• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1008881
異議申立番号 異議1999-71816  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-04-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-11 
確定日 1999-11-22 
異議申立件数
事件の表示 特許第2823569号「エポキシ系組成物」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2823569号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯・本件発明
特許第2823569号に係る発明についての出願は、昭和63年10月6日に特許出願され、平成10年9月4日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、その特許について、岡本綾子により特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月12日に特許異議意見書が提出されたものである。
本件請求項1、2に係る発明(以下、「本件第1発明」及び「本件第2発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、シリコーンオイル(C)、ポリスチレン系ブロック共重合体(D)および無機充填剤(E)からなるエポキシ系組成物。
【請求項2】請求項1記載のエポキシ系組成物によって半導体素子が封止された半導体装置。
(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人岡本綾子は以下の甲第1号証〜甲第3号証の2刊行物を提出し、本件第1、2発明は、
(イ)甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、また、
(ロ)甲第1号証〜甲第3号証の2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反する
ので、本件第1、2発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している。
甲第1号証 :特開昭63-179924号公報
甲第2号証の1:特開昭59- 94442号公報
甲第2号証の2:特開昭61- 26654号公報
甲第3号証の1:特開昭59- 75922号公報
甲第3号証の2:特開昭60- 1220号公報
(3)引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由は、特許異議申立人 岡本綾子の申立てた上記理由(ロ)と同趣旨のものである。
取消理由に引用された刊行物1〜5には、それぞれ以下の事項が記載されている。
刊行物1(特開昭63-179924号公報)には、その特許請求の範囲に、「(1)a)1分子中に少くとも2個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、 b)1分子あたり2個以上の水酸基を有するノボラック形フェノール樹脂100重量部に対して、1分子当り1個以上のエポキシ基とポリエーテル基をそれぞれ有するポリエーテル変成シリコーンオイル2〜35重量部を予め反応させてなる変成フェノール樹脂、および c)MBS樹脂粉末 を含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」が記載されており、この組成物が「半導体等の電子部品のモールド用樹脂として好適なエポキシ樹脂組成物」(第1頁右欄第5-6行)であることが記載されている。また、この変成フェノールについて、「その配合量は、ノボラックフェノール樹脂100重量部に対してポリエーテル変成シリコーンオイル2〜35重量部を予め反応させることが望ましい。・・・2重量%以下では、耐熱衝撃性の向上効果が不十分で、・・」(第3頁左上欄式下1-6行)と記載され、MBS樹脂については、「本発明のMBS樹脂粉末は、0.05〜1μmのラテックス状態にあるスチレン・ブタジエンゴム,ポリブタジエンゴム,アクリルゴムなどに、メチルメタクリレートとスチレンを主成分とするモノマーをグラフト重合して製造される白色の粉末であり、樹脂組成物の0.1〜10重量%を添加することが好ましく、更に好ましくは0.3〜5重量%である。0.1重量%未満では耐熱衝撃性の改良効果が十分でなく・・」(第3頁右上欄第1-10行)と記載されており、更に、「本発明では目的および用途等に応じて各種の充填剤が使用される。その具体例としては、溶融シリカ、結晶系シリカ、・・・が例示される。」(第3頁右上欄末行-同頁左下欄第5行)と記載されている。
刊行物2(特開昭59-94442号公報)には、「1.半導体素子を、高分子量の合成ゴム状微粒子及びオルガノポリシロキサンを含有するエポキシ樹脂組成物で封止したものであることを特徴とする樹脂封止型半導体装置。」(特許請求の範囲第1項)が記載されており、このオルガノシロキサンについて、「本発明において、オルガノシロキサンは、一般に置換基としてメチル、エチル、・・の各基を1以上有する高分子化合物である。具体的には、シリコーン油と称される低重合度直鎖状オルガノポリシロキサン、・・が使用できる。」(第3頁右上欄第2-11行)と記載されており、オルガノポリシロキサンを配合することによる効果について、「・・ゴム状微粒子を分散させたエポキシ樹脂に、更にオルガノポリシロキサンを配合することにより、成形樹脂とインサートとの接着性が大きく、成形品の耐湿性が大幅に改良されることがわかった。」(第2頁右下欄第11-15行)と記載されている。
刊行物3(特開昭61-26654号公報)には、「(1)ポリブタジェン系ポリマーとシリコン系オイル及び無機充填剤を含有したことを特徴とする封止用エポキシ樹脂成形材料。」(特許請求の範囲第1項)が記載されており、オルガノポリシロキサンを配合することによる効果について、「シリコン系オイルの量はエポキシ樹脂100部に対し0.1〜10部であることが望ましい。即ち0.1部未満では耐湿性を向上させ難く」(第2頁右上欄第7-10行)と記載されている。
刊行物4(特開昭59-75922号公報)には、「(a)多官能性エポキシ化合物 (b)スチレン系ブロック共重合体 (c)エポキシ化合物の硬化剤 (d)無機充填剤 を主成分としたことを特徴とするエポキシ系成形材料。」(特許請求の範囲第1項)が記載されており、スチレン系ブロック共重合体を配合することによる効果について、「ブロック共重合体の添加量は、エポキシ化合物100重量部に対して2〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜15重量部である。2重量部未満では、ブロック共重合体を添加した効果が現われず、低ひずみ応力の成形材料が得られない。」(第2頁左下欄第15-19行)と記載され、更に、スチレン系ブロック共重合体を配合した成形材料が配合しないものに比して耐ヒートショック性が優れていることを示す実施例、比較例が記載されている。
刊行物5(特開昭60-1220号公報)には、「(a)多官能性エポキシ化合物 (b)スチレン系ブロック共重合体 (c)液状ゴム (d)エポキシ化合物の硬化剤 (e)無機充填剤 を主成分としたことを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲第1項)が記載されており、スチレン系ブロック共重合体を配合することによる効果について、「ブロック共重合体の添加量は、エポキシ化合物100重量部に対して2〜20重量部が好ましく、さらに好ましくは5〜15重量部である。2重量部未満では、ブロック共重合体を添加した効果が現われず、ひずみ応力の低下、耐ヒートショック性の向上が十分みられない。」(第3頁左上欄第1-6行)と記載されている。
(4)対比・判断
上記摘記事項から、刊行物1には、エポキシ樹脂、ノボラック形フェノール樹脂に対してポリエーテル変成シリコーンオイルを予め反応させてなる変成フェノール樹脂、MBS樹脂粉末、及び無機充填剤を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物が記載されているものと認められる。
そこで、本件第1発明と刊行物1に記載されたものとを対比すると、これらはともに半導体素子封止等に用いられる無機充填剤入りエポキシ樹脂組成物である点で軌を一にするが、同刊行物には、本件第1発明の構成要件である、
(i)「硬化剤」、
(ii)「シリコーンオイル」及び
(iii)「ポリスチレン系ブロック共重合体」を
用いる点について記載されていない点で、相違が認められる。
これらの点について以下に検討する。
刊行物1にはエポキシ樹脂組成物に「硬化剤」を包含させる点について明記されていないが、フエノール樹脂がエポキシ樹脂の硬化剤として用いられることは本出願前周知であり、刊行物1に記載された組成物においては、変性フェノール樹脂が硬化剤として機能するものと解される。
しかしながら、「シリコーンオイル」及び「ポリスチレン系ブロック共重合体」についてみると、刊行物1に記載された「ポリエーテル変成シリコーンオイルを予め反応させてなる変成フェノール樹脂」及び「MBS樹脂」は、それぞれシリコーンオイル及びポリスチレン系ブロック共重合体と類似であるとしても、化学構造からみて、それ自体であるとまではいうことができない。
また、刊行物2,3には、耐湿性向上のために封止用エポキシ樹脂組成物にシリコーンオイルを配合することが記載されており、刊行物4,5には、ひずみ応力の低下及び耐ヒートショック性の向上のために封止用エポキシ樹脂組成物にスチレン系ブロック共重合体を配合することが記載されているが、これら刊行物のいずれにも、シリコーンオイルとスチレン系ブロック共重合体を併用することは記載されていない。また、刊行物1〜5のいずれにも、本件明細書中で本件第1発明の評価に用いられている物性である半田耐熱性及び耐溶剤性に関する記載はない。このうち、半田熱性は、樹脂封止した成形品を65℃、95%RHで48時間加湿処理後、240℃の半田浴に10秒間浸漬し、クラックの発生しない成形品個数で評価(特許明細書第8欄第15-17行参照)するものであり、吸湿水分の爆発的な水蒸気化作用に対する耐性をも加味している点で各刊行物に記載された耐ヒートショック性(耐熱衝撃性)とは明確に区別し得る特性であって、刊行物1〜5に記載された各物性から導き出せるものでもない。
そして、本件第1発明は、組成物中に、シリコーンオイルとスチレン系ブロック共重合体とを併用することにより、この半田耐熱性を向上させ得るとともに、離型性及び耐溶剤性を高水準に維持し得るという明細書記載の効果を奏するものと認められる。(特許明細書第13-14欄表4参照)
したがって本件第1発明は、上記刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
次に、本件第2発明についてみると、本件第2発明は第1発明のエポキシ系組成物によって半導体素子が封止された半導体装置であるが、上記のように第1発明の組成物が刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、これをさらに応用した半導体装置に係る本件第2発明もまた、これら、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないものというべきである。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る発明を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-11-05 
出願番号 特願昭63-253582
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08G)
P 1 651・ 113- Y (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 中島 次一
佐野 整博
登録日 1998-09-04 
登録番号 特許第2823569号(P2823569)
権利者 東レ株式会社
発明の名称 エポキシ系組成物  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ