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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
管理番号 1007463
異議申立番号 異議1999-70333  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-04-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-01 
確定日 1999-11-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2781922号「脱水機における濃縮ドラムヘの濾布装着方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2781922号の特許を維持する。 
理由 1、手続の経緯
特許第2781922号の請求項1に係る発明は、平成1年8月18日に特許出願され、平成10年5月22日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、敷島紡績株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされたものである。
2、訂正の適否
2-1、訂正の内容
本件訂正請求書における訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。
すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として、
▲1▼訂正事項(ア)、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「【請求項1】少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配して濾布となし、その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長よりやや長い濾布を形成し、この濾布をドラムに捲回し継手部に芯線を挿通して両端部を接合したのち加熱処理し、該濾布をドラムの周方向に収縮させてドラムに装着することを特徴とする脱水機における濃縮ドラムヘの濾布装着方法。」を、「【請求項1】ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法であって、少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配して濾布となし、その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長より3〜10%長い濾布を形成し、この濾布をドラムに捲回し継手部に芯線を挿通して両端部を接合したのちドラムを回転させながら加熱し、該濾布をドラムの周方向に収縮させてドラム周面に緊張状態に固着することを特徴とする汚泥脱水機における汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法。」と訂正し、
さらに、明りょうでない記載の釈明を目的として、
▲3▼訂正事項(イ)、特許明細書第3頁17行目(本件公報第2頁第3欄第20行)の「発明による濃縮ドラムヘの濾布装着方法は、」を、「発明は、ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法であって、」に訂正し、
▲3▼訂正事項(ウ)、特許明細書第4頁第2行目(本件公報第2頁第3欄第24行)の「やや長い」を、「3〜10%長い」に訂正し、
▲4▼訂正事項(エ)、特許明細書第4頁第4行目(本件公報第2頁第3欄第26行)の「加熱処理」を、「ドラムを回転させながら加熱」に訂正し、
▲5▼訂正事項(オ)、特許明細書第4頁第5行目(本件公報第2頁第3欄第27行)の「ドラムに装着」を、「ドラム周面に緊張状態に固着」に訂正するものである。
2-2、訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張変更の存否
上記訂正事項(ア)は、「脱水機における濃縮ドラムヘの濾布装着方法」を「ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法」と限定し、「やや長い」を「3〜10%長い」と限定し、「加熱処理」を「ドラムを回転させながら加熱」と限定し、「ドラムに装着」を「ドラム周面に緊張状態に固着」と限定するものであり、かつこれらの事項は本件特許明細書に記載されているから、特許請求の範囲の減縮に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではなく、新規事項の追加にも該当しない。
また、上記訂正事項(イ)〜(オ)は特許請求の範囲の減縮を目的とする上記訂正事項(ア)の訂正に伴うものであり、減縮された請求項1の記載と明細書の記載を整合させるために、明りょうでない記載を行うことを目的とする訂正に該当する。
2-3、独立特許要件
2-3-1、訂正発明
本件訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法であって、少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配して濾布となし、その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長より3〜10%長い濾布を形成し、この濾布をドラムに捲回し継手部に芯線を挿通して両端部を接合したのちドラムを回転させながら加熱し、該濾布をドラムの周方向に収縮させてドラム周面に緊張状態に固着することを特徴とする汚泥脱水機における汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法。」(以下、訂正発明という。)
2-3-2、引用刊行物の記載内容
当審が先に通知した取消理由通知に引用された刊行物1(特開昭53-67257号公報)には、汚泥脱水機が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(a)「汚泥送水管を開口させたパット(1)内に回転自在に多孔性シリンダードラム(2)を取りつけ、該ドラム(2)の外方下降側に洗浄噴射装置(5)を設け、内方底部に白水出口(4)を構成し、前記ドラム(2)の内外における水位の差異により該ドラム(2)の表面に附着した汚泥層をロール(6)に懸廻した多孔性無端濾布(7)との圧接により該濾布(7)の吸引作用により汚泥層を転移させるように構成したことを特徴とする汚泥脱水機。」(特許請求の範囲第1項)
(b)「このドラム(2)の表面は通常多孔性金属板あるいは網目を張設して形成する。」(第1頁右欄第13〜15行)
同じく刊行物2(実願昭50-140348号(実開昭52-58187号)のマイクロフィルム)には、線条体よりなる織物の接合継手が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(c)「このような接合を施す織物は例えば製紙工程における白水回収装置(或はパルプ回収装置)パルプレスフィルター、デッカーの様なクーチロール等を有する装置に使用するフィルタークロス等である。」(第1頁第17行〜第2頁第1行)
(d)「実施例はフィルタークロスに施す接合継手であってクロスは例えば長さ方向に高収縮性合成繊維糸等の線条体を使用し、平織或いは多重織に織に織成したものである。」(第3頁第10〜13行)
(e)「尚、平織又は多重織に拘らず、使用糸は合成樹脂等の線条体であるからループを形成するための湾曲保形は容易であるが、場合によってはループ形成に際し、鉄芯等を挿入し、織物本体収縮時の温度より低い温度でヒートセットし、ループの大きさ、形状を固定するようにする。」(第5頁第17行〜第6頁第3行)
同じく刊行物3(特公昭61-11357号公報)には、抄紙乾燥工程に於ける紙シート含有水分の調整方法及び装置が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(f)「湿紙から水分を除去する抄紙工程のドライパートに於いて、ドライヤー・シリンダ表面の所定部位に合成繊維織物を捲回固着し、該合成繊維織物の織目内に空気を保持した状態で湿紙に乾燥処理を施すことを特徴とする紙シート含有水分の調整方法。」(特許請求の範囲第1項)
(g)「該接合部位5の寸法が長い場合には、適当な間隔を置いてループ8を所々数本単位で切断して、いわゆる窓を作り、該切断部を利用して芯線7の挿入を容易にすることができる。」(第4頁第7欄第3〜7行)
(h)「ドライヤー・シリンダ3の表面に合成繊維織物2を捲回固着する際に考慮しなければならないことは周長の設定である。合成繊維織物2は、ドライヤー・シリンダ3の表面に装着した後、適当な手段によって熱収縮させ、該ドライヤー・シリンダ3の加熱、蒸気の吹付け等の手段によって熱収縮させ、該ドライヤー・シリンダ3の周面所定部位に密着状態で固着する。従って、該合成繊維織物2の長さは、ドライヤー・シリンダ3へ装着する以前に於いては該ドライヤー・シリンダ3の周長よりも若干長く設定する必要があり、その割合は使用する合成繊維織物2の経糸の材質によって決定される。例えば、脂肪族ポリアミド樹脂またはポリエステル樹脂を経糸形成材料として使用する場合、100℃の水蒸気中に於ける収縮率は前者で7乃至9%、後者で5乃至13%であるが、紡糸工程に於ける熱履歴や製織後の熱セット温度によって織地としての収縮率は相当変化するので、使用に先立つ織地の熱収縮率を予め確認し設計寸法を算出することが好ましい。」(第4頁第7欄第8〜27行)
同じく刊行物4(「PULP AND PAPER OF CANADA」 第78〜80頁(1972年10月))には、「ドラムフィルター上の合成繊維布について」が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(i)「収縮のための遊び量は普通、製造者によって決定される。普通の収縮率は円周方向に3%、幅方向に1%である。」(第80頁左欄下から第12〜10行)
同じく刊行物5(王子三社文献委員会監修「紙パルプ機械原材料百科」有限会社中外産業調査会第2103〜2108頁(昭和48年11月10日))には、ロールヘのシュリンクファブリックの装着方法が記載されており、特に次の事項が記載されている。
(j)「シュリンク・ファブリックの収縮 収縮方法にはホットエアーを使う方法、蒸気を直接使う方法、熱湯を使う方法があるが、要は均一に斑なく収縮させることである。推賞できる一番よい方法はマシンの外で、水槽の中に蒸気を吹き込み、その中でロールを回転しながら収縮させる方法である。」(第2107頁右欄下から第6〜13行)
同じく刊行物6(特公昭62-8280号公報)には、ベルトプレス型脱水装置の炉布ベルトが記載されており、特に次の事項が記載されている。
(k)「そして、▲戸▼布ベルトの端部同志を従来と同様にステープルで接合したのではステープルが摩耗して接合が外れるので、海布ベルトの長手方向の各端部では一部の経糸を折返して綴り込み、上記経糸の折返し部分によって各端部から突出したループを形成し、相互に一端部のループの隣接間隙に他端部のループを突入して各端部のループを一連に揃え、その中に金属或いはプラスチックの線材を通して無端に接合する所謂ワープループシームを採用して接合部の摩耗を防止することが好ましい。」(第2頁第4欄第1〜12行)
2-3-3、対比・判断
訂正発明と刊行物1〜6に記載された発明を対比する。
訂正発明は、ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法に関する発明であり、この濾布装着方法が▲1▼少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配して濾布となし、▲2▼その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長より3〜10%長い濾布を形成し、▲3▼この濾布をドラムに捲回し継手部に芯線を挿通して両端部を接合したのちドラムを回転させながら加熱し、該濾布をドラムの周方向に収縮させてドラム周面に緊張状態に固着する点を構成要件としており、換言すれば、「ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラム」という特定の用途の濃縮ドラムに、▲1▼特定の熱収縮率の濾布を、▲2▼特定の継手部を設け、特定の長さとして、▲3▼特定の接合をしたのち、特定の加熱をして固着することを特徴とするものであり、この点により明細書記載の効果を奏するものである。
これに対して、刊行物1には、訂正発明の「ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラム」に相当する「多孔性シリンダードラム」は記載されているが、該多孔性シリンダードラムを形成している「網目」は濾布とは云えない。したがって、刊行物1には、「ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラム」に濾布を装着する点について記載も示唆もされていない。
また、刊行物2には、ドラムに、芯線の挿通による継手部を設けた熱収縮性の濾布を装着することは記載されているが、ドラムの用途は白水回収装置とされている。したがって、刊行物2には、「ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラム」という特定の用途のドラムに濾布を装着することについて記載も示唆もされていない。
また、刊行物3には熱収縮性の合成繊維織物を捲回固着したドライヤー・シリンダについて、刊行物4には、ドラムフィルターについて、刊行物5には、ロールヘのシュリンクファブリックの装着方法について、刊行物6には、炉布ベルトのワープループシームについてそれぞれ記載されているが、「ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラム」という特定の用途のドラムに濾布を装着することについて記載も示唆もされていない。
したがって、訂正発明は、刊行物1〜6に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
2-3-4、まとめ
以上のとおり、訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3、特許異議申立てについて
3-1、申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として甲第1〜5号証を提出し、請求項1に係る発明の特許は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
3-2、甲各号証の記載内容
甲第1〜5号証は、それぞれ上記刊行物2〜6と同じ。
3-3、本件発明
本件請求項1に係る発明は、上記2-3-1において摘記したとおりのものである。
3-3、対比・判断
上記2-3-3で述べたように、甲第1〜5号証には、「ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラム」という特定の用途のドラムに濾布を装着することについて記載も示唆もされていない。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるということはできない。
4、むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
脱水機における濃縮ドラムヘの濾布装着方法
(57)【特許請求の範囲】
ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムへの濾布装着方法であって、少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配して濾布となし、その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長より3〜10%長い濾布を形成し、この濾布をドラムに捲回し継手部に芯線を挿通して両端部を接合したのちドラムを回転させながら加熱し、該濾布をドラムの周方向に収縮させてドラム周面に緊張状態に固着することを特徴とする汚泥脱水機における汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明はベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用されている汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法に関するものである。
(従来の技術)
汚泥脱水機、例えばベルトプレス脱水機には第2図に示しているように汚泥の供給側に濃縮ドラム(1)が配置され、この濃縮ドラム(1)上に汚泥が投下される。濃縮ドラム(1)の外周には濾布が張設され、ドラムは矢印方向に回転し、濾布を通ってドラム(1)内に流入した水分はドラム(1)内から外部に排出され、ドラム上に残留し濃縮された汚泥はパッド(2)からオーバーフローし、ベルトプレスの長尺濾布(3)(4)間に供給されるようになっている。
上記した濃縮ドラム(1)の外周の濾布には通常合成樹脂モノフィラメント製の織物が適用され、ドラムの外周には、第3図に示しているようにドラムに捲回した濾布(5)の重ね合わせ部分をスポット的に溶着(6)または接着する方法、あるいは第4図のごとく捲回した濾布(5)の重ね合わせ端部をステンレス製のバンド(7)で止めるという方法によって装着されている。
(発明が解決しようとする課題)
ところが上記した従来の濃縮ドラム(1)への濾布装着方法では、濾布を緊張状態となしてドラム(1)の周面にフィットさせることが困難であり、使用中に濾布にたるみが生じてドラムと共に回転しなくなる恐れがある。そのためさらに濾布(5)の両側をボルト止めやバンド締め等の手段による濾布のスリップ防止策を構じているのが実情であり、ドラム(1)に濾布(5)を装着する工数が多くなって装着作業に可成りの労力と時間を要している。また前者のように濾布(5)を溶着(6)または接着してしまうと濾布(5)をドラムから取り外す際には濾布を切断するしかなく、洗浄して再使用することができない。
本発明はドラム周面に濾布を緊張状態に捲装固着することができ、かつ濾布の取り外しが可能なドラムヘの濾布装着方法を提供するものである。
(課題を解決するための手段)
本発明は、ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法であって、少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配した濾布となし、その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長より3〜10%長い濾布を形成し、この濾布をドラムに巻き付け継手部に芯線を挿通して接合したのちドラムを回転させながら加熱し、該濾布をドラムの周方向に収縮させてドラム周面に緊張状態に固着するものである。
ドラムの円周方向に延びる濾布のモノフィラメントとしては、100〜150℃の温度で5〜10%以上の収縮性を有するものが好適である。また継手部は金属フックの植設手段、あるいはドラムの円周方向に延びる糸条でループを形成する手段のいずれでもよい。そしてフックまたはループを噛み合わせ芯線を挿通して無端状となした濾布の周長は、ドラムの周長よりも3〜10%大きく仕上げられることから、ドラムに捲回したのちの継手部への芯線の挿通作業は容易である。
(作用)
継ぎ手部はドラムに捲回したのちの濾布の無端状接合作業を容易にし、ドラムに捲装後ドラムを回転させながら濾布を加熱すると濾布の周方向の糸条の収縮によって濾布が緊張し、ドラムの周面にフィットして固着状態となる。
(実施例)
実施例1
たて糸に120℃の熱風5分間処理において8%以上の収縮率を有する直径0.6mmのポリエステルモノフィラメント、よこ糸に熱収縮率の僅少な直径0.8mmのポリエステルモノフィラメントを用いて、たて糸密度が40本/インチ、よこ糸密度が19本/インチ、幅寸法200cmの一重3/1朱子織の濾布を織成した。これを長さ162cmに切断しその両端に金属フックを植設して継手部(8)を有する濾布(5)となし、第1図に示しているように、直径50cm、面長200cmのドラム(1)に捲回して金属フックを噛み合わせ、芯線を挿通し無端状となしてドラムに捲装した。しかるのち該ドラムを緩やかに回転させながら濾布に120℃の熱風を吹き付けると5分後にはたて糸が収縮して濾布はドラム周面に不動状態に密着した。これを第2図に示したベルトプレス脱水機の濃縮ドラム(1)として使用したところ、濾布(5)はスリップを起こすことなくドラムと共に回転した。
実施例2
たて糸に熱収縮率の小さい直径0.45mmのポリエステルモノフィラメント、よこ糸に100℃の蒸気5分間処理において約8%の収縮率を有する直径0.45のポリエステルモノフィラメントを用い、たて糸密度が68本/インチ、よこ糸密度が36本/インチ幅寸法160cmの二重織布を織成した。これを200cmに切断し織布の両耳側に金属フックを植設して継手部を有する全長166cmの濾布となして実施例1と同形のドラムに捲回し、金属フックを噛み合わせ芯線を挿通して該ドラムに捲装した。しかるのちドラを回転させながら100℃の蒸気を10分間吹き付け処理したところ、周方向のよこ糸が収縮して濾布はドラムの周面に不動状態に密着した。
実施例3
実施例2の熱収縮性ポリエステルモノフィラメントをたて糸に、熱収縮率の小さいポリエステルモノフィラメントをよこ糸に用いて、たて糸密度が68本/インチ、よこ糸密度が36本/インチ、幅寸法200cmの二重織物を織成し、織物の両端部のよこ糸を除去してたて糸のみとなしたのち、そのたて糸を織物の組織内に綴り込みながら接合用ループを形成して継手部となし、全長165cmの濾布となした。この濾布を実施例1と同形のドラムに捲回し両端のループを噛み合わせて芯線を挿通して無端状となし、しかるのち実施例1と同様に120℃の熱風を20分間吹き付けたところ、たて糸が収縮して該濾布は該ドラムの周面に強固に密着した。
(発明の効果)
このように本発明のドラムヘの濾布装着方法によれば、ドラムの周面に濾布を緊張状態で装着することができ、また濾布の収縮力によって固着されるため従来のように濾布を固定するためのバンドや止め金等が不要となって濾布の装着作業が著しく容易となる。そのうえ継手部を備え芯線の挿通によって接合されているため、芯線を引き抜くかまたは芯線を切断することによってドラムから濾布を取り外すことができ、取り外した濾布を洗浄し張力をかけて若干伸長することによって再度使用することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明方法の簡略側面図、第2図はベルトプレス型脱水機の簡略側面図、そして第3図および第4図は従来の濾布装着方法を示したそれぞれ簡略斜視図である。
1:濃縮ドラム
5:濾布
8:継手部
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2781922号発明の明細書を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち、特許請求の範囲の減縮を目的として、
▲1▼訂正事項(ア)、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「【請求項1】少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配して慮布となし、その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長よりやや長い濾布を形成し、この濾布をドラムに捲回し継手部に芯線を挿通して両端部を接合したのち加熱処理し、該濾布をドラムの周方向に収縮させてドラムに装着することを特徴とする脱水機における濃縮ドラムヘの濾布装着方法。」を、「【請求項1】ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法であって、少なくとも濃縮ドラムの周方向となる糸条に5%以上の熱収縮率を有する合成樹脂モノフィラメントを配して濾布となし、その両端部に、芯線の挿通により無端状に接合可能な継手部を設けて該ドラムの周長より3〜10%長い濾布を形成し、この濾布をドラムに捲回し継手部に芯線を挿通して両端部を接合したのちドラムを回転させながら加熱し、該慮布をドラムの周方向に収縮させてドラム周面に緊張状態に固着することを特徴とする汚泥脱水機における汚泥濃縮ドラムヘの濾布装着方法。」と訂正する。
さらに、明りょうでない記載の釈明を目的として、
▲3▼訂正事項(イ)、特許明細書第3頁17行目(本件公報第2頁第3欄第20行)の「発明による濃縮ドラムヘの濾布装着方法は、」を、「発明は、ベルトプレス脱水機等の汚泥脱水機に使用される汚泥濃縮ドラムヘの慮布装着方法であって、」に訂正し、
▲3▼訂正事項(ウ)、特許明細書第4頁第2行目(本件公報第2頁第3欄第24行)の「やや長い」を、「3〜10%長い」に訂正し、
▲4▼訂正事項(エ)、特許明細書第4頁第4行目(本件公報第2頁第3欄第26行)の「加熱処理」を、「ドラムを回転させながら加熱」に訂正し、
▲5▼訂正事項(オ)、特許明細書第4頁第5行目(本件公報第2頁第3欄第27行)の「ドラムに装着」を、「ドラム周面に緊張状態に固着」に訂正する。
異議決定日 1999-10-29 
出願番号 特願平1-213732
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉江 渉  
特許庁審判長 石井 勝徳
特許庁審判官 山田 充
野田 直人
登録日 1998-05-22 
登録番号 特許第2781922号(P2781922)
権利者 大和紡績株式会社
発明の名称 脱水機における濃縮ドラムへの濾布装着方法  
代理人 田中 秀佳  
代理人 白石 吉之  
代理人 江原 省吾  
代理人 城村 邦彦  

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