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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02B |
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管理番号 | 1008721 |
審判番号 | 審判1998-4239 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-03-19 |
確定日 | 2000-01-04 |
事件の表示 | 平成1年特許願第238178号「過給機付エンジンの制御装置」拒絶査定に対する審判事件(平成3年4月25日出願公開、特開平3-100325)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 本願は、平成1年9月13日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成11年10月4日付け手続補正書によって全文補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本件請求項1に係る発明」という。)は次のとおりである。 「吸気通路に、排気ターボ過給機を含む複数の過給機を並列に配設し、この排気ターボ過給機のうち少くとも一つの排気ターボ過給機をセカンダリターボ過給機として該セカンダリターボ過給機専用の排気通路内に排気カット弁を設け、エンジンの高吸入空気領域でのみ排気カット弁を開いてセカンダリターボ過給機を作動させるようにした過給機付エンジンにおいて、 上記排気カット弁は、該排気カット弁が閉じている時に、排気通路内の排気カット弁の可動部分と排気通路構成部材との接触部分が排気ガスと接するように構成されており、 排気カット弁を、エンジン不作動時に閉じ且つエンジン作動時においてアクチュエータの作動力を受けて開くように構成するとともに、 エンジン始動時および停止時に操作されるイグニッションスイッチと、 該イグニッションスイッチからの信号を受け、エンジン始動時と停止時の少なくとも一方の状態時に排気カット弁が所定時間開くように上記アクチュエータを作動させる開弁手段と を設けたことを特徴とする過給機付エンジンの制御装置。」 2.引用例 一方、当審における拒絶の理由で引用した特開昭60-156934号公報(以下、「第1引用例」という。)には、公報第2頁左上欄第3行〜左下欄第6行の『第1図において、エンジンEの排気系Eχは、その排気ポートに排気マニホールド1を介して連結される排気主管2およびそれより分岐される第1,第2排気分岐管3,4を備えており、それら分岐管3,4はそれぞれ後述する第1,第2排気タービンT1,T2を介装したのち集合され、排気マフラMを介して大気に連通される。またエンジンEの吸気系Inは、その吸気ポートに吸気マニホールド5を介して連通される吸気主管6およびそれより分岐される第1,第2吸気分岐管7,8を備えそれら分岐管7,8はそれぞれ後述する第1,第2コンプレッサC1,C2を介装したのちエアクリーナAcを介して大気に連通される。前記第1排気分岐管3の途中と前記第1吸気分岐管7の途中とに跨って第1ターボ過給機Tu1が介装される。この第1ターボ過給機Tu1は、従来公知の構造のものであって、第1排気タービンT1とこれに連結駆動されるコンプレッサC1とを備えており、第1排気タービンT1は第1排気分岐管3の途中に介装され、該第1排気分岐管3を流れる排気の排気エネルギによって駆動される。また前記第1コンプレッサC1は第1吸気分岐管7の途中に介装され、該第1吸気分岐管7内を流れる吸気(吸入空気もしくは混合気)を予圧する。また前記第2排気分岐管4の途中と前記第2吸気分岐管8の途中とに跨って第2ターボ過給機Tu2が介装される。この第2ターボ過給機Tu2も従来公知の構造のものであって、第2排気タービンT2と、これに連結駆動される第2コンプレッサC2とを備えており、第2排気タービンT2は第2排気分岐管4の途中に介装され、該第2排気分岐管4を流れる排気の排気エネルギによって駆動される。また前記第2コンプレッサC2は第2吸気分岐管8の途中に介装され、該第2吸気分岐管8内を流れる吸気(吸入空気もしくは混合気)を予圧する。』なる記載、同第2頁左下欄第9〜13行の『前記第2排気分岐管4の、第2排気タービンT2よりも上流側には、開閉弁9が介在され、この開閉弁9は、第1コンプレッサC1よりも下流側の第1吸気分岐管7内の吸気圧力をうけて作動され、その吸気圧力が所定値以上になると開弁される。』なる記載、同第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第14行の『次に本発明の実施例の作用について説明すると、いまエンジンEが運転され、それが排気流量の少ない低負荷運転域にあるときは、開閉弁9は閉じているので、排気は排気主管2より第1排気分岐管3のみを通り、小容量の第1ターボ過給機Tu1を駆動したのち排気マフラMを通って大気に放出される。エンジン負荷の上昇にともなって第1排気分岐管3より第1排気タービンT1へと流れる排気流量が漸次増量されると、これによる排気エネルギの増加に伴ない第1ターボ過給機Tu1の過給圧力が増大し、第1吸気分岐管7内の吸気圧力は第2図実線Aに示すような特性をもってエンジンEの過給運転が行われる。エンジンが高負荷運転へと移行し、第1吸気分岐管7内の過給圧が所定値PB1に達すると、この圧力をうけて前記開閉弁9が開弁され、排気主管2の排気は第2排気分岐管4へも分流して大容量の第2ターボ過給機T2をも駆動しはじめる。そして第2排気分岐管4への排気流量が増大して設定値に達すれば、第2ターボ過給機T2による第2吸気分岐管8内の過給圧は第2図2点鎖線Bに示すように昇圧する。そして第2吸気分岐管8内の圧縮空気は第1吸気分岐管7内の圧縮空気と合流して吸気主管6、吸気マニホールド5を通ってエンジンEの燃焼室へと導入される。』なる記載、及び第1図の記載内容等からみて、 「第1,第2吸気分岐管7,8に、ターボ過給機Tu1,Tu2を並列に配設し、このターボ過給機Tu1,Tu2のうちのターボ過給機Tu2を第2ターボ過給機Tu2として該第2ターボ過給機Tu2専用の第2排気分岐管4内に開閉弁9を設け、エンジンEの高吸入空気領域でのみ開閉弁9を開いて第2ターボ過給機Tu2を作動させるようにした過給機付エンジンにおいて、 開閉弁9を、エンジンE不作動時に閉じ且つエンジンE作動時においてアクチュエータの作動力を受けて開くように構成する、 過給機付エンジンの制御装置。」 が記載されている。 同じく引用した実願昭57-11231号(実開昭58-114841号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、明細書の実用新案登録請求の範囲の記載、及び第1図の記載内容等からみて 「エンジン2の排気路3に介設されたタービン5の回転によりエンジン2の吸気路4に介設された圧縮機6を駆動し、エンジン2に吸気を過給する過給機1に設けられ、前記排気路3のタービン5の入口側に接続されたタービン迂回路11と、この迂回路11を所定時にのみ開成する常時閉成のゲート弁12と、このゲート弁12に連結した弁棒13と、この弁棒13を保持した可動壁部材15と、可動壁部材15の弁棒13と反対側面に密閉室16bを形成するハウジング14と、この密閉室16bに前記圧縮機6の吐出圧を導入する導管18とを備えた過給機1の制御装置において、前記密閉室16bにエアタンク21の圧力を導入する導管20を接続し、この導管20に所定時にのみ開成する常時閉成の電磁弁23を設け、この電磁弁23はエンジン2のスタータスイッチ25に連動し、このスイッチ25の投入瞬間時に開成して前記エアタンク21圧力を前記密閉室16bに導入するものとした過給機1の制御装置。」 が記載され、 明細書第2頁末行〜第3頁第11行に『このような従来の過給機の制御装置にあっては、ゲート弁が高回転高負荷時にのみ開成動作するようになっているため、排気ガスの熱や不純物等によってゲート弁が固着化し、所要時に不作動となる場合があるという欠点があった。本考案の目的は、このような従来の欠点を解消し、常に制御機能を確保することができる過給機の制御装置を提供することにある。本考案は、スタータスイッチの投入ごとにゲート弁を開成させ前記固着化を防止するようにしたことを特徴とする。』なる記載がある。 3.対比 そこで、本件請求項1に係る発明と第1引用例に記載された発明とを対比すると、後者の「第1,第2吸気分岐管7,8」,「ターボ過給機Tu1,Tu2」,「第2ターボ過給機Tu2」,「第2排気分岐管4」,「開閉弁9」は、それぞれ、その機能からみて、前者の「吸気通路」,「排気ターボ過給機」,「セカンダリターボ過給機」,「排気通路」,「排気カット弁」に相当する。 したがって、両者は、 「吸気通路に、排気ターボ過給機を含む複数の過給機を並列に配設し、この排気ターボ過給機のうち少くとも一つの排気ターボ過給機をセカンダリターボ過給機として該セカンダリターボ過給機専用の排気通路内に排気カット弁を設け、エンジンの高吸入空気領域でのみ排気カット弁を開いてセカンダリターボ過給機を作動させるようにした過給機付エンジンにおいて、 排気カット弁を、エンジン不作動時に閉じ且つエンジン作動時においてアクチュエータの作動力を受けて開くように構成する、 過給機付エンジンの制御装置。」 の点において一致し、以下の点で相違する。 前者が「排気通路内に設けた排気カット弁は、該排気カット弁が閉じている時に、排気通路内の排気カット弁の可動部分と排気通路構成部材との接触部分が排気ガスと接するように構成されており、エンジン始動時および停止時に操作されるイグニッションスイッチからの信号を受け、エンジン始動時と停止時の少なくとも一方の状態時に排気カット弁が所定時間開くようにアクチュエータを作動させる開弁手段を設けた」のに対し、 後者が「排気通路内に排気カット弁を設けるように構成されている」が、「該排気カット弁が閉じている時に、排気通路内の排気カット弁の可動部分と排気通路構成部材との接触部分が排気ガスと接するように構成され」ておらず、また、「エンジン始動時および停止時に操作されるイグニッションスイッチからの信号を受け、エンジン始動時と停止時の少なくとも一方の状態時に排気カット弁が所定時間開くようにアクチュエータを作動させる開弁手段を設け」ていない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 第2引用例には、「エンジン2の排気路3に介設されたタービン5の回転によりエンジン2の吸気路4に介設された圧縮機6を駆動し、エンジン2に吸気を過給する過給機1に設けられ、前記排気路3のタービン5の入口側に接続されたタービン迂回路11と、この迂回路11を所定時にのみ開成する常時閉成のゲート弁12と、このゲート弁12に連結した弁棒13と、この弁棒13を保持した可動壁部材15と、可動壁部材15の弁棒13と反対側面に密閉室16bを形成するハウジング14と、この密閉室16bに前記圧縮機6の吐出圧を導入する導管18とを備えた過給機1の制御装置」において、排気ガスの熱や不純物等によってゲート弁が固着化し、所要時に不作動とならないようにするることを目的として、「前記密閉室16bにエアタンク21の圧力を導入する導管20を接続し、この導管20に所定時にのみ開成する常時閉成の電磁弁23を設け、この電磁弁23はエンジン2のスタータスイッチ25に連動し、このスイッチ25の投入瞬間時に開成して前記エアタンク21圧力を前記密閉室16bに導入する」構成が記載されており、すなわち、「エンジン始動時に操作されるスタータスイッチからの信号を受け、エンジン始動時の状態時に排気路に設けたゲート弁が所定時間開くようにアクチュエータを作動させる開弁手段を設ける」事項が記載されており、しかも、「排気通路内に設けた排気カット弁を、該排気カット弁が閉じている時に、排気通路内の排気カット弁の可動部分と排気通路構成部材との接触部分が排気ガスと接するように構成する」ことは、請求人が平成11年10月4日付け意見書の第5頁第23〜26行において『一般にセカンダリターボ過給機の排気カット弁は、所謂回動式の弁で、排気カット弁が閉じている時に、排気カット弁の可動部分と排気通路構成部材との接触部分が排気ガスと接するように構成された弁が使用されます。』と述べているように従来周知の技術事項(必要なら、特開昭55-123313号公報の「給気圧コントロール排気弁10」,実開昭59-114423号公報の「第1の排気バイパス弁9」、参照。)であるから、引用例1に記載の発明に、引用例2に記載の上記事項を適用するに当たって、上記従来周知の技術事項を考慮して、本件請求項1に係る発明のような構成とする程度のことは、必要に応じて当業者が格別困難なくなし得ることにすぎない。 そして、本件請求項1に係る発明の効果は、第1,第2引用例に記載された発明及び従来周知の技術事項から予測し得る程度のものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、第1,2引用例に記載された発明及び従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-10-20 |
結審通知日 | 1999-10-29 |
審決日 | 1999-11-09 |
出願番号 | 特願平1-238178 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 礒部 賢、山本 穂積 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 清水 信行 |
発明の名称 | 過給機付エンジンの制御装置 |
代理人 | 前田 弘 |