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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E02F |
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管理番号 | 1007549 |
異議申立番号 | 異議1997-73467 |
総通号数 | 7 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1988-06-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-07-23 |
確定日 | 2000-01-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2577551号「被作動体の駆動制御装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2577551号の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を取り消す。 同特許請求の範囲第2項ないし第3項に記載された発明についての特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 特許第2577551号の請求項1乃至3に係る発明の出願は、昭和61年12月3日に特許出願され、平成8年11月7日にその設定登録がなされ、その後、特許異議申立人新和也から異議の申立がなされ、当審よりその請求項1に係る発明の特許について取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが特許権者からは何の応答もなかった。 2.本件特許に係る発明 本件特許に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定される下記のとおりのものと認める。 請求項1 操作レバーおよびこの操作レバーの操作量に応じた操作信号を発生する出力手段を有する指令入力装置と、被作動体を駆動するアクチュエータと、前記指令入力装置の操作信号が入力され該入力された操作信号に応じて前記アクチュエータの制御信号を演算する制御演算部および前記制御信号を増幅したアクチュエータ駆動信号を発生しこれを前記アクチュエータに出力する出力部を有する制御手段とを具えた被作動体の駆動制御装置において、前記操作レバーの中立位置を検出する中立位置検出手段と、この中立位置検出手段の検出信号によって前記制御演算部と前記出部との間の信号の伝達を禁止する禁止手段と、を具えるようにしたことを特徴とする被作動体の駆動制御装置。 請求項2 正負の操作方向に操作可能な操作レバーおよびこの操作レバーの操作方向及び操作量に応じた操作信号を発生する出力手段を有する指令入力装置と、前記操作レバーの正方向の操作位置への操作に対応して被作動体を所定の方向に駆動する第1のアクチュエータおよび前記操作レバーの負方向の操作位置への操作に対応して被作動体を前記所定の方向とは異なる方向に駆動する第2のアクチュエータを有するアクチュエータと、前記指令入力装置の操作信号が入力され該入力された操作信号に応じて前記アクチュエータを駆動する電気的な駆動信号を発生する制御手段とを具えた被作動体の駆動制御装置において、前記操作レバーが正方向の操作位置に変位したときに第1の検出信号を出力する第1の検出手段と、前記操作レバーが負方向の操作位置に変位したときに第2の検出信号を出力する第2の検出手段と、前記第1の検出手段の検出信号によって前記制御手段と前記第2のアクチュエータとの間の信号の伝達を禁止する第1の禁止手段と、前記第2の検出手段の検出信号によって前記制御手段と前記第1のアクチュエータとの間の信号の伝達を禁止する第2の禁止手段と、を具えるようにしたことを特徴とする被作動体の駆動制御装置。 請求項3 中立位置を挟んで正負の操作方向に操作可能な操作レバーおよびこの操作レバーの操作方向及び操作量に応じた操作信号を発生する出力手段を有する指令入力装置と、前記操作レバーの正方向の操作位置への操作に対応して被作動体を所定の方向に駆動する第1のアクチュエータおよび前記操作レバーの負方向の操作位置への操作に対応して被作動体を前記所定の方向とは異なる方向に駆動する第2のアクチュエータを有するアクチュエータと、前記指令入力装置の操作信号が入力され該入力された操作信号に応じて前記アクチュエータを駆動する電気的な駆動信号を発生する制御手段とを具えた被作動体の駆動制御装置において、前記操作レバーが正方向の操作位置に変位したときと前記操作レバーが中立位置にあるときに第1の検出信号を出力する第1の検出手段と、前記操作レバーが負方向の操作位置に変位したときと前記操作レバーが中立位置にあるときに第2の検出信号を出力する第2の検出手段と、前記第1の検出手段の検出信号によって前記制御手段と前記第2のアクチュエータとの間の信号の伝達を禁止する第1の禁止手段と、前記第2の検出手段の検出信号によって前記制御手段と前記第1のアクチュエータとの間の信号の伝達を禁止する第2の禁止手段と、を具えるようにしたことを特徴とする被作動体の駆動制御装置。 3.取消理由通知 本件発明の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件第1発明」という。)は、その出願前に頒布された下記の刊行物に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件第1発明は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 刊行物:特開昭61-254495号公報 〔本件発明の要旨〕 本件特許第2577551号の請求項1に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。 〔引用例〕 特許請求の範囲、公報第4頁左下欄第10行ないし右下欄第4行、同第5頁左上欄第12行ないし右上欄20行、及び、同第5頁右下欄第9行ないし第6頁第2行の記載からみて、引用例には、操作レバー(126)およびこの操作レバーの操作量に応じた操作信号を発生するボテンショメータを有する操作ボックス(101)と、クレーンを駆動する制御用ソレノイド(103d)と、前記操作ボックスの操作信号が入力され該入力された操作信号に応じて前記制御用ソレノイドの制御信号を変換する信号弁別器、パルス幅変調器および前記制御信号を増幅した制御用ソレノイド駆動信号を発生しこれを前記制御用ソレノイドに出力する増幅器を有する制御装置(102)とを具えたクレーンの遠隔制御装置において、前記操作レバーの中立位置(カムの凹所)を検出するスイッチ(136)と、このスイッチの検出信号によって前記信号弁別器、パルス幅変調器と前記増幅器との間の信号伝達を禁止するトランジスタ(206,214)と、を具えたクレーンの遠隔駆動装置、及び、クレーンが暴走した場合には、操作レバーを中立位置に操作することによりクレーンは緊急停止されること、が記載されているものと認められる。 〔本件発明と先願発明との対比〕 本件特許の請求項1に係る発明(前者)と引用例記載の発明(後者)とを対比すると、 後者の「ボテンショメター(113)」、「操作ボックス(101)」、「クレーン」、「制御用ソレノイド(103d、103e)」、「増幅器」、「制御装置(102)」、「遠隔制御装置」.「スイッチ(136)」及び「トランジスタ(206、214)」がそれぞれの機能に照らし、それぞれ前者の「出力手段」、「指令入力装置」、「被作動体」、「アクチュエータ」、「出力部」、「制御手段」、「遠隔駆動装置」、「中立位置検出手段」及び「禁止手段」に相当するものと認められるから、 引用例記載の発明が制御用ソレノイド(アクチュエータ)の制御信号を変換するために信号弁別器とパルス幅変調器を用いているのに対して、 本願発明では、アクチュエータの制御信号を演算する制御演算部を用いている点で相違し、その余は一致しているものと認める。 この相違点を検討する。 引用例の信号弁別器とパルス幅変調器は、アナログ回路で制御信号を変換しているが、本件発明のようにデジタル回路で制御信号を演算することは、本件出願前に良く知られた技術手段であるから、アナログ回路に代えて本件発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものである。 したがって、請求項1に係る発明は、刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認める。 よって、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 本件第1発明に対して、平成10年6月15日付けで、取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは何らの応答もない。 そして、上記取消理由は妥当なものと認められるので、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許は、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。 3.特許異議申立て 特許異議申立人 新和也(以下、「申立人」という。)は、証拠として甲第1及び2号証(特開昭61-254495号公報、特開昭60-49106号公報)を提出し、本件発明の明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された発明(以下、請求項2に記載された発明を「本件第2発明」、請求項3に記載された発明を「本件第3発明」という。)は、本件発明出願前に頒布された前記第1及び2号証記載の発明と同じであるか、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第1項第3号あるいは特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。 3-1.甲各号証記載の発明 甲第1号証には、特許請求の範囲、公報第4頁左下欄第10行ないし右下欄第4行、同第5頁左上欄第12行ないし右上欄20行、及び、同第5頁右下欄第9行ないし第6頁第2行の記載からみて、操作レバー(126)およびこの操作レバーの操作量に応じた操作信号を発生するボテンショメータを有する操作ボックス(101)と、クレーンを駆動する制御用ソレノイド(103d)と、前記操作ボックスの操作信号が入力され該入力された操作信号に応じて前記制御用ソレノイドの制御信号を変換する信号弁別器、パルス幅変調器および前記制御信号を増幅した制御用ソレノイド駆動信号を発生しこれを前記制御用ソレノイドに出力する増幅器を有する制御装置(102)とを具えたクレーンの遠隔制御装置において、前記操作レバーの中立位置(カムの凹所)を検出するスイッチ(136)と、このスイッチの検出信号によって前記信号弁別器、パルス幅変調器と前記増幅器との間の信号伝達を禁止するトランジスタ(206,214)と、を具えたクレーンの遠隔駆動装置、及び、クレーンが暴走した場合には、操作レバーを中立位置に操作することによりクレーンは緊急停止されること、が記載されているものと認められる。 甲第2号証には、 コントロールレバーの中立点から左右への偏位量に応じて、2個の電磁比例弁のうち対応する電磁比例弁の制御電流を増減するようにした制御装置において、コントロールレバーに連動させたポテンショメータと、ポテンショメータの出力を所定の時間遅れをもって伝達する遅れ回路と、遅れ回路の出力を中立点の基準電圧と比較してレバー傾転方向を判別する回路と、ポテンショメータのレバー角度に応じた絶対出力のみを取り出す回路と、この絶対出力を増幅する回路と、増幅出力を前記判別回路の出力にもとづいて前記電磁比例弁の一方へ選択的に供給する選択回路とからなる電磁比例弁の制御装置が記載されているものと認められる。 3-2.本件第2発明と甲各号証記載の発明との対比・判断 甲第1及び2号証には、前記3-1.でみたように、第2の禁止手段に関することについては何も記載も示唆もされていない。 そうすると、甲第1及び2号証には、本件第2発明の構成である「第2の検出手段の検出信号によって制御手段と第1のアクチュエータとの間の信号の伝達を禁止する第2の禁止手段」の点が記載されていないから、本件第2発明が甲第1及び2号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものとは認められない。 3-3.本件第3発明と甲各号証記載の発明との対比・判断 上記した同じ理由で、本件第3発明の構成である「第2の検出手段の検出信号によって制御手段と第1のアクチュエータとの間の信号の伝達を禁止する第2の禁止手段」の点が記載されていないから、本件第2発明が甲第1及び2号証に基づいて当業者が容易に発明することができたものとは認められない。 4.むすび 上記のとおり、本件第1発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 また、本件第2及び3発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-10-25 |
出願番号 | 特願昭61-288365 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZC
(E02F)
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最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 深田 高義 |
特許庁審判長 |
佐藤 荘助 |
特許庁審判官 |
小野 忠悦 木村 史郎 |
登録日 | 1996-11-07 |
登録番号 | 特許第2577551号(P2577551) |
権利者 | 株式会社小松製作所 |
発明の名称 | 被作動体の駆動制御装置 |