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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1007396
異議申立番号 異議1998-70232  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-03-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-01-23 
確定日 1999-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2632961号「樹脂の光学的造形方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2632961号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 特許第2632961号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
理 由
[1]手続の経緯
本件特許第2632961号の請求項1〜3に係る発明は、昭和63年9月13日に出願され、平成9年4月25日にその特許の設定登録がなされ、その後、大木俊弥より特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成10年9月17日に特許異議意見書と共に訂正請求書が提出されたものである。
[2]訂正の適否についての判断
〔訂正の内容〕
訂正事項は次のとおりである。
1.特許請求の範囲を次のとおり訂正する。
「1 必須成分として、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中40〜95重量部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、(c)1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中5〜60重量部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部を含有する樹脂組成物を容器に収容し、活性エネルギー線を照射させることにより該樹脂組成物を硬化させて造形物を得ることを特徴とする樹脂の光学的造形方法。
2 (a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質が、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する脂環族エポキン樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の光学的造形方法。
3 活性エネルギー線がレーザー光である請求項1又は2記載の光学的造形方法。」
2.明細書第4頁第5行〜第13行(特許公報第3欄第30行〜第40行)に記載の「本発明の・・・特徴とするものである。」を次のとおり訂正する。
「本発明の樹脂の光学的造形方法は、必須成分として、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中40〜95重量部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、(c)1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中5〜60重量部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部を含有する樹脂組成物を容器に収納し、活性エネルギー線を照射させることにより該樹脂組成物を硬化させて造形物を得ることを特徴とするものである。」
3.明細書第13頁第5行、第7行、第15行、第19行(特許公報第5欄第48行、第50行、第6欄第7行〜第8行、第11行)に記載の「エポキシアクリレート」を「芳香族エポキシアクリレート」と訂正する。
4.明細書第13頁第9行〜第10行(特許公報第6欄第1行〜第2行)に記載の「水添ビスフェノールAエポキシアクリレート、」を削除する。
〔訂正の目的の適否〕
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2〜4は、訂正事項1の訂正に伴って発明の詳細な説明の記載が不明瞭となることの釈明を目的とするものである。
従って、本件訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書に規定する要件を満たすものである。
〔訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否〕
訂正事項1〜4は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1〜4は、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。
従って、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第2項及び第3項に規定する要件を満たすものである。
〔独立特許要件の判断〕
訂正後の発明:
訂正明細書の請求項1〜3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲請求項1〜3に記載された事項により特定される前記のとおりのものである。
刊行物1の記載事実:
取消理由通知に引用した特開昭63-72526号公報(昭和63年4月2日発行、特許異議申立人が提出した甲第1号証、以下、「刊行物1」という。)には次の記載がなされている。
「三次元要素に関する座標情報を供給する供給手段と:供給手段から座標情報を受取り、座標情報の操作を実行するように構成されるワークステーション手段と;操作された座標情報に応答して、所望の三次元要素の三次元モデルを自動的に構成する三次元モデル構成手段と;を具備する三次元写像および型製作用の装置。」
(特許請求の範囲第1項)
「前記三次元モデル構成手段は、凝固可能液体を入れる使い捨て容器と;前記凝固可能液体を内部に規定される凝固面上で照射する照射手段と;照射手段と容器とを相対的に変位させる相対変位手段と;を具備する特許請求の範囲第1項から第9項のいずれか1項に記載の装置。」
(特許請求の範囲第10項)
「所望の平面に凝固可能液体の安定した層を規定する規定手段をさらに具備する特許請求の範囲第1項から第17項のいずれか1項に記載の装置。」(特許請求の範囲第18項)
「選択的に寸法設定可能なウェブ材料をほぼ円筒形に引延ばすことにより所定の形状の中実物体を形成する手段と、ウェブ材料を選択的に寸法設定する手段とを具備する自動型製作用の装置。」(特許請求の範囲第25項)
「前記選択的に寸法設定する手段は、前記ウェブ材料を変調されたレーザービームで走査する手段から構成される特許請求の範囲第25項記載の自動型製作用の装置。」
(特許請求の範囲第27項)
「〔産業上の利用分野〕本発明は、一般に、三次元型製作用の装置(以下、三次元モデリング装置という。)に関し、特に、コンピュータ出力に応答する三次元モデリング装置に関する。〔従来の技術及び発明が解決しようとする問題点〕これまでに、様々な三次元モデリングシステムが提案されている。Hullの米国特許4,575,330号には、立体リソグラフィ技術により三次元物体を形成する装置が記載されている。ここに記載されるンステムは、規定の相助刺激を受けたときに凝固することができる流動媒体から三次元物体を形成しようとするものであり、二次元境界面で物体の連続する横断面層を取出し、形成する装置と、横断面層を形成されるにつれて移動し、物体を段階的に積上げて構成する装置とを含み、従って、三次元物体はほぼ二次元の面から抽出される。」(第3頁右上欄第9行〜左下欄第6行)
「〔問題点を解決するための手段〕本発明の目的は、高速であり、比較的低コストであり且つ工業環境の下で使用するのに適する三次元写像および型製作用の装置(以下三次元マッピング及びモデリング装置という)を提供することである。」
(第4頁右下欄第7行〜第12行)
「第2図(A)及び第2図(B)には、三次元モデリング発生器16の2つの別の好ましい実施例の概要が示される。第2図(A)の実施例は凝固可能液体を直接露光するものであり、第2図(B)の実施例では間接的に露光する。まず、第2図(A)の実施例について考えると、レーザー又はショートギャップを有する強力なアークランプ等のエネルギー源20は、ビーム変調器21と、コンピュータ又は記憶媒体からデータ入力を受取るビーム偏向器22とを介して放射線ビームを供給する。変調及び偏向されたビームは、凝固面23に位置する凝固可能液体の層に入射する。凝固可能液体は、コーティング及び印刷の分野で一般に使用される何れかの適切な放射線重合可能材料であれば良い。そのような材料としては、たとえば、スイス、チューリィッヒのVitralit製造の6180、アメリカ合衆国コネティカット州、ダンベリーのElectro-liteCorporation製造のELC 4480、合衆国ニューヨーク州、スケネクタディのGeneral Electrlc Company製造のUVE-1014、スイスのciba Geigy製造のIrgacure 184などがある。」(第7頁左下欄第9行〜右下欄第10行)
「本発明のさらに別の実施例によると、第15A図、第15B図および第15C図に示されるように、化学的抑制技術が固化液体の固化深度を制限するために使用される。第15A図に示されるように、代表的にはエポキン樹脂(例えば、ユニオンカーバイド社から入手可能なUVR-6100)を含み、そして酸を放出するため紫外線放射に応答する、米国、シエネクタデイ、ゼネラルエレクトリック社から入手可能なUV1014のような化学的塩基(base)および光作用開始剤(Photo-initiator)であるアミンのようなエポキシ膠状物質に通常使用される硬化剤と化合されている固化可能層260は、固化可能層の所望領域の熱重合及び結果として生じる硬化を発生するイスラエル、テルアビブ、レーザインダストリー社により製造される赤外レーザにより供給される赤外エネルギーのような第1の型の放射により照射される。その後に、第15B図に示されるように、固化可能層260は、固化可能層に光作用開始剤により吸収される紫外線照射により投光し、層260における如何なる一層の重合化をも禁止する酸を放出させ、かくしてこのように照射された固化可能層260の固化可能特性を中和化する。最後に、第15C図に示すように、固化可能液体の新たな層262が層260の上に供給され、その反復が繰返される。層262の赤外線放射により、中和化された層260は、固化されない。」
(第15頁左上欄第3行〜右上欄第9行)
刊行物1には更に、好ましい一実施例に従って構成され且つ動作する三次元モデリング装置の2つの別の実施例を示す概要ブロック線図(第2A図、第2B図)及び、凝固可能液体の凝固の深さを制限する際の化学的禁止方法の3つの過程を示す図(第15A図、第15B図、第15C図)が記載されている。
刊行物2の記載事実:
取消理由通知に引用した特開昭59-159820号公報(昭和59年9月10日発行、特許異議申立人が提出した甲第2号証、以下、「刊行物2」という。)には次の記載がなされている。
「(i)分子中に1個以上のオキシラン環を有する化合物(A化合物)、(ii)分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を少なくとも20重量%以上含有する(メタ)アクリレート化合物(B化合物)、(iii)紫外線の照射によりカチオン重合開始能を有する物質を放出する化合物(C化合物)、および(iv)増感剤 を含有してなる組成物において、A化合物とB化合物が、▲1▼A化合物のポリマーのガラス転移温度とB化合物のポリマーのガラス転移温度とが20℃以上異なり、かつ▲2▼高い方のガラス転移温度が10℃以上、低い方のガラス転移温度が20℃以下のものであることを特徴とする紫外線硬化性組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明は、紫外線を照射することにより速硬化し、かつ硬度が高く、基材との密着性、折り曲げ性、耐衝撃性および耐薬品性に優れた硬化物を与える硬化性組成物に関する。」
(第1頁右下欄第4行〜第7行)
「本発明の硬化性組成物が使用される応用例は保護用、装飾用及び絶縁用被覆、印刷インク、封止剤、フォトレジスト、ソルダーレジスト、感圧接着剤、ラミネート用接着剤、その他各種接着用、紙・繊維加工用等が挙げられる。」
(第7頁左下欄第19行〜右下欄第3行)
「実施例1 ERL-4221(ユニオンカーバイド社商品)60部、ポリカプロラクトングリコールジアクリレート40部からなる樹脂液にテトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウム1.8部とベンゾインメチルエーテル2.0部を加え室温で溶解・混合し組成物を調製した。」
(第7頁右下欄第8行〜第14行)
「比較例1〜4 表1に示すA化合物、B化合物、C化合物および増感剤を用いて実施例1と同様にして組成物を調製した。」
(第7頁右下欄第19行〜第8頁左上欄第2行)
刊行物2には更に、表-1中比較例1の欄に、A化合物としてERL-4221(3,4エポキシシクロヘキシルメチル3,4シクロヘキサンカーボキシレート:ユニオンカーバイド社商品)60部、B化合物としてエポキシアクリレート(エポン828 1モルにアクリル酸2モルを付加して合成した)40部、C化合物としてテトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウム塩1.8部及び増感剤としてベンゾインメチルエーテル2.0部を用いて組成物を調製したことが示されている。
刊行物3の記載事実:
取消理由通知に引用した特開昭62-187722号公報(昭和62年8月17日発行、特許異議申立人が提出した甲第3号証、以下、「刊行物3」という。)には次の記載がなされている。
「(A)少なくとも1個のカルボキシル基を有するビスフェノール型エポキシ樹脂5〜60重量%、(B)少なくとも1個のエポキシ基を有する液状エポキシ化合物(但し前記(A)成分を除く。)5〜40重量%、(C)少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する光重合性化合物10〜60重量%、(D)エポキシ基を熱反応させることができる熱反応性触媒0.01〜10重量%および(E)光重合開始剤0.001〜15重量%を含有してなる液状感光性樹脂組成物。」
(特許請求の範囲)
「本発明は、液状感光性樹脂組成物およびそれを用いる画像形成法に関し、さらに詳しくはプリント回路基板用ホトレジストとして好適であり、紫外線露光に対して高感度、高解像度で、しかも光硬化後の塗膜の電気特性や機械的性質にも優れた、熱硬化および光硬化がともに可能な液状感光性樹脂組成物およびそれを用いる画像形成法に関する。」(第1頁右下欄第11行〜第17行)
刊行物4の記載事実:
取消理由通知に引用した特開昭62-273529号公報(昭和62年11月27日発行、特許異議申立人が提出した甲第4号証、以下、「刊行物4」という。)には次の記載がなされている。
「(i)(A)カチオン重合可能な成分と、(B)(A)のための輻射線活性化重合開始剤と、(C)(A)と異なる輻射線硬化性成分と、及び所望により(D)(C)の硬化のための輻射線活性化開始剤よりなる液体組成物の層を基体に塗布すること、(ii)該組成物を、開始剤(B)は活性化されるが成分(C)及び/または開始剤(D)は実質的に活性化されない波長を有する化学線に暴露し、必要であれば続けて(A)を重合して、液体組成物の層を凝固させるが、光硬化性は残存させるように加熱すること、(iii)該凝固層を所定のパターンで、段階(ii)で使用した幅射線と異なる波長を有し、かつ輻射線硬化性成分(C)及び/または開始剤(D)が活性化される波長を有する化学線に、暴露面においては(C)が実質的に硬化されるように暴露すること、そして(iv)実質的に硬化されなかった凝固層の部分を除去することからなることを特徴とする画像形成方法。」(特許請求の範囲第1項)
「樹脂1:これは4-ブロモフェニルグリシジルエーテルを表す。 樹脂2:これは以下の方法により製造する。・・・ 生成物、樹脂2は2,2ービス(4-(3-アクリロイルオキシー2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパンである。 ・・・ 樹脂5:これは3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを表す。」(第20頁右下欄第8行〜第21頁左上欄第6行)
「実施例1:樹脂1(4.5部)、樹脂5(0.5部)、樹脂2(5部)、(pi5-2A-シクロペンタジエン-1-イル)ー〔(1,2,3,4,5,6-pi)-(1-メチル-エチル)-ベンゼン〕-鉄(II)へキサフルオロホスフェート(0.25部)、ベンジル-ジメチルケタール(0.15部)、クメンヒドロペルオキシド(0.3部)及びアセトン(0.5部)の混合物を溶液が得られるまで撹拌する。・・・」(第21頁右下欄第3行〜第22頁左上欄第2行)
刊行物5の記載事実:
取消理由通知に引用した米国特許第4694029号明細書(1987年9月15日発行、特許異議申立人が提出した甲第5号証、以下、「刊行物5」という。)には、重合性エポキシ含有物質、(メタ)アクリロイル基をもつ1種又は2種以上の重合性モノマー、カチオン性光開始剤、ラジカル型光開始剤及びアルコール促進剤からなる光重合性組成物の発明(アブストラクトの項)が記載されており、更に次の記載がなされている。
「本発明の有利な特徴は、特に、比較的低い強度の光放射に暴露することによって硬化する光硬化性組成物の能力と、それ固有の高固形性、特に100%の反応性である。本発明の組成物は、貯蔵タンク、建物、床、自動車、シート状金属板、及び紙やプラスチック製品を含む感熱性基板のような構造物や大規模施設の仕上げ及び被覆に有効である。」(第7欄第23行〜第32行)
刊行物6の記載事実:
取消理由通知に引用した特開昭61-192724号公報(昭和61年8月27日発行、特許異議申立人が提出した甲第6号証、以下、「刊行物6」という。)には次の記載がなされている。
「(A)エポキシ樹脂100重量部、(B)光感知性芳香族オニウム塩0.1〜5重量部、(C)重合可能な置換基を有する増感剤0.001〜0.5重量部、および(D)アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル5〜50重量部を必須の成分として含有してなることを特徴とする光硬化性組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明は改善された溶出特性を有する光硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、電気機器用の絶縁材料、レジスト材料、特に液晶セルなど平面型表示素子製造における封着、封止材料等として使用するのに適した電気的特性と接着性および液晶適正を有する硬化物を与える光硬化性組成物に関するものである。」
(第1頁左下欄第17行〜右下欄第4行)
刊行物7の記載事実:
取消理由通知に引用した特開昭59-166526号公報(昭和59年9月19日発行、特許異議申立人が提出した甲第7号証、以下、「刊行物7」という。)には次の記載がなされている。
「(A)多価エポキシ樹脂40〜90重量%、(B)不飽和二重結合およびヒドロキシル基を含有する化合物60〜10重量%(但し、(A)及1び(B)の合計量を1 00重量%とする。)、(C)トリアリールスルホニウム錯塩及び(D)光又は熱によってラジカルを発生する開始剤からなる光硬化性組成物。」(特許請求の範囲)
「・・・ラジカル重合的光硬化においては、耐衝撃性および金属密着性が劣る他、薄膜の硬化塗膜の形成では、空気中の酸素の影響によってツメキズが入りやすいという欠点があり、又・・・カチオン重合的光硬化においては、光硬化速度が遅く、特に含量等によって着色した場合には、深部の硬度が不充分となる欠点がある。本発明は、このような従来技術の欠点を克服し、光硬化速度が速く、併せて耐衝撃性及び耐ツメキズ性の良好な光硬化性組成物を提供するものである。」
(第1頁右下欄第6行〜第16行)
刊行物8の記載事実:
取消理由通知に引用した特開昭60-247515号公報(昭和60年12月7日発行、特許異議申立人が提出した甲第8号証、以下、「刊行物8」という。)には次の記載がなされている。
「光により硬化する光硬化性流動物質に、硬化に必要な光エネルギー供給を選択的に行って所望形状の固体を形成することを特徴とする光学的造形法。」(特許請求の範囲第1項)
「前記光硬化性流動物質を容器に収容し、該光硬化性物質中に導光体を挿入し、前記容器と該導光体とを相対的に移動しつつ該導光体から光照射を行なうことにより該光硬化性物質に選択的に、硬化に必要な光エネルギー供給を行なうことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の光学的造形法。」(特許請求の範囲第2項)
「前記光硬化性流同物質としては、光照射により硬化する種々の物質を用いることができ、例えば・・・エポキシアクリレート・・・を挙げることができる。前記光としては、使用する光硬化性物質に応じ、可視光、紫外光等種々の光を用いることができる。該光は通常の光としてもよいが、レーザー光とすることにより、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮し、良好な集光性を利用して造形精度を向上させ得るという利点を得ることができる。」(第2頁右下欄第3行〜第14行)
対比・判断:
刊行物1には、三次元写像及び型製作用の装置の発明とともに、該装置を使用して三次元写像及び型を製作する方法の発明が記載されているとして差し支えない。
特許異議申立人が提出した参考資料1(エレクトローライト社の製品カタログ)によれば、刊行物1記載の「ELC 4480」はアクリル型の光硬化性物質であることが理解される。
特許異議申立人が提出した参考資料2(“CHEMISTRY & TECHNOLOGY of UV & EB FORMULATION for COATINGS,INKS & PAINTS VOLUME III”)、平成10年6月16日付け回答書に添付された添付書類1(GENERAL ELECTRIC社により発行された技術報告書「UVE-1014 EPOXY CURING AGENT TECHNICAL BULLETIN」)及び添付書類2(ユニオンカーバイド社のカタログ「CYRACURE CYCLOALIPHATIC EPOXIDES CATIONIC UV CURE)第6頁によれば、刊行物1記載の「UVE-1014」は、一応、ビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネートを含むものであるといえる。
特許異議申立人が提出した参考資料3(加藤清視著「紫外線硬化システム」平成元年2月28日、株式会社総合技術センター発行、第104頁)によれば、刊行物1記載の「Irgacure184」はラジカル重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンであることが理解される。
特許異議申立人が提出した参考資料4(ユニオンカーバイド社のカタログ「CYRACURE CYCLOALIPHATIC EPOXIDES CAHONIC UV CURE)第4頁〜第5頁によれば、刊行物1記載の「UVR-6110」は脂環式エポキシの混合物あるいは3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであることが理解される。
訂正後の請求項1に係る発明と刊行物1記載の三次元写像および型を製作する方法の発明(以下、刊行物1記載の発明という。)を対比する。
これらの発明は、必須成分として、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(c)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を含有する樹脂組成物を容器に収容し、活性エネルギー線を照射させることにより該樹脂組成物を硬化させて造形物を得ることを特徴とする樹脂の光学的造形方法の発明である点で軌を一にするものであるが、次の点で相違する。
訂正後の請求項1に係る発明が(c)のエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質が1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるものであることを規定しているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのようなことを明らかにしていない点、
そこでこの相違点について検討する。
刊行物2〜7には、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質を含む光硬化性樹脂組成物が記載されており、特に、刊行物2には、エポン828 1モルにアクリル酸2モルを付加して合成したエポキシアクリレート(芳香族エポキシアクリレートの1種)が具体的に記載され、刊行物4には、2,2-ビス(4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン(芳香族エポキシアクリレートの1種)が具体的に記載されている。
しかしながら、刊行物2〜7記載の組成物はいずれも、インク、接着剤、画像形成等基材の上で光硬化して用いるものであり、容器内で照射させて造形物を得るものではない。
また、刊行物8には、光学的造形の際に、エポキシアクリレートを用いることは記載されているが、芳香族エポキシアクリレートを用いることは記載されていない。
してみれば、刊行物2〜8の記載をもってしても、光学的造形の際に、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質として1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるものを用いることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。
そして、訂正後の請求項1に係る発明は、訂正明細書の記載からも明らかなように、エネルギー線硬化性ラジカル重合性物質として1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを選び、これを50重量%以上含有してなるものを用いることにより、硬化物の体積収縮が少なく、造形時間を短くすることができるという、刊行物2〜7に記載された、基材の上で光硬化することからは予測できない効果を奏したものと認められる。
そのため、訂正後の請求項1に係る発明が刊行物1〜8記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
訂正後の請求項2〜3に係る発明は、請求項1に係る発明を技術的に限定する発明であるから、訂正後の請求項1に係る発明と同様、刊行物1〜8記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
従って、訂正後の請求項1〜3に係る発明はいずれも出願の際、独立して特許を受けることができるものであり、本件訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項に規定する要件を満たすものである。
〔結び〕
以上のとおりであるから、本件訂正を認める。
[3]特許異議の申立についての判断
〔申立の理由の概要〕
特許異議申立人は、本件特許の訂正前の請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証〜甲第8号証(刊行物1〜8)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許された旨の主張をしている。
〔判断〕
本件特許の請求項1〜3に係る発明(訂正後の請求項1〜3に係る発明)は、前記〔独立特許要件の判断〕に示したとおり、甲第1号証〜甲第8号証(刊行物1〜8)記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認めることができない。
〔結び〕
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張および挙証によっては本件の請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
樹脂の光学的造形方法
(57)【特許請求の範囲】
1 必須成分として、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中40〜95重量部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、(c)1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレ一トを50重量%以上含有してなるエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中5〜60重量部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部を含有する樹脂組成物を容器に収容し、活性エネルギー線を照射させることにより該樹脂組成物を硬化させて造形物を得ることを特徴とする樹脂の光学的造形方法。
2 (a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質が、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する脂環族エポキシ樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の光学的造形方法。。
3 活性エネルギー線がレーザー光である請求項1又は2記載の光学的造形方法。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、活性エネルギー線硬化型の光学的造形用樹脂組成物を用いた光学的造形方法に関する。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題]
一般に、鋳型製作時に必要とされる製品形状に対応する模型、あるいは切削加工の倣い制御用又は形彫放電加工電極用の模型の製作は、手加工により、あるいは、NCフライス盤等を用いたNC切削加工により行われていた。しかしながら、手加工による場合は、多くの手間と熟練とを要するという問題があり、NC切削加工による場合は、刃物刃先形状変更のための交換や摩耗等を考慮した、複雑な工作プログラムを作る必要があると共に、加工面に生じた段を除くために、更に仕上げ加工を必要とする場合があるという問題もある。最近、これらの従来技術の問題点を解消し、鋳型製作用、倣い加工用、形彫放電加工用の複雑な模型や種々の定形物を光学的造形法により創成する新しい手法に関する技術開発が期待されている。
この光学的造形用樹脂としては、エネルギー線による硬化感度が優れていること、エネルギー線による硬化の解像度が良いこと、硬化後の紫外線透過率が良いこと、低粘度であること、γ特性が大きいこと、硬化時の体積収縮率が小さいこと、硬化物の機械強度が優れていること、自己接着性が良いこと、酸素雰囲気下での硬化特性が良いことなど、種々の特性が要求される。
一方、特開昭62-235318号公報には、トリアリールスルホニウム塩触媒を用いて、分子内に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、分子内に2個以上のビニル基を有するビニル化合物とを同時に光硬化させることを特徴とする発明が記載されている。しかしながら、この発明の合成方法は、特に光学的造形用樹脂を得ることを目的とはしていないため、これによって得られる樹脂を光学的造形用樹脂として用いても、光学的造形システムに最適なものではなかった。
[課題を解決するための手段]
本発明は、かかる光学的造形用樹脂として要求される各種の諸特性を有する感光性樹脂を鋭意検討した結果、見出されたものである。
本発明の目的は、活性エネルギー線による光学的造形システムに最適な樹脂組成物を提供することにある。
本発明の樹脂の光学的造形方法は、必須成分として、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中40〜95重量部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、(c)1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中5〜60重量部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部を含有する樹脂組成物を容器に収容し、活性エネルギー線を照射させることにより該樹脂組成物を硬化させて造形物を得ることを特徴とするものである。
本発明の構成要素となるエネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)とは、エネルギー線感受性カチオン重合開始剤であるビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート(b)の存在下、エネルギー線照射により高分子化又は架橋反応するカチオン重合性化合物で、例えばエポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニル化合物などの1種又は2種以上の混合物からなるものである。かかるカチオン重合性化合物の中でも、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する化合物は、好ましいものであり、例えば従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂が挙げられる。
ここで芳香族エポキシ樹脂として好ましいものは、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルであって、例えばビスフェノールAやビスフェノールF又はそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂が挙げられる。
また、脂環族エポキシ樹脂として好ましいものとしては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又はシクロヘキセン、又はシクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の、適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられる。脂環族エポキシ樹脂の代表例としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロへキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロへキシル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジー2-エチルヘキシルなどが挙げられる。
更に脂肪族エポキシ樹脂として好ましいものは、脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどがあり、その代表例としては、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。更に脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテルやフェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
エポキシ化合物以外のカチオン重合性有機物質の例としては、トリメチレンオキシド、3,3-ジメチルオキセタン、3,3-ジクロロメチルオキセタンなどのオキセタン化合物;テトラヒドロフラン、2,3-ジメチルテトラヒドロフランのようなオキソラン化合物;トリオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,6-トリオキサンシクロオクタンのような環状アセタール化合物;β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトンのような環状ラクトン化合物;エチレンスルフィド、チオエピクロロヒドリンのようなチイラン化合物;1,3-プロピンスルフィド、3,3-ジメチルチエタンのようなチエタン化合物;エチレングリコールジビニルエーテル、アルキルビニルエーテル、3,4-ジヒドロピラン-2-メチル(3,4-ジヒドロピラン-2-カルボキシレート)、トリエチレングリコールジビニルエーテルのようなビニルエーテル化合物;エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物;ビニルシクロヘキサン、イソブチレン、ポリブタジエンのようなエチレン性不飽和化合物及び上記化合物の誘導体が挙げられる。これらのカチオン重合性化合物は、単独あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
これらのカチオン重合性有機物質のうち特に好ましいものは1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する脂環族エポキシ樹脂であり、カチオン重合反応性、低粘度化、紫外線透過性、厚膜硬化性、体積収縮率、解像度などの点で良好な特性を示す。
本発明で使用するエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(b)とは、ビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネートである。
かかるカチオン重合開始剤には、ベンゾフェノン、ベンゾインイソプロピルエーテル、チオキサントンなどの光増感剤を併用することもできる。
本発明で使用するエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)とはエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤dの存在下、エネルギー線照射により高分子化又は架橋反応するラジカル重合性化合物で、1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるものである。
かかる芳香族エポキシアクリレートとして好ましいものはビスフェノールAエポキシアクリレートであり、その他アルキレンオキサイド付加ビスフェノールAエポキシアクリレート、ビスフェノールFエポキシアクリレートも用いられる。
上記ビスフェノールAエポキシアクリレートなどの1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートは、アクリレート樹脂の中でも特にラジカル重合反応性が良好である。本発明の樹脂の光学的造形方法においては、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質として、このような芳香族エポキシアクリレートを含有することにより、硬化速度を速め、造形時間を短縮することが可能である。
本発明においては、50重量%未満の割合でその他のエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質を使用することができる。
そのような物質は、例えばアクリレート化合物、メタクリレート化合物、アリルウレタン化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリチオール化合物などの1種又は2種以上の混合物からなるものである。かかるラジカル重合性化合物の中でも、1分子中に少なくとも1個以上のアクリル基を有する化合物は好ましいものであり、例えばエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、アルコール類のアクリル酸エステルが挙げられる。
ここで、エポキシアクリレートとして、好ましいものは、上記1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレート以外の、従来公知の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂などと、アクリル酸とを反応させて得られるアクリレートである。これらのエポキシアクリレートのうち、特に好ましいものは、芳香族エポキシ樹脂のアクリレートであり、少なくとも1個の芳香核を有する多価フェノール又はそのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテルを、アクリル酸と反応させて得られるアクリレート、エポキシノボラック樹脂とアクリル酸とを反応させて得られるアクリレートが挙げられる。
ウレタンアクリレートとして好ましいものは、1種又は2種以上の水酸基含有ポリエステルや、水酸基含有ポリエーテルに水酸基含有アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られるアクリレートや、水酸基含有アクリル酸エステルとイソシアネート類を反応させて得られるアクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種又は2種以上の脂肪族多価アルコールと、1種又は2種以上の多塩基酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。多塩基酸としては、例えば、アジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸が挙げられる。水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加する事によって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。水酸基含有アクリル酸エステルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールと、アクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有アクリル酸エステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。かかる水酸基含有アクリル酸エステルのうち、脂肪族2価アルコールとアクリル酸とのエステル化反応によって得られる水酸基含有アクリル酸エステルは、特に好ましく、例えば2-ヒドロキシエチルアクリレートが挙げられる。イソシアネート類としては、分子中に少なくとも1個以上のイソシアネート基をもつ化合物が好ましいが、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
ポリエステルアクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエステルとアクリル酸とを反応させて得られるポリエステルアクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエステルとして好ましいものは、1種又は2種以上の脂肪族多価アルコールと、1種又は2種以上の1塩基酸、多塩基酸、及びフェノール類とのエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。1塩基酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸が挙げられる。多塩基酸としては、例えばアジピン酸、テレフタル酸、無水フタル酸、トリメリット酸が挙げられる。フェノール類としては、例えばフェノール、p-ノニルフェノールが挙げられる。
ポリエーテルアクリレートとして好ましいものは、水酸基含有ポリエーテルと、アクリル酸とを反応させて得られるポリエーテルアクリレートである。ここで使用する水酸基含有ポリエーテルとして好ましいものは、脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加する事によって得られる水酸基含有ポリエーテルであって、脂肪族多価アルコールとしては、例えば1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが挙げられる。アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが挙げられる。
アルコール類のアクリル酸エステルとして好ましいものは、分子中に少なくとも1個の水酸基をもつ芳香族、又は脂肪族アルコール、及びそのアルキレンオキサイド付加体と、アクリル酸とを反応させて得られるアクリレートであり、例えば2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2ーヒドロキシプロピルアクリレート、イソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソオクチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ベンジルアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6ーヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコ一ルジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが挙げられる。
これらのアクリレ一トのうち、多価アルコールのポリアクリレート類が特に好ましい。
これらのラジカル重合性有機物質は、単独あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて、配合して使用する事ができる。
本発明で使用するエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(d)とは、エネルギー線照射によりラジカル重合を開始させる物質を放出する事が可能な化合物であり、アセトフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などのケトン類が好ましい。アセトフェノン系化合物としては、例えばジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシメチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4’-イソプロピル-2-ヒドロキシ-2-メチループロピオフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチループロピオフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-アジドベンザルアセトフェノンが挙げられる。ベンゾインエーテル系化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロビルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。ベンジル系化合物としては、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルーβ-メトキシエチルアセタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、例えばべンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、ミヒラースケトン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノンが挙げられる。チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントンが挙げられる。
これらのエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(d)は、単独あるいは2種以上のものを所望の性能に応じて配合して使用することができる。
次に、本発明における(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤、(c)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤の組成割合について説明する。組成割合については、部(重量部)で説明する。
即ち、本発明におけるエネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)及びエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)の組成割合は、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)と、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)の合計を100部とすると、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)を40〜95部、即ち、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)を5〜60部含有するものが好ましく、更に好ましくはエネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)を50〜90部、即ち、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)を10〜50部含有するものが、光学的造形用樹脂組成物として、特に優れた特性を有する。
本発明の光学的造形方法において、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)及びエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)は、光学的造形用樹脂組成物として所望の特性を得るために、複数のエネルギー線硬化性有機物質、即ち、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)、及びエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)を配合して使用することができる。
本発明の光学的造形方法におけるエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(b)の含有量は、エネルギー線硬化性有機物質100部、即ち、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)とエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)の合計100部に対して、0.1〜10部、好ましくは0.5〜6部の範囲で含有することができる。又、本発明の光学的造形方法におけるエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(d)の含有量は、エネルギー線硬化性有機物質100部に対して、0.1〜10部、好ましくは0.2〜5部の範囲で含有することができる。エネルギー線感受性カチオン重合開始剤(b)及びエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(d)は、光学的造形用樹脂組成物として、所望の特性を得るために、複数のエネルギー線感受性カチオン重合開始剤(b)及びエネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(d)を配合して使用することができる。またこれらの重合開始剤をエネルギー線硬化性有機物質と混合する時は、重合開始剤を適当な溶剤に溶かして使用することもできる。
本発明の光学的造形方法において、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)の組成割合が多すぎる場合、即ちエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)の組成割合が少なすぎる場合、得られる組成物は、活性エネルギー線による硬化反応の際、空気中の酸素による影響を受けにくく、又、硬化時の体積収縮を小さくすることができるため、硬化物に歪みや割れ等が生じにくく、更に低粘度の樹脂組成物が容易に得られるため、造形時間を短縮する事ができる。しかし、活性エネルギー線による硬化反応の際、活性エネルギー線の照射部分から周辺部分へと重合反応が進み易いため、解像度が悪く、又、活性エネルギー線の照射後、重合反応が終了するまで数秒間の時間を要する。逆にエネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)の組成割合が少なすぎる場合、即ち、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(c)の組成割合が多すぎる場合、活性エネルギー線の照射部分から周辺部分へと重合反応が進みにくいため解像度が良く、又、活性エネルギー線の照射後重合反応が終了するまで、ほとんど時間を要さない。しかし、活性エネルギー線による硬化反応の際、空気中の酸素により重合反応が阻害され易く、又、硬化時の体積収縮が大きいため硬化物にゆがみや割れなどが生じ易く、更に、低粘度化するため低粘度ラジカル重合性樹脂を使用すると、皮膚刺激性が大きい。この様な組成物はいずれも光学的造形用樹脂組成物としては、適当ではない。
本発明の樹脂の光学的造形方法において、特にaエネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質が、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する脂環族エポキシ樹脂を40重量%以上含有するように構成した場合、エネルギー線反応性が良く、機械的強度や解像度に優れ、収縮率が3%以下になり、非常に優れた光学的造形システムを構成することができる。
本発明の樹脂の光学的造形方法においては、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、熱感受性カチオン重合開始剤;顔料、染料等の着色剤;消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種樹脂添加剤;シリカ、ガラス粉、セラミックス粉、金属粉等の充填剤;改質用樹脂などを適量配合して使用することができる。熱感受性カチオン重合開始剤としては、例えば、特開昭57-49613号、特開昭58-37004号公報記載の脂肪族オニウム塩類が挙げられる。
本発明における樹脂組成物の粘度としては、好ましくは常温で2000cps以下のもの、更に好ましくは、1000cps以下のものである。粘度があまり高くなると、造形所要時間が長くなるため、作業性が悪くなる傾向がある。
一般に造形用樹脂組成物は、硬化時に体積収縮をするので、精度の点から収縮の小さいことが要望される。本発明における樹脂組成物の硬化時の体積収縮率としては、好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下のものである。
本発明の具体的実施方法としては、特開昭60-247515号公報に記載されている様に、本発明における光学的造形用樹脂組成物を容器に収容し、該樹脂組成物中に導光体を挿入し、前記容器と該導光体とを相対的に、移動しつつ該導光体から硬化に必要な活性エネルギー線を選択的に供給することによって、所望形状の固体を形成することができる。本発明における樹脂組成物を硬化する際に使用する活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、放射線、あるいは高周波等を用いることができる。これらのうちでも、1800〜5000Åの波長を有する紫外線が経済的に好ましく、その光源としては、紫外線レーザー、水銀ランプ、キセノンランプ、ナトリウムランプ、アルカリ金属ランプ等が使用できる。特に好ましい光源としては、レ-ザー光源であり、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮し、良好な集光性を利用して、造形精度を向上させることが可能である。また、水銀ランプ等の各種ランプからの紫外線を集光した点光源も有効である。更に、硬化に必要な活性エネルギー線を、本発明における樹脂組成物に選択的に供給するためには、該樹脂組成物の硬化に適した波長の2倍に相等しい波長を有し、かつ位相のそろった2つ以上の光束を該樹脂組成物中において、相互に交叉するように照射して2光子吸収により、該樹脂組成物の硬化に必要なエネルギー線を得、該光の交叉箇所を移動して行うこともできる。前記位相のそろった光束は、例えばレーザー光により得ることができる。
本発明における樹脂組成物は、活性エネルギー線によるカチオン重合反応及びラジカル重合反応により硬化が進むため、使用するカチオン重合性有機物質a及びラジカル重合性有機物質cの種類によっては、活性エネルギー線照射時、該樹脂組成物を、30〜100℃程度に加熱することにより、架橋硬化反応を効果的に促進することもできるし、更に、エネルギー線照射して、得られた造形物を40〜100℃の温度に加熱処理又は水銀ランプなどで、UV照射処理をすることで、より機械強度の優れた造形物を得ることもできる。
本発明の樹脂の光学的造形方法は、三次元立体モデルを層状形成物の積み重ねによって作成するための非常に優れたものであり、金型を用いないでモデルの創成加工ができ、しかも自由曲面など、CAD/CAMとドッキングによりあらゆる形状が高精度に創成できるなど、工業的価値は極めて大きい。例えば、本発明の光学的造形方法の応用分野としては、設計の途中で外観デザインを審査するためのモデル、部品相互の組み合わせの不都合をチェックするためのモデル、鋳型を製作するための木型、金型を製作するための倣い加工用モデルの造形方法など、幅広い用途に利用することができる。
具体的な適用分野としては、自動車、電子・電気部品・家具、建築構造物、玩具、容器類、鋳物、人形、など各種曲面体のモデルや加工用が挙げられる。
[実施例]
以下、実施例によって本発明の代表的な例について、更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって制約されるものではない。
例中「部」は重量部を意味する。
実施例1
(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート65部1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル20部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤とし7て、ビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート3部、(c)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質として、ビスフェノールAエポキシアクリレート15部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤として、ベンゾフェノン1部を充分混合して、光学的造形用樹脂組成物を得た。樹脂組成物を入れる容器をのせた三次元NC(数値制御)テーブル、ヘリウム・カドミウムレーザー(波長325nm)と、光学系及びパーソナルコンピューターをメーンとする制御部より構成される光造形実験システムを用いて、この樹脂組成物から底面の直径12mm、高さ15mm、厚さ0.5mmの円錐を造形した。この造形物は歪みがなく、極めて造形精度が高く、かつ機械強度が優れたものであった。
レーザーによる重合速度を比較するため造形に要する時間を測定したところ、30分と短時間であった。また、造形精度を測定するため、円錐状造形物の底面の直径を任意に10箇所測定し、そのバラツキを測定したところ、平均値からの平均誤差(以下造形精度という)が1.8%と高精度であった。
比較例1
(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート50部、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル20部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート3部、(c)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質として、ビスフェノールAエポキシアクリレート20部、トリメチロールプロパントリアクリレート10部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤として、ベンジルジメチルケタール1部を充分混合して、光学的造形用樹脂組成物を得た。実施例1に示したレーザー光造形実験システムを用いて、この組成物を60℃に加温しながらつりがね状の造形物を作成したところ、この造形物は、歪みがなく、極めて造形精度が高く、かつ機械強度の優れたものであった。また、本樹脂組成物は、低粘度で扱い易く、レーザー光による硬化性の優れたものであった。
レーザーによる重合速度と造形精度を測定するため、実施例1と同様の円錐状造形物を作成したところ、造形時間が30分、造形精度が1.5%であった。又、加温しない場合の造形時間は65分であった。
比較例2
(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質として、ビスフェノールAジグリシジノレエーテル10部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート40部、ビニルシクロヘキセンオキシド10部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート2部、(c)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質として、ビスフェノールAエポキシアクリレート25部、ペンタエリスリトールトリアクリレート15部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤として、2,2-ジエトキシアセトフェノン2部を充分混合して、光学的造形用樹脂組成物を得た。実施例1に示したレーザー光造形実験システムを用いて、この組成物を60℃に加温しながらコップ状造形物を作成したところ、歪みがなく、造形精度の優れたものが得られた。
レーザーによる重合速度と造形精度を測定するため実施例1と同様の円錐状造形物を作成したところ、60℃に加温しているため反応速度が速く、造形時間が20分と非常に短時間であった。また、造形精度は1.9%であった。又、加温しない場合の造形時間は55分であった。
実施例2
(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート55部、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル10部、トリエチレングリコールジビニルエーテル15部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤として、ビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート2部、(c)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質として、ビスフェノールAエポキシアクリレート20部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤として、ベンゾフェノン1部を充分混合して、光学的造形用樹脂組成物を得た。この組成物を使用して実施例1に示したレーザー光造形実験システムによるつりがね状造形物を作成したところ、歪みがなく、機械的強度、造形精度、表面平滑性の優れたものが得られた。
レーザーによる重合速度と造形精度を測定するため、実施例1と同様の円錐状造形物を作成したところ、造形時間が30分、造形精度が1.6%であった。
比較例3
3,4-エポキシシクロへキジルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート60部、ビスフェノールAジグリシジルエーテル20音阻1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル20部、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート3部を充分混合し、エネルギー線硬化性カチオン重合性樹脂組成物を得た。この組成物を使用して、実施例1に示したレーザー光造形実験システムを用いて、実施例1と同様の円錐状造形物を作成したところ、この造形物は、歪みがなく、又、機械強度も優れたものであったが、本樹脂組成物はレーザー光による硬化時に解像度が悪いため、造形物の表面がざらざらとした造形精度の悪いものであった。又、レ-ザー照射時より重合反応が終了するまで、数秒間待たねばならず、造形所要時間が120分と長時間であった。造形精度は6.8%と大きな値を示した。
比較例4
ビスフェノールAエポキシアクリレート70部、トリメチロールプロパントリアクリレート30部、ベンジルジメチルケタール3部を充分混合して、エネルギー線硬化性ラジカル重合性樹脂組成物を得た。この組成物を使用して、実施例1に示したレーザー光造形実験システムを用いて、実施例1と同様の円錐状造形物を作成したところ、造形時間は45分と比較的短時間であったが、この造形物は、大きな硬化収縮による歪みが発生し、造形精度が10.0%と非常に劣るものであった。
比較例5
3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート65部、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル20部、ビス〔4-(ジフェニルスルポニオ)フェニルスルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート3部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部、ビスフェノールAエポキシアクリレート5部、ベンゾフェノン1部を充分混合して、エネルギー線硬化性カチオン/ラジカル重合性樹脂組成物を得た。この組成物を使用して、実施例1に示したレーザー光造形実験システムを用いて、実施例1と同様の円錐状造形物を作成した。この造形物は歪みがなく、機械強度の優れたものであった。造形時間は50分、造形精度は3.0%であり、光学的造形用樹脂組成物としては、ある程度のレベルに達していたが、ラジカル重合性有機物質がビスフェノールAエポキシアクリレートを50%以上含有していないため、明らかに造形時間が劣っていた。
【発明の効果】
本発明の方法に用いられる光学的造形用樹脂組成物は、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質及びエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質の混合組成物であるため、エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質の特性と、エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質の特性の両方の利点をもつ樹脂組成物である。カチオン重合性樹脂組成物は、活性エネルギー線による硬化反応の際、空気中の酸素による影響を全く受けることがない、硬化時の体積収縮を小さくすることができるため、硬化物に歪みや割れ等が生じにくい、硬化物の強度が優れている、低粘度樹脂組成物が容易なため造形時間を短縮することができる、等の利点がある。しかし、活性エネルギー線による硬化反応の際、活性エネルギー線の照射部分から周辺部分へと重合反応が進み易いため、解像度が悪い、活性エネルギー線の照射後、重合反応が終了するまで数秒間の時間を要する、等の欠点がある。一方、ラジカル重合性樹脂組成物は、活性エネルギー線による硬化反応の際、活性エネルギー線の照射部分から周辺部分へと重合反応が進みにくいため解像度が良い、活性エネルギー線の照射後、重合反応が終了するまで、ほとんど時間を要さない、という利点がある。しかし、空気中の酸素により重合反応が阻害される、硬化時の収縮率が大きい、硬化物の機械的強度が劣る、低粘度樹脂は、皮膚刺激性が大きい、臭気が強い等の欠点がある。
本発明では、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、(c)エネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤を混合した樹脂組成物に活性エネルギー線を照射させて造形物を得ることにより、以下のような利点を有することができた。即ち、空気中の酸素による影響をほとんど受けることがない。硬化時の体積収縮を小さくすることができるため、硬化物に歪みや割れ等が生じにくい。低粘度樹脂組成物が容易なため、造形時間を短縮することができる。活性エネルギー線照射の際、活性エネルギー線の照射部分から周辺部分へと、重合反応が進みにくいため解像度が良い。活性エネルギー線の照射後、重合反応が終了するまでほとんど時間を要さない。硬化物の機械的強度や硬度が優れている。
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
1.特許請求の範囲を次のとおり訂正する。
「1 必須成分として、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中40〜95重量部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、(c)1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中5〜60重量部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部を含有する樹脂組成物を容器に収容し、活性エネルギー線を照射させることにより該樹脂組成物を硬化させて造形物を得ることを特徴とする樹脂の光学的造形方法。
2 (a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質が、1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する脂環族エポキン樹脂を40重量%以上含有することを特徴とする請求項1記載の光学的造形方法。
3 活性エネルギー線がレーザー光である請求項1又は2記載の光学的造形方法。」
2.明細書第4頁第5行〜第13行(特許公報第3欄第30行〜第40行)に記載の「本発明の・・・特徴とするものである。」を次のとおり訂正する。
「本発明の樹脂の光学的造形方法は、必須成分として、(a)エネルギー線硬化性カチオン重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中40〜95重量部、(b)エネルギー線感受性カチオン重合開始剤としてビス-〔4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル〕スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部、(c)1分子中に2個の不飽和二重結合を有する芳香族エポキシアクリレートを50重量%以上含有してなるエネルギー線硬化性ラジカル重合性有機物質(a)と(c)の合計100重量部中5〜60重量部、(d)エネルギー線感受性ラジカル重合開始剤(a)と(c)の合計100重量部に対して0.1〜10重量部を含有する樹脂組成物を容器に収納し、活性エネルギー線を照射させることにより該樹脂組成物を硬化させて造形物を得ることを特徴とするものである。」
3.明細書第13頁第5行、第7行、第15行、第19行(特許公報第5欄第48行、第50行、第6欄第7行〜第8行、第11行)に記載の「エポキシアクリレート」を「芳香族エポキシアクリレート」と訂正する。
4.明細書第13頁第9行〜第10行(特許公報第6欄第1行〜第2行)に記載の「水添ビスフェノールAエポキシアクリレート、」を削除する。
1.の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
2〜4.の訂正は、1.の訂正に伴って、発明の詳細な説明の記載が不明瞭になることの釈明を目的とするものである。
異議決定日 1999-06-14 
出願番号 特願昭63-229381
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 花田 吉秋
特許庁審判官 谷口 浩行
柿澤 紀世雄
登録日 1997-04-25 
登録番号 特許第2632961号(P2632961)
権利者 旭電化工業株式会社
発明の名称 樹脂の光学的造形方法  
代理人 古谷 聡  
代理人 古谷 馨  
代理人 古谷 馨  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  
代理人 持田 信二  
代理人 持田 信二  
代理人 溝部 孝彦  

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