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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
審判 全部申し立て 発明同一  F16L
管理番号 1008880
異議申立番号 異議1999-71554  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-22 
確定日 2000-01-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2812859号「管内補修装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2812859号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 (1)本件発明
特許第2812859号(平成5年6月25日出願、平成10年8月7日設定登録。)の請求項1ないし4に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】装置本体2と、前記本体2の外周を被蔽し、両端が夫々側蓋8、8に固定されて気密に閉塞され、半径方向に膨張可能なゴム製の第一筒状部3と、前記第一筒状部3の軸方向中間部にその第一筒状部3の半径方向外方に一体的に突出し、前記半径方向外方に移動可能に且つ、内部に気体が出入り自在に圧入されて前記第一筒状部3と共に一体的に膨張可能なゴム製の第二筒状部44と、少なくとも前記第一筒状部3またはその内部に設けられた加熱用のヒータ4と、を具備し、補修剤が塗布された補強布が前記第一筒状部3及び第二筒状部44外周に着脱自在に被着され、その補強布を被補修用配管の交差部に接着するように構成され、軸方向に互いに離間した一対の前記側蓋8、8が前記本体2の回りに回動自在に支持され、両側蓋8、8が側蓋駆動モータ9によりその軸線の回りに任意角度可逆転可能に構成されていることを特徴とする、管内補修装置。
【請求項2】 請求項1において、前記第一筒状部3および第二筒状部44に、それらが夫々の半径方向に拡縮自在となるように、可撓性ヒータが接着または埋設された、管内補修装置。
【請求頃3】 請求項1において、前記本体の端部に設けられたフランジ7に前記本体2をその軸線方向に走行させる走行手段10が設けられた、管内補修装置。
【請求項4】 請求項1において、前記第二筒状部44内にモニター用テレビジョンカメラが設けられた、管内補修装置。」
(2)申立ての理由の概要
申立人佐々木愼一は、証拠として甲第1号証(特願平5-93662号当初明細書・図面(特開平6-281085号))を提出し、請求項1〜4に係る発明の特許は特許法第29条の2の規定に違反(以下、「理由の1」という。)し、また、同証拠として甲第2号証(特開昭63-167193号公報)、甲第3号証(特開昭50-128218号公報)、甲第4号証(特開昭61-179724号公報)及び甲第5号証(欧州特許公開第0462527号公報)を提出し、請求項1〜4に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反(以下、「理由の2」という。)してなされたものであるから、請求項1〜4に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。
(3)申立人が提出した甲各号証記載の発明
甲第1号証には、分岐管接続部の樹脂被覆式管内面補修方法、分岐管接続部の樹脂被覆式管内面補修装置及び分岐管接続部補修材に係る発明が記載されており、特許請求の範囲として、
「加圧空気の供給により拡大してその周面が管路内面に圧着させうるゴム管体を装備し管路内を移動自在である管路内壁補修具を使用」(【請求項1】)、「ゴム管体の外周面に補修材を取り付けたのち、管路内を移動するテレビカメラの誘導でワイヤー牽引により管路内の破損個所へ前記管路内補修具を移動させ」(【請求項1】)、
「ゴム管体に加圧空気を供給してゴム管体を膨張させて、ゴム管体の外周面を破損個所の管路内壁に圧接させて、補修材を所望の補修箇所の管路内壁に圧接させたのち、所定時間補修材を加熱することにより、補修材を所望の補修箇所の管路内壁に圧接させた状態で硬化させて、樹脂被覆式管内面補修作業を完了する」(【請求頃1】)、
「一部に変形エリアを形成した補修材を使用するとともに、遠隔操作で回転自在とした管路内壁補修貝を使用」(【請求項1】)、
「補修材の変形エリアに接するゴム管体の分岐管路内への膨張により、補修材の変形エリアを分岐管路側へ突出させて屈曲状態で、本管と分岐管との接続部の管路内壁へ圧接させ樹脂被膜する」(【請求項1】)、
「変形エリアが複数個の切断線により形成されている補修材を使用」(【請求項2】)、
「変形エリアが中心貫通孔と中心貫通孔の周囲の肉薄または軟質の変形部とで形成されている補修材を使用」(【請求項3】)、
の点が記載され、
実施例として、
(管路内補修具Aは)「内円筒2と外円筒3との二重円筒構造の円筒体1の両端に円板4、4を溶接等により固定して内円筒2と外円筒3との間に環状室Cを形成し内円筒2の内心側に貫通室Dを形成し、前記円筒体の円板4、4にゴム管体5をバンド6による緊筋取付け等の固定手段により密封状態でゴム管体5を円筒体1と一体化してゴム管体5と円筒体1の外円筒3との間に加圧室Eを形成し、外円筒3の外周面に加熱用ヒータ7を巻回して加圧室Eを加熱自在とし、環状室Cに温度センサー8を内装する」(【0006】)、「円筒体1の円板4、4を軸受け21を介して支軸22で軸支して支軸22を中心として円筒体1ゴム管体5および補修材Mを回動自在とし、支軸22を走行輪23で支持される脚24に固定し、環状室Cに内装したモータ25の出力軸に固定したギヤー26と支軸22に固定したギヤー27とを噛合わせて、モーター25の起動で円筒体1、ゴム管体5および補修材Mを走行輪23で支持される脚24に対し任意の相対角度に変更自在とした」(【0007】)、
「円盤4に牽引金具9を固定し、牽引金貝9に一端を接続したワイヤー10をウインチ等による牽引で管路内を移動自在とする。また、円板4には加圧空気供給口11が設けられており、前記加圧空気供給口11に接続したエヤーホース12より加圧空気を供給することで、ゴム管体5を膨らませ加圧室Eを拡大させ、ゴム管体5を管路13の内面に圧接自在とする。」(【0007】)等が図面とともに開示されている。
甲第2号証は、管の分岐部の補修方法に関する発明であって、「(1)合成樹脂やゴム等の弾力性を有する材料で円筒形の挿入筒8を形成し、この挿入筒8の基部にフランジ9を一体に設けて補強パッド7となし、この補強パッド7の前記挿入筒8を管1の内側より分岐管2内に挿入して、フランジ9の外側面を管1の内面に、挿入筒8の外面を分岐管2の内面に密着させて取り付けて管1の分岐部を内側より被覆する管の分岐部の補修方法。」(特許請求の範囲)、及び「第4図は補強パッド7の保持手段を示す‥(中略)‥、エアープラグ29にエアーホース31から空気を供給して膨張させ、接着剤の硬化するまでエアープラグ29を固定しておくものである。そして、このエアープラグ29には、面発熱体を取り付けて加熱することも可能である。‥(中略)‥。そして、補強パッド7の材料は、ポリウレタン、エチレン、‥(中略)‥、ポリエステル等を厚み調整や配合調整によって弾性化したプラスチック、‥(中略)‥比較的伸縮性を有する材料が使用され‥(中略)‥取付手段としては、前記接着剤によるもの‥(中略)‥分岐管に圧入する‥(中略)‥取り付けられ、密着する。」(第2頁下左蘭6行〜同右蘭11行)が記載されており、明細書及び図面の記載を総合すると、甲第2号証には、管の分岐部を補修するに際し、円筒形の挿入筒8やフランジ9とからなる弾性プラスチック材料からなる補強パッド7を自走式の装着装置24で分岐管直下まで搬入し、該補強パッドを装着装置とは別の膨張可能なエアープラグ29で分岐部に押圧保持して被覆、接着させる方法、の発明が開示されている。
甲第3号証は、管路の補修方法及び器具に関する発明であって、明細書及び図面の記載を総合すると、マンホールの如き管路の亀裂部分等の補修部分面に接着剤16が塗布された補修用シート15をセットし、管路内を移動する筒体5に加熱可能な空気を送って筒体外側の伸縮性チューブ14を膨張させ、押圧補修する装置が開示されている。
甲第4号証は、管内面ライニングチューブの分岐孔検知開孔装置に関する発明であって、「回転軸14の外周にはその軸と同心のギヤー16がベース13に固定して設けられ、‥(中略)‥、モータ17の回転により、このモータを支持したベース15が周方向(第3図のZ方向)に回転する。‥(中略)‥、穿孔治具は、回転ベース15に支持されており、このため、本体を停止させたままで管軸方向に移動させかつ円周方向に回転させることが可能である。」(第2頁下右蘭13行〜第3頁上左蘭7行)が記載されており、明細書及び図面の記載を総合すると、牽引ワイヤに引かれて管内を移動する本体1に受像手段と影像手段とからなる分岐孔検知手段を持たせ、管路の分岐管位置でライニングチューブに穿孔を施す穿孔体4の穿孔治具の軸方向スライド及び周方向回転を可能として、治具位置を調整しながら穿孔する装置が開示されている。
甲第5号証は、インライナーの接続管を流路配管系内へ挿入指向させるための方法およびこの方法を実施するための装置に関する発明であって、その明細書中には「図2は引き込まれたインライナーと回転装置とを捕えた流路配管系の、取水管領域における拡大図である。流路区間内において、流路配管系1は、たとえば50mの間隔で互いに離間している2つの流路縦穴2と3により地表と連通している。いくつかの個所において、取水角度の異なる取水管4が側方から流路配管系1に開口している。流路配管系1にはインライナーが引き込まれる。インライナーはいくつかの短管5と、接続管6と、アダプタ(図面には図示せず)から構成されている。各接続管6の管壁には、引き込まれるインライナーを個々の取水管4と連結させるための接続穴7が設けられている。接続管6は、短管5の長さよりも短い一定の長さを有している。接続穴7の横断面は、それぞれの取水管4の間口横断面よりも大きく選定することができる。管5,6は、リフト装置8により出入用縦穴1内へ降ろされ、組み立てプランにしたがって所定の順番で縦穴の底でつなぎ合わされて管列を形成する。‥(中略)‥。管列5,6を引き込んだ後、接続穴7を備えた接続管6は、隣接する短管5に対して自らの長手軸線のまわりに回転するようにして、取水管4の間口部のほうへ指向せしめられる。これは、本発明によれば、受け皿状に形成された可動台11を有する装置を用いて行なわれる。可動台11はスキッド12で支持されており、引張りロープ13によって引張られてインライナー管列5,6内部を走行可能である。可動台11は、両端面に、膨張可能な締め付けリング15を保持するためのリム状の保持部14を有している。締め付けリング15は供給された圧力媒体を介して緊張せしめられ、インライナー管5に対して押圧される。端面側の締め付け要素14,15相互の間隔は1本の接続管6の長さよりも長いので、締め付け要素をそれぞれ1本の接続管6の両側において、隣接する短管5に固定することができる。可動台11上には、インライナー管列5,6の長手軸線上に延びている回転軸17を備えたサーボモータ16が設けられている。回転軸17は支持台18で支持されている。回転軸17には、半径方向に指向され、入れ子式に調整可能なキャリア19が固定されている。キャリア19は回動アームとしてそれぞれの接続管6の接続穴7内へ挿入可能であり、接続管6をサーボモータ16とともに隣接する短管5に対し自らの軸線のまわりに回動させる。同様に可動台11上に取り付けられ、遠隔制御される回動可能なテレビカメラ20がキャリア19に向けられており、このテレビカメラ20により、接続管6の回転運動を良好に観察することができ、従って接続穴7は取水管4の間口部と正確に一致するように指向せしめられる。」こと、及び、甲第5号証の特許請求の範囲には「1.2つの流路縦穴の間に敷設され側方から取水管が開口している流路配管系用に短管とアダプタから組み立てられるインライナーの、接続穴を備えた接続管を挿入し指向させるための方法であって、取水管を接続管の接続穴を介してインライナーと接続させるようにした前記方法において、短管(5)とアダプタと接続管(6)から形成されるインライナー管列を、両流路縦穴(2,3)のうち一方の流路縦穴の底でつなぎ合わせ、その際それぞれ管壁に切込み形成した取水管(4)用の接続穴(7)を備えた予め製造される接続管(6)を、取水管(4)とその前方に設定した縦穴参照点との距離を測定することにより前もって作成された据付プランにしたがって、長手方向において取水管(4)の所定間隔で寸法正確に管列内へ挿入すること、管列を送り装置(9)または引張り装置(9)を用いて配管系(1)内へ押し込み、または引き込み、その際接続管(6)の接続穴(7)を、流路配管系(1)の長手方向において取水管(4)の間口部と一致させること、その後、インライナー管列内で走行可能な回転装置を用いて、各接続管(6)をその長手軸線のまわりに隣接の管(5)に対して回転させ、接続穴(7)をそれぞれの取水管(4)の間口部に対して指向させることを特徴とする方法。
2.請求項1に記載の方法において接続管を回転させるための装置において、インライナー管列内で走行可能で且つ位置固定可能な可動台(11)を有し、可動台(11)が、その両端面に、接続管(6)の長さよりも長い相互の間隔で位置し且つ管内壁に対して押圧可能な締め付け要素(14,15)を有し、これら締め付け要素(14,15)の間に、据付けられた接続管(6)の長手軸練のまわりに回動可能で、接続管(6)に係合可能なキャリア(19)が配置されていることを特徴とする装置。
‥‥中略‥‥。
5.キャリア(19)が、半径方向に指向し且つ長手方向に位置調整可能な回動アームとして形成され、接続管(6)の接続穴(7)に挿入可能であることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか一つに記載の装置。」(異議申立人提出の翻訳文より要部を抜粋)が記載されており、
以上の明細書及び図面の記載から、甲第5号証を総合すると『流路配管系1の2つの流路縦穴の間に敷設され側方から取水管4が開口している流路配管系に、いくつかの短管5と接続管6とアダプタとから構成されるインライナー管列を挿入し、インライナーの接続穴7を備えた接続管6を取水管4と接続させる装置において、インライナー管列内で走行可能で、かつ、接続管の接続位置で接続管6と取水管4とを接続させる管接続用の可動台11に、半径方向に指向し、位置調節可能な入れ子式の回動可能なアームとして形成されていて、接続管6の接続穴7内へ挿入可能に構成されているキャリア19を載置し、同じく、可動台に搭載されたテレビカメラで接続位置の回動を観察しながら管の接続を行う、インライナー管列の接続管と取水管との接続装置』(以下、『甲第5号証の開示事項』という。)が開示されている。
(4)対比・判断
[理由の1について]
(請求項1に係る発明について)
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証に記載された「管路内補修貝A」は、その円筒体1の外周にゴム管体5を被着し、該ゴム管体は、両端が円筒体1の円板4、4に固定されて密封状態に閉塞され、それにより、円筒体との間に加圧空気が圧入自在の加圧室を形成し、加圧空気の供給により膨張して、管路内壁に圧接する、すなわち、半径方向に膨張可能なものであり、加熱用のヒータ7を備え、ゴム管体の外周に補修材Mを取付け、その補修材Mを管路内の分岐管接続部へ圧着するように構成されており、ゴム管体5を固定した円板4、4はモータにより軸線の周りに回転可能となっていることが認められるので、甲第1号証には、本件請求項1の記載にならって記載すると、
「円筒体(装置本体)と、円筒体(装置本体)の外周を被蔽し、両端が夫々円板(側蓋)に固定されて気密に閉塞され、半径方向に膨張可能なゴム管体(ゴム製の第一筒状部)とその内部に設けられた加熱用のヒータを具備し、補修材がゴム管体の外周に被着されその補修材を被補修用配管の分岐管接続部(交差部)に接着するように構成され、軸方向に互いに離間した一対の円板(側蓋)が回動自在に支持されている」構成(かっこ内は本件請求項1に係る発明の相当する記載)が記載されていることが認められるが、本件請求項1に係る発明の構成である、
「第一筒状部3の軸方向中間部にその第一筒状部3の半径方向外方に一体的に突出し、前記半径方向外方に移動可能に且つ、内部に気体が出入り自在に圧入されて前記第一筒状部3と共に一体的に膨張可能なゴム製の第二筒状部44」(以下、「構成A」という。)、および、
「補修剤が塗布された補強布が第二筒状部44外周に着脱自在に被着され」る点(以下、「構成B」という。)についてみると、甲第1号証に記載された「ゴム管体5」が、上記第二筒状部44に相当するような突出部を有することは、甲第1号証には全く記載されていない。また、甲第1号証の図1(b)には、ゴム管体および補修材が分岐管の中に入り込んでいる態様が認められるが、これは、管路内壁補修作業時の加圧空気によるゴム管体および補修材の変形中の状態が示されているものであり、変形前の状態は、図1(a)に示されるように突出部はないことは明らかであり同図3(c)の補修作業完了状態を示す記載も同様であり、これらの記載をもっても上記「構成A」および「構成B」が甲第1号証に記載されているということはできない。
従って、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一のものではない。
(請求項2〜4に係る発明について)
請求項2〜4に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲第1号証に記載の発明と同一のものではない。
以上のとおり、請求項1ないし4に係る発明は特許異議申立人が提出した甲第1号証に記載された発明とは同一の発明ではない。
[理由の2について]
(請求項1に係る発明について)
請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と、甲第2号証記載の発明とを対比すると、両者は、
ア).本件発明では、「装置本体2の外周を被蔽し両端が夫々側蓋8、8に固定されて気密に閉塞され、半径方向に膨張可能なゴム製の第一筒状部3」(以下、「構成a」という。)を有するのに対し、甲第2号証記載の発明では、第4図記載のように補強パッド7を保持してエアープラグ29で半径方向に膨張可能にして押圧することまでは開示しているが上記「構成a」を有しない点、
イ).本件発明では、「第一筒状部3の軸方向中間部にその第一筒状部3の半径方向外方に一体的に突出し、前記半径方向外方に移動可能に且つ、内部に気体が出入り自在に圧入されて前記第一筒状部3と共に一体的に膨張可能なゴム製の第二筒状部44」(以下、「構成b」という。)を有するのに対し、甲第2号証記載の発明ではそのような構成を有しない点、
ウ).本件発明では、「装置本体2と、前記本体2の外周を被蔽し、両端が夫な側蓋8、8に固定されて気密に閉塞され、半径方向に膨張可能なゴム製の第一筒状部3の、少なくとも前記第一筒状部3またはその内部に設けられた加熱用のヒータ4、を具備し」(以下、「構成c」という。)ているのに対し、甲第2号証記載の発明では、「装着装置24とは別体の構成物体であるエアープラグ29に、面発熱体を取り付けて加熱することも可能である」と開示しているが、上記「構成c」のように、装置本体と一体になった発熱体の構成までは開示していない点、
エ).本件発明では、「補修剤が塗布された補強布が前記第一筒状部3及び第二筒状部44外周に着脱自在に被着され、その補強布を被補修用配管の交差部に接着するように構成され」(以下、「構成d」という。)を有するのに対し、甲第2号証記載の発明ではそのような構成を有しない点、及び、
オ).本件発明では、「軸方向に互いに離間した一対の前記側蓋8、8が前記本体2の回りに回動自在に支持され、両側蓋8、8が側蓋駆動モータ9によりその軸線の回りに任意角度可逆転可能に構成されている」(以下、「構成e」という。)のに対し、甲第2号証記載の発明ではそのような構成を有しない点、でそれぞれ相違し、その他の点では一致する。
すなわち、両発明とも、分岐管の分岐部に熱硬化性樹脂を含浸する補強パッドのような補強布を管の内側から当接し、その内側から膨張部材(甲第2号証ではエアープラグに相当)をエアーで膨張させ、補強布を加熱硬化させる管内補修方法およびTVカメラを具備する装置が開示されている点で一致するものと認められる。
次に、上記の相違点について検討する。
(相違点アについて)
甲第3号証には、lマンホールの如き管路の亀裂部分等の補修部分面に接着剤16が塗布された補修用シート15をセットし、管路内を移動する筒体5に加熱可能な空気を送って筒体外側の伸縮性チューブ14を膨張させ、押圧補修する装置」が記載されており、管路内を移動する筒体の外側の伸縮性チューブが本件発明のゴム製の第1筒状部に相当する構成に当たり、同様の作用を奏するものと認められるが、上記相違点イ)〜オ)の構成b〜eに相当する構成は開示されていない。
(相違点イについて)
甲第4号証には、「牽引ワイヤに引かれて管内を移動する本体1に受像手段と影像手段とからなる分岐孔検知手段を持たせ、管路の分岐管位置でライニングチューブに穿孔を施す穿孔体4を有する装置」が開示されているが、これは管路の分岐管位置でライニングチューブに穿孔を施す穿孔体4を設けることを特徴とする装置であって、本件発明のように、第一筒状部3及び第二筒状部44の構成を示唆する記載はない。よって、これから上記相違点イ)〜オ)の構成b〜eを想到して本件発明とすることは困難である。
また、甲第5号証にも、相違点イ)の構成bに相当する記載はない。
(相違点ウについて)
甲第4号証及び甲第5号証には、構成cを示唆する事項はなんら記載されていない。
(相違点エについて)
甲第2号証は、装着装置を取り除いた上で、装着装置とは別体のエアープラグ29を挿入し、該エアープラグを膨張させて、弾性プラスチック材料からなる補強パッドを、分岐管に押圧して取り付け、密着させることを開示しているが、本件発明の「補強布が第一筒状部3及び第二筒状部44外周に着脱自在に被着され、その補強布を被補修用配管の交差部に接着するようになす」構成までは、記載されていないし、示唆もしていない。
また、甲第4号証及び甲第5号証には、構成dを開示・示唆する記載はない。
(相違点オについて)
甲第4号証には、穿孔治具の周方向回転を調整可能とする管内面ライニングチューブの分岐孔検知開孔装置が記載されているが、本件発明の「軸方向に互いに離間した一対の前記側蓋8、8が前記本体2の回りに回動自在に支持され、両側蓋8、8が側蓋駆動モータ9によりその軸線の回りに任意角度可逆転可能に構成されている」点までは十分に開示、示唆しているとは認めがたい。
また、甲第5号証には、接続管6を回動させる点、及び、テレビカメラ20を回動可能に配置する点は一応記載されているが、本件の「軸方向に互いに離間した一対の前記側蓋8、8が前記本体2の回りに回動自在に支持され、両側蓋8、8が側蓋駆動モータ9によりその軸線の回りに任意角度可逆転可能に構成されている」点までは十分に開示、示唆しているとは認めがたい。
以上、甲第3号証〜甲第5号証には、相違点ア)〜オ)で示した構成a〜eのうち、構成bを記載するものはない。さらに、構成a、c、d、及びeについては、それらの一部を示唆する記載はあるが、該構成に相当する記載としては不十分であり、当業者がそれらの発明を組み合わせて上記の構成a〜eを容易に想到することが達成できるとは認められない。
よって、請求項1に係る発明は、甲第2号証〜甲第5号証に記載されたものから当業者が容易に発明をすることができるので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべきであるとする異議申立人の主張を採用することはできない。
(請求項2〜4に係る発明について)
また、請求項2〜4に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、甲第2号証〜甲第5号証に記載されたものから当業者が容易に発明をすることができるとは認められないので、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべきであるとする異議申立人の主張を採用することはできない。
(5)申立人の主張
理由の1について
申立人は、上記「構成A」および「構成B」も甲第1号証の記載から直ちに読みとれるとしたうえで▲1▼〜▲3▼の相違点をあげ、それらの点が設計上の微差にすぎないと主張しているが、上記(4)対比・判断で述べたように、甲第1号証には、上記「構成A」および「構成B」についてはなにも記載されておらず、また、それらが甲第1号証の記載から直ちに読みとれるとする根拠も認められないので、申立人が設計上の微差と主張する▲1▼〜▲3▼の点について検討するまでもなく、本件請求項1〜4に係る発明が甲第1号証に記載された発明と同一であるとする請求人の主張は採用できない。
理由の2について
上記(4)の対比・判断の[理由の2]で示したのと同様の理由で申立人の主張は採用できない。
(6)むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
 
異議決定日 1999-12-15 
出願番号 特願平5-180773
審決分類 P 1 651・ 161- Y (F16L)
P 1 651・ 121- Y (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 原 慧  
特許庁審判長 佐藤 雪枝
特許庁審判官 市野 要助
杉原 進
登録日 1998-08-07 
登録番号 特許第2812859号(P2812859)
権利者 東亜グラウト工業株式会社
発明の名称 管内補修装置  

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