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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1008914
異議申立番号 異議1999-72031  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-04-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-05-21 
確定日 1999-11-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第2829326号「空調用グラスウールダクトボードの製造方法」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2829326号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第2829326号の特許請求の範囲の請求項1および請求項2に係る各発明(平成1年8月25日出願、平成10年9月25日設定登録)は、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1および請求項2に記載された事項によって特定される次の通りのものと認める。
「【請求項1】繊維化装置から供給されるガラス繊維に熱硬化性樹脂系接着剤を混入して層状に載置し、この層状のガラス繊維の下面にガラス不織布を当接し、これらガラス繊維とガラス不織布を所定の厚さに圧縮して加熱乾燥することにより、上記熱硬化性樹脂系接着剤によって、上記ガラス繊維同士を接着させてグラスウールボードを成形するとともに、該グラスウールボードの下面に上記ガラス不織布を接着する空調用グラスウールダクトボードの製造方法において、上記繊維化装置4,5を複数並設し、上流側の繊維化装置4から供給されるガラス繊維6aに、下流側の繊維化装置5から供給されるガラス繊維7aよりも多量の熱硬化性樹脂系剤接着10を混入し、上記グラスウールボード20のガラス不織布17との当接面側の接着剤量を他の部位よりも増量させることを特徴とする空調用グラスウールダクトボードの製造方法。
【請求項2】繊維化装置から供給されるガラス繊維に熱硬化性樹脂系接着剤を混入して層状に載置し、この層状のガラス繊維の上面にガラス不織布を当接し、これらガラス繊維とガラス不織布を所定の厚さに圧縮して加熱乾燥することにより、上記熱硬化性樹脂系接着剤によって、上記ガラス繊維同士を接着させてグラスウールボードを成形するとともに、該グラスウールボードの上面に上記ガラス不織布を接着する空調用グラスウールダクトボードの製造方法において、上記繊維化装置4,5を複数並設し、下流側の繊維化装置5から供給されるガラス繊維7aに、上流側の繊維化装置4から供給されるガラス繊維6aよりも多量の熱硬化性樹脂系剤接着10を混入し、上記グラスウールボード20のガラス不織布17との当接面側の接着剤量を他の部位よりも増量させることを特徴とする空調用グラスウールダクトボードの製造方法。」
2.申立ての理由
これに対して、特許異議申立人は、本件の特許請求の範囲の請求項1および請求項2に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証乃至甲第5号証に記載のものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。
3.甲各号証に記載の事項
特許異議申立人の提出した前記甲第1号証の刊行物である特公昭49-30780号公報には、「熱硬化性結合剤を含むガラス繊維などの無機質繊維マットに加熱空気を通過させ該結合剤を硬化せしめるに先立ち、該繊維マットの片面或は両面に通気性の紙を被覆せしめ、該紙を該無機質繊維マットに付着している結合剤で該加熱空気による加熱硬化処理と同時にマットに接着せしめて一体とすることを特徴とする無機質繊維材の連続製造方法。」(特許請求の範囲)、「ガラス繊維材そのものに含まれている結合剤の量が少ないときや、密度の小さいマットを製造するときとか、比較的小面積の繊維材として使用する目的の場合には本来ガラス繊維材に含まれている結合剤のみでは紙の接着が完全に至らないときもありうるのでその様な場合には加熱硬化処理に先立って、ガラス繊維材の表面又は紙の表面に結合剤をさらに吹付けなどにより追加的に適用塗布しておくと効果的である。」(第2頁第3欄21行〜同第4欄1行)点がそれぞれ記載されている。そして、図面第1図には断熱材の製造装置の断面図が、第2図には断熱材の斜視図がそれぞれ示されている。
また、前記甲第2号証の刊行物である特開昭52-22157号公報には、「厚さ10〜300μ程度のアルミニウム、ステンレススチール、鋼、銅等の金属薄板または厚さ50μ〜2mm程度のガラス繊維、アスベスト繊維等の無機質繊維よりなる無機質繊維織布、無機質繊維不織布の如き無機質繊維シートあるいはこれらを適宜積層した積層板よりなる可撓性を有する内層用不燃性シートの片面に断面形状が長方形、正方形、台形、円形、楕円形等の適宜の形状のアスベスト、ロックウール、ガラス繊維、発泡合成樹脂等よりなる厚さ2〜50mm程度、幅3〜100mm程度の板状あるいは棒状シートの如き断熱材2を3〜30mm程度の間隙3を保持して適宜の接着剤4によって並列して配置固着し、更にそれらの上面に前記と同様な外層用不燃シート5を適宜の接着剤6によって貼着積層し、積層体7となすものであり、」(第2頁左上欄4行〜同右上欄3行)と記載されている。そして、図面第1図には積層体の一部を切除した部分平面図が、第2図には同部分の横断面図がそれぞれ示されている。
また、前記甲第3号証の刊行物である特公昭64-9167号公報には、「硝子短繊維を集積してマット状物を形成せしめる工程、未硬化の結合剤を附与する工程、マット状物を所定密度となるよう狭圧しつつ加熱し結合剤を硬化せしめる工程とを含む硝子繊維製断熱材を製造する方法において、未硬化結合剤をマットの一方の表層部分のみに附与することを特徴とする硝子繊維製断熱材を製造する方法。」(特許請求の範囲)、「図において、a1,a2,…anは、矢印の方向に移動する有孔コンベヤ1に沿って配列された複数個の短繊維製造装置であり、b1,b2,…bnは各短繊維製造装置に附設された結合剤の噴霧装置である。硝子短繊維はコンベヤ1上に落下堆積し、未硬化の結合剤が附与されてマット状物2が形成される。この際例えば上流側の噴霧装置b1,b2,…を停止させるとマット状物の下層部分を構成する硝子短繊維には結合剤が附与されず、上層部分のみに結合剤が附与されたマット状物が得られる。逆に下流側の噴霧装置bn,bn-1,…を停止すると下層部分のみに結合剤が附与されたマット状物が得られる。」(第2頁第3欄39行〜同第4欄7行)点が記載されている。そして、図面には硝子繊維製断熱材の製造装置の正面図が示されている。
また、前記甲第4号証の刊行物である特開昭50-107553号公報には、「第1図は本発明によって製造された空調用ダクトの一部を示した斜線図であって、図中、符号1は矩形状に折曲形成されたダクト主材を示し、このダクト主材1は、側壁1A、底壁1B、側壁1Cおよび天壁1Dを構成し、本発明の好ましい実施例によれば、ダクト主材1は、断熱および吸音効果の高い材料、例えば商品名“グラスロン”で知られるグラスウールで構成することが望ましい。そして、ダクト主材1の内側には内側ライナ2(2A,2B,2C,2D)が貼着されている。一方、その外側には外側ライナ3が貼着されている。上記各ライナ2および3は、アルミ箔で構成することが好適であるが、必ずしもそれに限定されるものではなく、プラスティックのフイルムであっても良い。」(第2頁左上欄15行〜同右上欄9行)点が記載されている。そして、図面第1図には空調ダクトの一部の斜視図が示されている。
更に、前記甲第5号証の刊行物である特開昭48-76362号公報には、「ローラに内壁用金属薄板を巻回し、外壁用金属薄板に接着した柔軟なグラスウールからなる断熱吸音材を該内壁用金属薄板に接着させながらその厚み方向に圧縮しつつ巻回し、該外壁用金属薄板の合わせ目を接合して形成した筒体を該ローラから取外すようにした空調用丸ダクトの製造方法。」(特許請求の範囲)、「従来のグラスウール製ダクトにおいては,内壁に合成樹脂を吹付けコーティングすることによりグラスウールの飛散を防止しようと試みている。しかしこの方法によりコーティングした合成樹脂の被膜は耐久性に乏しく、有効に飛散を防止できる期間は数ヶ月に過ぎず、長期にわたり完全に飛散を防止することは期待できないという欠点がある。上記の如き合成樹脂コーティングによる飛散防止のかわりに金属薄板または金属箔(以下単に金属薄板という)またはグラスクロスを断熱吸音材の内側に張り繊維の飛散を防止する方法が考えられる。」(第1頁右下欄16行〜第2頁左上欄8行)点がそれぞれ記載されている。そして、図面第1図には丸ダクトの内壁金属箔および帯板をローラに巻回した状態の斜視図が、第2図にはグラスウールを金属板に接着した状態の側面図が、第3図にはグラスウールと金属板を圧縮巻回する工程の図がそれぞれ示されている。
4.対比・判断
そこで、特許異議申立人の主張について検討する。
[請求項1について]
本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明と、前記甲第1号証乃至甲第5号証の各刊行物に記載のものとを比較すると、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、繊維化装置から供給されるガラス繊維に熱硬化性樹脂系接着剤を混入して層状に載置し、この層状のガラス繊維の下面にガラス不織布を当接し、これらガラス繊維とガラス不織布を所定の厚さに圧縮して加熱乾燥することにより、上記熱硬化性樹脂系接着剤によって、上記ガラス繊維同士を接着させてグラスウールボードを成形するとともに、該グラスウールボードの下面に上記ガラス不織布を接着する空調用グラスウールダクトボードの製造方法において、上記繊維化装置4,5を複数並設したのもであって、特に層状のガラス繊維の下面にガラス不織布を当接させる場合に、「上流側の繊維化装置4から供給されるガラス繊維6aに、下流側の繊維化装置5から供給されるガラス繊維7aよりも多量の熱硬化性樹脂系剤接着10を混入し、上記グラスウールボード20のガラス不織布17との当接面側の接着剤量を他の部位よりも増量させる」点の構成を有するのに対し、前記甲第1号証の刊行物に記載のものは、単に熱硬化性結合剤を含むガラス繊維などの無機質繊維マットに加熱空気を通過させ該結合剤を硬化せしめるに先立ち、ガラス繊維材の表面または紙の表面に結合剤を追加的に吹付け、該繊維マットの片面或は両面に通気性の紙を被覆せしめ、該無機質繊維マットに付着している結合剤の加熱空気による加熱硬化処理と同時に該紙をマットに接着せしめて一体にする無機質繊維材の製造方法であり、また前記甲第2号証の刊行物に記載のものは、単に無機質繊維不織布などの内層用不燃シートの片面に断熱材を間隔を保持し並列に配置接着し、更にそれらの上面に該内層用不燃シートと同様な材質の外層用不燃シートを接着した空調用ダクト部材というだけであり、また前記甲第3号証の刊行物に記載のものは、単に有孔コンベヤに沿って配置された複数個の短繊維製造装置にそれぞれ結合剤噴霧装置を設け、硝子繊維を集積して形成したマット状物に未硬化の結合剤を吹付ける際に、上流側の噴霧装置を停止する場合には、マット状物の上層部分のみに結合剤を附与させることになり、また逆に下流側の噴霧装置を停止する場合には、マット状物の下層部分のみに結合剤を附与させることになり、それによってその後のマット状物を所定の密度となるように狭圧しつつ加熱し、結合剤を硬化させるという硝子繊維断熱材を製造する方法であり、また前記甲第4号証の刊行物に記載のものは、単に断熱および吸音効果の高いグラスウールよりなるダクト主材の内側および外側にアルミ箔またはプラスチックフイルムよりなる内側ライナーおよび外側ライナーを貼着し、それを折り曲げて多角形状の空調用ダクトを製造する方法であり、また前記甲第5号証の刊行物に記載のものは、単にローラに内壁用金属薄板を巻回し、外壁用金属薄板に接着した柔軟なグラスウールからなる断熱吸音材を該内壁用金属薄板に接着させながらその厚み方向に圧縮しつつ巻回し、該外壁用金属薄板の合わせ目を接合して形成した筒体を該ローラから取外してダクトを形成するという空調用丸ダクトの製造方法というだけであって、前記甲第1号証乃至甲第5号証の各刊行物のいずれにも、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の構成要件である、特に層状のガラス繊維の下面にガラス不織布を当接させる場合に、「上流側の繊維化装置4から供給されるガラス繊維6aに下流側の繊維化装置5から供給されるガラス繊維7aよりも多量の熱硬化性樹脂系剤接着10を混入し、上記グラスウールポート20のガラス不織布17との当接面側の接着剤量を他の部位よりも増量させる」点の構成は何ら記載されていず、各刊行物に記載のもののいずれも本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明とは異なると言える。
そして、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明におけるこの点の構成が、本件特許明細書の発明の詳細な説明中の「発明の効果」の項に記載されているように、「グラスウールボード20のガラス不織布17との当接面側の接着剤量を他の部位よりも増量させているので、全体として接着剤量を増やすことなく、かつ、現状の設備を改造したり新規設備を追加することなく、コストの上昇を伴わずに、グラスウールボードのガラス不織布との当接面側の接着剤量を増やしてグラスウールボードとガラス不織布との接着性を高めることができる。」という効果を有するものと言える。
したがって、本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、前記甲第1号証乃至甲第5号証の各刊行物に記載されたれたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とする特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
[請求項2について]
本件の特許請求の範囲の請求項2に係る発明と、前記甲第1号証乃至甲第5号証の各刊行物に記載のものとを比較すると、本件の特許請求の範囲の請求項2に係る発明が、繊維化装置から供給されるガラス繊維に熱硬化性樹脂系接着剤を混入して層状に載置し、この層状のガラス繊維の上面にガラス不織布を当接し、これらガラス繊維とガラス不織布を所定の厚さに圧縮して加熱乾燥することにより、上記熱硬化性樹脂系接着剤によって、上記ガラス繊維同士を接着させてグラスウールボードを成形するとともに、該グラスウールボードの上面に上記ガラス不織布を接着する空調用グラスウールダクトボードの製造方法において、上記繊維化装置4,5を複数並設したのもであって、特に層状のガラス繊維の上面にガラス不織布を当接させる場合に、「下流側の繊維化装置5から供給されるガラス繊維7aに、上流側の繊維化装置4から供給されるガラス繊維6aよりも多量の熱硬化性樹脂系剤接着10を混入し、上記グラスウールボード20のガラス不織布17との当接面側の接着剤量を他の部位よりも増量させる」点の構成を有するのに対し、前記甲1号証乃至甲第5号証の各刊行物に記載されたれたものは、先の[請求項1について]の項にて述べた通りであって、それらの刊行物のいずれにも、本件の特許請求の範囲の請求項2に係る発明の構成要件である、特に層状のガラス繊維の上面にガラス不織布を当接させる場合に、「下流側の繊維化装置5から供給されるガラス繊維7aに、上流側の繊維化装置4から供給されるガラス繊維6aよりも多量の熱硬化性樹脂系剤接着10を混入し、上記グラスウールボード20のガラス不織布17との当接面側の接着剤量を他の部位よりも増量させる」点の構成は何ら記載されていず、各刊行物に記載のもののいずれも本件の特許請求の範囲の請求項2に係る発明とは異なると言える。
そして、本件の特許請求の範囲の請求項2に係る発明におけるこの点の構成が、同じく先の[請求項1について]の項にて述べた通り、本件特許明細書の発明の詳細な説明中の「発明の効果」の項に記載されているような効果を有するものと言える。
したがって、本件の特許請求の範囲の請求項2に係る発明は、前記甲第1号証乃至甲第5号証の各刊行物に記載されたれたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とする特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
5.むすび
以上の通りであるから、特許異議申立ての理由およびその証拠によっては、本件の特許請求の範囲の請求項1および請求項2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の特許請求の範囲の請求項1および請求項2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-10-29 
出願番号 特願平1-220035
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 水谷 万司大橋 康史  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 櫻井 康平
岡田 弘規
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2829326号(P2829326)
権利者 株式会社マグ
発明の名称 空調用グラスウールダクトボードの製造方法  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚男  

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