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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04M |
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管理番号 | 1008844 |
異議申立番号 | 異議1999-71807 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-12-12 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-05-11 |
確定日 | 2000-01-05 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2823182号「携帯電話装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2823182号の特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2823182号の発明は、平成6年5月31日に特許出願され、平成10年9月4日にその特許の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人児玉喜博より特許異議申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月4日に特許異議意見書が提出されたものである。 2.特許異議申立てについて ア.本件発明 本件特許第2823182号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「携帯電話装置の筐体を主筐体と、この主筐体に対してヒンジで結合される折り畳み可能な副筐体とで構成し、この副筐体をICメモリカードの幅寸法及び厚さ寸法に形成し、この副筐体の先端部にICメモリカードコネクタを配設し、かつ内部には電話装置と外部機器との電気的接続を行うICメモリカードインターフェース部を備え、前記ICメモリカードコネクタを外部機器に設けたICメモリカードスロットに挿入して外部機器との接続を行うよう構成し、かつ前記ICメモリカードコネクタがICメモリカードスロットに挿入される部分には表示部およびキー部が形成されておらず、前記主筐体に配設されたアンテナが前記ヒンジの回転軸に対して垂直方向に延設された構成とすることを特徴とする携帯電話装置。」 イ.引用刊行物記載の発明 当審が平成11年7月21日に通知した取消理由において引用した刊行物1(特開平4-140895号公報),刊行物2(特開平5-30014号公報)には、それぞれ以下に記載の事項が記載されている。 刊行物1には、「本発明のICカードの具体的形状としては、例えば、折り曲げ自在に連結された2つの部分からなり」(公報第4頁左下欄第11行〜13行)、「第3A図は、本ICカードを2つ折り構造とした例を示している。本ICカードは、ホストに接続する部分に、対ホスト入出力端子と音声入力部(マイク)と液晶表示部(LCD)とを持ち、中心にロッドアンテナを備えた蝶番で、さらに、キーパッドと音声出力部(イヤースピーカ)とを持ち、本ICカードをホストに接続したときに、キーパッドとイヤースピーカとが外部に出る構造となっている。」(公報第8頁右下欄第4行〜12行)、「第2図に示すように、本ICカードインタフェース(I/F)200に、第1図の対ホスト入出力制御部110を接続する。そこで、本ICカードは、CPU120の制御の基に、ホストからICカードI/F200を介して入力したシリアルデータを、対ホスト入出力制御部110により、パラレルデータに変換し、データバッファ130に記憶する。また、データバッファ130に記憶されたパラレルデータを、対ホスト入出力制御部110により、シリアルデータに変換し、ICカードI/Fを介してホストに出力する。このようにして本ICカードは、ホストとデータを入出力する。また、ホストから入力して、データバッファ130に記憶したパラレルデータを、さらに、対モデム入出力制御部150により、シリアルデータに変換し、モデム160を介して、無線電波として受信したデータを、逆のルートをたどって、ICカード/F200を介してホストに出力する。」(公報第8頁左上欄第8行〜同頁右上欄第8行)、「本発明のICカードは、単独で使用することができ、その場合は、無線でデータを送受信することができ、また、無線で音声を送受信することができる。従って、本発明のICカードは、無線電話と同じ効果が得られ、ICカードの機能が増えるという効果がある。」(公報第11頁右下欄第4行〜第10行)ことが記載されている。 また、刊行物2には、「この個別呼出装置30は上述した装置本体1に装着されて本発明の情報処理装置を構成する。しかして、個別呼出装置30は上述したICカード20,21,22と同一形状で上記カード装着部6に挿入される内部に図示しない回路基板が収納された平板上のカード部31aと、このカード部31aより厚い形状で且つ内部にドットマトリックスタイプの表示装置32及び図示しない電池等を収納した肉厚部31bとが一体となった形状となっており、カード31aの側面30aには、上記カード部31aをカード装着部6に挿入した時カード装着部6内部のコネクタ部のコネクタピンと電気的接続する多数のコネクタピン(図示せず)を有する後述するコネクタ部が設けられている。」(公報[0015]欄2行〜15行)ことが記載されている。 ウ.対比・判断 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「ICカード」、「ホスト」、「折り曲げ自在に連結された2つの部分のうちキーパッドと音声出力部を有する部分」、「折り曲げ自在に連結された2つの部分のうちホストに接続する部分」、「蝶番」、「対ホスト入出力制御部、データバッファ、対モデム入出力制御部及びモデム」、「対ホスト入出力端子」、「ロッドアンテナ」は、本件発明の「携帯電話装置」、「外部機器」、「主筐体」、「副筐体」、「ヒンジ」、「ICメモリカードインターフェース部」、「ICメモリカードコネクタ」、「アンテナ」にそれぞれ相当し、また、アンテナの配設に関し、刊行物1に記載された発明と本件発明とは、携帯電話装置の筐体にアンテナを配設される点で差異がなく、さらに、刊行物1に記載された発明において、ホストに「対ホスト入出力端子」に対応する入出力端子、すなわち本件発明の「ICメモリカードスロット」に相当するものがあることは明らかであるから、 両者は、「携帯電話装置の筐体を主筐体と、この主筐体に対してヒンジで結合される折り畳み可能な副筐体とで構成し、この副筐体にICメモリカードコネクタを配設し、かつ内部には電話装置と外部機器との電気的接続を行うICメモリカードインターフェース部を備え、前記ICメモリカードコネクタを外部機器に設けたICメモリカードスロットに挿入して外部機器との接続を行うよう構成し、かつ前記ICメモリカードコネクタがICメモリカードスロットに挿入される部分には表示部およびキー部が形成されておらず、前記筐体に配設されたアンテナを有する携帯電話装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 (1)アンテナを、本件発明では主筐体に配設し、ヒンジの回転軸に対して垂直方向に延設するのに対し、刊行物1に記載された発明では、蝶番の中心に配設し、蝶番の回転軸に対して水平方向に延設する点 (2)副筐体について、本願発明では、副筐体をICメモリカードの幅寸法及び厚さ寸法に形成し、その先端部にICメモリカードコネクタを配設しているのに対し、刊行物1に記載された発明では、寸法について記載されておらず、またICメモリカードコネクタを先端部に配設していない点 そこで、上記相違点(1)(2)について検討する。 相違点(1)について 携帯電話機の筐体が主筐体と、この主筐体に対してヒンジで結合される折り畳み可能な副筐体とで構成される携帯電話機において、主筐体にアンテナを配設し、ヒンジの回転軸に対して垂直方向にアンテナを延設することは、周知の事項(例えば、特開平6-45980号公報を参照)である。そして、刊行物1に記載された発明の2つ折り構造のICカードは、上記2.イ.に記載されるように、単独で無線電話(携帯電話機)として機能するものであるから、上記周知の事項を上記ICカードに適用して、ロッドアンテナを2つ折り構造のICカードのキーパッドと音声出力部(イヤースピーカ)を有する部分に配設し、かつ、蝶番の回転軸に対し垂直方向に延設することは当業者が容易に想到し得たものである。 なお、特許権者は、特許異議意見書において、「主筐体に配設されたアンテナをヒンジの回転軸に対して垂直方向に延設された構成とすることによって、当該アンテナによる受信感度の向上をはかっております」と主張しているが、この作用効果は、刊行物1の発明及び上記周知の事項から当業者が当然予測できる範囲のものにすぎない。 相違点(2)について 刊行物2には、個別呼出装置を情報処理装置に装着するために、個別呼出装置の装着部分の筐体を「外部記憶媒体であるICカード」と同一形状とし、かつ筐体の先端部にコネクタを設ける構成が記載されており、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、無線電話機能を有する携帯通信装置の外部機器への接続に関する技術である点で同一の技術分野に属するものであるから、上記構成を刊行物1の「ICカード」に適用し、「折り曲げ自在に連結された2つの部分のうちホストに接続する部分」を「外部記憶媒体であるICカード」と同一形状、すなわち同一の幅寸法及び厚さ寸法とし、かつその先端部に「対ホスト入出力端子」を配設することは、当業者が容易に想到し得たものである。 エ.むすび 以上のとおりであるから、本件発明は刊行物1及び2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-11-11 |
出願番号 | 特願平6-141055 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(H04M)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 岩井 健二 |
特許庁審判長 |
松野 高尚 |
特許庁審判官 |
山本 春樹 大塚 良平 |
登録日 | 1998-09-04 |
登録番号 | 特許第2823182号(P2823182) |
権利者 | 日本電気株式会社 |
発明の名称 | 携帯電話装置 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 京本 直樹 |