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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B41M |
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管理番号 | 1008848 |
異議申立番号 | 異議1997-75855 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1988-12-08 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1997-12-18 |
確定日 | 1999-10-06 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第2621078号「熱転写シートの製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2621078号の特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2621078号は、昭和62年6月3日に出願され、平成9年4月4日に設定登録され、その後、下山行男、枝木幸二よりそれぞれ特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年5月11日に訂正請求がなされ、訂正拒絶理由通知がなされその指定期間内である平成10年10月26日に訂正請求書についての手続補正がなされたものである。 II.訂正請求書に対する補正の適否 1.補正の内容 平成10年10月26日付手続補正書は、平成10年5月11日付訂正請求書により訂正事項とされた、特許請求の範囲の請求項1における、グラビアロールについての「グラビアロールの版面の各凹部が印刷方向に連結しているグラビアロールを用いる」との規定を「グラビアロールの版面の各凹部が印刷方向に対して垂直方向に連結しているグラビアロールを用いる」とする、該訂正請求書の補正をするというものである。 2.補正に対する当審の判断 訂正請求書の補正により、特許請求の範囲の請求項1におけるグラビアロールについての規定を「版面の各凹部が印刷方向に連結」から「版面の各凹部が印刷方向に対して垂直方向に連結」とする点については、訂正請求書の要旨を変更するものに該当するから、特許法第120条の4第3項において準用する同第131条第2項の規定に違反し、採用することができない。 なお、特許権者は、該特許請求の範囲の補正について、旧請求項1に、旧請求項5の内容を組み込んで、新たな請求項1とするものであり、特許請求の範囲の減縮に相当するものである旨主張するが、該手続補正の基礎となる明細書は、平成10年5月11日付訂正請求書に添付された明細書であり、該訂正請求書により訂正される前の明細書の請求項(旧請求項)を基礎として補正することはできない。 III.訂正請求書による訂正の適否 1.訂正の内容 平成10年5月11日付訂正請求書は、特許請求の範囲の請求項1の記載「基材シートの一方の面に熱移行性染料層を形成してなる、サーマルヘッドを用いて画像を記録するための熱転写シートの製造方法において、上記染料層を、熱移行性染料、バインダー及び液媒体からなる液組成物を基材シートの一方の面の同一領域に少なくとも2回塗工して形成することを特徴とする熱転写シートの製造方法。」を「基材シートの一方の面に熱移行性染料層を形成してなる、サーマルヘッドを用いて画像を記録するための熱転写シートの製造方法において、上記染料層を、熱移行性染料、バインダー及び液媒体からなる液組成物をグラビアロールを用いて同一領域に少なくとも2回塗工して形成する際、グラビアロールの版面の各凹部が印刷方向に連結しているグラビアロールを用いることを特徴とする熱転写シートの製造方法。」と訂正するとともに、該特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の発明の詳細な説明の項の記載についての訂正を求めている。 2.訂正に対する当審の判断 特許請求の範囲の請求項1における「グラビアロールの版面の各凹部が印刷方向に連結しているグラビアロールを用いて塗工する」ことについては、訂正前の願書に添付された明細書又は図面に何ら記載されておらず、示唆もされておらず、又、この点が出願時の技術常識であるとも認められないので、該訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものである。 したがって、平成10年5月11日付訂正請求書による訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する同第126条第2項の規定に適合しない。 なお、特許権者は、該特許請求の範囲の訂正に関して、請求項5の内容を組み込んで、新たな請求項1とするものであり、特許請求の範囲の減縮に相当するものである旨主張するが、請求項5には、「グラビアロールの版面の各凹部が印刷方向に対して垂直方向に連結しているグラビアロールを用いて塗工する」点が記載されるものの、「グラビアロールの版面の各凹部が印刷方向に連結しているグラビアロールを用いて塗工する」点については何ら記載されていないし、また、請求項5に対応する発明の詳細な説明の欄においても、グラビアロールの凹部がロールの回転方向に対して垂直の方向に解放し連続している形式のロールによる塗工で、優れた均一性の染料層を形成できる旨が記載される(本件特許公報第6欄第1〜9行)のみであるから、該訂正請求書による訂正は、特許請求の範囲の減縮に相当するものであるとはいえない。 IV.引用刊行物記載の発明との対比・判断 1.本件発明 本件発明の要旨は、特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。 「基材シートの一方の面に熱移行性染料層を形成してなる、サーマルヘッドを用いて画像を記録するための熱転写シートの製造方法において、上記染料層を、熱移行性染料、バインダー及び液媒体からなる液組成物を基材シートの一方の面の同一領域に少なくとも2回塗工して形成することを特徴とする熱転写シートの製造方法。」 2.引用刊行物 当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開昭62-108086号公報)(特許異議申立人下山行男の提出した甲第1号証)には、「前記バインダおよび染料を含むインク層が2層以上設けられており、上記インク層のうち基材に接する側の少なくとも1層が前記化学式(I)(式については転記を省略)で示される化合物を含むことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の熱転写インクフィルム」(特許請求の範囲第3項)、「染料をバインダに分散させて得られるインクを紙等の薄い耐熱シート上に塗布した熱転写インクフイルムを用い、この背面から発熱ヘッドにより加熱したインク中の染料のみを気化させ、染着性の良い樹脂を表面に塗布した受像紙上に染料を転写させてカラー画像を形成させる」(第1頁下右欄第14〜19行)、「ここに使用される熱転写インクフィルムに対して、画像の発色濃度を高め、コントラストの高い鮮明な画像を得、プリンタの発熱ヘッドにかかる熱エネルギーを少なくし、消費電力を減して発熱ヘッドの寿命を長くできるように、染料を効率良く受像紙上へ転写できるようにする要求があった。」(第2頁上左欄第4〜9行)、「発色濃度を高める目的でインク塗布量を増すとインク膜が厚くなり、それに伴い伝熱効率が低下し染料に供給される熱量が不足するために発熱ヘッドに加える電力を増加させなければ十分な発色濃度が得られないなどの欠点があった。」(第2頁上右欄第4〜9行)、と記載され、化学式(I)の化合物を含まないインク塗布液(昇華性染料、ポリアミド樹脂バインダ、有機溶媒のトルエンとイソプロパノールを配合)を基材シートに同量ずつバーコータで重ねて塗布して熱転写インクフィルムを調製する製造例(第3頁上右欄第3〜16行の比較例参照)、該製造例の熱転写フィルムを使用したカラー画像形成では、サーマルプリンタにより、画像の発色濃度を高め、コントラストの高い鮮明な画像を得るために、サーマルプリンタの発熱ヘッドの加熱を高める必要があるとの実験例(第4頁上左欄下から第6行〜同頁下右欄第6行)が示されている。 3.第29条第1項第3号違反について 刊行物1の製造例における「熱転写インクフィルム」、「昇華性染料」、「有機溶媒」、「インク塗布液」及び「サーマルプリンタの発熱ヘッドの加熱」は、各々、本件発明の「熱転写シート」、「熱移行性染料」、「液媒体」、「液組成物」及び「サーマルヘッドを用いて画像を記録」に相当するから、本件発明と刊行物1に記載される発明とは、「熱移行性染料、バインダー及び液媒体からなる液組成物を基材シートの一方の面の同一領域に少なくとも2回塗工して染料層を形成する、サーマルヘッドで画像記録するための熱転写シートの製造方法」で一致しているから、本件発明は、刊行物1に記載された発明であると認められる。 V.むすび 以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。 よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-08-16 |
出願番号 | 特願昭62-138189 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Z
(B41M)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 菅野 芳男、藤井 勲 |
特許庁審判長 |
高梨 操 |
特許庁審判官 |
伏見 隆夫 六車 江一 |
登録日 | 1997-04-04 |
登録番号 | 特許第2621078号(P2621078) |
権利者 | 大日本印刷株式会社 |
発明の名称 | 熱転写シートの製造方法 |
代理人 | 吉田 勝廣 |
代理人 | 近藤 利英子 |