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審決分類 審判 全部申し立て 特29条の2  G11B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G11B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G11B
管理番号 1008829
異議申立番号 異議1997-74855  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1988-09-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-10-16 
確定日 1999-10-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第2601491号「磁気ディスク構造及びその製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2601491号の特許請求の範囲第1項ないし第4項に記載された発明についての特許を取り消す。 
理由 I.手続きの経緯
本件特許第2601491号の特許請求の範囲各項に係る各発明は、昭和62年11月16日(パリ条約による優先権主張1987年2月25日、米国)に出願されたものであって、平成9年1月29日に設定登録され、その後、特許異議申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年7月27日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされ、その訂正拒絶理由通知に対して手続補正書が提出されたものである。
II.訂正の適否について
(a)訂正請求に対する補正の適否について
上記補正は、訂正請求書の訂正事項aにおいて訂正するところの訂正明細書の特許請求の範囲の記載に関し、(1)中に、「前記基層上に成層された第1の層と、」とあるのを「前記基層上に無電解メツキにより成層されたニッケルとリンを含む第1の層と、」、(4)中に、「前記基層上に第1の層を成層する過程と、」とあるのを、「前記基層上にニッケルとリンを含む第1の層を無電解メッキにより成層する過程と、」と補正し、その補正に関連して、訂正請求書の訂正原因イについて補正するものであるところ、上記特許請求の範囲に関する補正は、特許請求の範囲の減縮に該当、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、変更するものでもない。さらに、上記補正内容は、訂正明細書に記載されており、新規事項の追加にも該当しない。
よって、上記補正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合するので、当該補正を認める。
(b)訂正の内容
特許権者は、特許登録時の特許請求の範囲の記載である、「(1)基層と、真空蒸着により前記基層上に成層された第1の層であってB,Al,Ga,In,C,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,S,Se及びTeからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とニッケルとを含む該第1の層と、前記第1の層の上に成層された磁気記録媒体とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。
(2)前記第1の層がスパッタリングにより形成されたニッケルーリン合金を含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の磁気ディスク構造。
(3)前記磁気記録媒体の表面に保護膜が形成されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の磁気ディスク構造。
(4)前記少なくとも1つの元素がBからなることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の磁気ディスク構造。
(5)基層と、前記基層上に真空蒸着により成層されたニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上の磁気記録媒体の層とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。
(6)前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層は、ニッケルと元素の周期律表におけるIIIA,IV A,V A及びVI A族に属する少なくとも1つの他の元素とよりなることを特徴とする特許請求の範囲第5項に記載の磁気ディスク構造。
(7)磁気ディスクを製造するための方法であって、基層を準備する過程と、B,Al,Ga,In,C,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,S,Se及びTeからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とニッケルとを含む第1の層を真空蒸着により前記基層上に成層する過程と、前記第1の層上に磁気記録媒体からなる層を成層する過程とを有することを特徴とする製造方法。
(8)前記第1の層がニッケルーリン層を含むことを特徴とする特許請求の範囲第7項に記載の製造方法。
(9)前記ニッケルーリン層がスパッタリングにより形成されることを特徴とする特許請求の範囲第8項に記載の製造方法。
(10)前記磁気記録媒体の層を形成する過程が、磁気記録媒体をスパッタリングする過程からなることを特徴とする特許請求の範囲第9項に記載の製造方法。
(11)前記磁気記録媒体が、約600 0eよりも大きな固有保持度を有する合金からなることを特徴とする特許請求の範囲第7項に記載の製造方法。
(12)前記磁気記録媒体がコバルト及び白金を含む合金からなることを特徴とする特許請求の範囲第7項に記載の製造方法。
(13)前記基層が、ガラス、セラミック、アルミニウム及びニツケルーリンがメッキされたアルミニウムからなる群から選ばれた材料を含むことを特徴とする特許請求の範囲第7項に記載の製造方法。
(14)前記基層がテープからなることを特徴とする特許請求の範囲第7項に記載の製造方法。
(15)前記磁気記録媒体の表面に保護膜を形成する過程を含むことを特徴とする特許請求の範囲第7項に記載の製造方法。
(16)前記保護膜が、スパッタリングされた炭素、ZrO2,SiO2,TiO2及びTaOからなる群から選ばれた材料からなることを特徴とする特許請求の範囲第15項に記載の製造方法。
(17)前記少なくとも1つの元素がBからなることを特徴とする特許請求の範囲第7項に記載の製造方法。
(18)磁気ディスクを製造するための方法であって、基層を準備する過程と、前記基層上に真空蒸着により、ニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層を成層する過程と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上に磁気記録媒体の層を成層する過程とを有することを特徴とする製造方法。
(19)前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層は、ニッケルと元素の周期律表におけるIII A,IV A,V A及びVI A族に属する少なくとも1つの他の元素とよりなることを特徴とする特許請求の範囲第18項に記載の製造方法。」とあるのを、
「(1)基層と、前記基層上に無電解メッキにより成層されたニッケルとリンを含む第1の層と、スパッタリングにより前記第1の層上に成層された第2の層であってニッケルとリンを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである該第2の層と、前記第2の層の上に成層された磁気記録媒体とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。
(2)前記磁気記録媒体の表面に保護膜が形成されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の磁気ディスク構造。
(3)ガラス基層と、前記基層上にスパッタリングにより成層されたニッケルとリンを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上の磁気記録媒体の層とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。
(4)磁気ディスクを製造するための方法であって、基層を準備する過程と、前記基層上にニッケルとリンを含む第1の層を無電解メッキにより成層する過程と、ニッケルとリンを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである第2の層をスパッタリングにより前記第1の層上に成層する過程と、前記第2の層上に磁気記録媒体からなる層を成層する過程とを有することを特徴とする製造方法。
(5)前記磁気記録媒体の層を形成する過程が、磁気記録媒体をスパッタリングする過程からなることを特徴とする特許請求の範囲第4項に記載の製造方法。
(6)前記磁気記録媒体が、約600 0eよりも大きな固有保持度を有する合金からなることを特徴とする特許請求の範囲第4項に記載の製造方法。
(7)前記磁気記録媒体がコバルト及び白金を含む合金からなることを特徴とする特許請求の範囲第4項に記載の製造方法。
(8)前記磁気記録媒体の表面に保護膜を形成する過程を含むことを特徴とする特許請求の範囲第4項に記載の製造方法。
(9)前記保護膜が、スパッタリングされた炭素、ZrO2,SiO2,TiO2及びTaOからなる群から選ばれた材料からなることを特徴とする特許請求の範囲第8項に記載の製造方法。
(10)磁気ディスクを製造するための方法であって、ガラス基層を準備する過程と、前記基層上にスパッタリングにより、ニッケルとリンを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層を成層する過程と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上に磁気記録媒体の層を成層する過程とを有することを特徴とする製造方法。」、と訂正するものである。
(c)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張、変更の存否
検討するに、本件特許の特許請求の範囲第1項に係る発明(本件第1発明という。)は、基層-第1の層-磁気記録体という層構造であるのに対し、訂正明細書の特許請求の範囲第1項に係る発明(以下、訂正第1発明という。)は、基層-第1の層-第2の層-磁気記録媒体という層構造になっており、両者は、層構造が異なる。したがって、訂正第1発明は、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。
なお、特許権者は、平成11年4月5日提出の意見書において、原13項の記載からみると、基層は第1の層をも包括しているものであって、基層は特別な限定がない場合には第1の層を包括するものであるとの趣旨の意見を述べているが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄及び図面の記載をみても、基層は特別な限定がない場合には第1の層を包括するとの趣旨の記載はみあたらない。むしろ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄の記載及び図面の記載からみれば、基層と第1層とは別々の構成要件であって、原13項の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄の記載及び図面の記載に基づかないものといわざるをえない。そして、本件第1発明の技術的参酌は、発明の詳細な説明の欄及び図面の記載によってなされるべきであり、発明の詳細な説明の欄及び図面からみると、基層と第1層とは別々の構成要件であるから、特許権者の上記意見には無理がある。
また、本件第1発明においては、真空蒸着により第1の層を成層するとしているのに対し、訂正第1発明においては、スパッタリングにより第2の層を成層するとしているが、スパッタリングは真空蒸着の下位概念ではないので、訂正第1発明は、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。
なお、特許権者は、平成11年4月5日提出の意見書において、スパッタリングは真空蒸着の下位概念であると述べているが、本件の特許明細書第35頁第15〜17行には、「スパッタリングに代えて、蒸着等の他の手段によりアンダーコート膜を形成することもできる。」と記載されており、スパッタリングと蒸着とは別の手段とみるベきである。また、特許権者が意見書に添付して提出した乙第1号証の第6頁下から4〜5行目には、「thermal vaporization(vacuum deposition)or sputtering(sputter deposition)in a vacuum」と記載されており、真空蒸着とスパッタリングとは別々の手段としている。さらにまた、同号証のFigure1.1によれば、Vacuum Depositionの下位にSputteringとEvaporationを分類しているところ、coatingにおいては、Evaporationも蒸着であるから、本件特許明細書の上記記載でいうところの蒸着は、このEvaporationに相当するとみるのが自然である。そして、このような見方は、例えば、共立出版株式会社昭和46年5月10日発行の「結晶工学ハンドブック」の第460頁に記載されるところの分類に一致する。ただ、分類法が如何にあったとしても、本件特許との関係で、スパッタリングと真空蒸着とがいかなる関係にあるかは、本件特許明細書の記載によるべきであり、前述したとおり、この点に関しては、「スパッタリングに代えて、蒸着等の他の手段によりアンダーコート膜を形成することもできる。」と記載されているのであるから、スパッタリングが真空蒸着の下位概念であるとすることはできない。また、特許権者は、原2項は本件第1発明を引用しており、スパッタリングは真空蒸着の下位概念であるというべきであるとの趣旨の意見を述べているが、特許明細書の発明の詳細な説明の欄の記載には、前記したとおりであって、スパッタリングが真空蒸着の下位概念である旨の記載はない。したがって、原2項の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄の記載及び図面の記載に基づかないものといわざるをえない。そして、本件第1発明の技術的参酌は、発明の詳細な説明の欄及び図面の記載によってなされるべきであり、発明の詳細な説明の欄及び図面からみると、スパッタリングは真空蒸着の下位概念ではないから、特許権者の意見には無理がある。
また、本件特許の特許請求の範囲第5項に係る発明、すなわち、「基層と、前記基層上に真空蒸着により成層されたニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上の磁気記録媒体の層とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。」(以下、本件第2発明という。)を、「ガラス基層と、前記基層上にスパッタリングにより成層されたニッケルとリンとを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上の磁気記録媒体の層とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。」(以下、訂正第2発明という。)と訂正しているが、スパッタリングは真空蒸着の下位概念ではないので、訂正第2発明は、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。
本件特許の特許請求の範囲第7項に係る発明(本件第3発明という。)は、基層-第1の層-磁気記録体という層構造の製造方法であるのに対し、訂正明細書の特許請求の範囲第4項に係る発明(以下、訂正第3発明という。)は、基層-第1の層-第2の層-磁気記録媒体という層構造の製造方法になっており、両者は、層構造が異なる。したがって、訂正第3発明は、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。また、本件第3発明においては、真空蒸着により第1の層を成層するとしているのに対し、訂正第3発明においては、スパッタリングにより第2の層を成層するとしているが、スパッタリングは真空蒸着の下位概念ではないので、訂正第3発明は、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。
また、本件特許の特許請求の範囲第18項に係る発明(以下、本件第4発明という。)は、真空蒸着により、ニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層を成層するとしているのに対し、訂正明細書の特許請求の範囲第10項に係る発明(以下、訂正第4発明という。)においては、スパッタリングにより第2の層を成層するとしており、スパッタリングは真空蒸着の下位概念ではないので、訂正第4発明は、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。
(d)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
III.特許異議申立について
(本件発明)
特許第2601491号の各発明は、特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「(1)基層と、真空蒸着により前記基層上に成層された第1の層であってB,Al,Ga,In,C,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,S,Se及びTeからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とニッケルとを含む該第1の層と、前記第1の層の上に成層された磁気記録媒体とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。
(5)基層と、前記基層上に真空蒸着により成層されたニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上の磁気記録媒体の層とを有することを特徴とする磁気ディスク構造。
(7)磁気ディスクを製造するための方法であって、基層を準備する過程と、B,Al,Ga,In,C,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,S,Se及びTeからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とニッケルとを含む第1の層を真空蒸着により前記基層上に成層する過程と、前記第1の層上に磁気記録媒体からなる層を成層する過程とを有することを特徴とする製造方法。
(18)磁気ディスクを製造するための方法であって、基層を準備する過程と、前記基層上に真空蒸着により、ニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層を成層する過程と、前記アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上に磁気記録媒体の層を成層する過程とを有することを特徴とする製造方法。」
(引用刊行物)
当審が通知した取消理由で引用した特願昭60-297630号(特開昭62-157323号公報)には、第2頁左上欄第5〜8行、第2頁右下欄第17行〜第3頁左上欄第16行の記載、第3頁左上欄の第1表の記載からみて、「アルミ合金等からなる非磁性基板と、スパッタリングにより形成したニッケル・リン合金、酸化アルミニウム等の硬化層、クロム、チタン等からなる下地層、その上に形成されたクロムーニッケル合金磁性層とからなる磁気ディスク。」(以下、先願第1発明という。)、「アルミ合金等からなる非磁性基板上に、スパッタリングによりニッケル・リン合金、酸化アルミニウム等の硬化層、クロム、チタン等からなる下地層、その上に形成されたクロムーニッケル合金磁性層とを形成する磁気ディスクの製造方法」(以下、先願第2発明という。)が記載されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭61-260420号公報(以下、刊行物2という。)には、磁気ディスク媒体及び磁気ディスク媒体の製造方法に関する発明が記載されており、「磁性体の下に設けた非磁性層を少なくともニッケル、タングステン、リンを含む合金としたことを特徴とする磁気記録体。」(特許請求の範囲の欄)、「またニッケルータングステンーリン合金下地層の形成方法は、上記の組成及び厚さに形成できれば化学めっき、電気めっき等のめっき法であっても、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の気相成長法であっても特に制限はない。」(第2頁右下欄第4〜9行)、「まずアルミニウム合金板をドーナッツ状に打抜いた後、両面を平坦かつ平滑に仕上げてアルミ基体1とした。つぎに脱脂、亜鉛置換を行なった後、本発明によるニッケルータングステンーリン合金下地膜6を無電解めっき法で形成した。めっき液主成分およびめっき条件は第1表(a)に示すものである。この下地膜6の表面を機械的研摩により、表面あらさ0.01μm程度までに平坦かつ平滑に仕上げた。その後、硫酸コバルト、次亜リン酸ナトリウムを主成分とするめっき液を用いて、無電解めっき液によりコバルトーリン磁性体7を0.07μmの厚さに形成した。ついで磁性体7の上にケイ素のアルコレート等の有機錯体溶液を回転塗布した後、310℃で1時間焼成して酸化ケイ素からなる保護膜4を約0.08μmの厚さに形成して磁気ディスクを作成した。上記の無電解めっき法により形成したニッケルータングステンーリン合金下地膜は非晶質、非磁性であり、第2表に示すようにタングステン含有率は0.1at%、リン含有率は16.2at%であった。この下地膜は320℃、1時間の加熱を行なった後も非晶質、非磁性を保っており、上記の焼成後も当然非晶質、非磁性であった。」(第3頁左上欄第16行〜右上欄第19行)と説明されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭62-9526号公報(以下、刊行物3という。)には、「工程、(a)約250Aより小さい表面荒さを有する支持体を準備し、(b)実質的に非磁性のニッケルーバナジウム層をほぼ10ミクロン以下の厚さにスパッターし、そして(c)少なくとも1つの磁性層を析出してディスクに固有の記録媒体を形成する、ことを特徴とする薄いフィルムのディスクを製作する方法。」(特許請求の範囲第1項)、及び、「支持体(基層)上にニッケルーバナジウムスパッタ層を形成し、この上に磁性層を形成した磁気ディスク」が記載されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭59-177726号公報(以下、刊行物4という。)には、「本発明はAl合金からなるディスク基板の表面をアルマイト処理することに代えて、上記ディスク基板表面にメッキ法によりNi-P層を形成し、このNi-P層の平滑化処理された表面にCo-Cr系薄膜等の強磁性Co系垂直磁化記録層を形成した構造の垂直磁気ディスク記録媒体にある。」(第2頁右上欄第13〜19行)、「図中1はAl合金からなるディスク基板であり、適当な表面精度に研摩処理されている。このAl合金からなるディスク基板1の表面に、メッキ法によってNi-P層2,3が50μm程度の膜厚に形成される。このNi-P層2,3はディスク基板1の両面に設けられ、内部的な応力の発生を相殺するものとなっている。しかしてNi-P層2,3の硬さは、そのメッキ法やP濃度にもよるが、一般にヴィッカース硬度で約400程度に設定される。尚、P濃度(wt%)は5%〜25%の範囲であることが望ましい。即ち、Pが25%以上となるメッキ法ではこれをNiに入れることは困難であり、また5%以下ではNi-Pはアモルファス状態でも強磁性でかつ硬度も低いからである。尚、このNi-P層2,3を熱処理して、さらに高硬度化することも可能である。このようにして形成されたNi-P層2,3の表面を研摩、研削加工等を施してその面精度を十分に高くする。しかるのち、上記Ni-P層2の平滑化された表面に磁化記録層としてのCo-Cr系薄膜4をスパッタリングによって1μm以下の厚さに形成して垂直磁気ディスク記録媒体が完成される。尚、上記Co-Cr系薄膜4のスパッタリング形成は、例えば圧力5mTorrのArガス雰囲気中で、前記ディスク基板1の温度を120〜220℃に加熱して行われる。」(第2頁左下欄第12行〜右下欄第18行)と説明されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭57-71518号公報(以下、刊行物5という。)には、磁気記録媒体及びその製造方法に関する発明が記載されており、「本発明は、複数の磁性金属層と特定の中間非磁性体層を有する改善された磁気特性を有する金属薄膜型磁気記録媒体に関する。」(第1頁左下欄第14〜16行)、「磁気記録媒体は、基板上に、下地金属層2,第一磁性金属層3a,中間非磁性体層4,第二磁性金属層3bおよび保護膜5を順次に形成してなる。」(第2頁右上欄第16〜18行)、「下地金属層2は、基板1と磁性金属層3aとの密着性改善、基板1に存在する粗面、結晶欠陥等の磁性金属層3aに対する可能な悪影響を除くために必要に応じて設けられたものであり、無電解メッキ法、電解(気)メッキ法、蒸着法、スパッタリング法等任意の方法で、たとえば厚み0.01〜100μ、好ましくは0.1〜80μに形成される。下地金属層2の構成材料は、非磁性の金属材料である限りいかなるものでも良いが、好ましくは後述する中間非磁性体層4と同様に2価のニッケルイオンと次亜リン酸イオンを含むメッキ浴を用いて電気メッキ法により形成したP1〜15%を含有する非磁性Ni基合金が特に好ましく用いられる。」(第2頁右下欄第3〜15行)、「磁性金属層3aおよび3bは、本質的に同じものであり、それぞれ電気メッキ法又は無電解メッキ法等の常法に従い、たとえばNi-Co-P合金、Co-P合金等の薄膜を形成する。」(第2頁第18行〜第3頁左上欄第1行)と説明されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭61-51619号公報(以下、刊行物6という。)には、磁気ディスク記録媒体及びその製造方法に関する発明が記載されており、「磁気ディスクにおける下地層及び磁性層の内部ひずみを緩和し、これを起因するクラック発生を防止するために種々の研究を重ねた」(第2頁右上欄第8〜11行)、「すなわち、本発明は、円板状の非磁性硬質基板上に薄膜下地層及び薄膜磁性層を有する磁気記録媒体」(第2頁右上欄第17〜19行)、「次に、この基板上に施す下地層の材料としては、ニッケル、ニッケルーリン、クロム、パーマロイ、チタンなどが用いられる。また、この上に設けられる磁性層の材料としては、鉄、コバルト、クロム、ニッケルそれらの合金及びそれらにケイ素、ホウ素、リン、バナジウム、ロジウム、亜鉛、銅、銀、タングステン、マンガン希土類などを添加してものなどが用いられる。この下地層及び磁性層を基板上に施す方法としては、メッキ、スパッタリング、イオンプレーテイング、真空蒸着など従来磁気ディスクの製造に常用されている方法の中から任意に選らずことができるが、条件制御の容易な点で磁性層の形成にはスパッタリングが有利である。」(第2頁右下欄第3〜16行)と説明されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭58-77028号公報(以下、刊行物7という。)には、「可撓性基板上に下地層を有し、当該下地層上に、薄膜磁性層を有する磁気記録媒体において、上記下地層がチタン合金から形成されてなることを特徴とする磁気記録媒体。」の発明が記載されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭58-185026号公報(以下、刊行物8という。)には、磁気記録媒体に関する発明が記載されており、「可とう性の基板上に、Co-P系またはCo-Ni-P系の磁性層と、チタン又はチタン合金からなる非磁性層とを交互に積層してなることを特徴とする磁気記録媒体」(特許請求の範囲の欄)、「チタンの他、本発明において用いられるチタン合金としては、チタンを主成分とする各種合金を用いることができる。これらのうち、特に好適なものとしては、Al、Mn、V、CrおよびFeのうちの少なくとも1種を、好ましくは40wt%位か、より好ましくは0.1〜40wt%、さらに好ましくはI〜30wt%含むものを挙げることができる。」(第3頁左下欄第12〜19行)と説明されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭58-133624号公報(以下、刊行物9という。)には、磁気記録媒体に関する発明が記載されており、「コバルトクロミウム合金薄膜を用いた垂直磁化記録媒体において、チタニウムもしくはチタニウム合金を基板としてその表面にコバルトクロミウム合金薄膜を形成したことを特徴とする磁気記録媒体。」(特許請求の範囲の欄)、「チタニウム合金はAl、Fe、V、Cr、W、Biなどを一種もしくは複数種添加して得られる。」(第2頁左下欄第11〜13行)と説明されている。
同じく、当審が通知した取消理由で引用した特開昭58-182129号公報(以下、刊行物10という。)には、磁気記録媒体及びその製造方法に関する発明が記載されており、「本発明は、気体上に、複数のCo-P系またはCo-Ni-P系磁性層を、30〜200Åの厚さの非磁性の中間層を介して積層してなることを特徴とする磁気記録媒体である。」(第2頁右上欄第19行〜左下欄第4行)、「このような基体上には、好ましくは非磁性の下地層が設けられ、非着性や膜の均一性の向上等が図られる。下地層の材質としては、特に制限はなく、Al、Ag、Cu、Sn、Mo、Zn、Ni、Cr、Cu-Be等の各種単一金属ないし合金や、SiO2、Al2O3等の酸化物などの各種化合物等いずれを用いてもよい。ただ、通常は、製造の容易さから、後述の非磁性の中間層と同一の材質とする。このような下地層の厚さについて特に制限がないが、通常は、50〜5000Å程度とされる。また、下地層の形成は、スパッタリング、蒸着、イオンプレーテイング、いずれの気相被着法によってもよいが、磁性層の形成は、後述のように、スパッタリングを用いるのが好ましいので、製造の容易さからすると、スパッタリングに従うのがよい。」(第2頁左下欄第17〜16行)と説明されている。
(判断)
そこで、本件第1発明と上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明とを対比すると、
(i)上記刊行物2には、アルミ合金基体、下地膜、磁性体、保護膜からなる磁気ディスク媒体の発明が記載されており、本件第1発明における基層、基層上に成層された第1の層、第1の層の上に成層された磁気記録媒体とを有する磁気ディスク構造であるとする点に相当する、
(ii)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、アルミ合金基体の上に、ニッケルータングステンーリン合金下地膜を設けるようにしており、本件第1発明において、B,Al,Ga,In,C,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,S,Se及びTeからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とニッケルとを含む第1の層を設けるとする点に相当する、
(iii)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、下地層上に磁性体を設けており、本件第1発明において、磁気記録媒体が第1の層の上に成層されて設けられている点に相当する。
したがって、本件第1発明と上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。
本件第1発明においては、第1の層を真空蒸着により成層したとしているのに対し、上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、下地層を無電解めっき法で形成している点
そこで、上記相違点について検討するに、上記刊行物2には、「ニッケルータングステンーリン合金下地層への形成方法は、上記の組成及び厚さに形成できれば化学めっき、電気めっき等のめっき法であっても、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の気相成長法であっても特に制限はない。」(第2頁右下欄第4〜9行)と示唆されているから、上記刊行物2の磁気ディスク媒体の下地層を真空蒸着により成層することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、その他刊行物等を検討するまでもなく、本件第1発明は、上記刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
次に、本件第2発明と上記刊行物2記載の磁気ディスクの発明とを対比すると、
(iv)上記刊行物2には、アルミ合金基体、下地膜、磁性体、保護膜からなる磁気ディスク媒体の発明が記載されており、本件第2発明における基層、基層上に成層された層およびその層の上に磁気記録媒体の層とを有する磁気ディスク構造であるとする点に相当する、
(v)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、アルミ合金基体の上に、非晶質のニッケルータングステンーリン合金下地膜を設けるようにしており、本件第2発明において、基層上に成層されたニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層を設けるとする点に相当する、
(vi)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、下地層上に磁性体を設けており、本件第2発明において、磁気記録媒体がアモルファス若しくは殆どアモルファスである層上に成層されているとする点に相当する。
したがって、本件第2発明と上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。
ニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層(刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、非晶質のニッケルータングステンーリン合金下地膜)を設けるに際し、本件件第2発明においては、真空蒸着により成層したとしているのに対し、上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、無電解めっき法で形成している点
そこで、上記相違点について検討するに、上記刊行物2には、「ニッケルータングステンーリン合金下地層の形成方法は、上記の組成及び厚さに形成できれば化学めっき、電気めっき等のめっき法であっても、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の気相成長法であっても特に制限はない。」(第2頁右下欄第4〜9行)と示唆されているから、上記刊行物2の磁気ディスク媒体の下地層を真空蒸着により成層することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、その他刊行物等を検討するまでもなく、本件第2発明は、上記刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
次に本件第3発明と上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明とを対比すると、
(vii)上記刊行物2には、アルミ合金基体を準備し、そのアルミ合金基体上に下地膜を設け、その下地膜上に磁性体を設けるようにした磁気ディスク媒体の製造方法に関する発明が記載されており、本件第3発明における、基層を準備する過程と、第1の層を基層上に成層する過程と、第1の層上に磁気記録媒体からなる層を成層する過程とを有する製造方法であるとする点に相当する、
(viii)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明においては、アルミ合金基体の上に、ニッケルータングステンーリン合金下地膜を設けるようにしており、本件第3発明において、B,Al・Ga,In,C,Si,Ge,Sn,Pb,P,As,Sb,Bi,S,Se及びTeからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素とニッケルとを含む第1の層を基体上に成層する過程を有するとする点に相当する、
(ix)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明においては、下地層上に磁性体を設けるようにしており、本件第3発明において、磁気記録媒体が第1の層の上に成層されて設けられる過程を有するとする点に相当する。
したがって、本件第3発明と上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。
本件第3発明においては、第1の層を真空蒸着により成層したとしているのに対し、上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明においては、下地層を無電解めっき法で形成している点
そこで、上記相違点について検討するに、上記刊行物2には、「ニッケルータングステンーリン合金下地層の形成方法は、上記の組成及び厚さに形成できれば化学めっき、電気めっき等のめっき法であっても、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の気相成長法であっても特に制限はない。」(第2頁右下欄第4〜9行)と示唆されているから、上記刊行物2の磁気ディスク媒体の製造方法において、下地層を真空蒸着により成層するとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、その他刊行物等を検討するまでもなく、本件第3発明は、上記刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
次に本件第4発明と上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明とを対比するに、
(x)上記刊行物2には、アルミ合金基体を準備し、そのアルミ合金基体上に下地膜を設け、その下地膜上に磁性体を設けるようにした磁気ディスク媒体の製造方法に関する発明が記載されており、本件第4発明における、基層を準備する過程と、その基層上に層を成層する過程およびその層の上に磁気記録媒体からなる層を成層する過程とを有する製造方法であるとする点に相当する、
(xi)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明においては、アルミ合金基体の上に、非晶質のニッケルータングステンーリン合金下地膜を設けるようにしており、本件第4発明における、ニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層を成層するとする点に相当する、
(xii)上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製建方法の発明においては、非晶質の下地層上に磁性体を設けるようにしており、本件第4発明における、アモルファス若しくは殆どアモルファスである層上に磁気記録媒体の層を成層するとする点に相当する。
したがって、本件第4発明と上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明とは、次の点で相違し、その余では一致する。
ニッケルを含むアモルファス若しくは殆どアモルファスである層(刊行物2記載の磁気ディスク媒体の発明においては、非晶質のニッケルータングステンーリン合金下地膜)を設けるに際し、本件件第4発明においては、真空蒸着により成層したとしているのに対し、上記刊行物2記載の磁気ディスク媒体の製造方法の発明においては、無電解めっき法で形成している点
そこで、上記相違点について検討するに、上記刊行物2には、「ニッケルータングステンーリン合金下地層の形成方法は、上記の組成及び厚さに形成できれば化学めっき、電気めっき等のめっき法であっても、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法等の気相成長法であっても特に制限はない。」(第2頁右下欄第4〜9行)と示唆されているから、上記刊行物2の磁気ディスク媒体の製造方法において、下地層を真空蒸着により成層するとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、その他刊行物等を検討するまでもなく、本件第4発明は、上記刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
エ、むすび
以上のとおり、本件第1発明、本件第2発明、本件第3発明及び本件第4発明は、上記刊行物2記載の発明に基づき当業者が容易に発明できたものであるから、本件第1発明、本件第2発明、本件第3発明及び本件第4発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-05-10 
出願番号 特願昭62-289246
審決分類 P 1 651・ 16- ZB (G11B)
P 1 651・ 121- ZB (G11B)
P 1 651・ 113- ZB (G11B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐藤 敬介  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 麻野 耕一
武井 袈裟彦
登録日 1997-01-29 
登録番号 特許第2601491号(P2601491)
権利者 コマッグ・インコーポレイテッド
発明の名称 磁気ディスク構造及びその製造方法  
代理人 重野 剛  
代理人 大島 陽一  

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