1183〜1185(昭和63年9月25日発行) 「Expandable meta11ic stentはステンレス鋼線をジグザグに12回折り曲げて円筒状にすることにより自主作製した。使用したstentは、太さ0.010または0.012インチの鋼線を用いて長さ10mm、直径10mmにしたものと、太さ0.016インチの鋼線を用いて長さ25mm、直径25mmにした2種類である。」(第1183頁左欄第9行〜右欄第3行) 「stent径は挿入直後から経過と共に拡大し、約1週間で最大径となり、その後径を維持した。胆管径も6例においてstent留置部で5mm以上を示した」(第1184頁右欄第10行〜第1185頁左欄第2行) 刊行物4:特開昭62-231657号公報 「好ましくは、管状部材71は最初肉薄の・・ステンレス鋼管であり、そして交差するバー78と79間の開口82は慣用のエッチングプロセス、例えば電気機械的又はレーザーエッチングにより形成され」(公報第8頁左上欄第9〜14行) 刊行物5:特開昭64-83685号公報 「金属(201)の片面又は両面に感光性レジスト(202)を塗布し、所定の形状が得られる露光用パターン(204)を用いて、パターンを露光、現像してレジスト膜画像(205)を形成し、次いで露出金属部(206)に対して、エッチング又は、めっきをおこないしかる後にレジスト膜を剥離する。」(公報第1頁右下欄第8〜14行) 「CO2レーザを用いてレジストの部分的剥離をおこなった。」(公報第2頁左下欄第2〜3行) 「ステンレス丸棒(SUS304)に市販のアクリル系塗料・・を塗布し、ウォータージェットにて塗料の部分的な剥離をおこない塩化鉄にてエッチングをおこなった」(公報第2頁左下欄第8〜13行) 「一筆書きでレジストの剥離をおこなえる」(公報第2頁右下欄第5〜6行) 刊行物6:特開昭62-235496号公報 「光硬化性樹脂組成物を含む電着塗装浴中にその表面に銅金属層を形成した基板を浸漬し、これを陽極として通電することにより電着塗装を行なって塗膜を得」(公報第2頁左上欄第17〜20行) 本件発明1、12、17及び23と上記刊行物1-6に記載の発明とを対比すると、上記いずれの刊行物に記載の発明にも、本件発明1、12、17、23を特定する事項である「各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する」という構成が記載されていない。 詳述すると、円筒形状に相当する構成の直径と長さについて具体的に記載している刊行物は、上記刊行物3であるが、上記のものは、円筒形状に相当する部分の直径と長さは同じものである。(長さ10mm、直径10mm又は長さ25mm直径25mm)そして、当該上記要素で構成されたステントを胆管に留置したときにおける、胆管径は「留置部で5mm以上」の記載があるから、上記の要素は、胆管挿入時に一度縮径された後、拡径されるものであり、該拡径された状態でも、当該要素はその直径より小さい長さを有することは記載されていない。 また、請求項2乃至9、及び16に係る発明は請求項1の構成を、請求項13乃至15に係る発明は請求項12の構成を、請求項18乃至22に係る発明は請求項17の構成を、それぞれ、引用し、当該構成を含むものであるから、上記本件発明1、12、17及び23について対比したとおりである。 そして、本件発明1乃至9、及び、12乃至23は、上記「各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する」ことにより、「円筒形状の要素が比較的長い長さを有する場合に比較して、ステント全体として考えた場合、長手方向に沿って多数の円筒形状の要素12間に相当する部分を形成することができる。・・この円筒形状の要素12間の部分を多数形成することにより長手方向に沿って大きな可撓性を持つことができる」(平成11年8月2日付け特許異議意見書4頁24-29行)という格別の効果を奏するものである。 したがって、本件発明1乃至9及び12乃至23は上記刊行物1乃至6に記載のものから容易に発明をすることができたものではないから特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 エ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項および同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立について ア.申立の概要 特許異議申立人テルモ株式会社は、本件発明1乃至23の特許に対して、証拠として甲第1乃至6号証(当審が取り消し理由通知書にて引用した刊行物1乃至6にそれぞれ対応する)を提出し、上記本件発明1乃至23の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、本件発明1乃至23の特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。 イ.判断 異議申立人テルモ株式会社が提出した甲号各証には「各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する」という構成が記載されておらず、当該事項により、本件発明1乃至23に係る発明は「長手方向に沿って大きな可撓性を持つことができる」という格別の効果を奏するものである。 したがって、本件発明1乃至23が上記甲号各証に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由および、証拠によっては、本件発明1乃至23の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1乃至23の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 膨脹可能なステント及びその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨脹可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状の要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、ことを特徴とする長手方向に可擁性を有するステント。 【請求項2】 円筒形状部材が、膨脹の際に第2展開径を維持するようになった請求項1の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項3】 膨張していない状態の前記半径方向に膨張可能な円筒要素は、その直径より小さい長さを有する請求項1の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項4】 前記複数の円筒形状の要素の各々の横断面は、2対1より小さい縦横比を有する請文項1の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項5】 前記各円筒形状の要素は、ステンレス鋼、タングステン、タンタル及び熱可塑性重合体の群がら選択された材料で形成される請求項4の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項6】 相互連結部の円周方向の配置は、均等の大きさである請求項1の長手方向に可撓性を撓有するステント。 【請求項7】 隣接した円筒形状の要素の間に配置された4つまでの相互連結部がある請求項1の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項8】 前記円筒形状の要素と前記相互連結部は同じ材料で作られている請求項1の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項9】 前記長手方向に可擁性を有するステントは、管の単一片から形成されている請求項8の長手方向の可擁性を有するステント。 【請求項10】 前記円筒形状の要素の1つの前記略波状模様は、隣接する円筒形状の要素の前記略波状模様と同相である請求項1の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項11】 前記相互連結部は、前記円筒形状の要素の前記波状模様の山或いは谷のいずれかにすべて連結されている請求項10の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項12】 送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨脹可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状の要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、長手方向に可擁性を有するステントの製造方法であって、 (a)所定長さの管に、化学的エッチングに抵抗性のあるコーティングを行い、 (b)前記管の部分を露出させるために、前記抵抗性コーティングの部分を選択的に除去し、 (c)露出した前記管の部分を除去する工程からなるステントの製造方法。 【請求項13】 複数の長手方向に可撓性を有するステントは、管の単一片から作られる請求項12の方法。 【請求項14】 前記長手方向に可撓性を有するステントは、重合体、ステンレス鋼、チタニウム及びタンタルの群から選択された材料で作られる請求項12の方法。 【請求項15】 前記コーティングは、電気泳動塗装によって行われる請求項12の方法。 【請求項16】 前記円筒形状の要素と前記連結部とは、所定材料のコーティングで被覆される請求項1の長手方向に可撓性を有するステント。 【請求項17】 送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨脹可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状の要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、長手方向に可撓性を有するステントを形成するために管状開放網目構造を製造する方法であって、 (a)所定の別々の長さの薄肉管を提供し、 (b)抵抗性コーティングを前記管の外部に形成し、 (c)抵抗性コーティングで被覆された、完全に開かれ網目状に配置された管状構造の所望のパターンを残し、除去すべき管の部分を露出させるために、前記管の外部の前記抵抗性コーティングの部分を選択的に除去し、 (d)前記管の前記露出部分を除去する工程からなる方法。 【請求項18】 前記管の前記露出部分は、エッチングによって除去される請求項17の方法。 【請求項19】 前記抵抗性コーティングの選択的な除去は、前記管とレーザとの相対運動を機械で制御することによって達成される請求項17の方法。 【請求項20】 前記抵抗性コーティングを選択的に除去するために使用される前記レーザは、前記抵抗性コーティングによって容易に吸収される特定の光の波長を放出する請求項19の方法。 【請求項21】 前記レーザは、CO2ガスレーザである請求項19の方法。 【請求項22】 使用される前記抵抗性コーティングは、写真平板用の化学的抵抗性コーティングである請求項17の方法。 【請求項23】 (a)近位端及び遠位端と、該遠位端に膨脹可能な部材とを有する細長いステント送出カテーテルと、 (b)脈管構造の中の送出のために、前記カテーテルの膨脹可能な部材に摺動可能に取り付けられるようになっており、送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨脹可能でかつ塑性変形可能となっており、相互連結部を互い違いにすることによって共通の軸線に略整列するように、互いに連結された複数の円筒形状の要素を有し、該円筒形状の要素は、長手自方向軸線に直交して、複数の山谷を含む略波状模様に形成され、前記円筒形状。要素の一端の各連結部は、前記円筒形状の要素の他端の連結部から円周方向にずれており、各円筒形状の要素はその直径より小さい長さを有する、長手方向に可撓性を有するステントからなるステント送出装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、開通性を維持するために、血管のような患者の身体ルーメンに移植されるようにした一般的にステントと呼ばれる膨脹可能なendprosthesis装置に関する。これらの装置は、血管のアテローム硬化の狭窄の処置に非常に役立つ。 【0002】 ステントは、血管或いは他の切開管空の部分を開いた状態に維持する機能を有する一般的に管形状の装置である。ステントは、流体流路を塞ぐことができる切開された動脈の内層を支持して、保持して使用するのに特に適している。 先行技術のステントのさらなる詳細は、アルフィディ他の米国特許第3868956号、バルコ他の米国特許第4512338号、マース他の米国特許第4553545号、バルマズの米国特許第4733665号、ローゼンブルスの米国特許第4762128号、ジアンティルコの米国特許第4800882号、ヒルテッドの米国特許第4856516号、ウィクトールの米国特許第4886062号に開示されており、ここにそっくりそのまま取り込まれている。 【0003】 種々の装置が、ステントを送出して、移植するために説明された。バルーンのように膨脹可能なステントを膨脹可能部材に取り付けることを含むステントを所望の円空位置に送出するためにしばしば説明されてきた1つの方法は、脈管内のカテーテルの遠位端に設けられ、カテーテルを患者の本体管空内の所望の位置に進め、カテーテルのバルーンを膨脹させて、ステントを膨脹して恒久的な膨脹状態にし、次いでバルーンを収縮させてカテーテルを取り出す。先行のステントを使用する際に出くわす困難の1つは、身体ルーメンを開いた状態に保持するのに必要とされる半径方向の剛性を維持すると同時に、ステントの送出を容易にするためにステントの長手方向の可擁撓性を維持することである。 【0004】 必要とされ、これまで利用できなかったものは、高い程度の可撓性を有するステントであり、くねった通路を通って進むことができ、容易に膨脹させることができ、それでも身体ルーメンをステントを膨脹した位置に開いたまま保持するための機械的強度を有することである。 【0005】 【従来技術及び発明が解決しようとする課題】 本発明は、くねった身体ルーメンを通す送出を容易にするために、長手方向軸線に沿って比較的可撓性を有するが、身体ルーメンの中に移植させられたとき動脈のような身体ルーメンの開通性を維持するために膨脹した状態で半径方向に十分な硬くて安定した膨脹可能なステントに関する。 【0006】 本発明のステントは、一般的に互いに膨脹し、撓む能力について比較的独立な半径方向に膨脹可能な複数の円筒要素を有する。ステントの個々の半径方向膨脹可能な円筒要素は、それら自身の直径より長手方向に短いように寸法決めされる。隣接した円筒要素の間に延びる相互連結要素又はストルートは、安定性を増大させ、膨脹の際にステントのそりを防止するために位置決めされるのが望ましい。結果として生じるステントの構造は、身体ルーメンの壁の小さい切開片がルーメンの壁の対する位置に押し戻されるが、ステントの長手方向の可撓性と妥協するような近さに、長手方向に近く間隔を隔てた一連の半径方向に膨脹可能な円筒要素である。個々の円筒要素は、重大な変形なしに隣接した円筒形の要素に対して僅かに回転でき、その長さに沿って、その長手軸線のまわりに可撓性を有するが、崩壊に抵抗するために半径方向になお非常に硬いステントを累積的に与える。 【0007】 本発明の特徴を具体化したステントは、送出用カテーテルの膨脹可能部材、例えばバルーンに取り付けて、カテーテルーステント組立体を身体ルーメンを通して移桓位置に運ぶことによって所望のルーメン位置に容易に送出することができる。ステントを所望の位置に送出するためにステントをカテーテルの膨脹可能部材に固定するための種々の装置が有効である。現状では、ステントをバルーンに押さえ付けるのが望ましい。ステントをバルーンに固定するための他の装置は、横方円の動きを抑制するために膨脹材料にリッジ又はカラーを設け或いはbioresorbableな一時的接着剤を含む。 【0008】 膨脹可能な円筒要素のための現状の好ましい構造は、たとえば波状のような波状模様を円周方向に一般的に有する。円筒要素の波状の要素の横断面は、比較的小さく、約2対1から約0.5対1の縦横比を有するのが望ましい。特に、1対1の縦横比が適していることがわかっている。ステントの開放網状構造によって、損傷を受けた動脈の壁の治癒及び修復を改善することができる動脈壁の大部分に渡って血液の潅流を可能にする。 【0009】 膨脹可能円筒体の半径方向の膨脹は、波形の振幅及び周波数を減少させることから生じる波形の変化と同様に波状模様を変形させる。おそらく、個々の円筒形構造の波状模様は、膨脹させたときにその長さに沿ったステントの収縮を防止するために、互いに同相である。ステントの円筒形構造は、膨脹したときに(NiTi合金を除く)塑性変形して、ステントは、膨脹した状態のままであるので、したがって、使用の際に崩壊するのを防止するために膨脹されたときに十分に硬くなければならない。超塑性NiTi合金では、オステナイトからマルテンサイトに相変化してその結果ステントの膨脹を可能にするように、圧縮応力が除去されたときに膨脹が生じる。 【0010】 隣接した円筒要素を相互に結合した細長い要素は、膨脹可能な円筒要素の波状構成部品の横方向の寸法と同様な横断面を有するべきである。相互連結要素は、膨脹可能な円筒要素と一体構造で管状要素のような同じ中級品から形成され、或いは溶接したり、相互連結要素の端を膨脹可能な円筒要素の端に機械的に固定したりするような適当な手段によって独立に結合して形成させることができる。おそらく、ステントの相互連結要素の全ては、ステントのための円筒要素の波状の構造に山或いは谷のいずれかに結合される。この仕方で、膨脹の際ステントは短縮は生じない。 【0011】 隣接した円筒要素を結合する要素の数及び位置は、膨脹していない状態並びに膨脹した状態のいずれの場合にもステント構造で所望の長手方向の可擁性を発揮させるために、変えることができる。これらの特性は、ステントは移植される身体ルーメンの自然生理機能の変化を最小にして、ステントによって内的に支持される身体ルーメンの伸展性を維持するために重要である。一般的に、ステントの長手方向の可撓性が大きくなるほど、より容易にしかもより安全に移植位置にステントを送出することができる。 【0012】 本発明の現状の好ましい実施例では、ステントは化学的エッチングに対して抵抗性のある材料でコーティングしたステンレス鋼ハイポ管で都合よく、容易に形成される。次いで、所望のステント構造を発達させるために取り除かれるべき下層の管の部分を露出させるためにコーティングの部分を取り除く。管の露出部分は化学的エッチングによってステント構造の所望の模様に管材料の被覆部分を残す管外部から取り除かれる。エッチング工程は小型の製品を機械的或いはレーザ機械工程の特性であるバリ或いは他の加工品なしに、管壁に平滑な開口を発達させる。さらに、化学的耐コーティングを取り除くためのコンピュータ制御されたレーザのパターン工程は、写真平板技術をこれらの小製品の製造に適応させる。本発明の小ステントを作るのに必要とされる極小寸法のマスクの形成は、最も困難な作業である。複数のステントは、ステントのパターンを繰り返して、ステントを相互に結合するための小さいウェブ又はタブを設けることによってハイポ管の1つの長さから形成することができる。エッチング工程の後、ステントを結合する小さいウェブ又はタブを提供することによって、ステントを分離することができる。 【0013】 【実施例】 図1は、送出用カテーテル11に設けられた本発明の特徴を有するステント10を示す。ステントは、一般的に、略同軸に配置され、複数の半径方向に膨脹可能な円筒要素12を有し、該要素は、隣接した円筒要素の間に配置された要素13によって相互に結合されている。送出用カテーテル11は、動脈15内でのステント10の膨脹のために膨脹可能な部分又はバルーン14を有する。図1に示す動脈15は、動脈管路の部分を塞いでいる切開したライニング16を有する。 【0014】 ステント10を取り付けた送出用カテーテル11は、血管形成手術用の従来のバルーン膨脹カテーテルと本質的に同じである。バルーン14は、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタル酸エステル、ポリ塩化ビニル、ナイロン及びDu Pont Companyの重合体生産部によって製造されるSurlynのようなイオノマーのような適当な材料で形成されるのがよい。他の重合体を使用してもよい。動脈15内の損傷部位への送出中、ステント10をバルーン14上の所定位置にとどめる為に、ステント10をバルーンへ圧縮させる。ステントが送出用カテーテル11の膨脹部分上の所定位置にさらに確実に停まるように、かつ所望の動脈位置への送出中、ステント10の開放面によって、身体ルーメンの磨耗を防ぐために「ステント送出装置」と称する1990年4月25日出願の第07/647464号に説明されたような引き込み可能な保護送出スリーブ20を設けてもよい。バルーンの作動部分、即ち、円筒部分の端にカラー或いはリッジを設けるような、ステント10をバルーン14に固定するための他の装置を使用してもよい。 【0015】 ステント10の各半径方向に膨脹可能な円筒要素12を、独立に膨脹させるのが良い。したがって、バルーン14は、身体ルーメンの種々の形状でのステント10の移植を容易にするために、円筒形以外の膨脹形状、例えばテーパ形状を有することができる。 好ましい実施例では、ステント10の送出は、以下の仕方で達成される。ステント10をまず送出用カテーテル11の遠位端の膨脹可能バルーン14に取り付ける。バルーン14を僅かに膨らませてステント10をバルーンの外部に固定する。カテーテルーステント組立体を従来のセルディンガー技術で案内用カテーテル(図示せず)を通して患者の血管系に導入する。切り離した又は切開したライニング16を有する損傷した動脈部分に案内ワイヤ18を配置し、次いで、ステント10が切り離したライニング16の直ぐ下にくるまで動脈15内で案内ワイヤー18に従い、カテーテルーステント組立体を前進させる。図2に示すように、カテーテルのバルーン14を膨脹させて、ステント10を動脈15に向かって膨脹させる。図に示さないが、ステント10を動かないように着座させ、さもなければ固定するためにステント10の膨脹によって動脈15を僅かに膨脹させるのが望ましい。動脈の狭窄部分の治療中のある状況では、血液或いは他の流体の通り容易にするために動脈を相当膨脹させなければならない。 【0016】 図3に示すように、ステント10は、カテーテル11を引き抜いた後、動脈15を開いた状態に維持するのに役立つ。細長い管状部材からステント10を形成する、二とにより、ステント10の円筒要素の波状構成部品は、横断面が比較的平らであるから、ステントを膨脹させたとき、円筒要素は、動脈15の壁に押し込まれ、その結果、動脈15を流れる血液の流れを妨害しない。動脈15の壁に押し込まれたステント10の円筒要素12は、ついには血液の流れの妨害をさらに最小にする内皮細胞の成長で覆われる。円筒要素12の波状部分は、動脈内でのステントの動きを防止する良好な取付け特性を与える。さらに、一定の間隔で間隔の狭い円筒要素12は、動脈15の壁の一様な支持を行い、その結果、図2及び図3に示すように動脈15の壁の小さいフラップ或いは切開部を留めて、所定位置に良好に保持するようになっている。 【0017】 図4は、隣接した半径方向に膨脹可能な円筒要素12の間の相互連結要素13の配置をより詳細に示すためステントの一端を分解図で示した、図1に示すステント10の拡大斜視図である。円筒要素12の一方の側の各対の相互連結要素13は、ステントについて最大の可撓性を達成するように配置されるのが好ましい。図4に示す実施例では、ステント10は、120°離れた隣接した半径方向に膨脹可能な円筒要素12の間に3つの相互連結要素13を有する。円筒要素12の一端の各対の相互連結要素13は、円筒要素の他の側の要素13の対から半径方向に60°食い違っている。交互の相互連結要素によって、ステントは本質的にあらゆる方向に長手方向に撓むことができる。相互連結要素の種々の配置形態が可能であり、図7から図10に数個の例を概略に示す。しかし、すでに述べたように個々のステントの全ての相互連結要素は、ステントの膨脹中ステントが短くなるのを防止するために、波状の構造要素の山或いは谷のいずれかに固定されるべきである。 【0018】 図10は、3つの相互連結要素13を、半径方向に膨脹可能な円筒要素12の間に配置した本発明のステントを示す。相互連結要素13は、ステントの周のまわりに120°の間隔で半径方向に分配される。隣接した円筒要素12の間に4つ或いはそれ以上の相互連結要素13を配置することのは、一般的には2つ及び3つの相互連結要素について上で論じた同じ考慮を生じる。 【0019】 ステント10の特性は又、円筒要素12の波状模様の変化によって変えることができる。図11は、円筒要素が波状模様だが隣接した円筒要素と位相を異にする交互のステント構造を示す。特定の模様及び円筒要素12の円周のまわりの単位長さ当たりの波数或いは波の振幅は、半径方向の剛性のようなステントの特定の機械的要求性能を満たすように選択される。 【0020】 波の数は又、例えば波の山に、或いは図5及び図11に示すように波の側に沿って相互連結要素13を配置するように変えることができる。 本発明のステント10は、多くの方法で作ることができる。しかし、ステントの好ましい製造方法は、ステンレス鋼のハイポ管のような薄肉管状部材に化学的エッチングに抵抗性のある材料をコーティングし、次いで除去すべき下層のハイポ管を露出させるがステントの所望模様でハイポ管のコーティング部分を残すようにコーティング部分を除去し、続いて行われるエッチングが、金属管の露出した部分を除去し、ステントを形成すべき金属管の部分を比較的そのままに残す。金属管のコーティング部分は、ステントの所望の形状である。腐食液工程は、従来の機械加工或いはレーザ機械加工に個有のバリ又はスラグを除去することの必要性を回避する。図6に概略的に示すように機械制御レーザによって耐腐食液材料を除去するのが好ましい。 【0021】 コーティングは、硬化させたとき化学的腐食液に抵抗する所定長さの管に適用される。San Jose、CaliforniaのShipley Company によって作られた「ブルーホトレジスト」は、入手可能な適当な写真平板用コーティングの例である。コーティングは、電気泳動塗装によって行われるのが望ましい。 表面仕上げが、適度に一様であることを確保するために、電気化学研磨のために使用される電極の1つは、管状部材の中央部分のまわりに配置されるドーナッツ形状の電極である。 【0022】 管は、ステンレス鋼、チタニウム、タンタル、超塑性NiTi合金及び高い剛性の熱可塑性重合体のようなあらゆる適当な二極性材料で作ることができる。ステントの直径は非常に小さく、したがってステントが作られる管も又必然的に小さい直径を有しなくてはならない。ステントは、典型的には、膨脹してない状態でステントが作られるハイポ管の外径と同じ約0.06インチ程度の外径を有し、0.01インチ或いはそれ以上まで膨脹することができる。ハイポ管の肉厚は、約O.003インチである。ステントがプラスチックである場合には、ステントの膨脹を容易にするために、ステントを膨脹させる動脈の部位内でステントを加熱しなければならない。いったん膨脹したら、膨脹状態を維持するために冷やす。ステントは、バルーン内の流体を加熱することによって、或いはここにそっくりそのまま言及されている「加熱バルーンを有する膨脹カテーテル組立体」と称する1990年1月26日出願の同時継続出願第07/521337号で開示されたような適当な装置によってバルーンを直接加熱することによって都合よく加熱することができる。ステントは又、ここにそっくりそのまま言及されている「超塑性案内部材」と称する1990年12月18日出願の同時継続出願第07/629381号で開示されたような超塑性NiTi合金のような材料で作ることができる。この場合、ステントは、原寸で形成されているが所望の管腔内の部位への移送を容易にするために送出用カテーテルのバルーン上でより小さい直径に変形(例えば、圧縮)される。変形によって引き起こされる応力は、ステントをマルテンサイト相からオーステナイト相に転位させ、ステントが所望の管腔内の位置に達するとき、力が解放されて、マルテンサイト相へ転位して戻ることにより、ステントを膨脹させる。 【0023】 図6に参照すれば、コーティング管21が、管21をレーザ24に対して位置決めするために機械制御装置23の回転可能なコレット取り付け具22内に置かれる。機械で符合した指示に従って、管21を、回転させ、同じく機械で制御されるレーザ24に対して長手方向に移動させる。レーザは、融蝕によって管の耐腐食液コーティングを選択的に除去し、引き続いて行われる化学的腐食液工程によって除去すべき管の表面を露出させるように模様が形成される。したがって、管の表面は、仕上がりステントの離散模様にコーティングされたままである。 【0024】 管のコーティングを除去するための現状の好ましい装置は、Coherent Model 44のような80ワットのCO2レーザで、パルスモードが0.3mSパルス長、100Hzで主電流が48mA、主電力が48Wで平均電力が0.75W、Anorad FR=20、12.5Torrで補助ガスなしの使用を含む。蒸気がレンズに接触しないようにするために低圧空気を精密焦点ヘッドを通して指し向ける。レーザ装置の補助ガスジェット組立体を取り外して、精密焦点ヘッドとコレット取り付け具のより近接を可能にする。最適な焦点を、管の表面に設定する。硬化したフォトレジストコーティングは、CO2波長のエネルギーを容易に吸収するので、レーザによって容易に取り除くことができる。被覆した4インチ長さの0.06インチステンレス鋼管が望ましく、4つのステントを、所定長さの管にパターン取りすることができる。ステント間の3つのタブ或いはウェブは、腐食液工程の後管の良好なる取り扱い特性を与える。 【0025】 抵抗性コーティングをステントにパターン取りする工程は、所定長さの管を付けたり外したりすることを除いて、自動化されている。図6を再び参照すると、これは、所定長さの管を例えば、説明したように機械制御レーザに対して軸方向に移動させるCNCX/Yテーブル25と関連して、所定長さの管の軸方向回転のためにCNC対向コレット取り付け具22を用いてなされる。コレット間の全スペースは、前述の例のCO2レーザセットアップを使用してパターン取りすることかできる。装置を制御するためのプログラムは、使用された特定の形態及びコーティングで除かれるべきパターンに依存するが、さもなければ従来のものである。 【0026】 この工程は、ステントを製造する際に、現状の写真平板技術の適用を可能にする。脈管内ステントを作るのに要求される小さい大きさの管状のホトレジストコーティング部分をマスクし、かつ漏出させる実用的な方法は現状はないが、前述の工程は、従来のマスキング技術の必要性を除去する。 かくして、コーティングが選択的に除かれた後、管をコレット取り付け具22から取り出す。次に、Thermo Cote N-4のようなワックスを、望ましくはその融点まで加熱して、真空又は圧力下で管に挿入する。ワックスを冷却して固めた後、融点以下で再加熱し、柔らかくして、より小さい直径のステンレス鋼の軸をやわらかくしたワックスに挿入して、支持を行う。次いで、管を従来の仕方で化学的に腐食液する。ステントを結合するタブを切断した後、タブの表面。粗さ又は異物を取り除く。ステントを、望ましくは、硫酸、カルボン酸、ホスフェート、腐食防止剤及び生分解性表面の活性薬剤の混合物であるChicago ILのETECTRO-GLOCO.で販売されるELECTRO-GLO#300液のような酸性の水溶液で電気化学的に洗浄する。浴の温度を、約110-135°Fに、及び電流密度を約0.4から約1.5amps/in2に維持する。陽極領域に対する陰極は、少なくとも1対2にすべきである。ステントは、さらに所望なら例えば2極性のコーティングを適用することによって、処理することができる。 【0027】 脈管内ステントとしての使用の観点から本発明を説明したが、ステントは、前立腺肥大の場合に尿道前立腺部を膨脹させるような他の例に使用できることが当業者に明らかであろう。他の変形及び修正は、本発明の範囲を逸脱することなく成しうる。 【図面の簡単な説明】 本発明は他の特徴及び利点は、添付例示図面とともに以下の本発明の詳細な説明からより明らかになるであろう。 【図1】 送出用カテーテルに設けられ、損傷を受けた動脈内に配置された本発明の特徴を具体化したステントの部分的に断面を示す立面図である。 【図2】 損傷を受けた動脈内で膨脹され、動脈壁に対して損傷を受けたライニングを押し付ける図1に示したものと同様の部分的に断面を示す立面図である。 【図3】 送出用カテーテルを引き抜いた後、動脈内に膨脹させたステントを示す部分的に断面を示す立面図である。 【図4】 本発明の特徴を具体化した膨脹してない状態のステントの斜視図を、ステントの一端の詳細を示す分解図とともに示す。 【図5】 図4に示すステントの波状模様を示す本発明のステントの平らに伸ばした部分の正面図である。 【図6】 本発明のステントの製造の際に、管に適用されたコーティングを選択的に取り除くための装置の概略図である。 【図7】 ステントの半径方向に膨脹可能な円筒要素の間に相互連結要素を配置する種々の形態を概略的に示す斜視図である。 【図8】 ステントの半径方向に膨脹可能な円筒要素の間に相互連結要素を配置する種々の形態を概略的に示す斜視図である。 【図9】 ステントの半径方向に膨脹可能な円筒要素の間に相互連結要素を配置する種々の形態を概略的に示す斜視図である。 【図10】 ステントの半径方向に膨脹可能な円筒要素の間に相互連結要素を配置する種々の形態を概略的に示す斜視図である。 【図11】 ステントの半径方向に膨脹可能な円筒要素の、位相が異なる交互波状模様を示すステントの平らに伸ばした部分の正面図である。 【符号の説明】 10 ステント 11 送出用カテーテル 12 半径方向に膨脹可能な円筒要素 13 相互連結要素 14 バルーン 15 動脈 18 案内ワイヤー |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 a.請求項1、12、17、23の「半径方向に独立に膨張可能で」の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、それぞれ、「送出カテーテルからの半径方向外向きの力の適用により第1送出径から第2展開径へ独立に膨張可能でかつ塑性変形可能となっており」と訂正する。 b.請求項1(3ヶ所)、6、7、8、11、12(3ヶ所)、17(3ヶ所)、23(3ヶ所)の連結要素」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として、それぞれ、「連結部」と訂正する。 c.請求項2乃至8、9(2ヶ所)、10、11、13、14の「ステント」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として、それぞれ「長手方向に可撓性を有するステント」と訂正する。 d.請求項3、5、7、11の「円筒要素」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として、それぞれ「円筒形状の要素」と訂正する。 e.請求項4の「横方向に略波状模様の、各半径方向に膨張可能な円筒要素」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「前記複数の円筒形状の要素の各々の横断面」と訂正する。 f.請求項8の「前記半径方向に膨張可能な」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「前記円筒形状の」と訂正する。 g.請求項10の「前記円筒要素の前記波状模様は、」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「前記円筒形状の要素の1つの前記略波状模様は、隣接する円筒形状の要素の前記略波状模様と」と訂正する。 h.請求項14のタングステン」の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。 i.請求項16の「前記ステントは」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「前記円筒形状の要素と前記連結部とは」と訂正する。 j.請求項16の「請求項1のステント」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「請求項1の長手方向に可撓性を有するステント」と訂正する。 k.請求項20、21の「請求項17」の記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として「詳求項19」と訂正する。 l.請求項20の「前記コーティング」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「前記抵抗性コーティング」と訂正する。 m.請求項23の「(b)前記」の記載を特許請求の範囲の減縮を目的として「(b)脈管構造の中の送出のために、前記」と訂正する。 n.請求項23の「からなるキット」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「からなるステント送出装置」と訂正する。 o.請求項5,14「二極性材料」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「材料」に訂正する。 p.請求項16「二極性材料」の記載を、不明瞭な記載の釈明を目的として「所定材料」に訂正する。 q.請求項5及び14記載の「超塑性ニッケルチタニウム合金」を特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。 |
異議決定日 | 1999-10-15 |
出願番号 | 特願平4-286331 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(A61M)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山中 真 |
特許庁審判長 |
高瀬 浩一 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 島田 信一 |
登録日 | 1997-05-02 |
登録番号 | 特許第2645203号(P2645203) |
権利者 | アドヴァンスド カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレーテッド |
発明の名称 | 膨張可能なステント及びその製造方法 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 黒瀬 雅志 |
代理人 | 坪井 淳 |
代理人 | 佐藤 一雄 |
代理人 | 黒瀬 雅志 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 佐藤 一雄 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 村松 貞男 |