• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01M
管理番号 1007357
異議申立番号 異議1998-71020  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-07-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-27 
確定日 1999-07-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2647980号「密閉型電池の安全弁装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2647980号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続きの経緯
特許第2647980号の請求項1,2に係る発明は、平成1年11月15日に特許出願され、平成9年5月9日にその特許の設定登録がなされ、その後三洋電機株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年8月28日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、それに対して平成10年11月17日に手続補正書が提出され、再度訂正拒絶理由が通知され、平成11年6月2日に手続補正書が提出されたものである。
(2)訂正の適否について
ア.訂正請求に対する最初の補正の適否について
a.全文訂正明細書中の特許請求の範囲の請求項1の記載「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に前記封口板と接する弁体下面に相当する面を粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形した合成ゴム製の弾性弁体を圧縮状態で備えたことを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」を「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形されることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」と補正し、
b.全文訂正明細書中の特許請求の範囲の請求項2の記載「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に少なくとも前記封口板と接する下面を粗面加工した合成ゴム製の弾性弁体を圧縮状態で備えたことを特徴とする密閉型電池の安全弁装置」を「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が粗面加工されていることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」と補正し、
c.全文訂正明細書中の第2頁第21〜23行「この弁室内に前記封口板と接する弁体下面 に相当する面を粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形した合成ゴム製の弾性弁体を圧縮状態で備えた」を、[この弁室内の合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形される」と補正し、
d.全文訂正明細書中の第2頁第24〜25行「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を粗面加工した合成ゴム製のものを圧縮状態で用いるようにしても良い。」を、「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を粗面加工した合成ゴム製のものを前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で用いるようにしても良い。」と補正するものであり、これらは、訂正請求書の訂正事項をさらに減縮するものであるから、いずれも訂正請求書の要旨を変更するものではない。
イ.訂正請求に対する2回目の補正の適否について
a.上記補正された全文訂正明細書中の請求項2の記載「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が粗面加工されていることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」を「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されていることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」と補正し、
b.上記補正された全文訂正明細書中の第2頁第29行〜第3頁2行「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を粗面加工した合成ゴム製のものを前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で用いるようにしても良い。」を「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した合成ゴム製のものを前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で用いるようにしても良い。」と補正するものであり、これらは、いずれも平成10年11月17日付けで補正された訂正請求書の訂正事項をさらに減縮するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
以上のとおり、平成10年11月17日付け及び平成11年6月2日付けの訂正請求書の補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合するものであるから、以下、平成11年6月2日付けの手続補正書(訂正請求書)に記載された訂正の要旨に基いて、訂正の適否を検討する。
ウ.訂正の要旨
▲1▼出願時の明細書(本件では特許明細書に相当する)の請求項1の記載「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に前記封口板と接する弁体下面に相当する面を粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形した弾性弁体を圧縮状態で備えたことを特徴とする密閉形電池の安全弁装置」を、
「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形されることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」と訂正する。
▲2▼出願時の明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装置された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に少なくとも前記封口板と接する下面を粗面加工した弾性弁体を圧縮状態で備えたことを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」を
「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されていることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」と訂正する。
▲3▼明細書中第4頁第12行目において「端子キュップ」とあるのを「端子キャップ」と訂正する。
▲4▼明細書中第4頁第13〜15行目において「この弁室内に前記封口板と接する弁体下面に相当する面を粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形した弾性弁体を圧縮状態で備えた」とあるのを「この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形される」と訂正する。
▲5▼明細書中第4頁第17〜19行目において「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を粗面加工したものを圧縮状態で用いるようにしてもよい。」とあるのを「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した合成ゴム製のものを前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で用いるようにしても良い。」と訂正する。
エ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
a.上記訂正事項▲1▼について
(▲1▼-1)
・ 「3は合成ゴムなどを圧縮成形して作られた弾性弁体で、その下面は粗面状態に形成されている。」(特許公報第2頁第4欄第2〜4行)なる記載、
・ 「これらの端子板1と、封口板2と、弾性弁体3とは、まず弾性弁体3を端子板1のトップ内に挿入し、ついで封口板2のガス排気孔2aを圧縮閉塞するように弾性弁体3を内装した端子板1を多少押圧力を加えた状態で封口板2上に載置し端子板1の周縁鍔部と封口板2とをスポット溶接して一体化し、安全弁装置を完成させる。」 (同公報第2頁第4欄第10〜15行)なる記載、
・また、「弾性弁体3を製作するに当り、圧用いられる金型の弁体下面に相当する部分の表面粗さを段階的に鏡面仕上げ〜2μmRa(JISB 0601)に設定した金型を用いて複数種類の弾性弁体を得た。このようにして得た弾性弁体を密閉型ニッケルカドミュウム蓄電池の安全弁装置に用いてそれぞれ50個を作成し、65℃の雰囲気中に3か月貯蔵し、貯蔵前と貯蔵後の弁作動圧値とそのばらつき幅を調べた。第2図は貯蔵前と貯蔵後の弁作動圧のばらつき幅と平均変化率を示す。…これにより弾性弁体3下面に相当する成形金型の表面が鏡面仕上げされているもの(従来品)の場合と表面粗さが0. 05μmRa以下のもの(この発明の実施品)とでは、封口板2との間で固着が起きるため弁作動圧が上昇する傾向が見られるとともにばらつき幅も大きくなっていることを知ることができる。」(同公報第2頁第4欄第16〜34行)なる記載、そして、上記第2図には、金型表面粗さが0.05μmRaより大きく2μmRa以下の場合には、鏡面仕上げ〜0.05μmRaのものに比べて、弁作動圧の上昇が抑制され、そのばらつき幅も小さいことが示されていることからみて、上記▲1▼の訂正において「この弁室内に前記封口板と接する弁体下面に相当する面を粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形した弾性弁体を圧縮状態で備えた」を「この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形される」とすることは、「弾性弁体」、「圧縮状態」、「粗面加工」という事項についてより下位概念のものにそれぞれ限定しようとするものであり、特許法第120条の4第2項のただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
そして、この訂正事項は、直接的かつ一義的に導かれるものであって、願書に添付された明細書または図面の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(▲1▼-2)
また、上記訂正▲1▼のうち「密閉形電池」を「密閉型電池」とする訂正は、「密閉形電池」が明細書中の他の記載(特許公報第1ページ第2欄第1行等)からみて、「密閉型電池」の誤記であることは明らかであるから、特許法第120条の4第2項のただし書き第2号に規定する誤記の訂正に該当するものである。
そして、この訂正事項は、直接的かつ一義的に導かれるものであって、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
b.上記訂正事項▲2▼について
(▲2▼-1)弾性弁体3の下面を粗面化する手段としては、圧縮成形に用いられる金型に予め粗面加工を施して弾性弁体3の表面を粗面化するか、」 (特許公報第2頁第4欄第5〜7行)なる記載からみて、表面粗さを0.05μmRa〜2μmRaに設定した金型を用いて、圧縮成形して得られた弾性弁体は、0.05μmRa〜2.0μmRaの表面粗さを有することは自明であること、及び上記a.(▲1▼-1)に記載の理由から、上記訂正▲2▼のうち、「この弁室内に 少なくとも前記封口板と接する下面を粗面加工した弾性弁体を圧縮状態で備えた」を「この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されている」とするのは、「弾性弁体」、「圧縮状態」、「粗面加工」という事項について、より下位概念のものにそれぞれ限定しようとするものであり、特許法第120条の4第2項のただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当するものである。
そして、この訂正事項は、直接的かつ一義的に導かれるものであって、願書に添付された明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(▲2▼-2)
また、「かしめ装置」を「かしめ装着」とする訂正は、「かしめ装置」が明細書中の他の記載(特許請求の範囲、請求項1)からみて、「かしめ装着」の誤記であることは明らかであるから、特許法第120条の4第2項のただし書き第2号の誤記の訂正に該当するものである。
そして、この訂正事項は、直接的かつ一義的に導かれるものであって、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
c.上記訂正事項▲3▼について
「端子キュップ」が、明細書中の他の記載(特許請求の範囲)からみて、「端子キャップ」の誤記であることは明らかであるから、この訂正は、特許法第120条の4第2項のただし書第2号に規定する誤記の訂正に該当するものである。そして、この訂正事項は、直接的かつ一義的に導かれるものであって、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
d.上記訂正事項▲4▼について
上記請求項1に係る訂正に伴い、発明の詳細な説明中の対応する箇所をそれに整合させるためのものであり、特許法第120条の4第2項のただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
そして、この訂正事項は、直接的かつ一義的に導かれるものであって、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
e.上記訂正事項▲5▼について
上記請求項2に係る訂正に伴い、発明の詳細な説明中の対応する箇所をそれに整合させるためのものであり、特許法第120条の4第2項のただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明に該当するものである。
そして、この訂正事項は、直接的かつ一義的に導かれるものであって、願書に添付された明細書または図面に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
オ.独立特許要件の判断
a.本件訂正明細書の請求項1,2に係る発明は、以下のとおりである。
「[請求項1]排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形されることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。(以下、「本件第1発明」という。)
[請求項2]排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されていることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。(以下、「本件第2発明」という。)」
b.当審が通知した取消理由で引用した刊行物1 (実願昭48-98968号のマイクロフィルム)、刊行物2(特開昭59-160955号公報)、刊行物3(特開昭57-153936号公報)には、それぞれ.以下の事項が記載されている。
・刊行物1
[摘示1]従来、密閉型電池の安全弁構造としては、復帰形と非復帰形の2種類のものが実用化されている。(第1頁第12〜14行)
[摘示2]かかる復帰形の安全弁としては、従来第1図に示す如く電池の蓋(3)の中央部に穿たれたガス放出孔(4)の上面に 合成ゴムよりなる弁座(6)’を載置し、この弁座(6)’の上面に底面が平滑に仕上げられたハネ受け(6)”を当接させ、これをスプリング(7)で押圧したものが 使用されていた。(第2頁第7〜12行)
[摘示3]しかるにかかる構造の安全弁においては、ゴムよりなる弁座が(6)’が作動時以外の長時間、蓋(3)に押しつけられていると弁座(6)’を構成するゴムが排気孔(4)の周囲で蓋と癒着し、安全弁としての作動圧が高くなったり、……また長時間の使用中、ゴムよりなる弁座(6)’が変質し、蓋(3)に癒着し、動作圧が高くなり作動中に大気中へ放出されるガス量が多くなり、電解液の減少を早め、電池の寿命、性能に損傷を与えていた。(第2頁第13行〜第3頁第5行)
[摘示4]以下第2図に示した一実施例を参照して本考案を詳細に説明する。第2図において、…(3)は電槽(1)の上端を塞する蓋で、本中心部にはガス放出孔(4)が穿たれ、…(6)は前記ガス放出孔(4)を囲ぎようするように蓋(3)の上面へ載置された弁座で、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系合成樹脂より作られている。また該弁座(6)は第3図に逆向きにして示した如く下面に環状突起(6a)が形成されており、…(7)は弁座(6)を蓋(3)に押圧するためのコイルスプリング、(8)はコイルスプリング(7)に所用の圧力に出さしめるバネ押えで、蓋(3)の上面に溶接、接着その他の適当な方法で固定されており、…」(第3頁第14行〜第4頁第11行)(以下、「引用発明1」という。)
[摘示5]本実施例においては、弁座(6)が従来の合成ゴムよりなる弁座に代えてポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系の合成樹脂で作られているため、かつ蓋(3)との接触を環状突起部においてのみ行ない円周の線接触となる如く構成し、蓋(3)との密着面を少なくしている ため、第1図に示す如き従来の合成ゴム系弁座の蓋との面接触による言わゆる引附き状態がなくなり、安全弁としての作動圧のバラツキが非常に少なくなり、かつ長時間の使用に対しても弁座 が変質して作動圧が均一で変ることなく安定している。(第5頁第5〜16行)
・刊行物2
[摘示6]第1図は本発明の実施例における弾性弁体を用いて組み立てた密閉形アルカリ蓄電池の安全弁部分を示す要部断面図であり、以下この図によって構成を説明する。
1はニッケルめっき鋼製の封口板で、中央に弁孔1aが穿ってあり、その上面を囲うようにニッケルめっき鋼製のキャップ2を配置し、両者で形成される弁室内に、本発明の弾性弁体3を収納し、キャップ2の鍔部の設けられた複数個の突起部2bを封口板にプロジェクション溶接して固着する。弁室内に収納された弁体3は、先端が弁孔1aに圧接してこれを閉塞している。」(第2頁左下欄第15行〜右下欄第6行)
[摘示7]本発明の弾性弁体の材質としては、エチレンとプロピレンとの共重合体(エラストー)を有機過酸化物で加硫成型したものを用いた。…次にこのゴム生地の適量を第2図Aに示した形状の弁体成型型に入れ、約160℃のホットプレスで加圧成型し、弾性弁体を得る。(第3頁左上欄第6行〜右上欄第7行)
(摘示6,7より導かれるものを、以下、「引用発明2」という。)
・刊行物3
[摘示7]本発明は自動車用負圧制御装置に係り、特に、減速時にエンジンに供給する空気を増量して吸入負圧を調節する装置に関するものである。(第1頁左欄第18〜20行)
[摘示8]第2図〜第5図は従来の改善形負圧制御装置の断面図で、……第3図は規制弁9にゴムシ一ト15を取り付けてシート部11と接触させており、……これらはいずれもゴムシ一ト15又はプラスチック シ一ト16という弾性部材を介してシート部11と規制弁9とを接触させて閉止している。
しかるにゴムシ一ト15又はプラスチックシ一ト16は成型時の添加剤等の関係で、長期間使用すると変質して粘質となり金属製の規制弁9やシート部11と粘着することがある。特に、夏季高温時においては固着してしまい大気圧と吸入負圧との差圧がコイルばね10のばね力より大きくなってもこの負圧制御弁が作動しないという重大な故障を生ずることがあった。(第2頁左下欄第6行〜右下欄第7行)
[摘示9]本発明はゴム又はプラスチック材を弾性部材として用いても長期間好適に作動させることができる負圧制御装置を提供することを目的とし、その特徴とするところは、シート部又は規制弁のいずれか一方に取り付けた弾性部材の表面を30〜300メッシュの凹凸を有する粗面に形成したことにある。
軟化し易いゴムやプラスチックの金属板との粘着を防止するためにはその表面を粗面にすれば良いが、あまり表面を粗面にすると気密性が失なわれる。……なお、ゴムやプラスチック材を成型する金型の表面を粗面にして圧接する方法もあるが、作業性や精度管理に難点があり、上記の直接ショットブラスト加工の方が好結果が得られた。(第2頁右下欄第10行〜第3頁左上欄第16行)
[摘示10]ゴムシ一ト15の接触面の粗さについて実験した結果によれば、30メッシュより小さい凹凸であると気密は保持できる。また、300メッシュよりも大きい凹凸であれば固着することが判明した。(第3頁左上欄第17行〜右上欄第1行)
そして、上記摘示7〜10から、刊行物3には、自動車用負圧制御装置として、空気入口を有するシート部に対して、その接触部にゴムシ一トを有するばね弾性弁において、該ゴムシ一トのシート部と接触する面が、表面粗さが30〜300メッシュの粗面加工した成型金型を用いて圧縮成形されたものを用いるものが記載されていると言える。
(以下、これを「引用発明3」という。)
c.対比・判断
本件第1発明と引用発明1とを対比すると、両者は、引用発明1における「蓋(3)」、「ガス放出孔(4)」、「バネ押え(8)」は、本件第1発明の「封口板」、「排気孔]、「端子キャップ」に相当し、引用発明1においても、本件第1発明の「弁室」に相当するものが形成されていることになるから、両者は、排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に弁体を備えた密閉型電池の安全弁装置である点で一致し、一方、該弁体が本件第1発明では、合成ゴム製の弾性弁体を封口板及び端子キャップにより圧縮した状態で備え、かつ前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形されたものであるのに対し、引用発明1のものは、ポリオレフィン系合成樹脂で作られ、蓋(封口板)に接する下面に環状突起を形成した弁座を上方より、スプリングで押圧するものである点で相違する。
次に、本件第1発明と引用発明2とを対比すると、
引用発明2の「弁孔1a」は、本件第1発明の「排気孔」に相当するから、両者は、排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備える、密閉型電池の安全弁装置である点で一致し、一方、該合成ゴム製の弾性弁体が本件第1発明では、前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成型金型を用いて圧縮成形されるのに対し、引用発明2はこのような構成ではない点で相違する。
さらに、本件第1発明と引用発明3とを対比すると、ガスの通過孔を有するシートに対して、その接触部がゴムからなる弾性弁において、該ゴムのシートと接触する面が、表面を粗面加工した成型金型を用いて圧縮成形されたものを用いる構成を有する装置である点で一致し、一方、本件発明が密閉型電池の安全弁装置であって、弾性弁がゴム製の弾性弁体を弁室に圧縮して備えるものであり、かつ粗面加工の粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下であるのに対し、引用発明3は自動車用負圧制御装置であり、また、弾性弁はばねによってゴム部材を圧縮する方式であって、その粗面加工の粗さも30〜300メッシュ(大略50〜500μm)である点で相違する。
そして、本件第1発明は、そもそも密閉型電池の安全弁装置として、ゴム材からなる弾性弁体を用いた従来のものにおいて、非常用予備電源として高温トリクル充電されるものや電池が発熱するような急激充放電を必要とする動力用電源として用いられる場合や、誤使用等により電池内圧が急激に上昇する場合に、封口板上面と接する弾性体下面が鏡面状態のものは弁体下面と封口板が接着しやすく、弁作動が適確に行われない(訂正明細書第2頁第6〜18行)という課題に対し、前記弾性弁体を前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成型金型を用いて圧縮成形されたものとすることにより、弁作動圧の上昇が抑えられ、そのばらつき幅も小さい(訂正明細書第2頁第24行〜第4頁第6行)という効果を奏するものであるところ、前記のとおり、引用発明1はポリオレフィン系合成樹脂の弁座をスプリングで押圧するという、合成ゴム製の弾性弁体を圧縮状態で弁室内に設置する本件第1発明とは異なる方式のものにおいて、封口板に接する下面に環状突起を形成することにより、弁座と蓋とを線接触させて密着面を少なくし、面接触による引附きを防止するというものであって、「合成ゴム製の弾性弁体の封口板と接する弁体下面に相当する面を0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成型金型で圧縮成形すること」により前記効果を得るという、本件第1発明の有する技術的事項を開示乃至示唆するものとはいえない。
また、引用発明2は、単に、合成ゴム製の弾性弁体を圧縮状態で弁室内に設置する密閉型電池の安全弁装置を示すのみで、前記のような課題及びその解決手段に関して何ら開示乃至示唆するものではない。
さらに、引用発明3は、確かに「ガス通過孔を有するシートに対して、その接触部がゴムからなる弾性弁において、該ゴムのシートと接触する面が、表面を粗面加工した成型金型を用いて圧縮成形されたものを用いる装置」では、弁とシートとの固着がおこりにくいことを示すものではあるものの、それは、密閉型電池の安全弁装置とは異なる自動車用負圧装置であり、弾性弁もばねによってゴム部材を圧縮するものであって、その表面粗さも大略50〜500μmと本件第1発明とはその程度を全く異にするものであるから、同様に前記本件第1発明の技術的事項を開示乃至示唆するものとはいえない。
してみれば、本件第1発明が各引用発明と同一あるいは各引用発明から容易に発明できたものとすることはできないし、また、各引用発明をいかに組み合わせようとも、本件第1発明の有する「前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成型金型を用いて圧縮成形される」という構成を導き出しうるとは認められない。
また、本件第2発明は、本件第1発明と同じ「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備えた密閉型電池に安全弁装置」において、前記弾性弁体が少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されているという構成により、弁作動圧の上昇が抑えられ、そのばらつき幅も小さくなるという効果を奏するものであるところ、引用発明1は、前記のとおり、ポリオレフィン系合成樹脂製の弁座をスプリングで押圧するという、合成ゴム製の弾性弁体を圧縮状態で弁室内に備える本件第2発明とは方式を異にする安全弁装置において、封口板に接する下面に環状突起を形成して、面接触による弁座と蓋との引附きを防止するものであり、本件第2発明の有する前記技術的事項を開示乃至示唆をするものとはいえず、また、引用発明2,3についても同様である。
したがって、本件第2発明についても、各引用発明と同一あるいは各引用発明から容易に発明することができたものとすることはできないし、また、各引用発明をいかに組み合わせようとも、本件第2発明の「弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されている」という構成が導かれるとは認められない。
よって、本件第1, 2発明は特許出願の際、独立して特許を受けることができない発明とすることはできない。
カ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同3項で準用する第126条第2乃至4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
(4)特許異議申立てについての判断
ア.申立ての理由の概要
特許異議申立人三洋電機株式会社は、本件請求項1, 2に係る発明は、甲第1号証(特開昭62-29058号公報)、甲第2号証(特開昭59-160955号公報:当審の通知した取消理由で引用した刊行物2)、甲第3号証(実願昭48-98968号のマイクロフイルム:当審の通知した取消理由で引用した刊行物1)、甲第4号証(特開昭57-153936号公報:当審の通知した取消理由で引用した刊行物3)に基いて、それぞれ容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許を取り消すべきと主張している。
イ.判断
前記(3)オ.に示したように、本件請求項1,2に係る各発明は、甲第2乃至4号証に基いて、容易に発明することができたものとすることはできない。
また、甲第1号証には、「第2図は従来従来の密閉型電池、第2の1図はその安全弁収納部Aの拡大構造を示したものであるが、安全弁1は、樹脂のパッキン2を介して電池缶にかしめられている蓋4中央に設けられた凹部5に収納されている。安全弁1は、例えばポリクロロプレン等の弾性体で出来ており、前記凹部5と上蓋6との間に同図に於で上下の方向(図中の矢印方向)に圧縮され、かつ凹部5の中央の排気孔7をふさぐ様に収納されている。」(第1頁右欄第5〜12行)と記載され、前記記載のうち、「安全弁」は本件発明の「弾性弁体」、「蓋」は「封口板」、「上蓋」は「端子キャップ」に相当するから、結局、甲第1号証には、甲第2号証と同じく、単に合成ゴム製の弾性弁体を、封口板と端子キャップとにより形成される弁室内に圧縮状態で設置する密閉型電池の安全弁装置が示されるにすぎない。
したがって、本件請求項1,2に係る各発明が、甲第1号証乃至第4号証に基いて容易に発明することができたものとすることはできない。
(5)むすび.
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2の発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1,2の発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
密閉型電池の安全弁装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形されることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。
[請求項2] 排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されていることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、電池内部で発生するガスによる圧力上昇に応動し防爆を計り得る密閉型電池の安全弁装置に関するものである。
[従来の技術]
携帯用電気機器等に用いられる電池としてニッケルカドミュウム、ニッケル亜鉛電池等で代表される二次電池やアルカリ電池、リチウム電池等で代表される一次電池が知られている。
ところが、二次電池の場合は誤使用や過充電により電池内部にガスが異常発生したりする場合があり、電池内部の圧力が急激に上昇して封口蓋体を吹き飛ばすなどの破裂事故を招くおそれがあった。このため、この種の電池には電池内部でのガス発生による圧力上昇に応動して内部ガスを排出させる防爆用安全装置が設けられている。
防爆用安全装置としては、電池内のガス圧が所定の値以上に達すると開弁してガスを外部に放出しその後は再度密閉状態になる復帰式が好ましく、この方式では合成ゴムなどの弾性体で排気孔を閉塞しているものが多い.そして、このような装置では、何らかの原因で電池内部にガスが発生して内圧が異常に上昇すると弾性体が上方に押し上げられ、封口板との間からガスを排出し、電池の損傷、破裂を防ぐことができる。
[発明が解決しようとする課題]
従来、弾性弁体に用いられる材料としては耐アルカリ性の良好なクロロプレンゴムやニトリルゴムなどの汎用性ゴムや、より耐熱性・耐アルカリ性に優れているエチレンとプロピレンと非共役ジエン化合物との三元共重合体(EPDM)を主成分とするゴムも弁体材質として用いられてきている.この種の弾性弁体は常温付近の温度で使用される場合には、適切な設計がなされておれば数年間にわたりほぼ満足のゆく弁作動性能を維持していた。ところが、たとえば密閉形アルカリ電池のように非常用予備電源として高温トリクル充電されるものやあるいは電池が発熱するような急激充放電を必要とする動力用電源として用いられる場合や、誤使用等により電池内圧が急激に上昇する場合に、第2図に示すように封口板上面と接する弾性体下面が鏡面状態のものは弁体下面と封口板が接着し易くガス排出のタイミングが遅れ、弁作動設定電圧よりも高い圧力で弁作動を起こしてしまったり、あるいは弁作動を起こさなくなってしまい、電池に損傷を加えたり破裂させるといった問題が生じていた。
この発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、急激なガス発生時においても弁作動を適確に行い得る密閉型電池の安全弁装置を提供することを目的としている。
[課題を解決するための手段]
上記の目的を達成するため、この発明は排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形されることを特徴としている。
この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した合成ゴム製のものを前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で用いるようにしても良い。
[作用]
上記のような弾性弁体を用いて安全弁装置を構成することにより、封口板上面と弾性体との接触面における固着を抑制し、安全弁装置を確実に作動させることができ、信頼性の高い密閉型電池を得ることができる。
[実施例]
以下、図面を参照してこの発明の一実施例を説明する。
第1図において、1は金属製平板をプレス加工して得られる皿状をなした端子板であり、2は金属製平板をプレス加工して得られる封口板で、中央部にガス排気孔2aが設けられている。3は合成ゴムなどを圧縮成形して作られた弾性弁体で、その下面は粗面状態に形状されている。
弾性弁体3の下面を粗面化する手段としては、圧縮成形に用いられる金型に予め粗面加工を施して弾性弁体3の表面を粗面化するか、あるいは圧縮成型した弾性弁体3を強冷して弾性を減少させた状態でショットブラストを行うことなどの方法が用いられる。
これらの端子板1と、封口板2と、弾性弁体3とは、まず弾性弁体3を端子板1のトップ内に挿入し、ついで封口板2のガス排気孔2aを圧縮閉塞するように弾性弁体3を内装した端子板1を多少押圧力を加えた状態で封口板2上に載置し端子板1の周縁鍔部と封口板2とをスポット溶接して一体化し、安全弁装置を完成させる。
弾性弁体3を製作するに当り、圧縮成型の際に用いられる金型の弁体下面に相当する部分の表面粗さを段階的に鏡面仕上げ〜2μmRa (JIS B 0601)に設定した金型を用いて複数種類の弾性弁体を得た。
このようにして得た弾性弁体を密閉形ニッケルカドミュウム蓄電.池の安全弁装置に用いてそれぞれ50個を作成し、65℃の雰囲気中に3か月貯蔵し、貯蔵前と貯蔵後の弁作動圧値とそのばらつき幅を調べた。
第2図は貯蔵前と貯蔵後の弁作動圧のばらつき幅と平均変化率を示す。同図におて、垂直方向の実線は貯蔵前の弁作動圧およびそのばらつき幅、破線は貯蔵後の弁作動圧およびそのばらつき幅、2点鎖線は貯蔵後の弁作動圧の平均変化率を示している。
これにより弾性弁体3下面に相当する成形金型の表面が鏡面仕上げされているもの(従来品)の場合と表面粗さが0.05μmRa以下のもの(この発明の実施品)とでは、封口板2との間で固着が起きるため弁作動圧が上昇する傾向が見られるとともにばらつき幅も大きくなっていることを知ることができる。
また、表面粗さが0.05μmRa以下のものに対して、液体窒素で強冷し弾性を減少させた状態で直径が0.05mm程度の球を用いてショットブラストを行い、弾性弁体3表面を粗面化したものを用いて構成した安全弁装置についても同様の貯蔵試験を行ったところ良好な結果を得られることが判った。
なお、この発明は上記実施例に限定されるものではなく要旨を変更しない範囲において異なる構成をとることができる。
[発明の効果]
この発明によれば、急激なガス発生時においても弁作動を適確に行い得る密閉型電池の安全装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例の概略的構成を示す縦断面図、第2図は従来の安全弁装置とこの発明の各実施例とを対比して示す弾性弁体下面に相当する金型部分の表面粗さと高温貯蔵前および貯蔵後の弁作動圧の平均変化率とばらつき幅の関係を示す特性図である。
1…端子板、2…封口板、2a…ガス排気孔、3…弾性弁体。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼特許明細書の請求項1の記載「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に前記封口板と接する弁体下面に相当する面を粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形した弾性弁体を圧縮状態で備えたことを特徴とする密閉形電池の安全弁装置。」を、「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形されることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」と訂正する。
▲2▼特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に少なくとも前記封口板と接する下面を粗面加工した弾性弁体を圧縮状態で備えたことを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」を「排気孔を有する封口板と、この封口板に溶接またはかしめ装着された端子キャップとにより弁室を形成し、この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は少なくとも前記封口板と接する下面が表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工されていることを特徴とする密閉型電池の安全弁装置。」と訂正する。
▲3▼特許明細書第4頁第12行目において「端子キュップ」とあるのを「端子キャップ」と訂正する。
▲4▼特許明細書第4頁第13〜15行目において「この弁室内に前記封口板と接する弁体下面に相当する面を粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形した弾性弁体を圧縮状態で備えた」とあるのを「この弁室内に合成ゴム製の弾性弁体を前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で備え、前記弾性弁体は前記封口板と接する弁体下面に相当する面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した成形金型を用いて圧縮成形される」と訂正する。
▲5▼特許明細書第4頁第17〜19行目において「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を粗面加工したものを圧縮状態で用いるようにしてもよい。」とあるのを「この弾性弁体としては、少なくとも封口板と接する下面を表面粗さが0.05μmRaより大きく、2μmRa以下に粗面加工した合成ゴム製のものを前記封口板及び前記端子キャップにより圧縮した状態で用いるようにしても良い。」と訂正する。
異議決定日 1999-06-10 
出願番号 特願平1-296427
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 酒井 美知子  
特許庁審判長 松本 悟
特許庁審判官 三浦 均
鈴木 正紀
登録日 1997-05-09 
登録番号 特許第2647980号(P2647980)
権利者 東芝電池株式会社
発明の名称 密閉型電池の安全装置  
代理人 坪井 淳  
代理人 坪井 淳  
代理人 橋本 良郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  
代理人 豊栖 康弘  
代理人 村松 貞男  
代理人 村松 貞男  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ