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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47C
管理番号 1008644
審判番号 審判1998-9585  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-09-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-06-24 
確定日 2000-01-31 
事件の表示 平成5年特許願第199135号「椅子」拒絶査定に対する審判事件〔(平成8年2月21日出願公告、特公平8-15449)、特許請求の範囲に記載された発明の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許をすべきものとする。 
理由 【1】[1-1]本願は、平成5年7月16日の出願(特願平5-199135号)であり、昭和62年4月10日(優先権主権、1986年4月10日、米国)に出願された特願昭62-88558号(以下、「原々出願」という。)の一部を新たな特許出願とした特願平2-317623号(以下、「原出願」という。)の一部を更に新たな特許出願としたとされる出願であって、平成8年2月21日に出願公告(特公平8-15449号)されたところ、平成8年5月14日付けでコクヨ株式会社より、続いて平成8年5月21日付けで株式会社イトーキより特許異議の申立てがなされ、その後、平成10年5月18日付けで『この特許異議の申立は、理由があるものと決定する。』との特許異議の決定がなされ、同日付けで『この出願は、特許異議の決定に記載した理由によって拒絶をすべきものと認める。』との拒絶査定(謄本発送日:平成10年5月26日)がなされたものである。
[1-2] そして、本願発明の要旨は、出願公告された明細書および図面の記載並びに平成9年4月28日付けでなされた明細書についての補正の内容からみて、その特許請求の範囲の請求項1および請求項2に記載されたとおりの、
「【請求項1】支持脚(5)に支持された支持体(6)と、該支持体(6)に傾動可能に枢結されたバックフレーム(8)と、該バックフレーム(8)及び支持体(6)に連結された座支持手段(7)と、該支持手段(7)に支持される座(14)及び前記バックフレーム(8)に連結される背もたれ(15)を提供する座席体(2)とから成る椅子において、
前記座支持手段(7)は、座席体(2)の背もたれ(15)を後方に傾動したとき座(14)を傾動せしめるが、背もたれの傾動角度αと座の傾動角度βを、α>βに制限するシンクロチルト機構を構成すると共に、座(14)の前部(47)をリフトせしめるリフト機構を構成して成り、
前記座席体(2)は、着座者の尻を支持する座部(26)と、着座者の背を支持する背部(27)と、該座部(26)及び背部(27)の間において屈曲された腰部(28)とを一体成形して成る全体が可撓性を有する合成樹脂製のインナーシェル(17)を含み、
前記インナーシェル(17)は、座部(26)を前記座支持手段(7)に対して取付ける一方、背部(27)をバックフレーム(8)の起立部に対して取付部(78,79)を介して取付固定し、前記バックフレーム(8)の傾動時に、前記座支持手段(7)とバックフレーム(8)の取付部(78,79)との間において、前記屈曲された腰部(28)により前記背部(27)を前記座部(26)に対してシンクロチルト可能に傾動自在とする変形自在部を構成すると共に、前記座の傾動角度βを決定する座支持手段(7)と前記背もたれの傾動角度αを決定する取付部(78,79)との間において前記腰部(28)の変形にならって変形する切欠部(31)を形成して成ることを特徴とする椅子。
【請求項2】支持脚(5)に支持された支持体(6)と、該支持体(6)に傾動可能に枢結されたバックフレーム(8)と、該バックフレーム(8)及び支持体(6)に連結された座支持手段(7)と、該支持手段(7)に支持される座(14)及び前記バックフレーム(8)に連結される背もたれ(15)を提供する座席体(2)とから成る椅子において、
前記座支持手段(7)は、座席体(2)の背もたれ(15)を後方に傾動したとき座(14)を傾動せしめるが、背もたれの傾動角度αと座の傾動角度βを、α>βに制限するシンクロチルト機構を構成すると共に、座(14)の前部(47)をリフトせしめるリフト機構を構成して成り、
前記座席体(2)は、着座者の尻を支持する座部(26)と、着座者の背を支持する背部(27)と、該座部(26)及び背部(27)の間において屈曲された腰部(28)とを一体成形して成る全体が可擁性を有する合成樹脂製のインナーシェル(17)を含み、
前記インナーシェル(17)は、座部(26)を前記座支持手段(7)に対して取付ける一方、背部(27)をバックフレーム(8)の起立部に対して取付部(78,79)を介して取付固定し、前記バックフレーム(8)の傾動時に、前記座支持手段(7)とバックフレーム(8)の取付部(78,79)との間において、前記屈曲された腰部(28)により前記背部(27)を前記座部(26)に対してシンクロチルト可能に傾動自在とする変形自在部を構成すると共に、前記座の傾動角度βを決定する座支持手段(7)と前記背もたれの傾動角度αを決定する取付部(78,79)との間において前記腰部(28)の変形にならって変形する切欠部(31)を形成して成り、
更に、前記インナーシェル(17)の背部(27)は、バックフレーム(8)の前記取付部(78,79)を固着せしめられる下方背部(33)と、該バックフレーム(8)の上端よりも上方に延設され且つ水平面内で撓み可能な上方背部(34)とを構成して成ることを特徴とする椅子。」にあるものと認める。
【2】上記の拒絶査定に対して、審判請求人(特許出願人)であるステイールケイス インコーポレイテツドは、平成10年6月24日付けで審判請求し、その請求の理由において、概ね、
「(a)本願は、分割出願として適法である。原査定(異議決定)が新規事項であると認定した事項は、全て原出願の出願当初の明細書及び図面に開示された範囲に属しており、何ら新規事項ではない。
(b)従って、本願は、特許法第44条第2項の規定による出願日の遡及が認められ、その出願日は、原々出願の出願日である昭和62年4月10日とみなされ、更には、1986年(昭和61年)4月10日の優先権主張が認められるべきである。
そうすると、特許異議申立人(株式会社イトーキ)が提出した甲第2号証(特開昭63-23620号公報)及び甲第3号証(特開平2-57209号公報)は、何れも本願の出願よりも後の刊行物であるから、特許法第29条第2項は適用されない。」
と述べ、原査定を取り消して特許をすべきものであるとの審決を求めている。
【3】そこで、上記【2】(a)および(b)の請求の理由について、それぞれ検討する。
(A)、請求の理由(a)について、
(A-1)上記請求の理由(a)に関連して、特許異議の決定の第4頁第2〜10行には、
『分割の適法性について検討すると、原出願の出願当初の明細書及び図面には、本願の書く[注:「書く」は、「各」が正しいものと考えられる。]請求項に係る発明が構成要件としている、インナーシェル(17)が、座部(26)と背部(27)の間において屈曲された腰部(28)とを一体成形して全体が可擁性を有し、腰部(28)[注:「腰部(28)」の後に、「が」が脱落しているものと考えられる。]バックフレーム(8)の傾動時に背部(27)を座部(26)に対して傾動自在とする変形自在部を構成すると共に、座支持手段(7)と取付部(78,79)との間において前記腰部(28)の変形にならって変形する切欠部(31)を形成して成る点について、記載されていない。』と記載されている。
(A-2)ところで、原出願の当初明細書(以下、「原明細書」という。また、原々出願の当初明細書を、以下、「原々明細書」という。)には、
イ.その第14頁第4〜12行(原審において特許異議申立人株式会社イトーキが甲第1号証として提出した特開平3-242113号公報の第4頁右下欄第4〜12行、および同じく甲第2号証として提出した原々出願に係る特開昭63-23620号公報の第4頁右下欄第19行〜第5頁左上欄第7行参照。)に、
『椅子背部5と椅子座部6も単一つまり一体状のシェル2a´に型成形され、あらゆる種類の仕事及びその他の活動の行為中に使用者が椅子2内で自然且つ自由に動けるように、シェル2a´がクッション組体18を支持する。椅子シェル2a´は通常その型成形時の形状を保持する弾性、半剛性の合成樹脂材料で構成されるが、後で詳述するようにある程度の屈曲を可能とする。』
と記載され、
ロ.その第18頁第16行〜第19頁第8行(甲第1号証公報第5頁右下欄第16行〜第6頁左上欄第8行、および甲第2号証公報第6頁左上欄第11行〜右上欄第3行参照。)に、
『椅子シェル2a´(第13図)[注:第13図には、符号2a´が存在せず、符号2a´は第2図に示されている2aが正しいものと解される。]は、椅子座部6の後部31[注:第13図には、符号31が存在せず、「後部」を示す符号は第13,14図に示されている32が正しいものと解される。]と前部37[注:甲第2号証公報では、「全部37」と誤記されている。]の中間に位置したほぼ弧状の屈曲領域50を含む。第11図及び第12図に最も明瞭に示されているように、椅子シェル2a´は型成形された一体状のユニットであるため、屈曲領域50が椅子背部5を、椅子座部6に対し同期傾斜軸7に沿って旋回するのを可能とする必要がある。図示の例において、屈曲領域50は所定のパターンで椅子シェル2a´を貫いて延びた複数の細長いスロット51を有して成る。各スロット51が椅子シェル2a´を屈曲領域50で選択的にくり抜き、同期傾斜軸7を中心とした回転に倣らって屈曲するのを可能とする。』
と記載され、
ハ.その第22頁第7〜12行(甲第1号証公報第6頁右下欄第7〜12行、および甲第2号証公報第7頁左上欄第2〜7行参照。)に、
『直立溶接物組立体75は一対の剛性でS字状の直立支柱76、77を含み、これらの直立支柱はリブスロット64(第14図)の巾とほぼ等しい距離だけ横方向に離間するとともに、一対の横ストラップ78、79によって相互に固着結合されている。』
と記載され、
ニ.その第36頁第10〜14行(甲第1号証公報第10頁右上欄第10〜14行、および甲第2号証公報第10頁左下欄第5〜9行参照。)に、『椅子座部6の下面の取付パッド55(第13図)が後方アームストラップ100の係合する締め具孔112(第20図)に受け入れられるように、後方アームストラップ100が制御装置3上で調整される。』
と記載され、
ホ.その第37頁第12〜15行(甲第1号証公報第10頁左下欄第12〜15行、および甲第2号証公報第10頁右下欄第7〜10行参照。)に、
『4本のネジ切り締め具160(第4図)が直立[注:「直立」は、「横」が正しいものと考えられる。]ストラップ78、79の噛み合い孔を貫いて伸び、椅子背部5に取り付けられた締め具ナット25で固定される。』
と記載され、
へ.その第46頁第17〜20行(甲第1号証公報第12頁右下欄第17〜20行、および甲第2号証公報第13頁左上欄第12〜15行参照。)に、
『椅子背部5が後方に傾斜すると、回りヒンジ52が湾曲し、屈曲領域50がたわんで、椅子背部5が共通軸7を中心に椅子座部6に対する相互回転を可能とする。』
と記載され、更に、
ト.その第47頁第1〜7行(甲第1号証公報第13頁左上欄第1〜7行、および甲第2号証公報第13頁左上欄第16行〜右上欄第2行参照。)に、
『椅子背部5が最直立状態にあるとき、スロット51は最も開いており、各スロットの巾はその長さに沿ってほぼ一様である。椅子背部5が後方に傾斜すると、スロット51の後縁がその対応する前縁の下側に折り込まれてスロットをわずかに閉じ、第12図に示すように特に屈曲領域50の中央部において各スロットの巾を歪ませる。』
と記載されている。
(A-3) 以上の原明細書(原々明細書)における各記載およびそれらの記載に関連する図面(特に、第1〜7,10〜14そして33〜38図参照。)の記載内容等からみて、原明細書(原々明細書)には、
(1)椅子シェル2aが、椅子座部6と椅子背部5の間において屈曲された屈曲領域50とを一体成形して全体が可撓性を有していること、
(2)屈曲領域50が直立溶接物組立体75の傾動時に椅子背部5を椅子座部6に対して傾動自在とする変形自在部を構成していること、そして
(3)後方アームストラップ100と一対の横ストラップ78,79との間において前記屈曲領域50の変形にならって変形する細長いスロット51を形成していること、
がそれぞれ記載されている。
そして、原明細書(原々明細書)における「椅子シェル2a」、「椅子座部6」、「椅子背部5」、「屈曲領域50」、「直立溶接物組立体75」、「後方アームストラップ100」、「一対の横ストラップ78,79」そして「細長いスロット51」は、それらの意味、機能または作用等からみて、それぞれ、順に、本願の各請求項に係る発明における「インナーシェル」、「座部」、「背部」、「腰部」、「バックフレーム」、「座支持手段」、「取付部」そして「切欠部」に対応するから、原明細書(原々明細書)には、本願の各請求項に係る発明が構成要件としている
「インナーシェルが、座部と背部の間において屈曲された腰部とを一体成形して全体が可撓性を有し、腰部がバックフレームの傾動時に背部を座部に対して傾動自在とする変形自在部を構成すると共に、座支持手段と取付部との間において前記腰部の変形にならって変形する切欠部を形成して成る」点、
について記載されているものと認められる。
(B)、請求の理由(b)について、
(B-1)上記請求の理由(b)に関連して、特許異議の決定の第4頁第10〜17行に、
『本願の各請求項に係る発明は原出願の出願当初の明細書及び図面に記載した事項の範囲外の事項を構成要件とするものであるから、本願は、適法な分割出願ということができず、特許法第44条第2項の規定による出願日の遡及を認められないので、本願の出願日は、その現実の出願日である平成5年7月16日であると認める。そのため、本願は優先日として掲げられた1986年4月10日から12か月を経過した後に出願されたものとなり、優先権の主張も認められない。』
と記載されている。
(B-2) しかしながら、上記【3】の(A-3)で述べたように、原明細書(原々明細書)に本願の各請求項に係る発明が構成要件としている事項が記載されている以上、本願は、適法な分割出願であるといえるから、それ故、特許法第44条第2項の規定による出願日の遡及が認められ、本願の出願日は、原々出願の出願日である昭和62年4月10日とみなされ、更には、1986年(昭和61年)4月10日の優先権主張が認められる。
(B-3) そうすると、特許異議申立人(株式会社イトーキ)が提出した甲第2号証(特開昭63-23620号公報、公開:昭和63年1月30日)および甲第3号証(特開平2-57209号公報、公開:平成2年2月27日)は、何れも本願の優先権主張(昭和61年4月10日)よりも後の刊行物であるから、本願の各請求項に係る発明を特許法第29条第2項を適用して特許を受けることができないとすることができない。
【4】以上述べたとおり、原査定の理由によって本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 1999-12-27 
出願番号 特願平5-199135
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A47C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 寛石川 好文二宮 千久  
特許庁審判長 岡田 幸夫
特許庁審判官 大里 一幸
長崎 洋一
発明の名称 椅子  
代理人 中野 収二  

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