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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01J |
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管理番号 | 1008551 |
審判番号 | 審判1998-2831 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-01-22 |
確定日 | 2000-01-14 |
事件の表示 | 平成7年特許願第121209号「高輝度化ランプ」拒絶査定に対する審判事件(平成8年11月29日出願公開、特開平8-315771)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・請求項1に係る発明 本願は、平成7年5月19日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成9年10月2日付け、平成10年1月22日付け及び平成11年9月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「ガス封入のためのガラスバルブと、該ガラスバルブ内に備えられたランプ放電部と、該ランプ放電部から出た出射光を外部に放射するために前記ガラスバルブに設けられた窓材とから成り、紫外及び真空紫外領域に強い連続スペクトル成分を持つランプにおいて、前記窓材は、フッ素をドーピングしたシリカガラスにより形成され、ランプ出射光強度の減衰を長時間にわたり抑制したことを特徴とする高輝度化ランプ。」 2.引用例の記載事項 当審で平成11年6月24日付けで通知した拒絶の理由に引用した、特開昭52-79588号公報(以下、引用例1という。)には、重水素アークランプに関し、下記の事項が図面とともに記載されている。 「第1図乃至第3図には重水素アークランプが示される。・・・中略・・・例えば、図示する石英製外囲器(2)は水平方向に伸びる管状部(12)を有し、そこに衝合封着した紫外線透過用窓部(14)が設けられている。紫外線透過用窓部(14)に特に好適する材質の一つには・・・中略・・・市販のシュプラシル(Suprasil)がある。Suprasilは同じ結晶構造(等方性)の合成溶融シリカであり、例えば、10mm厚の板で160nm以下迄高い紫外線透過性を有している。この合成溶融シリカは気泡がなく高い熱的及び光化学的抵抗を有する。 外囲器(2)内でステム(6)により支持された構造物はランプの陽極および陰極の一対の電極を収容している。」(第2頁左下欄15行乃至右下欄19行) 同じく引用した「Jaurnal of the Ceramic Society of Japan」第961頁乃至第965頁(1994年10月、第102巻、第10号、J.Ceram.Soc.Jpn.、日本セラミックス協会発行)(以下、引用例2という。)には、シリカガラスの真空紫外光照射下における光透過率のその場測定に関し、下記の事項が図面とともに記載されている。 「また、重水素ランプの著しい光劣化の原因の一つは窓材として使われているシリカガラスの真空紫外光による劣化である可能性がある.」(第961頁左欄下から10行乃至下から8行) 「4.2光照射後のシリカガラスについて 表1にも示したがVADDRYが最も不純物の少ない,いわば理想的なシリカガラスであるにもかかわらず,最も光耐性が劣るのは驚くべきことである.・・・中略・・・またVADDRY,FS,FLの順に,フッ素不純物の増大とともに光耐性が向上していることは,シリカガラス中のフッ素不純物が光劣化を抑制していることを意味する.」(第964頁左欄7行乃至16行) 「5.まとめ シリカガラスの真空紫外光の透過率の変化をその場測定した,その結果,以下のことが分かった. (1)シリカガラスは真空紫外光で劣化し,透過率が低下する.その低下率は不純物の最も少ないシリカガラスで最も大きく,OHやFという不純物を持つもので抑制されていること,更にF濃度が増大するほど抑制されることが分かった. ・・・中略・・・ (5)フッ素ドープ,Type・IIIシリカガラス中の平面三,四員環濃度は小さいことが知られている.これはフッ素やOHが製造工程で平面リング構造と反応するためである.このことはこれらのガラスで光劣化が小さいという事実を裏づける.」(第965頁左欄15行乃至右欄4行) 3.請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明との対比 上記引用例1に記載された技術事項からみて、引用例1に記載された発明の「外囲器(2)」、「ステム(6)により支持された構造物」、「紫外線透過用窓部(14)」及び「重水素アークランプ」は、各々請求項1に係る発明の「ガラスバルブ」、「ランプ放電部」、「窓材」及び「紫外及び真空紫外領域に強い連続スペクトル成分を持つランプ(高輝度化ランプ)」に相当するものであるから、請求項1に係る発明の用語を使用して請求項1に係る発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、「ガス封入のためのガラスバルブと、該ガラスバルブ内に備えられたランプ放電部と、該ランプ放電部から出た出射光を外部に放射するために前記ガラスバルブに設けられた窓材とから成り、紫外及び真空紫外領域に強い連続スペクトル成分を持つ高輝度化ランプ。」の点で一致しており、次の点で相違している。 相違点;請求項1に係る発明では、窓材は、フッ素をドーピングしたシリカガラスにより形成され、ランプ出射光強度の減衰を長期間にわたり抑制したものであるのに対して、引用例1に記載された発明では、紫外線透過用窓部(14)は、合成溶融シリカにより形成されている点。 4.上記相違点に対する当審の判断 上記相違点について検討するに、引用例2には、重水素ランプの著しい光劣化の原因の一つに窓材として使われているシリカガラスの真空紫外光による劣化である可能性があるとして、シリカガラスの真空紫外光の透過率の変化をその場測定して、フッ素ドープしたシリカガラスとすれば真空紫外光による光劣化が小さくなることが記載されているものであって、重水素ランプの窓材に使用するシリカガラスの真空紫外光劣化による透過率の低下を抑制する(ランプ出射光強度の減衰を長期間にわたり抑制したことに相当)には、フッ素ドープしたシリカガラスを採用すればよいことは、上記引用例2に記載された技術事項から当業者であれば容易に理解することができる程度のことであるから、引用例1に記載された紫外線透過用窓部に使用する合成溶融シリカ(シリカガラス)にフッ素をドーピングしたものを採用して請求項1に係る発明のようにランプ出射光強度の減衰を長期間にわたり抑制した高輝度化ランプとすることは、当業者が必要に応じて容易に想到することができる程度の技術事項と認める。 そして、請求項1に係る発明の効果も、引用例1及び2に記載された発明から、当業者であれば予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-10-15 |
結審通知日 | 1999-11-05 |
審決日 | 1999-11-15 |
出願番号 | 特願平7-121209 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 橋本 直明、小川 浩史、小島 寛史 |
特許庁審判長 |
村本 佳史 |
特許庁審判官 |
新宮 佳典 柏木 悠三 |
発明の名称 | 高輝度化ランプ |
指定代理人 | 工業技術院電子技術総合研究所長 |