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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A01G
審判 全部申し立て 特29条の2  A01G
管理番号 1008933
異議申立番号 異議1999-72118  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-06-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-11 
確定日 1999-11-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第2831740号「接合装置」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2831740号の特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第2831740号(本件特許は、平成1年10月17日に出願された特願平1-269661号に係り、平成10年9月25日設定登録。)の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものと認められる。

「複数の接合用物体をそれぞれ台用に用いられる部分を有する台用のグループとこの台用の前記接合用物体の各上部に接続される接続用に用いられる部分を有する接続用のグループとの2グループに分けて載置する載置台と、
前記2つのグループに分けられた前記各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断してこのうち前記接続用のグループの前記接合用物体の上部側と前記台用のグループの前記接合用物体の下部側とをそれぞれ保持し、かつ前記接続用のグループの前記接合用物体の各上部側と前記台用のグループの前記接合用物体の各下部側とをそれぞれ接合する接合ヘッド機構と、
前記載置台と前記接合ヘッド機構とを相対的に移動させる移動機構と、
を具備したことを特徴とする接合装置。」
2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人笠原淳は、下記甲第1号証〜甲第3号証の2を提出し、本件発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された先願明細書及び図面(甲第1号証参照。)に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本件発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、この出願の時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められず、又、本件発明は、本件出願前に頒布された甲第2号証〜甲第3号証の2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条の2第1項、又は、第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。

甲第1号証:特願平1-31175号(特開平2-211810号)の願書に最初に添付された明細書及び図面
甲第2号証:特開平1-252228号公報
甲第3号証の1「園芸学会雑誌第58巻別冊2-1989-(園芸学会平成元年度秋季大会研究発表)」1989年10月8日園芸学会発行第254〜255頁
甲第3号証の2:特開昭54-55878号公報
3.甲号各証記載の発明
甲第1号証(特願平1-31175号(特開平2-211810号)の願書に最初に添付された明細書及び図面)には、
「台木用の苗箱3を搬送する第1コンベヤ1と穂木用の苗箱4を搬送する第2コンベヤ2とを平行に設け、この両コンベヤ1,2の搬送方向上流側から順に、挟持位置5と、切断位置6と、接木位置7と、解枠位置8とを設け、上記挟持位置5に、各苗箱3,4に列状に育生した苗木9,10を押さえ板11とガイド板12にて挟持し、かつこの両板11,12を各苗箱3,4側に係止する挟持装置13,13を設け、切断位置6に、台木用の苗木9を挟持部の上側で切断する台木切断装置14と、穂木用の苗木10を支持部の下側で切断する穂木切断装置15を設け、接木位置に、穂木用の苗箱4上で挟持状態にある押さえ板11とガイド板12とをそのまま持ち上げて台木用の挟持状態にある押え板11とガイド板12の上に積み重ね係止する接木装置16を設け、解枠位置8に、上記接木位置7で積み重ね係止した各押さえ板11とガイド板12とを取外す解枠装置を設けたことを特徴とする幼植物の接木装置。」(特許請求の範囲)、
「この接木装置8の作用を以下に説明する。
まず台車61を移動して第2コンベヤ2上の穂木用の苗箱4の上方に位置させ、ついでシリンダ63を伸長させて基台62を下降し、拡開状のフック装置64をこの苗箱4の挟持状態にある押さえ板11とガイド板12の両方に対向させる。その後各シリンダ65を作動してフック装置64を閉じて上記挟持状態にある両板11,12を挟持し、ついで基台62を上昇する。これにより上記押さえ板11とガイド板12は穂木10を挟持した状態で持ち上げられる。このとき、両板11,12をスペーサ33に係止していたピン34は、そのまま各板11,12に嵌着した状態で、すなわち、このピン34が両板11,12の下側に突出した状態で抜ける。
つぎに、台車61を第1コンベヤ1の上方へ位置させ、基台62を下降し、フック装置64に挟持されている押さえ板11とガイド板12を台木用の苗箱3の台木用の苗木9を挟持している押さえ板11とガイド板12の上に重ねる。このとき、第18図に示すように穂木側の両板11,12の下側に突出しているピン35が台木用の両板11,12の両側のピン穴に係合し、それぞれの板11,12は一体に係合される。その後フック装置64による挟特を解除し基台61を上昇させる。
上記作動により、押さえ板11及びガイド板12の上側に沿って先端側を切除した台木用の苗木9の切断面に、押さえ板11及びガイド板12の下側に沿って下側を切除した穂木用の苗木10の切断面が当接される。
解枠位置8における解枠装置17は上記挟持装置13と同一構成のものが用いられており、上記挟持作動とは逆の動作により、まず、穂木用の苗木10を挟持している押さえ板11とガイド板12を取外し、ついで台木用の苗木9を挟持している両板11,12を取外す。」(第5頁左上欄18行〜左下欄14行)
が記載されている。
甲第2号証(特開平1-252228号公報)には、
「台木(A)及び穂木(B)を個別に保持する保持手段(6)と、
前記保持手段(6)にて台木(A)及び穂木(B)を保持したまま、その台木(A)及び穂木(B)の接合相当箇所を夫々、所定接合形状にカットする切断手段(7)と、
前記保持手段(6)にて台木(A)及び穂木(B)を保持したまま、その台木(A)及び穂木(B)の所定接合形状にカットされた両接合部の位置を合わせる位置合わせ手段(8)と、
両接合部の位置が合わされた台木(A)及び穂木(B)の接合部を固定する固定手段(9)とを備える自動接木装置。」(特許請求の範囲)、
「播種して発芽させた穂木(B)を痛めないようにスプリング(62a)を介して弾力的にクランプする穂木保持手段(62)とからなる。」(第5欄第19行〜第6欄第1行目)、
「また、(7)は台木(A)及び穂木(B)を前記保持手段(6)にて保持したまま、その台木(A)及び穂木(B)の接合相当箇所を夫々、所定接合形状にカットする切断手段であり、該切断手段(7)は具体的には、前記移動台(82)から延設された支持部材(71a)によって支持されたカム手段(71b)を植木鉢(11)を支持する載置台(12)側(以下台木(A)側という)へ移動させ、その移動に応じて対向する一対の刃部を相互接近させてその間に配される穂木(B)の接合相当箇所を所定接合形状にカットするカムローラ方式の穂木カッタ(71)と、前記三方アーム(15)の第2アーム(15b)の先端部に回転自在に装着され、それを回転させつつ前記三方アーム(15)を前記第1姿勢から前記第2姿勢へ旋回させることにより、前記台木保持手段(61)にて保持した台木(A)の接合相当箇所を所定接合形状にカットする回転切断方式の台木カッタ(72)とからなる。」(第7欄第12行〜第8欄第9行目)、
「上述の実施例とは異なる実施例として、第3図及び第4図に示す如く、台木(A)を養生した植木鉢(11)を自動搬送手段(20)を用いて間欠送り方式にて平行移動させる実施例も考えられる。」(第12欄下5〜1行)
が記載されている。
甲第3号証の1(園芸学会雑誌第58巻別冊2)には、
「材料及び方法...▲3▼多連接ぎについては、5連及び20連の接ぎ木が可能なプレートを試作して接ぎ木した。このプレートは、穂木・台木とも同型でできており、両プレートを合わせることにより穂木・台木の切断面を接合できるようになっている。」(第254頁第23〜25行目)、
「台木用プレートと穂木用プレートからなる20連接ぎ木」(第255頁図1)
が記載されている。
甲第3号証の2(特開昭54-55878号公報)には、
「ここに、組立てられる5個の部品として、円筒1,ブッシュ2,ワッシャ3,つば付シャフト4およびワッシャ5が示され...」(第2頁右上欄第3〜5行)、
「この発明は、要約すれば、1個のビームに複数個の作業実施手段を所定の間隔で配置し取付けておいて、この1個のビームを動作させるだけで複数個の作業実施手段が同時に動作できるようにしたもので、たとえば前述の5つの部品を組立てる場合でも、1個のビームを動作させるための1個の機構だけで済み、機械構造は非常に簡略化されるものである。」(第2頁右下欄下1行〜第3頁左上欄第7行)
が記載されている。
4.本件発明と引用発明との対比・判断
(4-1)第29条の2第1項について
本件発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「幼植物」、「台木用の苗箱3上の複数の苗木9」、「穂木用の苗箱4上の複数の苗木10」、「苗箱3,4」、「接木装置」は、それぞれ、本件発明の「接合用物体」、「台用のグループ」、「接続用のグループ」、「載置台」、「接合装置」に相当する。
また、甲第1号証に記載された発明は、「台木切断装置14と穂木切断装置15」により接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断し、「(穂木用の)挟持装置13」、「(台木用の)挟持装置13」により接合用物体の上部側と下部側とをそれぞれ保持し、「接木装置16」により接合用物体の上部側と下部側とをそれぞれ接合するから、
両者は、「複数の接合用物体をそれぞれ台用に用いられる部分を有する台用のグループとこの台用の前記接合用物体の各上部に接続される接続用に用いられる部分を有する接続用のグループとの2グループに分けて載置する載置台を具備し、
前記2つのグループに分けられた前記各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断してこのうち前記接続用のグループの前記接合用物体の上部側と前記台用のグループの前記接合用物体の下部側とをそれぞれ保持し、かつ前記接続用のグループの前記接合用物体の各上部側と前記台用のグループの前記接合用物体の各下部側とをそれぞれ接合する接合装置」である点で一致する。
しかしながら、少なくとも、本件発明が『2つのグループに分けられた各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断して、このうち接続用のグループの接合用物体の上部側と台用のグループの接合用物体の下部側とをそれぞれ保持し、かつ前記接続用のグループの前記接合用物体の各上部側と前記台用のグループの前記接合用物体の各下部側とをそれぞれ接合する「接合ヘッド機構」を設け、「載置台」と「接合ヘッド機構」とを相対的に移動させる「移動機構」を設けた』のに対し、甲第1号証には、このような構成が記載されていない点で相違する。
すなわち、甲第1号証には、2つのグループに分けられた各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断する装置(穂木切断装置15、台木切断装置14)、接続用のグループの接合用物体の上部側と台用のグループの接合用物体の下部側とをそれぞれ保持する装置(挟持装置13,13)、及び、接続用のグループの接合用物体の各上部側と台用のグループの接合用物体の各下部側とをそれぞれ接合する装置(接木装置16)が記載されているが、本件発明のように、これらの装置をまとめて、切断機能と保持機構と接合機能の3つの機能を併せ持つ「接合ヘッド機構」としたことは記載されておらず、「載置台」と「接合ヘッド機構」とを相対的に移動させる「移動機構」も記載されていないから、両者を同一とすることはできない。
(4-2)第29条第2項について
本件発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、甲第2号証記載の発明の「台木Aと穂木B」、「台木A」、「穂木B」、「載置台12」、「自動接木装置」は、それぞれ、本件発明の「接合用物体」、「台用に用いられる部分」、「接続用に用いられる部分」、「台用の載置台」、「接合装置」に相当する。
また、甲第2号証記載の発明は、「穂木カッター71と台木カッター72」により接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断し、「穂木保持手段62」及び「台木保持手段61」により接合用物体の上部側と下部側とをそれぞれ保持し、「固定装置91」により接合用物体の上部側と下部側とをそれぞれ接合するから、
両者は、
「複数の接合用物体をそれぞれ台用に用いられる部分を載置する載置台と、この台用の接合用物体の各上部に接続される接続用に用いられる部分と、2つに分けられた各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断してこのうち接合用物体の上部側と接合用物体の下部側とをそれぞれ保持し、かつ接合用物体の上部側と接合用物体の下部側とをそれぞれ接合する接合装置」である点で一致する。
しかしながら、少なくとも、本件発明が『2つのグループに分けられた各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断して、このうち接続用のグループの接合用物体の上部側と台用のグループの接合用物体の下部側とをそれぞれ保持し、かつ前記接続用のグループの前記接合用物体の各上部側と前記台用のグループの前記接合用物体の各下部側とをそれぞれ接合する「接合ヘッド機構」を設け、「載置台」と「接合ヘッド機構」とを相対的に移動させる「移動機構」を設けた』のに対し、甲第2号証には、このような構成が記載されていない。
すなわち、甲第2号証には、各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断する装置(穂木カッター71、台木カッター72)、接合用物体の上部側と接合用物体の下部側とをそれぞれ保持する装置(穂木保持手段62、台木保持手段61)、及び、接合用物体の上部側と接合用物体の下部側とをそれぞれ接合する装置(固定装置91)が記載されているが、本件発明のように、これらの装置をまとめて、切断機能と保持機構と接合機能の3つの機能を併せ持つ「接合ヘッド機構」としたことは記載されておらず、「載置台」と「接合ヘッド機構」とを相対的に移動させる「移動機構」も記載されていない。
上記相違点を検討する。
甲第3号証の1には、「接木において、穂木用プレートに複数の穂木を載せ、台木用プレートに複数の台木を載せ、両プレートを合わせることにより、穂木と台木を接合するようにしたこと」が記載されており、『「接合用物体」の「接続用に用いられる部分」(穂木)をも(複数の)グループから構成すること』が記載ているということができ、
甲第3号証の2には、「1個のビームに複数個の作業手段を所定の間隔で配置し取付けておいて、この1個のビームを動作させるだけで複数個の作業手段が同時に操作できる用にしたもの」が記載されている。
しかしながら、上記甲第3号証の1及び甲第3号証の2には、いずれにも、本件発明の「各接合用物体をそれぞれ上部側と下部側との2つに切断し、接合用物体の上部側と接合用物体の下部側とをそれぞれ保持し、接合用物体の上部側と接合用物体の下部側とをそれぞれ接合する」、すなわち、切断機能と保持機構と接合機能の3つの機能を併せ持つ「接合ヘッド機構」が記載されておらず、「載置台」と「接合ヘッド」とを相対的に移動させる「移動機構」も記載されていないから、甲第2号証記載の発明に甲第3号証の1及び甲第2号証の2を適用しても、本件発明の構成にはなりえず、本件発明が、甲第2号証〜甲第3号証の2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件特許は、特許法第29条の2第1項又は第29条第2項の規定に違反してなされたものであるという申立人の主張は理由がない。
5.むすび
以上のとおりであるから、前記申立人の特許異議申立ての理由及び申立人の提出した証拠方法によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-11-08 
出願番号 特願平1-269661
審決分類 P 1 651・ 16- Y (A01G)
P 1 651・ 113- Y (A01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 寛治
新井 重雄
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2831740号(P2831740)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 接合装置  

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