• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A21C
管理番号 1008569
審判番号 審判1999-948  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-01-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-14 
確定日 2000-01-04 
事件の表示 平成4年特許願第42183号「可塑性棒状食品切断機」拒絶査定に対する審判事件(平成8年1月24日出願公告、特公平8-4443)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.本願発明
本願は、平成4年1月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年1月18日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記平成11年1月18日付手続補正書の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「中央を四方から囲うごとく回動自在に周状配置された複数枚のシャッター片1・1・1・1を備え、これら各シャッター片1には自由端側に閉塞部11、および当該閉塞部の突端11aから枢支部方向へ伸びる側面にカッター辺12とが設けられ、かつ、前記閉塞部11の表裏面はカッター辺12の反対側の側面方向へ斜断された鋭角斜線を成すと共に鋭角斜線の間は欠き込まれて凹溝11bを形成しており、これら各シャッター片1における閉塞部11は少なくとも突端11aが隣りのシャッター片1のカッター辺12に接触することによって中央を取り囲むカッター辺12・12・12・12は当該シャッター片1・1・1・1の往復回動により拡縮開閉運動する絞り切断領域を形成し、この絞り切断領域に向けて押し出されてくる可塑性棒状食品を、前記各シャッター片1の閉塞部の少なくとも突端11aが隣のシャッター片1のカッター辺12との接触関係を保ったまま各シャッター片1が一斉に回動運動をすることにより、カッター片1・1・1・1が絞り切断領域を狭縮させてゆき、これらシャッター片1・1・1・1の閉塞部突端11a・11a・11a・11aを互いに接近移動させることによって切断領域を閉じ、これら閉塞部突端11a・11a・11a・11aの会合接触によって可塑性棒状食品をカットすることを特徴とする可塑性棒状食品切断機。」
II.引用例の記載
これに対して、当審での拒絶理由に引用した特開平4-11844号公報(以下、「引用文献1」という。)には、下記の事項が記載されている。
▲1▼「放射状に集合して円周(a)の中心Aに囲みを形成するために、該円周(a)上に等間隔に設ける回転軸に回転自在に嵌合する同一形状を有する複数の多面体10によってなる組立体を有する包装球断装置であって、
多面体10の各々が、前記回転軸13の反対側の先端部18で接する曲面から成る第1および第2側面(y1)、(y2)を有し、
該多面体10の先端部18が隣接多面体の第1側面(y1)をなぞり、多面体10の回転運動によって前記囲みを通過する材料を切断形成するために多面体10の第1側面によって前記囲みを絞り込むように、多面体10を協働させるものとし、
該第1側面は前記囲みを通過する材料の軸線の方向に凸面を有することを特徴とする包装球断装置。」(第1頁左下欄第5〜19行)
▲2▼「本発明は饅頭やおはぎなどのような外皮材で内包材を包み込んだ食品の製造に関するものであり、中心に餡等の材料を棒状に包んだ連続した菓子生地を中心の餡を露出させず、また皮に花紋状のヒダをつけることなく切断できるので、饅頭等の多種の菓子の生産に用いて、産業上便利に利用できるものである。」(第2頁左上欄第11〜17行)
▲3▼「これら各多面体10は、突端を(A)を中心に集め、円周(a)上の支点(B)に回転軸をもって嵌合して放射状に集合し、各軸(B)によって各多面体10をそれぞれ回転せしめることによって中央に開閉する囲みを作り、この囲みを通過する材料を多面体の第1側面によって切断するものであり、」(第2頁左下欄第8〜14行)
▲4▼「第1図は材料を切断するための囲みを構成する多面体10の形状を説明するためのものであり、第2図、第3図は、多面体10が形成する囲みを開閉した状態を示す。」(第2頁右下欄第12〜14行)
▲5▼「この第1側面である刃部17は、隣接多面体10の先端部18がなぞる面であり、囲みが閉じた時は隣接する多面体10の第2側面と当接するものであり、第2側面は凸面部(E)に当接する凹面部(D)を有している。」(第3頁右上欄第5〜9行)
また、当審の拒絶理由で引用した特開平3-175925号公報(以下、「引用文献2」という。)には、下記の事項が記載されている。
▲6▼「本発明は同一円周上に支点をもち、かつそれぞれの支点で回転することのできる多面体によって中心にできる囲みを開閉できるシャッター機構であり、中心の囲みが閉鎖するとき、それぞれの多面体は交錯することなく完全閉鎖できるので、粘着性の強い菓子生地の切断に用いても、その刃部に粘着が発生せず、また中心に餡等の材料を棒状に包んだ連続した菓子生地を中心の囲みに供給した場合、その開閉によって中心の餡を露出させずに切断できるので、饅頭等の多種の菓子の生産に用いて、産業上便利に利用できるものである。」(第1頁右下欄第10〜20行)
III.対比・判断
ここで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と上記引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比する。
引用発明1の「多面体」に関する上記記載▲1▼の「放射状に集合して円周(a)の中心Aに囲みを形成するために、該円周(a)上に等間隔に設ける回転軸に回転自在に嵌合する」の記載は、本願発明の「中央を四方から囲うごとく回動自在に周状配置された」の記載と同意であり、また上記記載▲1▼の「多面体10の回転運動によって前記囲みを通過する材料を切断形成するために多面体10の第1側面によって前記囲みを絞り込むように、多面体10を協働させる」の記載は、本願発明の「カッター片1・1・1・1の往復回動により拡縮開閉運動する絞り切断領域を形成し」と同意であるものと認められるから、引用発明1における「多面体」は本願発明の「シャッター片」に相当する。
また、上記記載▲3▼および▲5▼によれば、引用発明1の「第1側面」は材料の切断部(刃部)であり、「第2側面」は第1側面と当接して中央を取り囲み、また、該第1側面と協働して該囲みを閉じるものであるから、上記「第1側面」「第2側面」は、それぞれ、本願発明の「カッター辺」「閉塞部」に相当する。そして、上記記載▲3▼および▲5▼によれば「前記各シャッター片1の閉塞部の少なくとも突端11aが隣のシャッター片1のカッター辺12との接触関係を保ったまま各シャッター片1が一斉に回動運動をすることにより、シャッター片1・1・1・1が絞り切断領域を狭縮させてゆき、これらシャッター片1・1・1・1の閉塞部突端11a・11a・11a・11aを互いに接近移動させることによって切断領域を閉じ」る点も記載されているものと認められる。
また、上記記載▲2▼によれば、切断の対象が「可塑性棒状食品」であることが認められる。
さらに、上記記載▲4▼によれば、多面体の形状は図面1〜3に描写されている旨が記載されているが、該第1〜3図を参酌すれば、第2側面(閉塞部)の表裏面は第1側面(カッター辺)の反対側の側面方向へ斜断された鋭角斜線を成すものであることは明確であり、また、上記記載▲5▼には、第2側面(鋭角斜線)の間に凹面部が形成されている点も記載されているから、上記引用文献1には、本願発明の「前記閉塞部11の表裏面はカッター辺12の反対側の側面方向へ斜断された鋭角斜線を成すと共に鋭角斜線の間は欠き込まれて凹溝11bを形成して」いる点も記載されているものといえる。なお、請求人は、引用発明1における鋭角斜線は、「幾何学的に限定された曲線」であるから本願発明の鋭角斜線と相違する旨を主張しているが、本願の請求項1の記載は「幾何学的に限定された曲線」からなる鋭角斜線を排除するものとは認められず、請求人の上記主張は請求項の記載に基づく主張であるものとは認められないから、請求人の上記主張は採用できない。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「中央を四方から囲うごとく回動自在に周状配置された複数枚のシャッター片を備え、これら各シャッター片には自由端側に閉塞部、および当該閉塞部の突端から枢支部方向へ伸びる側面にカッター辺とが設けられ、かつ、前記閉塞部の表裏面はカッター辺の反対側の側面方向へ斜断された鋭角斜線を成すと共に鋭角斜線の間は欠き込まれて凹溝を形成しており、これら各シャッター片における閉塞部は少なくとも突端が隣りのシャッター片のカッター辺に接触することによって中央を取り囲むカッター辺は当該カッター片の往復回動により拡縮開閉運動する絞り切断領域を形成し、この絞り切断領域に向けて押し出されてくる可塑性棒状食品を、前記各シャッター片の閉塞部の少なくとも突端が隣のシャッター片のカッター辺との接触関係を保ったまま各シャッター片が一斉に回動運動をすることにより、シャッター片が絞り切断領域を狭縮させてゆき、これらシャッター片の閉塞部突端を互いに接近移動させることによって切断領域を閉じ可塑性棒状食品をカットする可塑性棒状食品切断機。」である点で一致しており、次の点でのみ相違している。
すなわち、本願発明においては「閉塞部突端の会合接触によって」食品をカットすることが明確に特定されているのに対し、引用発明1においてはその点が明確でない点で相違している。
上記相違点について検討する。上記引用刊行物2の上記記載▲6▼には「中心の囲みが閉鎖するとき、それぞれの多面体は交錯することなく完全閉鎖できる」と記載されており、囲みを閉じた状態を示す第2図の記載を参酌すれば、上記引用刊行物2には、「閉塞部突端の会合接触によって」食品をカットする点が明確に示されているものと認められる。そして、上記記載▲6▼から引用刊行物2に記載の発明が引用発明1の技術分野と同一の技術分野に属するものであることが認められ、また、記載▲6▼から「中心の囲みが閉鎖するとき、それぞれの多面体は交錯することなく完全閉鎖できる」構成による作用効果が、本願発明が「閉塞部突端の会合接触によって」食品をカットするという構成を採用したことによる作用効果と同じものであるものと認められるから、上記引用発明1に、上記引用刊行物2において示された「閉塞部突端の会合接触によって」食品をカットする点を適用して本願発明の構成とすることに格別な困難性は認められない。
すなわち、上記相違点の特定は、当業者が容易に想到し得た事項に過ぎないから、本願発明1(請求項1に係る発明)は上記引用文献1および2に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得た発明であるものと認められる。
IV.むすび
したがって、この出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 1999-10-05 
結審通知日 1999-10-15 
審決日 1999-10-28 
出願番号 特願平4-42183
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚中 哲雄田中 久直種村 慈樹大河原 裕  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 鈴木 美知子
森林 克郎
発明の名称 可塑性棒状食品切断機  
代理人 戸川 公二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ