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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G02F
管理番号 1007393
異議申立番号 異議1998-75983  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-09-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-11 
確定日 1999-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2765007号「液晶駆動方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2765007号の特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2765007号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成1年2月28日に特許出願され、平成10年4月3日に登録設定され、その後、特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間である平成10年12月11日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
▲1▼訂正事項a
請求項1を次に示すように訂正する。
「(a)液晶の各画素の部分を第1の表示状態又は第2の表示状態に設定する際に、対応する駆動電極に与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間及び非選択期間に分割し、上記各駆動電極に順次上記選択期間を割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法において、
(b)上記選択期間を初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、
(c)上記各画素を第1の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、第1の駆動電圧Vー及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択し、上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフィールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間と逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、
上記第1番目のフィールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(d)又は、各画素を上記第2の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、上記第1の駆動電圧V,及び上記第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の上記第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第2の表示状態を維持するように選択し、上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(e)これにより、上記各画素を上記第1の表示状態又は上記第2の表示状態に設定するとき、それぞれ上記第1及び第2のフイールドの範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにしたことを特徴とする液晶駆動方法。」
▲2▼訂正事項b
本件特許明細書の「問題点を解決するための手段」の欄を次に示すように訂正する。
「E問題点を解決するための手段
かかる問題点を解決するため本発明においては、液晶の各画素の部分を第1の表示状態(「明」状態)又は第2の表示状態(「暗」状態)に設定する際に、対応する駆動電極X1、X2、……、Xk、……XN-I、XNに与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間TSEL及び非選択期間TNSELに分割し、各駆動電極に順次選択期間TSELを割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法において、選択期間TSELを初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、各画素を第1の表示状態(「明」状態)に設定するとき、第1番目のフイールドTF1において、初期化期間の間、第1の駆動電圧V,及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を駆動電極に印加することにより液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択し、第1番目のフィールドTF1に続く第2番目のフイールドTF2において、第1番目のフイールドTF1の初期化期間で印加した駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間と逆方向にかつ第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択すると共に、第1番目のフイールドTF1及び第2番目のフイールドTF2の非選択期間TNSELにおいて上記各画素以外の画素についての初期化期間及び表示状態選択期間ごとに、第2の駆動電圧V3に基づいて、第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、駆動電極に印加し、又は、各画素を第2の表示状態(「暗」状態)に設定するとき、第1番目のフイールドTF1において、初期化期間の間、第1の駆動電圧V1及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて液晶の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)を維持するように選択し、第1番目のフイールドTF1に続く第2番目のフイールドTF2において、第1番目のフイールドTF1の初期化期間で印加した駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ第1のしきい値電圧VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択すると共に、第1番目のフイールドTF1及び第2番目のフイールドTF2の非選択期間TNSELにおいて、各画素以外の画素についての初期化期間及び表示状態選択期間ごとに、第2の駆動電圧V3に基づいて、第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、駆動電極に印加し、これにより、各画素を第1の表示状態(「明」状態)又は第2の表示状態(「暗」状態)に設定するとき、それぞれ第1番目及び第2番目のフイールドTF1、TF2の範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにする。」
▲3▼訂正事項c
本件特許明細書の「発明の効果」の欄を次に示すように訂正する。
「H発明の効果
上述のように本発明によれば、連続するフイールドで印加電圧の直流レベルを0レベルに保持するように、第1番目及び第2番目のフイールドで印加電圧の直流レベルを変位させたことにより、選択期間の前半で、表示状態を初期化した後、続く後半で所望の表示状態を選定し得、これにより1フイールドの期間の間で表示画像を書き換えることができ、かくして従来に比して書き換えに要する時間を短縮することができる。」
イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
ウ.独立特許要件の判断
(訂正発明)
「(a)液晶の各画素の部分を第1の表示状態又は第2の表示状態に設定する際に、対応する駆動電極に与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間及び非選択期間に分割し、上記各駆動電極に順次上記選択期間を割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法において、
(b)上記選択期間を初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、
(c)上記各画素を第1の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、第1の駆動電圧Vー及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択し、上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記期化期間と逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、
上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(d)又は、各画素を上記第2の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、上記第1の駆動電圧V,及び上記第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の上記第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第2の表示状態を維持するように選択し、上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(e)これにより、上記各画素を上記第1の表示状態又は上記第2の表示状態に設定するとき、それぞれ上記第1及び第2のフイールドの範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにしたことを特徴とする液晶駆動方法。」
(引用刊行物)
甲第1号証(特開昭60-120399号公報)には、その第1頁右下欄第10行〜第11行に、
「電気光学素子とは、液晶素子」であると、
更に、その第3頁左上欄第6行〜下から第2行に、
「第6図に本発明による駆動信号波形を示す。第6図の実線は走査電極信号波形、点線が信号電極信号波形である。駆動信号波形は3つの期間で構成される。従来例と同様の書込み期間Wと保持期間Hおよび本発明で付加した電荷調整期間Rである。走査電極線には、書込み期間には選択信号29、32、35を、保持期間には保持信号30、33を従来どうり印加する。信号電極には、画素がオン表示の時にはオン信号35、36、37を印加し、画素がオフ表示の時には、オフ信号38、39、40を従来どうり印加する。新たに電荷調整期間Rでは走査電極線に電荷調整選択信号28、31、34を印加し、信号電極線には電荷調整信号41を印加する。」ということが、それぞれ図面と共に記載されている。
甲第2号証(特開昭63-249897号公報)には、その第2頁右上欄下から第3行〜左下欄第10行に、
「本発明は2枚の支持平板間の強誘電液晶と、行列配置され、各画素が前記支持平板の対向表面に設けられた画素電極により構成される画素系と、行及び列配置される電極系とを具えている表示装置を駆動させる方法であって、少なくとも1つの画素行をライン選択期間中に行電極を経て選択し、データ信号を列電極を経て供給し、かつライン選択の前に補助信号によって画素行を極端な状態に持たらすようにする表示装置駆動方法に関するものである。
なお、ここに云う「極端な状態」とは、画素がほぼ完全に透過性となるか、又は非透過性となるような状態のことを意味するものとする。」ということが、
更に、その第2頁右下欄第5行〜第12行に、
「冒頭にて述べたタイプの方法は欧州特許出願EPO.197,242号に開示されている。この方法では選択信号と同期させて供給するデータ信号に所謂ブランキングパルスを先行させる。このブランキングパルスは液晶を初期状態に持たらす必要のあるパルスである。強誘電材料が劣化しないようにするために、周期的に用いられるパルスの極性を反転させる。」ということが、
更に、4頁左下欄14行〜17行に、
「本発明による方法では先ず補助信号(”ブランキング”)Vblを供給し、この信号を本例では負とし、かつこの信号により画素を透過率がほぼ0の極端な状態にする。」ということが、
そして更に、その6頁左上欄3行〜同頁右上欄14行に、
「第6図は本発明による方法を用いる表示装置を概略的に示したものであり、この表示装置は薄膜トランジスタ15を選択する選択ライン16と、補助信号及びデータ信号が供給されるデータライン17との交差箇所に強誘電液晶画素25のマトリックス24を具えている。この表示装置の補助信号は、例えば電圧Vblを供給する電圧源26を経て得られる。この補助電圧Vblをライン選択期間の或る一部の期間中、例えばライン選択期間の1/2の期間中にマルチプレクサ27を介して供給し、ライン選択期間の他の半分の期間中にはシフトレジスタ28からデータライン17にデータ信号を供給する。データラインにおける電圧の変化とほぼ同時に画素行の選択が変更される。その理由は、マルチプレクサ29を介して、第1ライン選択回路30が、補助信号を供給するラインを選択するか、又は第2ライン選択回路31が書き込むべき画素のラインを選択するからである。ライン選択回路は例えばシフトレジスタ23とし、これらのシフトレジスタにより各ライン選択期間後につぎのラインを選択し、また書き込むべきラインの選択は、例えば補助信号がこのラインに供給された後に6ライン選択期間にわたり行う。」ということが、それぞれ図面と共に記載されている。
(対比・判断)
”液晶の各画素の部分を第1の表示状態又は第2の表示状態に設定する際に、対応する駆動電極に与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間及び非選択期間に分割し、上記各駆動電極に順次上記選択期間を割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法”において、訂正発明の
「(b)上記選択期間を初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、
(c)上記各画素を第1の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、第1の駆動電圧Vー及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期期間とは逆方向にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択し、上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間と逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、
上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(d)又は、各画素を上記第2の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、上記第1の駆動電圧V,及び上記第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の上記第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第2の表示状態を維持するように選択し、上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(e)これにより、上記各画素を上記第1の表示状態又は上記第2の表示状態に設定するとき、それぞれ上記第1及び第2のフイールドの範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにする」ことは、甲第1号証及び甲第2号証の何れにも記載も示唆もされていない。
そして、訂正発明は上記(b)〜(e)の構成をなすことにより、「選択期間の前半で、表示状態を初期化した後、続く後半で所望の表示状態を選定し得、これにより1フイールドの期間の間で表示画像を書き換えることができ、かくして従来に比して書き換えに要する時間を短縮することができる」という特許明細書に記載の作用効果を呈するものである。
したがって、訂正発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとすることができないから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
3.特許異議申立についての判断
ア.異議申立の理由の概要
異議申立人 セイコーエプソン株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭60-120399号公報)及び甲第2号証(特開昭63-249897号公報)を提出し、本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、前記甲各号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができるものであり、特許法第29条第2項に違反して特許されたものであるから、その特許は取り消されるべき旨主張している。
イ.異議申立人が提出した甲各号証に記載の発明
上記「2.ウ.(引用刊行物)」の記載を参照。
ウ.訂正発明と異議申立人が提出した甲各号証に記載の発明との対比・判断
上記「2.ウ.(対比・判断)」の記載を参照。
したがって、訂正発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものともすることができないから、特許法第29条第2項に違反して特許されたものとすることができない。
エ.むすび
以上のとおり、異議申立の理由及び証拠によっては、訂正発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に訂正発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
液晶駆動方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 液晶の各画素の部分を第1の表示状態又は第2の表示状態に設定する際に、対応する駆動電極に与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間及び非選択期間に分割し、上記各駆動電極に順次上記選択期間を割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法において、
(b) 上記選択期間を初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、
(c) 上記各画素を第1の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、第1の駆動電圧V1及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択し、
上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間と逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、
上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(d) 又は、各画素を上記第2の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、上記第1の駆動電圧V1及び上記第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の上記第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第2の表示状態を維持するように選択し、
上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、
上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(e) これにより、上記各画素を上記第1の表示状態又は上記第2の表示状態に設定するとき、それぞれ上記第1番目及び第2番目のフイールドの範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにした
ことを特徴とする液晶駆動方法。
【発明の詳細な説明】
以下の順序で本発明を説明する。
A産業上の利用分野
B発明の概要
C従来の技術(第4図〜第6図)
D発明が解決しようとする問題点(第4図〜第6 図)
E問題点を解決するための手段(第1図〜第3図)
F作用(第1図〜第3図)
G実施例(第1図〜第3図)
H発明の効果
A産業上の利用分野
本発明は液晶駆動方法に関し、特に強誘電体液晶を用いたマトリクス駆動の液晶表示装置に適用して好適なものである。
B発明の概要
本発明は、液晶駆動方法において、連続する2つのフイールドにおいて、印加電圧の直流レベルを打ち消すことにより、従来に比して表示に要する時間を短縮することができる。
C従来の技術
従来、マトリクス駆動の液晶表示装置においては、強誘電体液晶を用いるようになされたものがある。
すなわち第4図に示すように、液晶表示素子1においては、ガラス基板(図示せず)の対向面上に、ストライプ状の透明電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XN及びY1、Y2、……、YI、……、YJ、……、YM-1、YMが、強誘電体液晶を間に挟んで直交するように形成される。
さらにガラス基板の上下に偏光板が配置されるようになされ、これにより透明電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XN及びY1、Y2、……、YI、……、YJ、……、YM-1、YMに所定の電圧を印加して、強誘電体液晶の配列状態を変化させることにより、透明電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XN及びY1、Y2、……、YI、……、YJ、……、YM-1、YMの交差部分を画素……、GXK,YI、……、GXK,YJにした表示画像を形成するようになされている。
すなわち横方向に延長する透明電極(以下走査電極と呼ぶ)においては、1フイールドの期間TFを走査電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XNの数で分割し、分割された微小期間で順次走査電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XNを選択する。
ここで第5図に示すように、それぞれ走査電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XNが選択される期間を選択期間TSELと定義し、各走査電極X1、X2、……、XK……、XN-1、XNの駆動信号SXi、SXi+1、SXi+2、……(第5図(A1)、(A2)、(A3))においては、当該選択期間TSELに選択信号SSELを印加し、残りの微小期間(以下非選択期間TNSELと呼ぶ)に非選択信号SNSELを印加する。
これに対して、縦方向に延長する透明電極Y1、Y2、……、YI、……、YJ、……、YM-1、YM(以下信号電極と呼ぶ)においては、選択期間TSELにおいて、各走査電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XN上の画素の明暗に応じてオン信号SON又はオフ信号SOFFを割当て、駆動信号SYj、SYj+1、……(第5図(B1)及び(B2))を形成する。
ところでこの種の強誘電体液晶においては、所定のしきい値電圧を越える電圧を印加すると、表示状態を反転し得る特徴を有し、直流の印加電圧に対して電気分解する特徴を有している。
従つて例えば2フイールドで1つの表示画像を形成する液晶駆動方法(いわゆる2フイールド法でなる(National Technical Report Vol.33 No.1 Feb 1987 頁44〜50)においては、第6図に示すように、走査電極及び信号電極間の印加電圧が、選択期間TSEL及び非選択期間TNSELで切り換わり、かつ第1のフイールドと第2のフイールドで極性が反転するように、駆動信号SXi、SXi+1、SXi+2、……及び駆動信号SYj、SYj+1、……を選定し、これにより印加電圧の直流レベルを0レベルに保持して所望の表示画像を得るようになされている。
すなわち、非選択期間TNSELにおいては、しきい値電圧VTHからしきい値電圧-VTHの範囲の矩形波信号を印加し、当該非選択期間TNSELの間の直流レベルを0レベルに保持し、これにより強誘電体液晶の電気分解を未然に防止して明又は暗の表示状態を保持する(第6図(A)及び(B))。
これに対して選択期間TSELにおいては、第1のフイールドで、印加電圧が正側のしきい値電圧VTHを越えて立ち上がった後、負側のしきい値電圧-VTHを越えて立ち下がるようにし、続く第2のフイールドでしきい値電圧VTHからしきい値電圧-VTHの範囲を越えないようにする(第6図(A))。
これにより、選択期間TSELで直流レベルを0レベルに保持し、強誘電体液晶の電気分解を未然に防止して、第1フイールドで暗の表示状態が形成される。
これに対して、明の表示状態を形成する場合、第1のフイールドにおいて印加電圧がしきい値電圧VTHからしきい値電圧-VTHの範囲を越えないようにし、第2のフイールドで負側のしきい値電圧-VTHを越えて立ち下がった後、正側のしきい値電圧VTHを越えて立ち上がるようにする(第6図(B))。
これにより選択期間TSELで直流レベルを0レベルに保持し、第2のフイールドで明の表示状態が形成され、かくして線順次走査のマトリクス表示画像が形成される。
D発明が解決しようとする問題点
ところで、このように2フイールドで1つの表示画像を形成する場合、1つの表示画像を書き換えるのに2フイールドの期間を要し、その分書き換えの時間が長大になる問題がある。
この問題を解決するための1つの方法として、各画素……、GXK,YI、……、GXK,YJ、……(第4図)毎に、液晶セルを駆動する方法があるが、この場合駆動回路の構成が煩雑になる問題がある。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で書き換え時間の短い液晶駆動方法を提案しようとするものである。
E問題点を解決するための手段
かかる問題点を解決するため本発明においては、液晶の各画素の部分を第1の表示状態(「明」状態)又は第2の表示状態(「暗」状態)に設定する際に、対応する駆動電極X1、X2、……Xk、……XN-1、XNに与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間TSEL及び非選択期間TNSELに分割し、各駆動電極に順次選択期間TSELを割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法において、選択期間TSELを初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、各画素を第1の表示状態(「明」状態)に設定するとき、第1番目のフイールドTF1において、初期化期間の間、第1の駆動電圧V1及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択し、第1番目のフイールドTF1に続く第2番目のフイールドTF2において、第1番目のフイールドTF1の初期化期間で印加した駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間と逆方向にかつ第1のしきい値VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択すると共に、第1番目のフイールドTF1及び第2番目のフイールドTF2の非選択期間TNSELにおいて、各画素以外の画素についての初期化期間及び表示状態選択期間ごとに、第2の駆動電圧V3に基づいて、第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、駆動電極に印加し、又は、各画素を第2の表示状態(「暗」状態)に設定するとき、第1番目のフイールドTF1において、初期化期間の間、第1の駆動電圧V1及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて液晶の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)を維持するように選択し、第1番目のフイールドTF1に続く第2番目のフイールドTF2において、第1番目のフイールドTF1の初期化期間で印加した駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ第1のしきい値VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択すると共に、第1番目のフイールドTF1及び第2番目のフイールドTF2の非選択期間TNSELにおいて、各画素以外の画素についての初期化期間及び表示状態選択期間ごとに、第2の駆動電圧V3に基づいて、第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、駆動電極に印加し、これにより、各画素を第1の表示状態(「明」状態)又は第2の表示状態(「暗」状態)に設定するとき、それぞれ第1番目及び第2番目のフイールドTF1、TF2の範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにする。」
F作用
第1及び第2のフイールド(TF1)及び(TF2)間で、逆極性の電圧を印加した後表示状態を選択し、印加電圧の直流レベルV1-V2、-(V1-V2)を打ち消し合うようにすれば、1フイールドの期間の間で表示画像を書き換えることができる。
G実施例
以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。
この実施例においては、走査電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XN及び信号電極 Y1、Y2、……、YI、……、YJ、……、YM-1、YMに、第1図に示すような駆動信号……、SXK、SXK+1、……及び……、SYI、SYI+1、……を印加し、これにより1フイールドの期間の間で、表示画像を書き換えるようにする。
すなわち走査電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XNにおいては、第1のフイールドの期間TF1の間、選択期間TSELの前半で電圧V1に立ち上がった後、続く後半で電圧-V2に立ち下がり、続く第2のフイールドの期間TF2の間、選択期間TSELの前半で電圧-V1に立ち下がった後、続く後半で電圧V2に立ち上がる駆動信号SXK、SXK+1(第1図(A1)及び(A2))を与える。
これに対して非選択期間TNSELにおいては、電圧を0〔V〕の保持するように駆動信号……、SXK、SXK+1、……を選定する。
従つて駆動信号SXK、SXK+1においては、第1のフイールドにおいては、選択期間TSELの間電圧V1+V2だけ直流レベルが上昇するのに対し、続く第2のフイールドにおいては、これとは逆に選択期間TSELの間電圧-(V1+V2)だけ直流レベルが降下し、これにより連続する第1及び第2のフイールドで、直流レベルが0レベルになるようになされている。
これに対して信号電極Y1、Y2、……、YI、……、YJ、……、YM-1、YMのオン信号SONにおいては、第1及び続く第2のフィールドの期間TF1及びTF2の間、選択期間TSELの前半で電圧V3に立ち上がった後、続く後半で電圧-V3に立ち下がる駆動信号SYI、SYI+1(第1図(B1)及び(B2))を与える。
さらにオフ信号SOFFにおいては、第1及び続く第2のフイールドの期間TF1及びTF2の間、選択期間TSELの前半で電圧-V3に立ち下がつた後、続く後半で電圧V3に立ち上がるようにする。
従つて第2図に示すように、選択期間TSELの間、オン信号SONが与えられた画素においては、当該画素を構成する強誘電体液晶に、第1のフイールドの期間TF1の間、選択期間TSELの前半で電圧V1-V3に立ち上がつた後、続く後半で電圧-(V2-V3)に立ち下がる電圧ΔVが印加される(第2図(A))。
さらに当該画素においては、続く第2のフイールドの期間TF2の間、選択期間TSELの前半で電圧-(V1+V3)に立ち下がつた後、続く後半で電圧V2+V3に立ち上がる電圧ΔVが印加される。
これに対して非選択期間TNSELにおいては、電圧V3及び電圧-V3の間で変動する電圧ΔVが印加される。
これとは逆に第3図に示すように、選択期間TSELの間、オフ信号SOFFが選択された画素においては、当該画素を構成する強誘電体液晶に、第1のフイールドの期間TF1の間、選択期間TSELの前半で電圧V1+V3に立ち上がった後、続く後半で電圧-(V2+V3)に立ち下がる電圧ΔVが印加される(第3図(A))。
さらに当該画素においては、続く第2のフイールドの期間TF2の間、選択期間TSELの前半で電圧-(V1-V3)に立ち下がった後、続く後半で電圧V2-V3に立ち上がる電圧ΔVが印加される。
これに対して非選択期間TNSELにおいては、電圧V3及び電圧-V3の間で変動する電圧ΔVが印加される。
従つて液晶の印加電圧ΔVにおいては、第1のフイールドにおいて電圧V1-V2だけ直流レベルが上昇するのに対し、続く第2のフイールドにおいて逆に電圧-(V1-V2)だけ直流レベルが降下し、これにより印加電圧ΔVにおいては2フイールド周期で直流レベルが変動し、連続する第1及び第2のフイールドで直流レベルを打ち消し合うようになされている。
さらにこの実施例においては、電圧V1、V2及びV3を強誘電体液晶のしきい値電圧VTH、-VTHに対して、次式
V1-V3≧VTH ……(1)
V2+V3≧VTH ……(2)
V2<VTH ……(3)
に選定するようになされている。
これにより選択期間TSELの間、オン信号SONが与えられた画素においては、第1のフイールドの期間TF1の間、選択期間TSELの前半で印加電圧ΔVがしきい値電圧VTHよりも高い電圧V1-V3に立ち上がることにより、表示状態が明の表示状態に切り換わった後、続く後半でしきい値電圧-VTHよりも高い電圧-(V2-V3)に保持されることから、明の表示状態に保持される(第2図(B))。
さらに、続く第2のフイールドの期間TF2の間印加電圧ΔVが、選択期間TSELの前半でしきい値電圧-VTHよりも低い電圧-(V1+V3)に立ち下がることにより、暗い表示状態に切り換わった後、続く後半でしきい値電圧VTHよりも高い電圧V2+V3に立ち上がることにより、明の表示状態に切り換わり、当該表示状態を保持する。
これとは逆に選択期間TSELの間、オフ信号SOFFが与えられた画素においては、印加電圧ΔVが第1のフイールドの期間TF1の間、選択期間TSELの前半でしきい値電圧VTHよりも高い電圧電圧V1+V3に立ち上がることにより、明の表示状態に切り換わり又は保持された後、続く後半でしきい値電圧-VTHよりも低い電圧-(V2+V3)に立ち下がることにより、暗い表示状態に切り換わり、当該第1のフイールドの期間TF1の間、暗い表示状態に保持される(第3図(B))。
さらに、続く第2のフイールドの期間TF2の間、印加電圧ΔVが、選択期間TSELの前半でしきい値電圧-VTHよりも低い電圧-(V1-V3)に立ち下がることにより、暗い表示状態に保持され後、続く後半でしきい値電圧VTHよりも低い電圧V2-V3に立ち上がることにより、暗い表示状態に保持される。
かくして、第1及び第2のフイールドで、極性及び直流レベルが反転した電圧を印加すると共に、連続する2つのフイールドで直流レベルを打ち消し合うことにより、選択期間TSELの前半で表示状態を明又は暗の表示状態に初期化した後、続く後半で所望の表示状態を選択し得、これにより1フイールドの期間の間で、所望の表示画像を形成することができる。
従つてその分、従来に比して表示画像の書き換え時間を短縮することができる。
実際上この種の強誘電体液晶においては、2フイールド程度の周期で直流レベルが変動しても、電気分解を有効に回避して、表示画像を形成することができる。
かくしてこの実施例において、選択期間TSELの前半は、液晶の表示状態を初期化する初期化期間を構成するのに対し、選択期間TSELの後半は、初期化期間と逆方向に変化する電圧を印加し、該印加電圧に応じて上記液晶の表示状態を選択する表示状態選択期間を構成する。
以上の構成によれば、走査電極X1、X2、……、XK、……、XN-1、XNの駆動信号……、SXK、SXK+1、……を、第1及び第2のフイールドの選択期間TSELで直流レベルが打ち消し合うように、所定レベルだけ逆方向に変化するように選定し、印加電圧の直流レベルを連続するフイールドで打ち消し合うようにしたことにより、選択期間TSELの前半で表示状態を明又は暗の表示状態に初期化した後、続く後半で所望の表示状態を選択し得、これにより1フイールドの期間の間で、所望の表示画像を形成することができる。
従つてその分、従来に比して表示画像の書き換え時間を短縮することができる。
なお上述の実施例においては、液晶の印加電圧を立ち上げて明の表示状態得る場合について述べたが、本発明はこれとは逆に、液晶の印加電圧を立ち上げて暗の表示状態を得るようにしてもよい。
さらに上述の実施例においては、非選択期間の間、走査電極の駆動信号を0〔V〕に保持する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の駆動信号に広く適用することができる。
さらに上述の実施例においては、選択期間の間、走査電極の駆動信号について、直流レベルが打ち消し合うように、所定レベルだけ逆方向に変化させた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、信号電極の駆動信号について、直流レベルが打ち消し合うように、所定レベルだけ逆方向に変化させる場合、さらには走査電極及び信号電極双方の所定レベル変化させて、連続するフイールドで印加電圧の直流レベルを0レベルに保持するようにしても良い。
さらに上述の実施例においては、選択期間を前半と後半に分割し、それぞれ初期化期間及び表示状態選択期間に割り当てた場合について述べたが、本発明はこれに限らず必要に応じて初期化期間及び表示状態選択期間の比を所望の比率に選定するようにしても良い。
H発明の効果
上述のように本発明によれば、連続するフイールドで印加電圧の直流レベルを0レベルに保持するように、第1番目及び第2番目のフイールドで印加電圧の直流レベルを変位させたことにより、選択期間の前半で、表示状態を初期化した後、続く後半で所望の表示状態を選定し得、これにより1フイールドの期間の間で表示画像を書き換えることができ、かくして従来に比して書き換えに要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例による走査電極及び信号電極の駆動信号を示す信号波形図、第2図及び第3図は液晶の印加電圧及び表示状態を示す信号波形図、第4図は液晶表示素子の構造を示す略線図、第5図及び第6図はその駆動信号を示す信号波形図である。
1……液晶表示素子、X1、X2、……、XK、……、XN-1、XN……走査電極、Y1、Y2、……、YI、……、YJ、……、YM-1、YM……信号電極。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
▲1▼訂正事項a
請求項1において、特許請求の範囲の減縮を目的として、液晶の各画素に対応する駆動電極に与える駆動信号の構成を、訂正箇所にアンダーラインを付して次に示すように、訂正する。
「(a) 液晶の各画素の部分を第1の表示状態又は第2の表示状態に設定する際に、対応する駆動電極に与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間及び非選択期間に分割し、上記各駆動電極に順次上記選択期間を割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法において、
(b) 上記選択期間を初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、
(c) 上記各画素を第1の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、第1の駆動電圧V1及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択し、
上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間と逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、
上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフィールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(d) 又は、各画素を上記第2の表示状態に設定するとき、第1番目のフイールドにおいて、上記初期化期間の間、上記第1の駆動電圧V1及び上記第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第1の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記液晶の上記第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第2の表示状態を維持するように選択し、
上記第1番目のフイールドに続く第2番目のフイールドにおいて、上記第1番目のフイールドの初期化期間で印加した上記駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ上記液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を上記駆動電極に印加することにより、上記液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を上記第2の表示状態に初期化した後、
続く上記表示状態選択期間の間、上記第2の駆動電圧V3及び上記第3の駆動電圧V2に基づいて上記初期化期間とは逆方向にかつ上記第1のしきい値電圧VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を上記駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて上記液晶の表示状態を上記第1の表示状態を維持するように選択すると共に、
上記第1番目のフイールド及び上記第2番目のフイールドの上記非選択期間において、上記各画素以外の画素についての上記初期化期間及び上記表示状態選択期間ごとに、上記第2の駆動電圧V3に基づいて、上記第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び上記第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、上記駆動電極に印加し、
(e) これにより、上記各画素を上記第1の表示状態又は上記第2の表示状態に設定するとき、それぞれ上記第1及び第2のフイールドの範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにした
ことを特徴とする液晶駆動方法。」
▲2▼訂正事項b
訂正事項aの訂正に伴って、本件明細書の「問題点を解決するための手段」の欄を、不明りような記載の釈明を目的として、アンダーラインを付して次に示すように、訂正する。
「E問題点を解決するための手段
かかる問題点を解決するため本発明においては、液晶の各画素の部分を第1の表示状態(「明」状態)又は第2の表示状態(「暗」状態)に設定する際に、対応する駆動電極X1、X2、……、Xk、……XN-1、XNに与える駆動信号について、1フイールドの期間を選択期間TSEL及び非選択期間TNSELに分割し、各駆動電極に順次選択期間TSELを割り当てるようにした液晶表示装置のマトリクス駆動方法において、選択期間TSELを初期化期間及び表示状態選択期間に分割し、各画素を第1の表示状態(「明」状態)に設定するとき、第1番目のフイールドTF1において、初期化期間の間、第1の駆動電圧V1及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1-V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以上の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V2-V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2-V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択し、第1番目のフイールドTF1に続く第2番目のフイールドTF2において、第1番目のフイールドTF1の初期化期間で印加した駆動電圧(V1-V3)と逆極性にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1+V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間と逆方向にかつ第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2+V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2+V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択すると共に、第1番目のフイールドTF1及び第2番目のフイールドTF2の非選択期間TNSELにおいて、上記各画素以外の画素についての初期化期間及び表示状態選択期間ごとに、第2の駆動電圧V3に基づいて、第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、駆動電極に印加し、又は、各画素を第2の表示状態(「暗」状態)に設定するとき、第1番目のフィールドTF1において、初期化期間の間、第1の駆動電圧V1及び第2の駆動電圧V3に基づいて液晶の第1のしきい値電圧VTH以上の値にまで立ち上がる駆動電圧(V1+V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下に立ち下がる駆動電圧-(V2+V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧-(V2+V3)に応じて液晶の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)を維持するように選択し、第1番目のフイールドTF1に続く第2番目のフイールドTF2において、第1番目のフイールドTF1の初期化期間で印加した駆動電圧(V1+V3)と逆極性にかつ液晶の第2のしきい値電圧-VTH以下の値にまで立ち下がる駆動電圧-(V1-V3)を駆動電極に印加することにより、液晶の当該駆動電極に対応する部分の表示状態を第2の表示状態(「暗」状態)に初期化した後、続く表示状態選択期間の間、第2の駆動電圧V3及び第3の駆動電圧V2に基づいて初期化期間とは逆方向にかつ第1のしきい値電圧VTH以下の値にまで立ち上がる駆動電圧(V2-V3)を駆動電極に印加することにより、当該印加された駆動電圧(V2-V3)に応じて液晶の表示状態を第1の表示状態(「明」状態)を維持するように選択すると共に、第1番目のフイールドTF1及び第2番目のフイールドTF2の非選択期間TNSELにおいて、各画素以外の画素についての初期化期間及び表示状態選択期間ごとに、第2の駆動電圧V3に基づいて、第1のしきい値電圧VTH以下の値の駆動電圧V3及び第2のしきい値電圧-VTH以上の値の駆動電圧-V3を、その順序で、又はその逆の順序で、駆動電極に印加し、これにより、各画素を第1の表示状態(「明」状態)又は第2の表示状態(「暗」状態)に設定するとき、それぞれ第1番目及び第2番目のフイールドTF1、TF2 の範囲で、印加電圧の直流レベルを打ち消し合うようにする。」
▲3▼訂正事項c
訂正事項aの訂正に伴って、本件明細書の「発明の効果」の欄を、不明りような記載の釈明を目的として、アンダーラインを付して次に示すように、訂正する。
「H発明の効果
上述のように本発明によれば、連続するフイールドで印加電圧の直流レベルを0レベルに保持するように、第1番目及び第2番目のフイールドで印加電圧の直流レベルを変位させたことにより、選択期間の前半で、表示状態を初期化した後、続く後半で所望の表示状態を選定し得、これにより1フイールドの期間の間で表示画像を書き換えることができ、かくして従来に比して書き換えに要する時間を短縮することができる。」
異議決定日 1999-06-24 
出願番号 特願平1-47792
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G02F)
最終処分 維持  
特許庁審判長 豊岡 静男
特許庁審判官 東森 秀朋
横林 秀治郎
登録日 1998-04-03 
登録番号 特許第2765007号(P2765007)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 液晶駆動方法  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 井上 一  
代理人 布施 行夫  
代理人 田辺 恵基  
代理人 田辺 恵基  

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