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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C30B |
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管理番号 | 1007465 |
異議申立番号 | 異議1999-71307 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1991-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-04-08 |
確定日 | 1999-11-04 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2809450号「薄膜形成方法および薄膜形成熱処理装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てにっいて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2809450号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 特許第2809450号に係る発明についての出願は、平成1年11月6日に特許出願され、平成10年7月31日に特許の設定登録がなされ、その後、平成11年4月8日に特許異議申立人安藤純男(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月30日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 訂正請求書に記載された訂正の内容は以下のとおりである。 (a)特許請求の範囲の請求項1について ▲1▼「基板表面を気相反応により清浄にした後、あるいは前記基板表面に直接気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」を「基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」と訂正する。 ▲2▼「原料ガスの温度を個別に制御する」を「原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御する」と訂正する。 (b)特許請求の範囲の請求項2について「それぞれ個別に温度を制御した原料ガス」を「それぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガス」と訂正する。 (c)明細書第5頁第2〜6行の「基板表面を気相反応により清浄にした後、あるいは前記基板表面に直接気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」を 「基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」と訂正する。 (d)明細書第5頁第8〜9行の「原料ガスの温度を個別に制御する」を「原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御する」と訂正する。 (e)明細書第5頁第11〜12行の「それぞれ個別に温度を制御した原料ガス」を「それぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガス」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無及び拡張.変更の存否 上記訂正事項のうち、(a)▲1▼,(b)は明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、(a)▲2▼は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項(c)〜(e)は訂正後の明細書全体の記載事項を整合させて、記載の明瞭化を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、「原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御する」点は明細書第12頁第1〜7行(特許公報第3頁第6欄第12〜16行)に記載されているから、いずれの訂正事項も新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。 3.独立特許要件の判断 当審は、引用例1(特開昭61-5526号公報),引用例2(特開平1-39716号公報),引用例3(特開昭56-26800号公報),引用例4(特開昭57-87120号公報)を引用し、本件請求項1,2に係る発明は、これらの刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許を受けることができないものであること、及び本件明細書の特許請求の範囲の記載は、(ア)「各熱処理室へ供給する原料ガスの温度を個別に制御する」(請求項1),「各熱処理室へそれぞれ個別に温度を制御した原料ガスを供給する温度制御ガス供給系」(請求項2)の意味する内容が不明である点、(イ)「基板表面を気相反応により清浄にした後、あるいは前記基板表面に直接気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法」(請求項1)の意味する内容が不明である点、で特許法第36条に規定する要件を満たさないこと、を理由として本件請求項1,2に係る発明の特許を取り消すべき旨の取消理由を通知した。 (1)訂正明細書の請求項に係る発明 平成11年8月30日付けで提出された訂正明細書の請求項1,2に係る発明は、その請求項1,2に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「訂正後発明1」,「訂正後発明2」という。)。 「(1)基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆雪積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成]する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において、前記反応を行うための熱処理室として複数の熱処理室を用い、各熱処理室へ供給する原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御することを特徴とする薄膜形成方法。 (2)基板を所要の雰囲気中で昇温できる複数の熱処理室と、この各熱処理室へそれぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガスを供給する温度制御ガス供給系と、前記各熱処理室に切り離し自在に接続できかつ所要の雰囲気中での基板の出し入れと保持とができる基板交換室と、前記基板を前記基板交換室と前記熱処理室との間で移送するための基板移送用機構部と、前記基板交換室もしくは前記基板交換室と前記基板移送用機構部とを移動するための基板交換室移動用駆動部とからなる薄膜形成熱処理装置。」 (2)引用例の記載事項 取消理由で引用した引用例1乃至4にはそれぞれ次のとおりの事項が記載されている。 引用例1 「1.先の工程の処理部と、後の工程の処理部とを外気と遮断されたチャンバ内に設置し、このチャンバ内で前記先の工程と後の工程処理を連続的に行ない得るように構成したことを特徴とする処理装置。 ・・・(中略)・・・ 3.先工程処理部としてのプロセスチューブと、後工程処理部としてのプロセスチューブとを近接して1つのチャンバ内に配設し、被処理物をこれらチューブ間で移動できるように構成してなる特許請求の範囲第1項記載の処理装置。 4.先工程処理部が酸化処理部、後工程処理部がデポジション処理部であり、前者でSiO2膜を形成し、後者でSi3N4膜を形成してなる特許請求の範囲第1項ないし第3項のいずれかに記載の処理装置。」(第1頁特許請求の範囲) 引用例2 ▲1▼「減圧気相成長炉の炉芯管(1)内に炉内ガス予熱管(5)を設け、導入する反応ガスを予熱することを特徴とする気相成長方法。」(第1頁特許請求の範囲) ▲2▼「以下第1図について本発明の一実施例をポリシリコン膜の気相成長の場合について説明する。ポリシリコン膜の気相成長の場合は、シランガスを反応ガスとし、炉内圧力O.2Torr,炉温620℃の減圧気相成長炉で行われるが、第1図(a),(b)及び(c)に示すように後部マニホールド3に設けた複数の炉内ガス予熱管5を、前部マニホールド2とキャップ4により密閉された炉芯管1内に配設し、反応ガスを導入してヒータ7により加熱して熱分解し、炉内ガス予熱管5の吹き出し孔5aから反応ガスを均一に吹き出させ、炉芯管1内に載置した半導体ウェーハ8の表面に気相成長膜を被着させるようになっている。 炉内ガス予熱管5は、第1図(c)に示すような断面を有する反応ガスを導入する予熱管で、後部マニホールド3にて支持されており、中心のパイプから導入された反応ガスは、吹き出し孔5aを設けた外パイプの中を滞留した後、吹き出し孔5aから均一に反応ガスを吹き出す。炉内ガス予熱管5による予熱だけでは不充分な場合には、第2図に示すように炉内ガス予熱管5に導入する反応ガスの管径を太くし、反応ガスの滞留時間を延長し、ヒータ6aにより予熱するプレヒータ6を用いることにより、反応ガスの熱分解を一層確実に行うことが可能となる。このように複数の対称に配置した炉内ガス予熱管5により導入された反応ガスが、炉内ガス予熱管5の内部で充分に予熱されてから吹き出し孔5aから均一に吹き出すから炉芯管1内の半導体ウェーハ8の周辺には充分熱分解された反応ガスが供給されるので、良質の気相成長膜を半導体ウェーハ8の表面に形成することが可能となる。また、複数の異なる種類の反応ガスを導入する場合には、従来と比較すると反応ガスの分布のバラツキが大幅に改善されるので、均一な気相成長膜を形成することが可能となる。」(第2頁左下欄第2行〜右下欄第17行) 引用例3 ▲1▼「出発化合物として有機金属化合物及び水素物を用いるIII-V族化合物半導体の気相エピタキシャル成長法において有機金属化合物を含有するキャリアガス及び水素化物ガスを反応管内に導入しかつ基板温度と反応ガス温度をそれぞれ独立して調節して反応ガスの熱分解及び基板上のエピタキシャル成長を行なうことを特徴とする気相エピタキシャル成長法。」(第1頁特許請求の範囲) ▲2▼「反応ガスは反応管3内において抵抗加熱炉により所定の温度例えば200〜300℃に加熱され、次いでエピタキシャル成長に適した温度例えば500〜800℃にマイクロヒータ9により加熱された基板上で反応すると共に生成した半導体化合物の結晶が成長する。」(第2頁右上欄第9〜15行) 引用例4 「複数の反応室が各々原料ガス供給手段、温度制御手段、排気手段、プラズマ励起手段を有し、これらの手段のうち少くとも1つの手段を他の反応室のこれらの手段とは独立に制御できることを特徴とする・・(中略)・・プラズマCVD装置。」(第1頁特許請求の範囲第3項) (3)特許法第29条第2項 ▲1▼訂正後発明1について 訂正後発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1の「先工程処理部としてのプロセスチューブと、後工程処理部としてのプロセスチューブ」は、訂正後発明1の「反応を行うための複数の熱処理室」に相当し、引用例1の「先工程処理部が酸化処理部、後工程処理部がデポジション処理部であり、前者でSiO2膜を形し、後者でSi3N4膜を形成」する点は、訂正後発明1の「基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する薄膜形成方法」の点に相当するから、両者は、「基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する薄膜形成方法において、前記反応を行うための熱処理室として複数の熱処理室を用いる薄膜形成方法。」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1:訂正後発明1は各熱処理室へ供給する複数の原料ガスの温度を温度制御ガス供給系で個別に制御するのに対して、引用例1記載の発明は各原料ガスの温度をガス供給系で個別に制御するものではない点。 相違点2:訂正後発明1は基板を清浄化する工程を含むものであるのに対して、引用例1記載の発明は、基板清浄化工程について言及するものではない点。 そこで、まず相違点1について検討する。 引用例2には減圧気相成長法をおいて反応ガスを炉芯管内に設けた予熱管により予熱すること、引用例3には気相エピタキシャル成長法において基板温度と反応ガス温度をそれぞれ独立して調節すること、引用例4にはプラズマCVD装置において複数の反応室毎に温度制御手段を設けてこれらをそれぞれ個別に制御すること、は記載されているが、複数の原料ガスの温度をガス供給系でそれぞれ個別に制御することはいずれの刊行物にも記載も示唆もされていないから、上記相違点1の点は引用例1記載の発明に引用例2乃至4記載の発明を併せて勘案しても当業者が容易に想到し得たこととは言えない。 そして、訂正後発明1は各熱処理室へ供給する複数の原料ガスの温度を温度制御ガス供給系で個別に制御することによって「極めて高品質の基板清浄化を含む薄膜形成を信頼性高く実現できる。」(本件特許公報第3頁第6欄第50行〜第4頁第7欄第1行)という顕著な効果を奏するものである。 してみれば、訂正後発明1は少なくとも上記相違点1の点で、引用例1乃至4記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとは言えない。 ▲2▼訂正後発明2について 訂正後発明2は「それぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガスを供給する温度制御ガス供給系」を発明の構成とする薄膜形成熱処理装置に係るものであるが、このような温度制御ガス供給系を設けることは、「II.3.(3)▲1▼」で相違点1について述べたのと同様の理由により、引用例1乃至4記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たこととは言えないから、訂正後発明2は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとは言えない。 (4)特許法第36条 当審が通知した取消理由においては、特許法第36条について上記「II.3」に記載した(ア),(イ)のとおりの理由があげられている。 これらの理由のうち、(ア)の点については上記「II.1.(a)▲2▼」,「II.1.(b)」、(イ)の点については上記[II.1.(a)▲1▼」の訂正によって、本件明細書の記載は明瞭なものとなったから、訂正後の本件明細書の記載は特許法第36条に規定する要件を満たすものと言える。 以上のとおりであるから、訂正後の本件発明は、特許出願に際して独立して特許を受けることができるものである。 4.むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議申立てについての判断 1.本件発明 本件発明は、訂正明細書の請求項1,2に記載されたとおりのものである(以下、「本件発明1」,「本件発明2」という。)。 2.申立て理由の概要 申立人は、証拠として甲第1乃至4号証(当審が通知した取消理由において引用した引用例1乃至4に相当する。)を提出し、本件発明1,2は、これらの刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許を取り消すべきものであることを主張している。 3.判断 申立人の主張する理由は、「II.3.(3)」で述べたのと同様の理由により、本件特許が取り消されるべき根拠として、採用することはできない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠方法によっては、本件発明1,2に係る特言を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1,2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 薄膜形成方法および薄膜形成熱処理装置 (57)【特許請求の範囲】 (1)基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において、前記反応を行うための熱処理室として複数の熱処理室を用い、各熱処理室へ供給する原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御することを特徴とする薄膜形成方法。 (2)基板を所要の雰囲気中で昇温できる複数の熱処理室と、この各熱処理室へそれぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガスを供給する温度制御ガス供給系と、前記各熱処理室に切り離し自在に接続できかつ所要の雰囲気中での基板の出し入れと保持とができる基板交換室と、前記基板を前記基板交換室と前記熱処理室との間で移送するための基板移送用機構部と、前記基板交換室もしくは前記基板交換室と前記基板移送用機構部とを移動するための基板交換室移動用駆動部とからなる薄膜形成熱処理装置。 【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、基板の清浄化を含む気相反応を利用した薄膜形成において、供給する原料ガスの温度を制御することによって、前記気相反応の制御性を高めた薄膜形成を実現する製造方法とその装置に関するものである。 〔従来の技術〕 電子デバイス製造過程では複数回の基板清浄化を含む気相反応を利用した薄膜形成工程を必要とする。例えば、siを用いたMOS(metal oxide semiconductor)デバイス製造におけるゲート酸化膜形成工程を考えると、ゲート酸化膜を形成するために下地siの清浄化(工程A)を行った後熱酸化(工程B)を行い、さらにこの酸化膜上ヘゲート電極となるsi膜を堆積(工程C)すると言う一連の工程が必要である。ここで工程Bのゲート電極si膜としてPやBを固溶したド一プトsi膜を形成する場合を考えると、通常siの原料ガスとしてシランやジシランガス、ドーパントであるPやBの原料ガスとしてホスフィンやジボランガスを熱処理室へ供給することによって膜形成を行っている。しかしながら、これら供給ガスは全く温度制御されずに熱処理室へ供給されているため、個個のガスの最適な熱解離温度等が異なっているにも係わらず共通化された熱処理室内温度下で薄膜形成が進行することになり、ドーパントの固溶量や膜厚分布、さらにはドーパントと下地基板との拡散を含む反応等を精細に制御する事が困難であった。また、一般に、基板清浄化を含む薄膜形成を行う前記熱処理室は、温度揺らぎの少ない安定な室内温度を維持するため、熱源となる発熱体を熱容量の大きな材料で覆う等の構造を有していた。このため室内温度の敏速な温度制御が難しく、前述した様な極めて温度に敏速な気相反応を精細に制御したり、あるいは温度と供給ガスとの精細な制御により極めて薄い多層膜を形成する等と言うことは困難であった。これらに起因して、制御性の良い基板清浄化を含む薄膜形成が難しく、高品質の高機能薄膜を実現することが困難であると言う実用上大きな問題があった。 〔発明が解決しようとする課題〕 この様に従来技術では、供給する原料ガスの温度を制御することなく熱処理室内で気相反応を行っていたため、制御性の良い基板清浄化を含む薄膜形成が難しく、高品質の高機能薄膜を信頼性高く実現することができなかった。 本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであり、基板の清浄化を含む薄膜形成を行う熱処理室へ供給するガスの温度を個別に制御することによって、前記熱処理室内の温度で規定されていた気相反応の制御範囲を拡大しかつ高制御化することにより、制御性の良い基板清浄化を含む薄膜形成を行い、高品質の高機能薄膜を信頼性高く実現する薄膜形成方法および薄膜形成熱処理装置を提供することを目的とする。 〔課題を解決するための手段〕 本発明は上記目的を達成するために、基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において、前記反応を行うための熱処理室として複数の熱処理室を用い、各熱処理室へ供給する原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御することを特徴とする薄膜形成方法、及び基板を所要の雰囲気中で昇温できる複数の熱処理室と、この各熱処理室へそれぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガスを供給する温度制御ガス供給系と、前記各熱処理室に切り離し自在に接続できかつ所要の雰囲気中での基板の出し入れと保持とができる基板交換室と、前記基板を前記基板交換室と前記熱処理室との間で移送するための基板移送用機構部と、前記基板交換室もしくは前記基板交換室と前記基板移送用機構部とを移動するための基板交換室移動用駆動部とからなる薄膜形成熱処理装置である。 〔作用〕 本発明は、供給するガスの温度を個別に制御することによって気相反応の制御性を向上することができるため、制御性の良い基板清浄化を含む薄膜形成が可能となり、高品質の高機能薄膜を信頼性高く実現できる。 〔実施例〕 実施例として、MOSダイオード形成を例に、Si基板上へ熱酸化膜を形成し、さらにその上ヘゲート電極膜を形成する基本的なゲート酸化膜形成工程に従って、その製造方法と装置構成について説明する。なお、実施例では熱酸化膜とゲート電極膜の形成を行うために熱処理室を2基、基板出し入れ方法として熱処理室内壁に接触することなく移送ができる方式(ソフトランディング)を採用した場合を基に装置構成を説明する。 第1図は、本発明に係わる薄膜形成熱処理装置の1実施例を示す概略構成図である。同図において、1は第1熱処理室、2は第2熱処理室、3は加熱部、4は温度制御ガス供給系、5は熱処理室排気系(図示省略)、6は熱処理室開閉部、7は連結部、8は連結部用ガス導入系(図示省略)、9は連結部排気系(図示省略)、10は基板交換室開閉部、11は基板交換室、12は基板交換室用ガス導入系(図示省略)、13は基板交換室排気系(図示省略)、14は伸縮管、15は基板移送用駆動部、16は基板固定台支持部、17は基板固定台、18は基板、19は基板交換室移動用駆動台である。 第1熱処理室1および第2熱処理室2は、各々独立に熱処理温度、ガスの種類と流量と温度、および排気速度が制御できる。加熱部3、温度制御ガス供給系4、および熱処理室排気系5を有しており、所要の条件に設定可能な構成になっている。また、これらの端部には外気の混入防止と室内雰囲気の維持のための熱処理室開閉部6が接続されている。一方、基板交換室11は外部からの基板の出し入れを行うための開閉扉(図示省略)があり、また所要の雰囲気を実現するため、ガスの種類と流量および排気速度が制御できる、基板交換室用ガス導入系12および基板交換室排気系13を有する。さらに、これの端部には外気の混入防止と室内雰囲気の維持のための基板交換室開閉部10と基板移送のための機構である伸縮管14、基板移送用駆動部15、基板固定台支持部16、および基板固定台17が接続されている。すなわち、基板固定台17に設置された基板18は基板固定台支持部16に接続された基板移送用駆動部15の移動(図では左右方向)によって基板交換室11と熱処理室1もしくは2間を移動できると共に、基板固定台17と共に熱処理室1もしくは2内に設置できる。この移動の際、伸縮管14は基板移送用駆動部15の動きに連れて基板交換室11の雰囲気を壊す事なく伸縮が可能な様になっている。基板交換室開閉部10と熱処理室開閉部6とは、所要の雰囲気を実現するためのガスの種類と流量および排気速度を制御できる、連結部用ガス導入系8および連結部排気系9を有した連結部7によって接続され、基板を移送する際の雰囲気を制御できる様になっている。また、基板交換室11は前述した基板移送のための機構と共に基板交換室移動用駆動台19に接続されており、連結部7と共に基板交換室移動用駆動台19の移動(図では上下方向)に連れて位置を変えることができ、必要に応じて第1熱処理室1および第2熱処理室2と接続が可能になっている。 以上述べた様に、第1,第2熱処理1,2、連結部7、および基板交換室11は各々独立に雰囲気を制御でき、以下に述べる工程でも明かな様に基板18を基板交換室11に設置してから複数回に渡る薄膜形成を含む熱処理工程を完了するまで全く大気との接触を断ちながら一連の処理を連続して進行させることが可能な装置構成になっている。 次に、MOSダイオードの基本工程である、ゲート酸化膜を形成するための下地siの清浄化(工程A)、そして酸化(工程B)、さらにこの酸化膜上ヘゲート電極膜(多結晶もしくは非晶質Si)を堆積(工程C)すると言うゲート酸化膜形成工程を例に、本発明の方法と装置の利用方法の一例を概説する。第2図は本発明に係わる薄膜形成方法の1実施例を示すフローチャートであり、このフローチャートを参照して説明する。即ち、工程Aとして基板18を大気中で湿式洗浄した後、これをN2等のSiに対して比較的影響を与えない中性ガス等を含む不活性ガスで充満してある基板交換室11内の基板固定台17に設置した上で、高真空に排気し雰囲気の清浄性を高める。なお、連結部7および第1熱処理室1も予め高真空に排気し清浄な雰囲気とする。工程Aの最終処理、すなわち工程Bの前処理として、基板18表面の自然酸化膜を高真空中で加熱除去するか、あるいは他の処理を加える場合には、このままこれら総てを高真空に保ったまま基板18を第1熱処理室1へ移送する。一方、水素等の還元ガスあるいは他のエッチング性ガス中等でこの前処理を実施する場合は、総てを不活性ガスもしくはこの前処理用ガス雰囲気とした上で基板18を移送する。移送後、熱処理室開閉部6を閉鎖し、前述の様な所要の前処理を行った後、工程Bである酸素雰囲気中での熱酸化を行う。なお、この様な清浄化と酸化に要するガスは、前述した様に温度制御ガス供」給系4からその温度と流量が制御されて供給できるようになっている。例えば、基板清浄化に水素を用いる場合は基板表面での自然酸化膜の還元除去反応を容易にするため第1熱処理室1内温度よりも高温にした水素ガスを供給したり、一方熱酸化の場合は、膜厚制御性を向上するため供給する酸素の温度を精密に第1熱処理室1内温度と同温に制御して供給する等の調整が有効である。 酸化後、第1熱処理室1、連結部7、および基板交換室11の総てを高真空もしくは不活性ガス雰囲気とした上で基板18を基板交換室11へ戻し、基板交換室開閉部10を閉鎖する。この状態で第1熱処理室1と連結部7を切り放し、基板交換室駆動台19を移動させて第2熱処理室2に連結部7を接続する。ここで、連結部7を高真空に排気した後、第2熱処理室2、連結部7、および基板交換室11を総て高真空もしくは不活性ガス雰囲気とした上で基板18を第2熱処理室2へ移送し、熱処理室開閉部6を閉鎖する。温度制御ガス供給系4を用いて、Si膜の原料ガスであるシランやジシランガスもしくはそれらと同時にドーパントであるホスフィンやジポランガス等を個別に各々の温度と流量とを制御しながら第2熱処理室2へ導入し、工程Cに相当するゲート電極膜の堆積を行う。なお、これらのSi源とドーパント源とではその熱解離温度が異なるばかりではなく、気相分解反応等も相互に複雑に関与してくることから、これら供給するガスの温度を個別に所要の温度に制御しながら第2熱処理室2へ導入することは、形成されたSi膜のドーパントの固溶量やその分布、さらには膜厚分布等を制御する上で有効である。この様にしてSi膜を堆積後、総てを高真空もしくは不活性ガス雰囲気とした上で基板18を基板交換室11へ戻すことによって、ゲート酸化膜形成の全工程が完了する。 この様に、全ゲート酸化膜形成工程を所要の気相反応が効率良くかつ制御性良く実現できる様に供給ガスの温度を制御し、しかも全く基板を大気に触れる事なく実行することができるため、制御性の良好な、大気中汚染物の影響や表面状態の悪化等をほぼ完全に抑制した、高品質のMOSダイオードを高い信頼性で実現することができる。なお、ここでは基板18を第1および第2熱処理室1,2へ移送する際に基板交換室11を介して行い、さらに基板18を第1および第2熱処理室1,2間で移送する際に全く大気との接触を断って行う例について述べたが、基板交換室を使用せずに通常の大気中を経由しての基板の移送を行っても本発明の主旨を逸脱するものではない。 以上述べた実施例はゲート酸化膜形成工程を例に説明したものであるが、これ以外にもヘテロ接合デバイスや配線用接合部の形成、その他各種の熱処理や薄膜形成に本発明が適用できることは言うまでもない。また、熱処理室をより多くしたり、熱処理室を縦型にした装置構成にした場合でも、あるいは他の基板処理を行うために基板交換室内での基板への光照射や基板の加熱が可能な様に改良した場合でも、さらには基板の移送機構や基板交換室の移動機構を変更した場合でも、本発明の主旨を逸脱するものではない。 〔発明の効果〕 以上述べた様に、本発明により極めて高品質の基板清浄化を含む薄膜形成を信頼性高く実現できる。 本発明は、高品質のゲート酸化膜形成を始めとして、様々な高品質ヘテロ接合膜形成や熱処理等を信頼性高く実現する上で非常に有効である。したがって、本発明を実施することによる工業上の利点は極めて大きい。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明に係わる薄膜形成熱処理装置の1実施例を示す概略構成図、第2図は本発明に係わる薄膜形成方法の1実施例を示すフローチャートである。 1…第1熱処理室、2…第2熱処理室、3…加熱部、4…温度制御ガス供給系、5…熱処理室排気系(図示省略)、6…熱処理室開閉部、7…連結部、8…連結部用ガス導入系(図示省略)、9…連結部排気系(図示省略)、10…基板交換室開閉部、11…基板交換室、12…基板交換室用ガス導入系(図示省略)、13…基板交換室排気系(図示省略)、14…伸縮管、15…基板移送用駆動部、16…基板固定台支持部、17…基板固定台、18…基板、19…基板交換室移動用駆動台。 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 特許第2809450号発明の明細書を、平成11年8月30日付け審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正する。すなわち、 ▲1▼明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項1の「基板表面を気相反応により清浄にした後、あるいは前記基板表面に直接気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」を「基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」と訂正する。 ▲2▼特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の「原料ガスの温度を個別に制御する」を「原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御する」と訂正する。 ▲3▼明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項2の「それぞれ個別に温度を制御した原料ガス」を「それぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガス」と訂正する。 ▲4▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第5頁第2〜6行の「基板表面を気相反応により清浄にした後、あるいは前記基板表面に直接気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」を「基板表面に気相拡散反応もしくは気相堆積反応を用いて拡散膜層もしくは堆積膜層を形成する基板清浄化工程を含む薄膜形成方法において」と訂正する。 ▲5▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第5頁第8〜9行の「原料ガスの温度を個別に制御する」を「原料ガスの各々の温度を温度制御ガス供給系で個別に制御する」と訂正する。 ▲6▼明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書第5頁第11〜12行の「それぞれ個別に温度を制御した原料ガス」を「それぞれ個別に各々の温度を制御した原料ガス」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-10-19 |
出願番号 | 特願平1-288479 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(C30B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 後谷 陽一 |
特許庁審判長 |
酒井 正己 |
特許庁審判官 |
新居田 知生 能美 知康 |
登録日 | 1998-07-31 |
登録番号 | 特許第2809450号(P2809450) |
権利者 | 日本電信電話株式会社 |
発明の名称 | 薄膜形成方法および薄膜形成熱処理装置 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 石川 義雄 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 澤井 敬史 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 澤井 敬史 |