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審決分類 審判 査定不服 1項1号公知 取り消して特許、登録 E04H
管理番号 1008671
審判番号 審判1997-2524  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1987-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1997-02-19 
確定日 2000-01-17 
事件の表示 昭和61年特許願第64182号「地下室付き建築物」拒絶査定に対する審判事件〔(平成3年9月6日出願公告、特公平3-58618)、特許請求の範囲に記載された発明の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許をすべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、昭和61年3月24日の出願であって、原審において、平成3年9月6日に出願公告されたところ、平成3年11月28日に古賀産業株式会社から特許異議の申立がなされ、平成8年9月13日に特許異議の申立は理由があるものと決定され、同日にその理由によって拒絶査定されたものである。
2.本願発明の要旨
本願発明の要旨は、特許法第64条の規定による平成4年8月5日付けの手続補正書により補正された出願公告された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「地面に形成せる地下穴に、鋼製パネルよりなる屋根パネル、壁パネルおよび床パネルを建込んで地上建屋の荷重・動き等に耐え得るように箱形に構築せる地下室の上方に、地上建屋を構築連設して成る地下室付き建築物において、前記地下室の上部を、地上建屋の略布基礎高さまで地上に突出させて地上建屋の布基礎として併用すると共に、該地下室の屋根パネル上の壁パネル上方近傍の位置に型鋼よりなる補強梁を架設固着し、該補強梁上に地上建屋を構築連設することにより、地上建屋の荷重を補強梁および屋根パネルを介して地下室の壁パネルにて支持せしめるようにして成ることを特徴とする地下室付き建築物。」
3.原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由となった特許異議の決定の理由の概要は、特許異議申立人が提出した甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す「地面の地下穴に、屋根パネル、壁パネルおよび床パネルを建て込んで構築される地下室の上部を地上建屋の略布基礎高さまで地上に突出させて地上建屋の布基礎として併用すると共に、前記地下室の屋根パネル上の壁パネル上方近傍位置に、型鋼よりなる補強梁を架設固着し、その補強梁上に地上建屋を構築連設し、地上建屋の荷重を補強梁および屋根パネルを介して地下室の壁パネルにて支持せしめるようにした地下室付き建築物」が、本願出願前に建築物展示場において、秘密を保つべき義務を有さない第三者に公然知られ得る状態で施工された事実は、平成7年7月28日特許庁審判廷で行われた証人尋問における証人小山友義及び高瀬隆二の証言によってこれを認めることができるとし、そして、上記の「地下室付き建築物」は、本願発明の要旨と同一の構成を備えているので、本願発明は、本願の出願前国内において公然知られた発明であると認められ、特許法第29条第1項第1号の規定に該当し、特許を受けることができない、というにある。
4.証拠に示された発明
平成7年7月28日特許庁審判廷で行われた証人尋問における証人小山友義及び証人高瀬隆二にした証人尋問調書の証言によれば、甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す発明は、以下のものであるとするのが相当である。
「地面に形成せる地下穴に、鋼製パネルよりなる屋根パネル、壁パネルおよび床パネルを建込んで箱形に構築せる地下室の上方に、地上建屋を構築連設して成る地下室付き建築物において、前記地下室の上部を、地上建屋の略布基礎高さまで地上に突出させて地上建屋の布基礎として併用し、地下室の屋根パネル上にコンクリートを介して軽量H型鋼よりなる土台梁を架設固着し、該土台梁上に地上建屋を構築連設することより成ることを特徴とする地下室付き建築物」
また、同じ証人尋問調書の証言によれば、甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す発明は、以下のものであるとするのが相当である。
「地面に形成せる地下穴に、鋼製パネルよりなる屋根パネル、壁パネルおよび床パネルを建込んで構築せる地下室の上方に、地上建屋を構築連設して成る地下室付き建築物において、前記地下室の屋根パネル上にじかに土台梁、柱、上梁等からなる地上建屋の骨組みを設置固着して成ることを特徴とする地下室付き建築物」
5.対比・判断
そこで、本願発明と上記甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す公知発明とを比較すると、
本願発明と上記甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す公知発明とは、
「地面に形成せる地下穴に、鋼製パネルよりなる屋根パネル、壁パネルおよび床パネルを建込んで箱形に構築せる地下室の上方に、地上建屋を構築連設して成る地下室付き建築物において、前記地下室の上部を、地上建屋の略布基礎高さまで地上に突出させて地上建屋の布基礎として併用し、地下室の屋根パネル上に型鋼よりなる梁を配設し、該梁上に地上建屋を構築連設して成ることを特徴とする地下室付き建築物」である点で一致しているが、
(1)本願発明は、梁が型鋼よりなる補強梁であるのに対して、上記甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す公知発明は、梁が軽量H型鋼よりなる土台梁である点。
(2)本願発明は、屋根パネル上に(じかに)補強梁を固着しているのに対して、上記甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す公知発明は、屋根パネル上にコンクリートを介して土台梁をアンカーボルトで固着している点。及び
(3)本願発明は、地下室の屋根パネル上の壁パネル上方近傍の位置に補強梁を架設固着しているのに対して、上記甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す公知発明は、必ずしも地下室の屋根パネル上の壁パネル上方近傍の位置にのみ土台梁を架設固着してはいない点。
で相違しており、
そして、本願発明は、上記相違点における事項を構成要件とすることにより、明細書第7頁第6〜14行に記載の「地上建屋Aの荷重を補強梁7、7、……および屋根パネル2、2、……を介して地下室Bの壁パネル3、3、……にて支持せしめるようにしているので、種々の力が加わった時に前記補強梁7、7、を通じて地上建屋Aと地下室Bとが一体的に作用し、従って、従来に比して強度上も経済上も合理的であり、又、地上建屋Aと地下室Bとが別個に動くおそれもなく、地上建屋Aの不同沈下や地下室Bの不同浮上も防止することができ」るという作用効果を奏するものであると認められ、この作用効果は上記甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す公知発明によっては奏することができないものということができる。
よって、本願発明は、上記甲第1号証の1〜5に添付された写真及び甲第3号証の3〜6に添付された図面に示す公知発明と同一であるとすることができない。
また、本願発明と上記甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す公知発明とを比較すると、
本願発明と上記甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す公知発明とは、
「地下に、鋼製パネルよりなる屋根パネル、壁パネルおよび床パネルを建込んで箱形に構築せる地下室の上方に、地上建屋を構築連設して成る地下室付き建築物において、前記地下室の屋根パネル上に地上建屋を構築連設して成ることを特徴とする地下室付き建築物」である点で一致しているが、
(1)本願発明は、地下室の屋根パネル上の壁パネル上に補強梁を架設固着しているのに対して、上記甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す公知発明は、地上建屋の骨組みをなす土台梁を架設固着している点。及び
(2)本願発明は、地下室の上部を、地上建屋の略布基礎高さまで地上に突出させて地上建屋の布基礎として併用するのに対して、上記甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す公知発明では、この点が不明である点。
(3)本願発明は、地下室の屋根パネル上の壁パネル上方近傍の位置に型鋼よりなる補強梁を架設固着し、該補強梁上に地上建屋を構築連設することにより、地上建屋の荷重を補強梁および屋根パネルを介して地下室の壁パネルにて支持せしめるようにして成るのに対して、上記甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す公知発明は、そのようになっていない点。
で相違している。
そして、本願発明は、上記相違点における事項を構成要件とすることにより、明細書第7頁第6〜18行に記載の「地上建屋Aの荷重を補強梁7、7、……および屋根パネル2、2、……を介して地下室Bの壁パネル3、3、……にて支持せしめるようにしているので、種々の力が加わった時に前記補強梁7、7、を通じて地上建屋Aと地下室Bとが一体的に作用し、従って、従来に比して強度上も経済上も合理的であり、又、地上建屋Aと地下室Bとが別個に動くおそれもなく、地上建屋Aの不同沈下や地下室Bの不同浮上も防止することができ、更に加うるに、地下室Bを形成すると同時に、地上建屋Aの布基礎も形成できるため、地上建屋Aの布基礎の施工作業を省略乃至削減することもできる。」という作用効果を奏するものであると認められ、この作用効果は上記甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す公知発明によっては奏することができないものということができる。
よって、本願発明は、上記甲第4号証の1〜7に添付された写真に示す公知発明と同一であるとすることができない。
6.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由によっては、拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 1999-12-06 
出願番号 特願昭61-64182
審決分類 P 1 8・ 111- WY (E04H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎井波 猛  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 阿部 綽勝
白樫 泰子
発明の名称 地下室付き建物  
代理人 西澤 利夫  

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