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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1007386
異議申立番号 異議1998-73035  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-13 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-06-17 
確定日 1999-07-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2691865号「極紫外線縮小投影露光装置」の請求項1ないし9、12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2691865号の請求項4、6、9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2691865号は、平成6年3月18日に出願され、平成9年9月5日に設定登録され、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年5月31日に訂正請求がなされたものである。
1.1 異議申立ての概要
異議申立人株式会社ニコンは、甲第1号証(特開平5-82417号公報)、甲第2号証(特開平5-217858号公報)、甲第3号証(特開平2-306612号公報)、甲第4号証(特開平5-217857号公報)、甲第5号証(Koichiro Hiroshi Tanino,”Feasibi11ty Study onthe Extreme UV/Soft X-ray Projection-type Lithography”:Bu11etin of the ElectrotechnicaI Laboratory Vol.49N0.12(1985)P.983-P.990)及び甲第6号証(物理学事典編修委員会編「物理学事典」)を提出し、本件請求項1〜9及び12に係る発明は、甲第6号証に記載された事項を考慮すると、甲第1〜5号証に記載された発明に基いて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、請求項1〜9及び12に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。
1.2 異議申立人菅原益男が提出した甲第1〜6号証の記載内容
1.2.1 甲第1号証の記載内容
甲第1号証の【0003】パラグラフの2行目〜9行目には、『縮小投影型のX線リソグラフィにおいては、装置全体が1つの真空室置かれているために、ウェーハの交換に時間がかかる、また、露光中にレジストから発生する有機物によって光学素子が汚染されるという重要な問題を抱えていた。これを解決するためには、光学系を配置する空間とウェーハを露光する空間を分離し、さらにウェーハの露光を大気圧中で行えるようにする必要がある。』と記載されている。
甲第1号証の請求項1には『X線マスクならびにX線を結像させるための光学素子を配する空間とウェーハ試料を配置する空間を、差動排気機構および薄膜窓により分離することを特徴とする投影型リソグラフィ装置』と記載され、請求項9には『分離された試料配置用空間の真空度を差動排気により段階的に変化させる』と記載され、さらにパラグラフ【0005】の4行目〜6行目には、『薄膜窓の低真空側の圧力が10-2Torrであれば、窓の薄膜が1μm程度の薄膜でも高真空側(光学系)との圧差に十分耐えられる。この結果、露光X線の強度をほとんど減衰させることなく2つの空間を分離させることが可能となる。』と記載され、図1にこの様子が描かれている。
甲第1号証のパラグラフ【0011】の3行目〜6行目には『大気圧下では、ウェーハのステージ上での保持に真空チャック方式が使用できるので、従来の機械的保持に比べて、露光精度が向上する。』と記載されている。
1.2.2 甲第2号証の記載内容
甲第2号証の第1図には、真空分離フィルタ3及び真空分離バルブ4が示されている。
甲第2号証のパラグラフ【0003】には、『X線源にシンクロトロン等の放射光施設を用いた場合、この放射光施設の真空度は10-10Torrより高い真空度がとする必要があった。・・・従来のX線露光光学系の真空度は10-7Torr程度に設定されていた。そのために、X線源と露光光学系の間に真空度の違いにより生じる差圧を保つための差動排気系を設ける必要があった。』と記され、また、パラグラフ【0004】には、『一方、X線源にレーザプラズマX線源を用いた場合、このX線源部の真空度は10-4程度で十分である。・・・そのため、X線源側と露光光学系側とで各々真空度が異なるように設定し、差圧を保つための差動排気を設ける必要があった。』と記載述されている。
更に、第2頁の左欄、下より1行目〜右欄4行目には、『He等のガスを10-2Torr程程度導入しなければならないが、そうした場合、例えば波長13nmのX線では約10cmの光路を進むことで20%程度に減衰してしまう。』と記載されている。
1.2.3 甲第3号証の記載内容
甲第3号証の請求項1には、『光源が発する露光光により半導体基板上にパターンを焼き付ける半導体焼き付け装置において、露光光を検出して露光光の光軸位置を検出する手段と、その検出結果に基づいて露光光の光軸を補正する手段を具備することを特徴とする半導体焼き付け装置。』が記載され、第1図を見ると、検出手段の構成要素のハーフミラーが光軸上に配置されている。
1.2.4 甲第4号証の記載内容
甲第4号証の請求項4には、『前記第2のフィルタによるX線の反射光量あるいは透過光量を検出する光検出器と、・・・』と記載され、X線露光装置内で使用されるフィルタ(薄膜)の透過光量を検出する光検知器が示されている。
1.2.5 甲第5号証の記載内容
P.989の§6 Summaryの第1行目には、『It is possible to construct a projection-type exposure system utilizing XUV/SX(100A-300A)radiation.』(極端紫外線/軟X線(100A-300A)を用いた投影型の露光システムが可能である)と記載されている。
また、P.989の図4にはマスクをウェハに投影する3枚の反射鏡からなる5:1の縮小投影系が記載されている。
また、P.986の12行目には「The exposure is also limited in an arc-shaped field so that the mask and the wafer must be slided synchronously duringexposure of unitsubfield and then the wafer must be separetely shifted to expose the adjacent subfield.」(露光はまた円弧状に限定されるからサブフィールドの露光中にマスクとウェハは同期して移動され、そしてwaferは単独に隣のサブフィールドを露光するために移動される)と記載されている。
1.2.6 甲第6号証の記載内容
甲第6号証のP.971には、『波長が約30nm以下の光は軟X線と呼ばれるが、極紫外線と波長が重なっていることから、XUVということも多い』と記載されている。
1.3 取消理由通知の概要
「特許異議申立人菅原益男が提示した甲第1〜6号証を引用し、本件請求項1〜9及び12は、各請求項記載の発明が従来技術である甲第1〜6号証に対して差異が明確とならない程度に技術的に不明瞭であるので、本件請求項1〜9及び12に係る発明の特許は、特許法第36条の規定を満たしていないものになされたものである」旨通知した。
2.訂正の適否について
本件訂正請求は、本件特許第2691865号の明細書(以下、「特許明細書」という。)を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに、訂正しようとするものである。
2.1 訂正事項
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1〜請求項3を削除する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項4を請求項1とし、その記載において、「すると共に、該薄膜窓の前後に窓付きゲートバルブを設ける」を、『すると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設ける』と訂正する。
訂正事項c
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
訂正事項d
特許請求の範囲の請求項6を請求項2とし、その記載において、「差動排気機構又は薄膜窓の少なくとも一つを設けて」を、『差動排気機構及び薄膜窓を設けて』と訂正する。
訂正事項e
特許請求の範囲の請求項7及び請求項8を削除する。
訂正事項f
特許請求の範囲の請求項9を請求項3とし、その記載において、「設けると共に、該薄膜窓の前後に窓付きゲートバルブを設ける」を、『設けると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設ける』と訂正する。
訂正事項g
特許請求の範囲の請求項10を請求項4とし、その記載において、「第9項」を、『第3項』と訂正する。
訂正事項h
特許請求の範囲の請求項11を請求項5とし、その記載において、「第10項」を、『第4項』と訂正する。
訂正事項i
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
訂正事項j
明細書【0010】の「そのため本発明の極紫外線縮小投影露光装置の構成は、」を、『まず本発明の極紫外線縮小投影露光装置の前提となる構成を先に説明する。』と訂正する。
訂正事項k
明細書【0010】の「差動排気機構1又は薄膜窓2の少なくとも一つを設け、これらの空間の間を分離したことを基本的特徴としている。」を、『差動排気機構1及び薄膜窓2を設け、これらの空間の間を分離している。』と訂正する。
訂正事項l
明細書【0015】の「加えて薄膜窓21の前後に窓付きゲートバルブ10を設けると、」を、『加えて薄膜窓21の前後に薄膜窓の交換のための窓付きゲートバルブ10を設けると、』と訂正する。
訂正事項m
明細書【0019】〜【0030】までを削除する。
訂正事項n
明細書【0031】の「次に本発明の別の実施例につき説明する。図2はSR光縮小投影用の露光装置である本願第6乃至第9発明に係る実施例構成を示す装置概要図であり、」を、『【実施例】以下本発明の一実施例につき説明する。図2はSR光縮小投影用の露光装置である本願第2乃至第3発明に係る実施例構成を示す装置概要図であり、』と訂正する。
訂正事項p
明細書【0047】の「尚、二つの実施例では、」を、『尚、上記実施例では、』と訂正する。
訂正事項q
明細書【図面の簡単な説明】の欄を、
『 【図1】
本発明の前提構成となるSR光縮小投影用の露光装置の概要図である。
【図2】
SR光縮小投影用の露光装置である本願第2乃至第3発明に係る実施例構成を
示す装置概要図である。
【図3】
従来の極紫外線縮小投影露光装置構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 差動排気機構
2、21 薄膜窓
3 チャンバ
4 照明光学系
5 マスク
6a、6b 結像光学系
7 ウェハ
8 同期走査機構
9a、9b 排気系
10 窓付きゲートバルブ
11a、11b ビームモニタ
11c、11d ″
12 連係制御系
13a、13b 圧力センサ
22 薄膜フィルタ
』と訂正する。
2. 2 訂正後の本件請求項1〜5に係る発明
請求項1
「露光々に極紫外線の用いられる照明光学系が配置される空間と露光パターンの描かれたマスクが配置される空間との間、上記露光パターンを縮小投影しながら結像せしめる結像光学系が配置される空間と該マスク配置空間との間、縮小投影による上記パターンの結像面を有する試料が配置される空間と該結像光学系配置空間との間に、少なくとも薄膜窓を設けてこれらの空間の間を分離すると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設けることを特徴とする極紫外線縮小投影露光装置。」
請求項2
「露光々に極紫外線の用いられる照明光学系が配置される空間と露光パターンの描かれたマスクが配置される空間との間、上記露光パターンを縮小投影しながら結像せしめる結像光学系が配置きれる空間と該マスク配置空間との間、縮小投影による上記パターンの結像面を有する試料が配置される空間と該結像光学系配置空間との間に、差動排気機構及び薄膜窓を設けてこれらの空間の間を分離し、且つ露光領域を広げるために輪帯照明領域に対するマスクと前記試料の同期走査機構を設けると共に、マスク配置空間及び/又は試料配置空間に圧力センサ設けて該圧力センサと前記同期走査機構とを連係制御することを特徴とする極紫外線縮小投影露光装置。」
請求項3
「露光々に極紫外線の用いられる照明光学系が配置される空間と露光パターンの描かれたマスクが配置される空間との間、上記露光パターンを縮小投影しながら結像せしめる結像光学系が配置される空間と該マスク配置空間との間、縮小投影による上記パターンの結像面を有する試料が配置される空間と該結像光学系配置空間との間に、少なくとも薄膜窓を設けてこれらの空間の間を分離し、且つ露光領域を広げるために輸帯照明領域に対するマスクと前記試料の同期走査機構を設けると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設けることを特徴とする極紫外線縮小投影露光装置。」
請求項4
「請求項第1項乃至第3項記載の極紫外線縮小投影露光装置において、マスク配置空間と試料配置空間とを同一空間にしたことを特徴とする請求項第1項乃至第3項記載の極紫外線縮小投影露光装置。」
請求項5
「請求項第1項乃至第4項記載の極紫外線縮小投影露光装置において、照明光学系配置空間と結像光学系配空間とを同一空間にしたことを特徴とする請求項第1項乃至4項記載の極紫外線縮小投影露光装置。」
3.訂正の適否
3.1 訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
3.1.1 訂正事項a、c、e、jについて
上記訂正事項a、c、e、jは、それぞれ、請求項1〜3、5、7及び8、12の削除であるから、上記訂正事項a、c、e、jについては、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項a、c、e、jは、訂正前の各発明の目的の範囲内のものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
3.1.2 訂正事項bについて
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の請求項4を請求項1とし、その記載において、「すると共に、該薄膜窓の前後に窓付きゲートバルブを設ける」を下位概念である『すると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設ける』と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項bは、訂正前の各発明の目的の範囲内のものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
3.1.3 訂正事項dについて
上記訂正事項dは、特許請求の範囲の請求項6を請求項2とし、その記載において、「差動排気機構又は薄膜窓の少なくとも一つを設けて」を、下位概念である『差動排気機構及び薄膜窓を設けて』と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項dは、訂正前の各発明の目的の1範囲内のものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
3.1.4 訂正事項fについて
上記訂正事項fは、特許請求の範囲の請求項9を請求項3とし、その記載において、「設けると共に、該薄膜窓の前後に窓付きゲートバルブを設ける」を、下位概念である『設けると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設ける』と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
また、上記訂正事項fは、訂正前の各発明の目的の範囲内のものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
3.1.5 訂正事項g.hについて
上記訂正事項g、hについては、請求項1〜3、5、7、8の削除に伴い、請求項番号及び引用する請求項番号を繰り上げるものであるから、明りょうでない記載の釈明にあたる。
そして、上記訂正事項g、hは、特許明細書又は図面に直接的に記載されたものであるし、また、訂正前の各発明の目的の範囲内のものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
3.1.6 訂正事項j、m、n、p、qについて
上記訂正事項j、m、n、p、qについては、請求項の削除に伴い、請求の範囲と発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明にあたる。
そして、上記訂正事項j、m、n、p、qは、特許明細書又は図面に直接的に記載されたものであるし、また、訂正前の各発明の目的の範囲内のものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
3.1.7 訂正事項k、lについて
上記訂正事項k、lについては、請求の範囲の減縮に伴い、請求の範囲と発明の詳細な説明を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明にあたる。
そして、上記訂正事項k、lは、特許明細書又は図面に直接的に記載されたものであるし、また、訂正前の各発明の目的の範囲内のものであるから、実質上特許請求の範囲を変更するものでもない。
3.2 独立特許要件について
異議申立人株式会社ニコンが提出した甲第1〜5号証のいずれにも、本件請求項1、3に係る発明の特徴である、「薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設ける」点の構成(以下、「本件請求項1、3に係る発明の特徴的構成」という。)、また、本件請求項2に係る発明の特徴である、「マスク配置空間及び/又は試料配置空間に圧力センサ設けて該圧力センサと同期走査機構とを連係制御する」点の構成(以下、「本件請求項2に係る発明の特徴的構成」という。)を有しておらず、また、上記本件発明の特徴的構成の示唆もなく、そして、訂正後の本件請求項1,3に係る発明は、上記本件請求項1、3に係る発明の特徴的構成により、特許明細書詳細な説明【0015】に記載された、上記甲1〜5号証いずれにもない効果を有し、また、訂正後の本件請求項2に係る発明は、上記本件請求項2に係る発明の特徴的構成により、特許明細書詳細な説明【0011】、【0012】に記載された、上記甲1〜6号証いずれにもない効果を有しているので、本件請求項1〜3に係る発明及び本件請求項1〜3をさらに限定した本件請求項4,5は、当業者が上記甲第1〜5号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて容易に発明できたものとすることができない。
付言すると、甲第2号証には、真空分離バルブ(当該「真空分離バルブ」は、本件請求項1記載の「ゲートバルブ」に相当する。)は、真空分離フィルタ(当該「真空分離フィルタ」は、本件請求項1記載の「薄膜窓フィルタ」に相当する。)の前後に設けられておらず、従って甲第2号証には、本件請求項2に係る発明の特徴的構成が開示又は示唆されていない。
また、甲第2号証には、真空度とX線の減衰について示されているが、本件請求項1,3に係る発明の特徴的構成が開示又は示唆されていない。
そうすると、訂正後の本件請求項1〜5に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものとすることができない。
3.3 訂正の適否の判断
上記訂正事項は、上記3.1、3.2のとおりであるから、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法126条第2項から4項の規定に適合する。
従って、当該請求を認める。
4.特許異議申立てについての判断
4.1 本件請求項1〜3に係る発明
上記2.2に記載のとおり。
4.2 異議申立ての理由の概要
上記1.1に記載のとおり。
4.3 本件請求項1〜3に係る発明と甲各号証との対比、判断
独立特許要件を判断した上記3.2のとおりであるから、特許異議の申立てがなされた訂正前の請求項に対応する本件請求項1〜3に係る発明は、上記甲第1〜5号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明できたものとすることができない。
5.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
極紫外線縮小投影露光装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 露光々に極紫外線の用いられる照明光学系が配置される空間と露光パターンの描かれたマスクが配置される空間との間、上記露光パターンを縮小投影しながら結像せしめる結像光学系が配置される空間と該マスク配置空間との間、縮小投影による上記パターンの結像面を有する試料が配置される空間と該結像光学系配置空間との間に、少なくとも薄膜窓を設けてこれらの空間の間を分離すると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設けることを特徴とする極紫外線縮小投影露光装置。
【請求項2】 露光々に極紫外線の用いられる照明光学系が配置される空間と露光パターンの描かれたマスクが配置される空間との間、上記露光パターンを縮小投影しながら結像せしめる結像光学系が配置される空間と該マスク配置空間との間、縮小投影による上記パターンの結像面を有する試料が配置される空間と該結像光学系配置空間との間に、差動排気機構及び薄膜窓を設けてこれらの空間の間を分離し、且つ露光領域を広げるために輪帯照明領域に対するマスクと前記試料の同期走査機構を設けると共に、マスク配置空間及び/又は試料配置空間に圧力センサ設けて該圧カセンサと前記同期走査機構とを連係制御することを特徴とする極紫外線縮小投影露光装置。
【請求項3】 露光々に極紫外線の用いられる照明光学系が配置される空間と露光パターンの描かれたマスクが配置される空間との間、上記露光パターンを縮小投影しながら結像せしめる結像光学系が配置される空間と該マスク配置空間との間、縮小投影による上記パターンの結像面を有する試料が配置される空間と該結像光学系配置空間との間に、少なくとも薄膜窓を設けてこれらの空間の間を分離し、且つ露光領域を広げるために輪帯照明領域に対するマスクと前記試料の同期走査機構を設けると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設けることを特徴とする極紫外線縮小投影露光装置。
【請求項4】 請求項第1項乃至第3項記載の極紫外線縮小投影露光装置において、マスク配置空間と試料配置空間とを同一空間にしたことを特徴とする請求項第1項乃至第3項記載の極紫外線縮小投影露光装置。
【請求項5】 請求項第1項乃至第4項記載の極紫外線縮小投影露光装置において、照明光学系配置空間と結像光学系配置空間とを同一空間にしたことを特徴とする請求項第1項乃至第4項記載の極紫外線縮小投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、リソグラフィ技術や、マイクロメカニクス分野において、半導体素子や量子効果素子等のULSIの製造、或いはマイクロロボット用部品の製造でパターン形成に使用される極紫外線縮小投影露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザプラズマや固体レーザ、SR光源等から得られる真空紫外線やX線等の極紫外線を露光々としてパターン形成を行う露光技術では、マスクの精度によって転写性能が左右される等倍方式の欠点に鑑みて、拡大したマスクパターンを縮小してウェハ等の試料に転写する縮小投影露光方式の採用が検討されるようになった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような極紫外線縮小投影露光法(EUVL)では、露光波長が4.4〜100nmの領域であるため、光路上にある大気やHe等による光の減衰が著しく、図3に示すように、照明光学系4、マスク5、結像光学系6aや6b、ウェハ等の試料7を含む露光構成を、チャンバ3中で高真空に保つ必要がある。
【0004】
このようなエネルギーレベルの高い極紫外線の照射によってマスク5や上記試料7に熱が発生した場合、高真空中であるため熱の逃げ場がなく、これらの温度が上昇し、露光精度が低下することになる。
【0005】
またマスク5や試料7の交換の際、大気圧程度まで一旦開放してからその交換を行うため、作業終了後再び高真空域まで真空引きを行う必要があり、作業効率が低下する。更に上記露光々の照射により試料7のパターン結像面に塗布されたレジスト等が分解し、その分解物が結像光学系6aや6bに到達して付着するため、該光学系が汚染されて反射率が低下し、照度が低下する結果、露光スループットが低下する。
【0006】
通常ウェハへの露光は、露光フィールドと呼ばれるある面積でウェハの一部分を露光し、該ウェハを所定位置に移動させ、別の領域を露光し、再度ウェハの移動を順次繰り返してウェハ全面を露光する。ところが該結像光学系が徐々に汚染されて照度が低下する経時変化のため、ウェハ面内の露光フィールド毎やウェハ毎でレジストに同一露光量を与えることが困難となる。
【0007】
またSR光を光源として用いる場合、SR光の発光点の位置が経時変化して、発光点から下流の光学系の所定の位置にSR光が届かず、露光照度が変動する問題がある。
【0008】
一方上記縮小投影露光法では結像光学系6aや6bに反射光学系が用いられており、露光領域を広げるために同期走査機構8により輪帯照明領域に対するマスク5及び試料7の高精度な同期走査を行う必要がある。しかし高真空中での上述した同期走査は困難を極め、露光精度を更に低下せしめることになる。
【0009】
本発明は従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、露光精度、露光スループット、作業効率の低下を来すことのない極紫外線縮小投影露光装置の構成を提案せんとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
まず本発明の極紫外線縮小投影露光装置の前提となる構成を先に説明する。図1に示されるように、露光々に極紫外線の用いられる照明光学系4が配置される空間と露光パターンの描かれたマスク5が配置される空間との間、上記露光パターンを縮小投影しながら結像せしめる結像光学系6a、6bが配置される空間と該マスク配置空間との間、縮小投影による上記パターンの結像面を有する試料7が配置される空間と該結像光学系配置空間との間に、差動排気機構1及び薄膜窓2を設け、これらの空間の間を分離している。
【0011】
また上記構成に加え、露光領域を広げるために輪帯照明領域に対するマスク5及び試料7の高精度な同期走査を行う同期走査機構8を更に設けた構成も併せて提案する。
【0012】
雰囲気圧力が変動すると、該雰囲気中の光路における露光々の減衰率が変化するため、試料面に到達する露光々の強度が変動する。そのため、図2に示されるように、マスク配置空間及び/又は試料配置空間に圧カセンサ13a、13bを設け、圧カセンサ13a、13bと同期走査機構8とを連係制御させることで、雰囲気圧力の変動に応じてマスク5及び試料7の移動速度を変化させて、一試料の全面、或いは2以上の試料間における照射面に到達する露光々の強度が常に同じになるように制御し、このような構成によって更に高精度な露光量の制御を行うことができる。
【0013】
一方上記構成に加え、図2に示されるように、光路途中にビームモニタ11a(11b、11c、11dについても同じ)を設け、更に該ビームモニタ11aと照明光学系4a及び/又は4bとを連係制御させることで、SR発光点の位置の経時的変動に追随させることができるようになり、露光照度を安定化させることができる。
【0014】
更に同図に示すように、薄膜窓21の前後に少なくとも一対のビームモニタ11b、11c、11dを設ければ、薄膜窓21前後の光強度差の経時変化を調べることによって薄膜窓21の汚れや破損を確認でき、薄膜窓21の交換時期を正確に知ることができる。
【0015】
加えて薄膜窓21の前後に薄膜窓の交換のための窓付きゲートバルブ10を設けると、該薄膜窓21の交換の際、前後のゲートバルブ10を閉じることで、この薄膜窓21の近傍の空間のみ大気圧にすることができるようになる。
【0016】
これらの構成については、マスク配置空間と試料配置空間とを同一空間としてその構成を組み立てても良いし、また照明光学系配置空間と結像光学系配置空間とを同一空間としてその構成を組み立てても良い。
【0017】
【作用】
これらの構成では、照明光学系配置空間とマスク配置空間との間、結像光学系配置空間と該マスク配置空間との間、試料配置空間と該結像光学系配置空間との間に、差動排気機構1や薄膜窓2で構成される雰囲気乃至雰囲気圧の分離機構が導入されることになる。そのため、照明光学系配置空間と結像光学系配置空間とは排気系9a、9bによって高真空に保たれる一方で、マスク配置空間と試料配置空間とは大気圧又は減圧雰囲気に調整でき、このような雰囲気中でのマスク5への照明及び試料7への露光が可能となる。
【0018】
尚上記構成中、照明光学系4の構成としては、レーザプラズマや固体レーザ、SR光源等から得られる真空紫外線やX線等の極紫外線を露光々とする場合に用いられる透過・反射型等の光学系で構成されており、例えば凸面と凹面の組み合わせた2面の非球面反射光学系等がある。マスク5の構成としては、上記露光々に対応した構成が用いられており、例えば露光々が波長5nmであればSiC基板上にクロム(Cr)とカーボン(C)を夫々1.2nm、1.2nmの厚さで交互に数十層重ねた多層膜を形成し、ドライエッチングにより多層膜を加工してマスクパターンとしたものが用いられる。結像光学系6a、6bの構成としては、上記露光々の減衰率の少ない反射光学系(例えば5nm露光々用には膜厚1.2nmのCrと1.2nmのCが交互に百数十層ずつ積層された多層膜が蒸着しているものが用いられる)で構成され、凸面構成及び凹面構成等の組み合わせでマスクパターンの縮小投影ができるようになっている。試料7の構成どしては、半導体ウェハ等の構成が用いられ、その結像面側には上記露光々に感光するレジスト[例えばSR光用のAZ-PN100(ヘキスト社製)]1等が塗布されている。差動排気機構1は公知の差動排気構成が利用可能であり、例えば光路方向に複数段の狭い空間が設けられ、それらの空間にスリット乃至管で接続された他側でロータリポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、イオンポンプ等の真空ポンプが設置される構成が使用可能である。薄膜窓2の構成は、露光々が透過可能で且つ透過減衰率のできるだけ低い材質(例えば露光波長が5nmの場合、ダイヤモンド薄膜やダイヤモンドとアモルファスカーボンの積層膜)で構成され、光路上で十分露光が可能な程度の面積にした場合に、その両面の差圧に十分耐えられる可能な限り薄い構成のものが良い。
【0019】
【実施例】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
以下本発明の一実施例につき説明する。図2はSR光縮小投影用の露光装置である本願第2乃至第3発明に係る実施例構成を示す装置概要図であり、3は本露光装置の構成が設置されたチャンバ、4a、4bはSR光の照明光学系、5は露光マスク、6a及び6bは縮小投影用結像光学系、7は結像面にレジストの塗布された試料たるウェハ、8はマスク5及びウェハ7の同期走査機構、9a及び9bは排気系、10は窓付きゲートバルブ(図2ではバルブが閉の状態を図示している)、11a、11b、11c、11dはビームモニタ、12は照明光学系4bを所定の位置および角度に設定するための連係制御系、13a、13bは圧カセンサ、22は薄膜フィルタを各示している。
【0032】
本実施例では、照明光学系配置空間とマスク配置空間との間、該マスク配置空間と結像光学系配置空間との間、該結像光学系配置空間とウェハ配置空間との間の夫々に差動排気機構1や薄膜窓21で構成される雰囲気乃至雰囲気圧の分離機構が設けられている。
【0033】
そして上記差動排気機構1の構成は、光路方向に各3段#1〜#3及び#4〜#6の狭い空間が設けられ、それらの空間に開放される円弧状スリット及びそれに続く管で接続され、他側で除振設備(図示せず)を有しているロータリポンプ及びターボ分子ポンプが設置された構成からなり、照明光学系配置空間とマスク配置空間との間、及び該マスク配置空間と結像光学系配置空間との間に設けられる差動排気機構1は一つの構成#1〜#3で兼ねられている。
【0034】
薄膜窓21の構成は、SR光が透過可能で且つ透過減衰率のできるだけ低い材質である窒化ケイ素(SiN)膜で構成され、光路上で十分露光が可能な程度の面積にした場合でも、これらの片面側における差動排気のために殆ど差圧がかからないので、§11は〜§13とも100nmと極めて薄くできる。薄膜フィルタ22は100nm厚の窒化ケイ素膜と500nm厚のベリリウム(Be)膜の積層膜であり、光軸から退避移動できるようになっている。ベリリウム(Be)膜によりSR光の可視光および紫外線成分をカットする。薄膜フィルタ22は必要に応じて露光装置の複数の場所に設けてもよい。
【0035】
上記照明光学系4a及び4bは裏面より冷媒流路を有する反射鏡保持器(図示せず)に固定されており、ここでは鏡面研磨された白金(Pt)反射鏡が図示されている。照明光学系4bは、SRリング(図示なし)から放射されたSR光を斜入射でその鏡面で反射せしめて、照明光学系4aの所定の位置にSR光を送る。照明光学系4bの前後にはSR光の位置とエネルギー強度を検出できるビームモニタ11aが設置されている。ビームモニタ11aは光軸から退避移動できるようになっている。照明光学系4bには、SR光の発光位置が変動しても、照明光学系4aの所定の位置にSR光を送ることができるように、このビームモニタ11aで検出された位置に応じて白金反射鏡が所定の位置および角度になるような連係制御系12が設けられている。通常、レジストの塗布された試料たるウェハにマスクのパターンを焼き付ける前、即ち露光する前に、ビームモニタ11aでSR光の位置を確認し、所定の位置にSR光が来るように照明光学系4bを調節する。そしてビームモニタ11aを光軸から退避して露光を行い、露光と露光の間、例えばウェハの交換時間に再度、ビームモニタ11aでSR光の位置を確認する。これらの操作を繰り返すことにより、SR光の発光点の変動に対して追随できる。
【0036】
またビームモニタは照明光学系4bの前後のみだけでなく、SR光発光点近傍、マスク面近傍、ウェハ面近傍、薄膜窓22の前後に設置してもよい。例えば薄膜窓22の前後にビームモニタ11b、11c、11dを設け、薄膜窓前後の光強度差の経時変化を調べることにより薄膜窓の汚れや破損を確認でき、薄膜窓の交換時期を正確に知ることができる。
【0037】
上記照明光学系4aは、図面では鏡面研磨された石英反射鏡からなり、該照明光学系4aは、照明光学系4bから反射してきたSR光を斜入射角4度でその鏡面で反射せしめて、§11の薄膜窓21を透過させ、薄膜22フィルタ、該放射光を#1〜#3の差動排気機構1の空間を通過させて、マスク5に照射せしめている。尚照明光学系配置空間の出口近傍には上述の排気系9aが設けられ、SRリングの真空域と同様な高真空が保たれている。
【0038】
薄膜窓21の前後に窓付きゲートバルブ10が配置されている。窓付きゲートバルブ10の窓は厚さ5mmの石英の板である。図2では窓付きゲートバルブ10が閉の状態を示しているが、露光の際は開の状態で使用する。該薄膜窓21の前後に窓付きゲートバルブ10が配置されていると、薄膜窓21を交換する際、薄膜窓21の近傍の空間のみ大気圧にできる。また薄膜窓21を交換する際、SR光が薄膜窓21の所定の位置を通過するように薄膜窓21及び照明光学系4bを調節しておく必要があるが、薄膜窓21の前後に石英窓付きゲートバルブ10が配置されているので、該バルブ10が閉の状態でSR光の可視光領域を用いて光軸出しを行い、SR光が薄膜窓21の所定の位置を通過するように薄膜窓21及び照明光学系4bを調節できる。
【0039】
マスク5は、石英基板上にモリブデン(Mo)とケイ素(Si)を夫々2.7nm、4nmの厚さで交互に60層重ねた多層膜が形成され、その最上層に所定の構造を有する厚さ100nmの金(Au)の吸収体パターンが配置されている。このマスク配置空間には圧力センサ13aが設置されていて、Heガス雰囲気が満たされており、常に100Torrの圧力になるように管理されている。また上記マスクパターンの設けられた面と#1の差動排気機構1の壁面との間隙は0.5mmである。
【0040】
結像光学系6a及び6bは、マスク5と同様に直入射近傍で最大の反射率を与える波長が13nm近傍の軟X線となるように一層当りの膜厚を調節したMoとSiを交互に60層重ねた多層膜を蒸着している反射光学系のものが用いられ、前記照明光学系4a及び4bと同様に、裏面より冷媒流路を有する反射鏡保持器(図示せず)に固定されており、本実施例では凸面構成(6a)及び凹面構成(6b)の組み合わせでマスクパターンの縮小投影ができるようになっている。尚この結像光学系配置空間には上述の排気系9bが設けられ、上記差動排気機構1及び薄膜窓21の構成による雰囲気圧の分離機構の構成も手伝って、10-8Torrの真空度に保たれている。
【0041】
ウェハ7は、シリコンウェハで構成されるものが用いられ、その結像面側には縮小投影されて進入してくるSR光に感光するSAL601(シップレイ社製)のレジストがスピンコートされている。このウェハ配置空間にも圧力センサ13aが設置されていて、Heガス雰囲気が満たされており、同様に常に100Torrの圧力になるように管理されている。また上記レジスト塗布側の面と#6の差動排気機構1の壁面との間隙は0.5mmである。
【0042】
同期走査機構8は、露光領域を広げるために輪帯照明領域に対するマスク5及びウェハ7の高精度な同期走査を行うマスク駆動装置8a及びウェハ駆動装置8bの他、制御系8cを有する装置構成であり、これによりマスク5とウェハ7は同一方向に移動するが、前記結像光学系6a及び6bによる縮小投影分、マスク5の移動量に対してウェハ7の移動量は小さくなる。即ちマスクとウェハは縮小率に応じた速度比で移動する。
【0043】
またウェハ面に到達する露光々の強度はウェハの移動速度に依存する。マスク配置空間およびウェハ配置空間の雰囲気圧力は圧カセンサ13a、13bでモニタされている。雰囲気圧力が変動すると、He雰囲気中の0.5mmの光路長における露光々の減衰率が変化するため、ウェハ面に到達する露光々の強度が変動する。圧カセンサ13a、13bは同期走査制御系8cと連係しており、雰囲気圧力の変動に応じてマスク1駆動装置8a及びウェハ駆動装置8bの移動速度を変化させて、複数枚のウェハ間、一枚のウェハに形成される複数のチップ間におけるウェハ面に到達する露光々の強度が常に同じになるように制御する。さらに同期走査制御系8cとビームモニタ11を連係し、露光々の強度に応じてマスクとウェハの移動速度を変えることもできる。ここでビームモニタ11の位置はウェハのできるだけ近いものが望ましい。
【0044】
上記本実施例構成で、照明光学系4から入射されてきたSR光は、§11の薄膜窓21を透過して、#3〜#1の差動排気機構1の壁面に夫々設けられた開口部を通り、更に薄膜フィルタ21を透過して、マスク5のパターン形成面に照射される。そしてマスクパターンに応じてコントラストの異なる状態で反射された上記放射光は、更に同じく#1〜#3の差動排気機構1の壁面の開口部を通過し、§12の薄膜窓21を透過して前記結像光学系6aに至る。放射光はその凸反射鏡面で反射され、向かい側の結像光学系6bの凹反射鏡面に至り、その間に上記マスクパターンが縮小投影された状態になって該凹反射鏡面から反射される。その後該放射光は、§13の薄膜窓21を透過し、#6〜#4の差動排気機構1の壁面開口部を通過して、ウェハ7のレジスト塗布面に照射され、前記マスクパターンを結像せしめる。この照射によってウエハ7に到達する露光々は波長13nm近傍のX線である。また以上の照射の最中に同期走査機構8は、マスク5とウェハ7を上述のように同期走査させて、その露光量域を広げるようにこれらを移動せしめる。
【0045】
また上述の差動排気機構1の各空間は、夫々の差動排気により、#1と#4が1Torr、#2と#5が0.01Torr、#3と#6が10-5Torrの真空度になるよう制御され、それらの作用と前記排気系9bによって結像光学系配置空間は前述のように10-8Torrの真空度に調整されている。
【0046】
本実施例構成による特有な作用効果は、マスク5及びウェハ7の各配置空間がHe雰囲気で満たされ、且つ100Torrに制御された状態であるので、これらマスク5及びウェハ7の温度上昇も起こらず、高い露光精度が実現できると共に、同期走査機構8によるマスク5及びウェハ7の同期走査も高精度に実施できる。またマスク配置空間及びウェハ配置空間におけるHe雰囲気圧力100Torrで0.5mm光路長における13nmの露光々の減衰は20%未満と少なかった。更に§11〜§13の各薄膜窓21の厚さは、上記#1〜#6の差動排気機構1の差動排気により殆ど差圧がかからないので、上述のように100nmと極めて薄くでき、露光々の減衰が更に小さくでき、結果的に露光強度が大きくなるので、露光スループットが稼げることとなった。加えて結像光学系配置空間の真空度が10-8Torr台に保たれ、且つ#2と#3の薄膜窓21によりマスク配置空間やウェハ配置空間と分離されているので、レジスト等の分解物による該光学系の汚染がない。またビームモニタ11aでSR光の位置を確認し、所定の位置にSR光が来るように照明光学系4bを調節しているので、SR光発光点の位置の変動による下流の光学系へのSR光の位置が変わらず、照度の変化はない。薄膜窓21の前後にビームモニタ11b、11c、11dを設け、薄膜窓前後の光強度差の経時変化を調べているので、薄膜窓の汚れや破損を確認でき、薄膜窓の交換時期を正確に知ることができる。薄膜窓21の前後に窓付きゲートバルブ10が配置されているので、薄膜窓21を交換する際、該薄膜窓21の近傍の空間のみ大気圧にできる。薄膜窓21を交換する際、SR光が薄膜窓21の所定の位置を通過するように薄膜窓21及び照明光学系4bを調節するために、該バルブ10が閉の状態でSR光の可視光領域を用いて光軸出しを行い、SR光が薄膜窓21の所定の位置を通過するように薄膜窓21及び照明光学系4bを調節できる。また圧カセンサ13a、13bを同期走査制御系8cと連係して設けることにより、雰囲気圧力の変動に応じてマスク駆動装置8a及びウェハ駆動装置8bの移動速度を変化させて、ウェハ毎、露光フィールド毎におけるウェハ面に到達する露光々の強度が常に同じになるように制御できる。
【0047】
尚、上記実施例では、光源としてSR光の場合を説明したが、レーザプラズマや固体レーザを光源として用いた場合でも同様な効果が得られるのは言うまでもない。
【0048】
【発明の効果】
本発明に係る極紫外線縮小投影露光装置によれば、露光精度、露光スループットが向上し、またマスク、試料、薄膜窓の交換に伴う露光作業効率の低下も来すことがなくなることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の前提構成となるSR光縮小投影用の露光装置の概要図である。
【図2】
SR光縮小投影用の露光装置である本願第2乃至第3発明に係る実施例構成を示す装置概要図である。
【図3】
従来の極紫外線縮小投影露光装置構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 差動排気機構
2、21 薄膜窓
3 チャンバ
4 照明光学系
5 マスク
6a、6b 結像光学系
7 ウェハ
8 同期走査機構
9a、9b 排気系
10 窓付きゲートバルブ
11a、11b ビームモニタ
11c、11d 〃
12 連係制御系
13a、13b 圧カセンサ
22 薄膜フィルタ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a、b、c、d、e、f、iは、特許請求の範囲の減縮を目的とし、訂正事項g,h、j,k,I,m,n,p,qは、明りょうでない記載の釈明を目的とする。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1〜請求項3を削除する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項4を請求項1とし、その記載において、「すると共に、該薄膜窓の前後に窓付きゲートバルブを設ける」を、『すると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設ける』と訂正する。
訂正事項c
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
訂正事項d
特許請求の範囲の請求項6を請求項2とし、その記載において、「差動排気機構又は薄膜窓の少なくとも一つを設けて」とあるのを、『差動排気機構及び薄膜窓を設けて』と訂正する。
訂正事項e
特許請求の範囲の請求項7及び請求項8を削除する。
訂正事項f
特許請求の範囲の請求項9を請求項3とし、その記載において、「設けると共に、該薄膜窓の前後に窓付きゲートバルブを設ける」を、『設けると共に、該薄膜窓の前後に薄膜窓交換のための窓付きゲートバルブを設ける』と訂正する。
訂正事項g
特許請求の範囲の請求項10を請求項4とし、その記載において、「第9項」を、『第3項』と訂正する。
訂正事項h
特許請求の範囲の請求項11を請求項5とし、その記載において、「第10項」を、『第4項』と訂正する。
訂正事項i
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
訂正事項j
明細書【0010】の「そのため本発明の極紫外線縮小投影露光装置の構成は、」を、『まず本発明の極紫外線縮小投影露光装置の前提となる構成を先に説明する。』と訂正する。
訂正事項k
明細書【0010】の「差動排気機構1又は薄膜窓2の少なくとも一つを設け、これらの空間の間を分離したことを基本的特徴としている。」を、『差動排気機構1及び薄膜窓2を設け、これらの空間の間を分離している。』と訂正する。
訂正事項l
明細書【0015】の「加えて薄膜窓21の前後に窓付きゲートバルブ10を設けると、」を、『加えて薄膜窓21の前後に薄膜窓の交換のための窓付きゲートバルブ10を設けると、』と訂正する。
訂正事項m
明細書【0019】〜【0030】までを削除する。
訂正事項n
明細書【0031】の「次に本発明の別の実施例につき説明する。図2はSR光縮小投影用の露光装置である本願第6乃至第9発明に係る実施例構成を示す装置概要図であり、」を、『【実施例】以下本発明の一実施例につき説明する。図2はSR光縮小投影用の露光装置である本願第2乃至第3発明に係る実施例構成を示す装置概要図であり、』と訂正する。
訂正事項p
明細書【0047】の「尚、二つの実施例では、」を、『尚、上記実施例では、』と訂正する。
訂正事項q
明細書【図面の簡単な説明】の欄を、
『 【図1】
本発明の前提構成となるSR光縮小投影用の露光装置の概要図である。
【図2】
SR光縮小投影用の露光装置である本願第2乃至第3発明に係る実施例構成を
示す装置概要図である。
【図3】
従来の極紫外線縮小投影露光装置構成を示す概略図である。
【符号の説明】
1 差動排気機構
2、21 薄膜窓
3 チャンバ
4 照明光学系
5 マスク
6a、6b 結像光学系
7 ウエハ
8 同期走査機構
9a、9b 排気系
10 窓付きゲートバルブ
11a、11b ビームモニタ
11c、11d ″
12 連係制御系
13a 13b 圧カセンサ
22 薄膜フィルタ
』と訂正する。
異議決定日 1999-06-03 
出願番号 特願平6-72840
審決分類 P 1 652・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岩本 勉  
特許庁審判長 森 正幸
特許庁審判官 橋本 栄和
辻 徹二
登録日 1997-09-05 
登録番号 特許第2691865号(P2691865)
権利者 株式会社ソルテック
発明の名称 極紫外線縮小投影露光装置  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 佐藤 英世  
代理人 佐藤 英世  

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