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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H03F 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 H03F 審判 全部申し立て 2項進歩性 H03F |
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管理番号 | 1007471 |
異議申立番号 | 異議1998-75114 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1989-12-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-10-15 |
確定日 | 1999-10-25 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2740650号「定電流発生回路」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2740650号の特許を維持する。 |
理由 |
(1)手続きの経緯 特許2740650号の請求項1に係る発明は、昭和63年6月24日に特許出願され、平成10年1月23日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人・山下鐸夫によりその特許について特許異議の申立がなされ、平成10年12月16日(発送日平成11年1月29日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年3月30日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、訂正拒絶理由に対して手続補正書が提出されたものである。 (2)訂正の適否についての判断 A)訂正請求に対する補正の適否について 当審が、平成11年7月1日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は「請求項1に係る発明の定電流発生回路は、負荷素子としてダイオードを用い、定電流源としてダイオードバイアス型定電流回路を用いることにより、温度変動による定電流源の変動を抑えることであるが、この点が請求項1に係る発明に記載されていない。」というものである。 ア)訂正請求に対する補正の内容 特許権者は、平成11年7月1日付け手続補正書(訂正請求書)により、次の補正1)〜8)をしたものである。 1) a)全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明「【請求項1】MOSトランジスタで構成したMOSカレントミラー回路の入力に定電流源を接続し、該MOSカレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、 該MOSカレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続された負荷素子を介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されていることを特徴とする定電流発生回路。」を、 「【請求項1】MOSトランジスタで構成したMOSカレントミラー回路の入力にダイオードバイアス型の定電流源を接続し、該MOSカレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、 該MOSカレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続されたダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されていることを特徴とする定電流発生回路。」と補正する。 b)訂正請求書の訂正事項aについて、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 c)訂正請求書の請求の原因の(i)について、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 2) a)全文訂正明細書第2頁第21行目〜第3頁第4行目の記載【課題を解決するための手段】を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 b)訂正請求書の訂正事項bの記載を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 c)訂正請求書の請求の原因の(ii)について、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 3) a)全文訂正明細書第3頁第5行目〜第13行目【作用】の記載を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 b)訂正請求書の第3頁第10行目の後に、訂正事項dとして、上記3)a)の補正に対応した事項を加入する。 c)訂正請求書の第4頁第17行目の後に、請求の原因の(iv)として、訂正事項dに対応した内容を加入する。 4) a)全文訂正明細書第3頁第14行目〜第15行目の記載を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 b)訂正請求書の第3頁第10行目の後に、訂正事項dに続けて、訂正事項eとして、上記4)a)の補正に対応した事項を加入する。 c)訂正請求書の第4頁第17行目の後に、請求の原因の(iv)に続けて、請求の原因の(v)として、訂正事項eに対応した内容を加入する。 5) a)全文訂正明細書第3頁第26行目の記載を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 b)訂正請求書の第3頁第10行目の後に、訂正事項eに続けて、訂正事項fとして、上記5)a)の補正に対応した事項を加入する。 c)訂正請求書の第4頁第17行目の後に、請求の原因の(v)に続けて、請求の原因の(vi)として、訂正事項fに対応した内容を加入する。 6) a)全文訂正明細書第4頁第17行目の記載を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 b)訂正請求書の第3頁第10行目の後に、訂正事項fに続けて、訂正事項gとして、上記6)a)の補正に対応した事項を加入する。 c)訂正請求書の第4頁第17行目の後に、請求の原因の(vi)に続けて、請求の原因の(vii)として、訂正事項gに対応した内容を加入する。 7) a)全文訂正明細書第5頁第24行目の記載を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 b)訂正請求書の第3頁第10行目の後に、訂正事項gに続けて、訂正事項hとして、上記7)a)の補正に対応した事項を加入する。 c)訂正請求書の第4頁第17行目の後に、請求の原因の(vii)に続けて、請求の原因の(viii)として、訂正事項hに対応した内容を加入する。 8) a)全文訂正明細書第5頁第26行目〜第28行目の記載を、補正後の全文訂正明細書の請求項1に係る発明の記載に対応するように補正する。 b)訂正請求書の第3頁第10行目の後に、訂正事項hに続けて、訂正事項iとして、上記8)a)の補正に対応した事項を加入する。 c)訂正請求書の第4頁第17行目の後に、請求の原因(viii)に続けて、請求の原因の(ix)として、訂正事項iに対応した内容を加入する。 イ)訂正請求に対する補正の適否 上記補正の適否について検討すると、1)a)の補正は特許請求の範囲の減縮に該当し、2)a)〜8)a)の補正は明瞭でない記載の釈明に該当し、また、訂正請求書に関する1)b)、1)c)〜8)b)、8)c)の補正は上記1)a)〜8)a)の補正に対応した付随的な補正であるから、当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。 B)訂正の内容 特許権者が求めている訂正事項の内容は、以下のa)、b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)、i)のとおりである。 a)特許請求の範囲の記載「【請求項1】トランジスタで構成したカレントミラー回路の入力に定電流源を接続し、該カレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、 該カレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続された負荷を介して定電流出力を得ることを特徴とする定電流発生回路。」を、 「【請求項1】MOSトランジスタで構成したMOSカレントミラー回路の入力にダイオードバイアス型の定電流源を接続し、該MOSカレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、 該MOSカレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続されたダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されていることを特徴とする定電流発生回路。」と訂正する。 b)明細書の第4頁第9行目〜第19行目の記載【課題を解決するための手段】を上記B)a)に対応させて訂正し、「負荷素子は、外部電源電圧の電圧変動や温度変動またはその組合せ等に対応して所定の定電流出力を得るために抵抗やダイオード素子を用いるなど適宜選択し得る。」を削除する。 c)明細書の第10頁第17行目〜第11頁第3行目の記載「なお、第1図におけるトランジスタの使い方は図示のものに限るものではない。例えばカレントミラー回路3はNMOSトランジスタで置き換えられるし、カレントミラー回路2はPNPバイポーラトランジスタで置き換えられる。また定電流発生回路としてはカレントミラー回路3を省略することもできる。」を削除する。 d)明細書の第4頁第20行目〜第5頁第13行目の記載【作用】を上記B)a)に対応させて訂正し、「負荷素子として、外部電源電圧の電圧変動や温度変動またはその組合せ等に対応して所定の定電流出力を得るために抵抗やダイオード素子を用いるなど適宜選択することにより所要の上記の設定が可能になる。」を削除する。 e)明細書の第5頁第15行目の記載「への本発明の実施例であって、」を「の参考図であって、」と訂正する。 f)明細書の第6頁第14行目の記載「本発明の動作説明」を「本参考例の動作説明」と訂正する。 g)明細書の第8頁第6行目の記載「本発明の第2の実施例」を「本発明の実施例」と訂正する。 h)明細書の第11頁第9行目の記載「有用である。」を「有用である。MOSカレントミラー回路とバイポーラ・カレントミラー回路の間にダイオードを挿入することにより誤差が小さくなり、温度変動によるMOSカレントミラー回路の電流伝達特性を約5%以下に抑えられる。」と訂正する。 i)明細書の第11頁第11行目の記載「本発明の第1の実施例」を「本発明の参考例」と、14行目の記載「第2の実施例」を「実施例」と訂正する。 C)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項a)の請求項1に係る発明の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、「トランジスタ」を「MOSトランジスタ」と、「カレントミラー回路」を「MOSカレントミラー回路」と、「定電流源」を「ダイオードバイアス型の定電流源」と、「負荷素子」を「ダイオード」と、「負荷素子を介して定電流出力を得る」を「ダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されている」と限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加にも該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 上記訂正事項b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)、i)は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加にも該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 D)独立特許要件の判断 (訂正明細書の請求項1に係る発明) 訂正明細書の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものである。 (刊行物に記載された発明) 当審が通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭55-58608号公報)には、「本発明はPNPトランジスタ102及び108のコレクタエミッタ間電圧を同程度にしてアーリ効果の影響を小さくすべくレベルシフト回路をトランジスタ108と113の間に設けて出力オフセットの改善をはかり上記従来のものの欠点を除去しようとするものである。第2図は本発明の一実施例である。レベルシフト回路としてダイオードを数個直列に接続しトランジスタ108のコレクタとトランジスタ113のコレクター間に挿入してある。」(2頁右下欄14行〜3頁左上欄3行)、「レベルシフト回路は適当な値の抵抗又はツェナーダイオードによつても実現できる。」(3頁左上欄16〜17行)が記載されている。 当審が通知した取消理由で引用した刊行物2(特開昭59-45705号公報)には、「入力端子と共通端子と出力端子を有するカレントミラー回路において、前記カレントミラー回路は低電圧素子で構成され、前記カレントミラー回路の出力端子にはMOS電界効果型トランジスタのソース電極が接続され、該MOS電界効果型トランジスタのゲート電極は定電圧源に接続され、前記MOS電界効果型トランジスタのドレイン電極を前記出力端子とするように構成され、前記MOS電界効果型トランジスタは高耐圧素子で構成されていることを特徴とするカレントミラー回路。」(特許請求の範囲)、「出力端子2の電位変動にかかわらずソース電位はほぼ一定に保たれ、これによりカレントミラー回路10のミラー比は高精度に保たれる。」(2頁左下欄2〜5行)が記載されている。 当審が通知した取消理由で引用した刊行物3(鈴木康夫、樋口武尚編、「特許パルス回路技術辞典」、第1版、株式会社オーム社、昭和55年5月20日、p.272〜273)には、「(3)ダイオードバイアス形(図3) ツェナーダイオードの代わりにダイオードの順方向電圧降下の電圧VDFを用いるものである。温度変化による変動の少ないバイアス回路である。 [電流ミラー形定電流回路] 定電流回路は、ただ良好な定電流特性を有しておれば良いのではなく、出力電流値を所定の値に規定しやすい回路構成も望まれる。このような回路に、電流ミラー回路がある。」(272頁右下欄23行〜3頁右上欄5行)が記載されている。 (対比・判断) 訂正明細書の請求項1に係る発明と上記各刊行物に記載された発明とを対比すると、上記各刊行物のいずれにも、訂正明細書の請求項1に係る発明の構成に欠くことができない事項、すなわち必須の構成要件である「該MOSカレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続されたダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されている」を備えておらず、その構成要件により、訂正明細書の請求項1に係る発明は、「MOSカレントミラー回路とバイポーラ・カレントミラー回路の間にダイオードを挿入することにより誤差が小さくなり、温度変動によるMOSカレントミラー回路の電流伝達特性を約5%以下に抑えられる。」という顕著な効果を奏するものであり、訂正明細書の請求項1に係る発明が、上記各甲号証のいずれかに記載された発明であるとも、また上記各甲号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 E)まとめ 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議申立についての判断 A)申立の理由の概要 異議申立人・山下鐸夫は、証拠として甲第1号証(刊行物1)、甲第2号証(刊行物2)、甲第3号証(刊行物3)を提出し、イ)本件請求項1に係る発明(以下、本件発明という)は甲第1号証に記載された発明に該当するので、本件発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、ロ)本件発明は甲第1〜3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、ハ)本件発明の詳細な説明には当業者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成、効果が記載されているとはいえず、また特許請求の範囲には、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しているとはいえないので、特許法第36条第3項又は第4項に規定する要件を満たしておらず、本件発明の特許を取り消すべき旨主張している。 B)対比・判断 申立人・山下鐸夫が提出した甲第1、2、3号証は、取消理由通知書において引用した刊行物1、2、3であるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、上記(2)D)と同様の理由により、上記各甲号証のいずれかに記載された発明であるとも、また上記各甲号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 C)異議申立人の主張 申立人は、特許異議申立書7頁下から3行〜8頁23行で「本件請求項1の負荷素子は、カレントミラー回路の入力および出力トランジスタの電圧・電流特性を同1条件に設定しえる値に規定された負荷素子でなければならず、任意の特性値の負荷素子を用いても上記の作用は奏しません。従いまして、本件の特許請求の範囲は、発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しているとはいえません。・・・負荷素子を設けることで、温度変動に対して所定の定電流出力が得られるためには、第1の定電流源のダイードD1〜D3の温度特性に対応して、同じ温度特性を有するダイオードD4、D5を設けることが必要であります。すなわち、第1の定電流源を構成する素子が特定されないと、負荷素子も特定することはできません。」と主張しているが、訂正請求により本件発明は上記(2)B)a)で示された訂正明細書の請求項1に係る発明になり、すなわち定電流源としてダイオードバイアス型の定電流源を用い、M0Sカレントミラー回路の出力にダイオードを介してバイポーラ・カレントミラー回路を接続するという必須な構成要件を備え、その構成要件により温度変動によるMOSカレントミラー回路の電流伝達特性を約5%以下に抑えられるという顕著な効果を奏するので、異議申立人の主張を採用することができない。 D)むすび 以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、各甲号証に記載された発明であるとも、またそれらから当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 また、他に訂正明細書の請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 定電流発生回路 (57)【特許請求の範囲】 MOSトランジスタで構成したMOSカレントミラー回路の入力にダイオードバイアス型の定電流源を接続し、該MOSカレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、 該MOSカレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続されたダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されていることを特徴とする定電流発生回路。 【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はLSI内部で使用する定電流源に関するものであり、特に外部低電位電源近傍で定電流を発生するのに有効な定電流発生回路に関する。 [従来の技術] 外部低電位電源(VEE=-5.2V)近傍で定電流を発生する従来の定電流発生回路には例えば特願昭62-52080に示されたものがある。これを第6図に示す。 第6図の定電流発生回路は、第1の定電流源1、MOSカレントミラー回路2、およびバイポーラ・カレントミラー回路3で構成される。 第1の定電流源1では、抵抗R2と直列接続されたダイオードD1〜D3の一定の両端電圧がVEEとバイポーラトランジスタQ4のベースとの間に与えられることにより定電流I0を発生している。定電流I0の電流値は、バイポーラトランジスタQ4のエミッタに接続された抵抗R1により調整できる。 カレントミラー回路は、例えば同一電源に結線された入力,出力のトランジスタのゲート同志を接続し、また入力トランジスタのゲートとドレインを接続するなどにより、入力トランジスタに所要電流を流すに伴い出力トランジスタの電流を所定電流に制御することを可能にするものである。 第6図におけるMOSカレントミラー回路2はMOSトランジスタT2に流れる電流I0をMOSトランジスタT1に伝達し、MOSトランジスタT1により定電流I1をバイポーラトランジスタQ1に供給する。 バイポーラ・カレントミラー回路3は、バイポーラトランジスタQ1に流れる電流I1をバイポーラトランジスタQ2に伝達し、バイポーラトランジスタQ2のコレクタより定電流I2を発生する。 しかし所定電流の定電流を得るのに好適な上記の定電流回路にも次のような問題があり、その解決を要する課題あった。 [発明が解決しようとする課題] 上記の回路において、MOSカレントミラー回路を構成するMOSトランジスタT1、T2の電流・電圧特性(ドレイン電流対ドレイン電圧)が飽和領域において傾きを持つ場合、MOSトランジスタT2のドレイン電圧V2がMOSトランジスタT1のドレイン電圧V1より大きくなると、各MOSトランジスタのチャネル幅を等しくしても、MOSトランジスタT1に流れる電流I1がMOSトランジスタT2に流れる電流I0に等しくならなくなり、所定電流による定電流源を得るうえで不都合な問題があった。 この問題はカレントミラー回路にMOSトランジスタを用いた場合に限らない。 本発明はトランジスタのカレントミラー回路におけるこのような問題を解決し、変動の小さい定電流源を外部低電源近傍で得る定電流発生回路を提供することを目的とする。 [課題を解決するための手段] 上記の目的を達成するため本発明では、MOSトランジスタで構成したMOSカレントミラー回路の入力にダイオードバイアス型の定電流源を接続し、該MOSカレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、該MOSカレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続された所定のダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されている構成とした。ここて、出力側トランジスタの電流出力部とは例えば第1図または第3図におけるドレイン電圧V1が発生する点を示すもので、カレントミラー回路の出力と次段との接続点を指す。 [作用] 本発明でトランジスタで構成したカレントミラー回路の出力をダイオードを介して出力することとしたことは、カレントミラー回路の入力および出力トランジスタの電圧・電流特性を同一条件に設定することを可能にするもので、したがってカレントミラー回路の入力電流を定電流にすることで出力を所定電流の定電流にすることを可能にするものである。 [実施例] 第1図は外部低電位電源近傍で定電流を発生する定電流発生回路の参考例であって、負荷素子を抵抗R3で実現した回路である。 第1の定電流源1、MOSカレントミラー回路2、およびバイポーラ・カレントミラー回路3からなる。 第1の定電流源1およびMOSカレントミラー回路2は従来回路と同一回路であり、バイポーラトランジスタQ4のコレクタがMOSトランジスタT1、T2のゲートおよびMOSトランジスタT2のドレインに接続されている。MOSトランジスタT1のドレインは抵抗R3に接続され、抵抗R3を介してバイポーラ・カレントミラー回路のバイポーラトランジスタQ1のコレクタに定電流I1′を供給している。バイポーラ・カレントミラー回路3も従来回路と同一回路であり、バイポーラトランジスタQ1に流れる電流I1′をバイポーラトランジスタQ2に伝達し、バイポーラトランジスタQ2のコレクタより定電流I2′を発生している。 第1図において本参考例の動作説明を行なう。 以下では、バイポーラトランジスタQ1、Q2のエミッタ面積が等しい場合について説明する。バイポーラトランジスタのエミッタ面積が異なる場合は、供給電流はエミッタ面積比に比例するため同様に説明できる。 第1の定電流源1で定電流I0が発生すると、MOSカレントミラー回路のダイオード接続されたMOSトランジスタT2のドレイン電圧V2が、しきい値電圧近傍に設定される。このときMOSトランジスタT1のゲート電圧にも、MOSトランジスタT2のゲート電圧が印加される。MOSトランジスタT1のドレインには、抵抗R3が接続されているため、MOSトランジスタT1のドレイン電圧V1がMOSトランジスタT2のドレイン電圧V2と等しくなるように抵抗値を設定すれば、MOSトランジスタT1に流れる電流I1′をMOSトランジスタT2に流れる電流I0に等しくすることができる。バイポーラトランジスタQ2に流れる電流I2′は、カレントミラー接続によりバイポーラトランジスタQ1に流れる電流I1′に等しい電流を発生することができる。 第2図は抵抗R3を挿入した場合のMOSカレントミラー回路の電流値の外部電源変動依存性を示したものである。縦軸は、MOSカレントミラー回路の出力電流値I1′と入力電流値I0の誤差を示したものであり、横軸は、外部電源電圧を示したものである。第2図よりMOSカレントミラー回路とバイポーラ・カレントミラー回路の間に抵抗R3を挿入することにより、MOSカレントミラー回路の電流伝達誤差を10%以下に抑えることができる。 第3図は本発明の実施例であって、温度変動による定電流源の変動を抑えるために、負荷素子として直列接続されたダイオードD4〜D5を接続した回路である。 まず、温度が低温側に変動した場合を説明する。 第1の定電流源1の電流値I0は、ダイオードD1〜D3の接合電圧が大きくなるため増加する。定電流源I0が増加すると、MOSカレントミラー回路のMOSトランジスタT2のドレイン電圧およびMOSトランジスタT1、T2のゲート電圧V2が負側に大きくなる。このとき、MOSトランジスタT1のドレインに接続されたダイオードD4、D5の接合電圧が大きくなるため、MOSトランジスタT1のドレイン電圧V1の負電圧が小さくなり、MOSトランジスタT1に流れる電流が抑制される。 つぎに、温度が高温側に変動した場合を説明する。 第1の定電流源1の電流値I0は、ダイオードD1〜D3の接合電圧が小さくなるため減少する。定電流源I0が減少すると、MOSカレントミラー回路のMOSトランジスタT2のドレイン電圧およびMOSトランジスタT1、T2のゲート電圧V2の負電圧小さくなる。このとき、MOSトランジスタT1のドレインに接続されたダイオードD4、D5の接合電圧が小さくなるため、MOSトランジスタT1のドレイン電圧V1が負側に大きくなり、MOSトランジスタT1に流れる電流I1′が増加する。 第4図はMOSカレントミラー回路の電流値の温度変動依存性を示したものである。縦軸は、MOSカレントミラー回路の出力電流値I1´と入力電流値I0の誤差を示したものであり、横軸は温度を示したものである。第4図より、MOSカレントミラー回路とバイポーラ・カレントミラー回路の間にダイオードを挿入することにより誤差が小さくなり、温度変動によるMOSカレントミラー回路の電流伝達特性を約5%以下に抑えられることがわかる。また、ダイオードを挿入することにより、誤差が正の傾きを持つことがわかる。これは、第1の定電流源I0が温度の上昇とともに減少するため、カレントミラー電流I1′が定電流を発生していることを意味している。 第5図は、第3図に示す定電流発生回路の定電流値I2′の電源電圧・温度変動依存性を示したものである。縦軸は、バイポーラ・カレントミラー回路の出力電流値I2′と第1の定電流源I0の誤差を示したものであり、横軸は温度を示したものであり、パラメータは電源電圧である。第3図の定電流発生回路を用いることにより、第1の定電流源との誤差を15%以内に抑えることができる。 [効果] 以上説明したように、本発明によれば、トランジスタのカレントミラー回路により、変動の小さな定電流源が得られる。本回路は、外部電源電圧が小さくなった場合のバイポーラ差動増幅回路の定電流源として有用である。MOSカレントミラー回路とバイポーラ・カレントミラー回路の間にダイオードを挿入することにより誤差が小さくなり、温度変動によるMOSカレントミラー回路の電流伝達特性を約5%以下に抑えられる。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の参考例であり、第2図は第1図に示す定電流発生回路の電流値の電源変動依存性を示したものである。第3図は本発明の実施例であり、第4図、第5図は第3図に示す定電流発生回路の電流値の温度・電源変動依存性を示したものであり、第6図は従来の定電流発生回路である。 1…第1の定電流源 2…MOSカレントミラー回路 3…バイポーラ・カレントミラー回路 T1〜T2…MOSトランジスタ Q1〜Q4…バイポーラトランジスタ R1〜R3…負荷抵抗 D1〜D5…ダイオード VEE(-5.2V)…外部低電位電源 |
訂正の要旨 |
訂正の要旨 訂正事項a) 特許請求の範囲の記載「【請求項1】トランジスタで構成したカレントミラー回路の入力に定電流源を接続し、該カレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、該カレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続された負荷を介して定電流出力を得ることを特徴とする定電流発生回路。」を、「【請求項1】MOSトランジスタで構成したMOSカレントミラー回路の入力にダイオードバイアス型の定電流源を接続し、該MOSカレントミラー回路の出力に定電流出力を供給する定電流発生回路において、該MOSカレントミラー回路の出力側トランジスタの電流出力部に直列に接続されたダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されていることを特徴とする定電流発生回路。」と訂正する。 訂正事項b) 明細書の第4頁第9行目〜第19行目の記載【課題を解決するための手段】を上記訂正事項a)に対応させて訂正し、「負荷素子は、外部電源電圧の電圧変動や温度変動またはその組合せ等に対応して所定の定電流出力を得るために抵抗やダイオード素子を用いるなど適宜選択し得る。」を削除する。 訂正事項c) 明細書の第10頁第17行目〜第11頁第3行目の記載「なお、第1図におけるトランジスタの使い方は図示のものに限るものではない。例えばカレントミラー回路3はNMOSトランジスタで置き換えられるし、カレントミラー回路2はPNPバイポーラトランジスタで置き換えられる。また定電流発生回路としてはカレントミラー回路3を省略することもできる。」を削除する。 訂正事項d) 明細書の第4頁第20行目〜第5頁第13行目の記載【作用】を上記訂正事項a)に対応させて訂正し、「負荷素子として、外部電源電圧の電圧変動や温度変動またはその組合せ等に対応して所定の定電流出力を得るために抵抗やダイオード素子を用いるなど適宜選択することにより所要の上記の設定が可能になる。」を削除する。 訂正事項e) 明細書の第5頁第15行目の記載「への本発明の実施例であって、」を「の参考図であって、」と訂正する。 訂正事項f) 明細書の第6頁第14行目の記載「本発明の動作説明」を「本参考例の動作説明」と訂正する。 訂正事項g) 明細書の第8頁第6行目の記載「本発明の第2の実施例」を「本発明の実施例」と訂正する。 訂正事項h) 明細書の第11頁第9行目の記載「有用である。」を「有用である。MOSカレントミラー回路とバイポーラ・カレントミラー回路の間にダイオードを挿入することにより誤差が小さくなり、温度変動によるMOSカレントミラー回路の電流伝達特性を約5%以下に抑えられる。」と訂正する。 訂正事項i) 明細書の第11頁第11行目の記載「本発明の第1の実施例」を「本発明の参考例」と、14行目の記載「第2の実施例」を「実施例」と訂正する。 上記訂正事項a)の請求項1に係る発明の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、「トランジスタ」を「MOSトランジスタ」と、「カレントミラー回路」を「MOSカレントミラー回路」と、「定電流源」を「ダイオードバイアス型の定電流源」と、「負荷素子」を「ダイオード」と、「負荷素子を介して定電流出力を得る」を「ダイオードを介して定電流出力を得、該出力にはバイポーラトランジスタで構成したバイポーラ・カレントミラー回路の入力が接続されている」と限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加にも該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 上記訂正事項b)、c)、d)、e)、f)、g)、h)、i)は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加にも該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 |
異議決定日 | 1999-09-21 |
出願番号 | 特願昭63-154900 |
審決分類 |
P
1
651・
534-
YA
(H03F)
P 1 651・ 121- YA (H03F) P 1 651・ 113- YA (H03F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 和田 志郎 |
特許庁審判長 |
鈴木 康仁 |
特許庁審判官 |
清水 稔 橋本 正弘 |
登録日 | 1998-01-23 |
登録番号 | 特許第2740650号(P2740650) |
権利者 | 日本電信電話株式会社 |
発明の名称 | 定電流発生回路 |
代理人 | 澤井 敬史 |
代理人 | 澤井 敬史 |