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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C02F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C02F |
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管理番号 | 1008775 |
異議申立番号 | 異議1999-70371 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-08-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-01-29 |
確定日 | 1999-11-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2784904号「トイレ排水管のスケール防止剤」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2784904号の特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第2784904号発明は、平成7年8月23日に特願昭61-95648号(昭和61年4月24日出願)の分割出願として出願され、平成10年5月29日にその特許の設定登録がなされたものである。 これに対し、その後日産化学工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内に特許異議意見書が提出されたものである。 2.本件発明の要旨 本件発明の要旨は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものにあると認める。 「1.トイレ排水管に固着したスケールを除去することなく、トイレ排水管へのスケールの固着のみを防止するトイレ排水管のスケール固着防止剤であって、カルシウムイオンと反応してpH5〜8.5の範囲の水に対する溶解度が0.001g/100g(水)以下の塩を生成しない固体酸を有効成分とし、尿または尿と洗浄水との混合排水のpHを5〜8.5に保持しうるように、昇華性基材を20重量%以上含有せしめた成形体からなることを特徴とするトイレ排水管のスケール固着防止剤。」 3.取消理由通知 (1)取消理由及び証拠 これに対し、当審が取消理由通知で指摘した理由及び証拠は、本件発明は、引用例(特開昭61-21200号公報:昭和61年1月29日公開)に記載された発明であるか、この発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 (2)引用例の記載内容 引用例には、次の事項が記載されている。 ▲1▼「(1)スケール防止有効成分をパラジクロルベンゼンを基材として成形してなるスケール防止剤」(第1頁左欄) ▲2▼「(7)スケール防止有効成分を、パラジクロルベンゼンを基材として成形してなるスケール防止剤、給排水系の流水中または、該系に合流する水と大気とが交互に接触する場所に設置し、・・・流水中に溶解させることを特徴とする給排水系のスケール防止方法」(第1頁右欄) ▲3▼「(8)スケール防止剤の設置場所が、男子用トイレの便器内である特許請求の範囲(7)項記載のスケール防止方法」(第1頁右欄) ▲4▼「本発明において、スケール防止有効成分は、水中に存在するスケール生成成分の水への溶解度を上昇させ、配管系へのスケールの析出固着を防止し得る物質もしくは、配管壁の表面状態を変え、スケールの析出固着を防止し得る物質であり、かつ、パラジクロルベンゼンと混合して、成形し得るものであればいづれをも使用することができる。たとえば、前者として、固体酸、キレート剤等が挙げられ、」(第2頁下段左欄第19行乃至右欄第7行) ▲5▼「固体酸としては、常温で固体であり、かつ、スケールの主成分であるカルシウムと反応して、水に対する溶解度が、0.01g/100g(水)以上の塩を生成し得る酸性物質たとえばスルファミン酸、硫酸水素ナトリウム・・・等を使用することができる。」(第2頁下段右欄第9行乃至第15行) ▲6▼「本発明において、スケール防止剤中のパラジクロルベンゼンの含有量は、10〜90重量%、好ましくは、30〜70重量%であり、スケール防止有効成分の含有量は、その種類によっても異るが90〜10重量%、好ましくは70〜30重量%である。」(第3頁下段左欄第1行乃至第5行) ▲7▼「本発明において、スケール防止剤は、スケール防止剤、パラジクロルベンゼン・・・からなる混合物の成形体であり、球状・・・等の任意の形状の成形体である。」(第3頁下段左欄第6行乃至第11行) ▲8▼「このようにパラジクロルベンゼンの昇華と、スケール防止有効成分の水中への溶解が交互に行われることにより、長時間に渉るスケール防止が可能となる。」(第4頁下段左欄第3行乃至第6行) ▲9▼「実施例5 パラジクロルベンゼン:30重量部、粉末スルファミン酸:60重量部および常温で固体のポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル:10重量部とからなる混合物を・・・フレークとした。このフレークを・・・加圧成形し直径40mmの球状成形体を得た。・・・該成形体の投入を継続した便器は若干の汚れは認められるものの、スケールの付着は認められなかった。」(第6頁左欄第1行乃至第19行) (3)当審の判断 上記引用例には、「トイレ配水管のスケール防止剤」に係り、具体例として、「パラジクロルベンゼン:30重量部、粉末スルファミン酸:60重量部および常温で固体のポリオキシエチレンジノニルフェニルエーテル:10重量部とからなる混合物の成形体からなるトイレ配水管のスケール防止剤」が記載されている。 ここで、引用例に記載の「パラジクロルベンゼン」は本件発明の「昇華性基材」に相当し、「スルファミン酸」は本件発明の「カルシウムイオンと反応して、水に対する溶解度が0.001g/100g(水)以下の塩を生成しない固体酸」に相当するから、上記引用例には、「カルシウムイオンと反応して水に対する溶解度が0.001g/100g(水)以下の塩を生成しない固体酸を有効成分とし、昇華性基材を20重量%以上含有せしめた成形体からなることを特徴とするトイレ排水管のスケール固着防止剤。」が記載されていると云える。 そこで、本件発明と上記引用例に記載の発明(以下、「引用発明」という)とを対比すると、本件発明は、 (イ)「トイレ排水管に固着したスケールを除去することなく、トイレ排水管へのスケールの固着のみを防止するスケール固着防止剤」である点 (ロ)「尿または尿と洗浄水との混合排水のpHを5〜8.5に保持しうるスケール固着防止剤」である点、の二点で上記引用発明と相違していると云える。 次に、これらの点について検討するに、上記引用例には、引用発明がトイレのスケール付着を防止することが可能である旨の記載まではあるが、このスケール付着防止が、「混合排水のpHを5〜8.5に保持」して達成するという上記(ロ)の点については何ら示唆されていないから、本件発明は、上記引用例に記載された発明であるとすることはできない。 また、上記引用例には、本件発明の上記(イ)の点、すなわちトイレのスケール固着防止をスケールの溶解除去ではなく、固着のみの防止によって達成するという技術思想を示す記載も見当たらないから、上記(ロ)の点は、上記引用例の記載から当業者が容易に想到することができたものと云うこともできない。 そして、本件発明は、上記(イ)及び(ロ)の点によって、特許明細書及び平成11年10月26日付け上申書に記載のとおりの効果を奏するものと認められる。 してみると、本件発明は、上記引用例に記載された発明であるとすることはできないし、また上記引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることもできない。 4.特許異議申立ての概要 (1)特許異議申立ての理由 特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証(上記引用例と同じ)を提出して、本件発明は、上記甲第1号証に記載された発明であるから、本件発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に違反してなされたものであり、特許法第114条第2項の規定により取り消されるべきであると主張している。 (2)当審の判断 この主張については、上記3.(3)で述べたとおりであるから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。 4.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-11-11 |
出願番号 | 特願平7-237643 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C02F)
P 1 651・ 113- Y (C02F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 石井 淑久、石井 良夫、松井 佳章 |
特許庁審判長 |
沼澤 幸雄 |
特許庁審判官 |
山田 充 野田 直人 |
登録日 | 1998-05-29 |
登録番号 | 特許第2784904号(P2784904) |
権利者 | 日本曹達株式会社 |
発明の名称 | トイレ排水管のスケール防止剤 |
代理人 | 萼 経夫 |
代理人 | 中村 壽夫 |
代理人 | 廣田 雅紀 |