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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1008959
異議申立番号 異議1998-72795  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-04-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-06-03 
確定日 1999-10-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第2687085号「床板」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2687085号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2687085号発明は、平成5年10月5日に特許出願され、平成9年8月22日にその特許の設定登録がなされ、その後、岡田浩司及び大建工業株式会社より特許異議の申立てがなされ、次いで、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年2月8日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知され、平成11年8月2日に訂正拒絶理由に対して手続補正書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否について
特許権者が行った、訂正請求書に添付した訂正明細書の補正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明と認められるから、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定により準用され、なお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。
(2)訂正後の発明
本件訂正後の請求項1に係る発明は、平成11年8月2日付け手続補正書で補正された全文訂正明細書(以下、単に「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「表裏面に硬質層が設けられ且つ該硬質層が表裏面に露出した木質繊維板の表面には化粧単板が貼着されると共にその裏面には該化粧単板と繊維方向を同じくする捨て単板と緩衝材とが貼着されてなる床板において、捨て単板を貼着された木質繊維板の裏面に、捨て単板の繊維方向と直交する方向に35mmピッチ以下で複数本の溝を刻設し、且つ該溝部上の木質繊維板残部は硬質層を有することを特徴とする床板。」
(3)刊行物記載の発明
〈刊行物1〉
当審が通知した訂正拒絶理由で引用した、本件発明の出願前に頒布された刊行物1(特開平4-11159号公報)には、
▲1▼「木質板基材を上面とし軟質高分子発泡体層を下面として構成される木質防音床材において、上記木質板基材には裏面よりその板厚の20%〜70%の深さの切り込み溝が板厚方向に刻設され」(第2頁左下欄第6〜10行)、
▲2▼「木質板基材は通常厚さ5mm〜12mm程度の合板、繊維板、パーティクルボードの表面に厚さ0.2mm〜1.5mm程度の各種突板やロータリー単板等の化粧単板を貼着したものが用いられる。また、場合によっては、床材の反り対策として裏面にも表面とほぼ同厚みの突板や単板が貼着されることがある。」(第2頁右下欄第14〜20行)
との記載があり、上記▲1▼及び▲2▼の記載及び第2図の記載からみて、
「繊維板の表面に化粧単板が裏面に突板や単板と、軟質高分子発泡体とが貼着されてなる木質防音床材において、突板や単板を貼着された繊維板の裏面に複数本の切り込み溝を刻設した木質防音床材。」
の発明が記載されているものと認められる。
〈刊行物2〉
当審が通知した訂正拒絶理由で引用した、本件発明の出願前に頒布された刊行物2(実願昭63-103321号(実開平2-23641号)のマイクロフイルム)には、
「直貼り床材(1)において、化粧単板等の表面単板(2)と裏面単板(4)の繊維方向を同じにし、又、バランスが崩れることによる反りを防ぐために同樹種・同厚の単板を使用し、その間の3枚のコアの単板(3)を、それらに直交方向に揃え、接着したものである。」(明細書第3頁第2〜7行)
が記載されている。
〈刊行物3〉
当審が通知した訂正拒絶理由で引用した、本件発明の出願前に頒布された刊行物3(特開平2-311659号公報)には、
「(1)木質基板の表層に木質化粧板が積層され、木質基板の底面側に多数本の切溝が並設され、これら切溝の間隔が木質基板の厚さの略2倍程度になされ、木質基板の底面に切溝が開かれるのを仰制する軟質シートを積層して成ることを特徴とする木質系の床材。(2)切溝の間隔が5.0〜30mm程度になされて成ることを特徴とする請求項1記載の木質系の床材。」(特許請求の範囲)が記載されている。
(4)対比・判断
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と、刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明の「繊維板」、「突板や単板」、「軟質高分子発泡体」及び「木質防音床材」は、本件発明の「木質繊維板」、「捨て単板」、「緩衝材」及び「床板」にそれぞれ相当するから、両者は、以下の相違点1〜5で相違し、その余の点では一致している。
相違点1
本件発明が、木質繊維板の表裏面に貼着される化粧単板と捨て単板が繊維方向を同じくするのに対し、刊行物1には、繊維方向に関する記載がない点。
相違点2
本件発明が、捨て単板の繊維方向と直交する方向に複数本の溝を刻設しているのに対し、刊行物1には、溝の方向に関する記載がない点。
相違点3
本件発明が、溝の間隔が35mm以下であるのに対し、刊行物1には、溝の間隔が具体的数値で示されていない点。
相違点4
本件発明が、木質繊維板として、表裏面に硬質層が設けられ且つ該硬質層が表裏面に露出したものであるのに対し、刊行物1には、そのような記載がない点。
相違点5
本件発明が、溝部上の木質繊維板残部は硬質層を有するに対し、刊行物1には、そのような記載がない点。
上記相違点について検討する。
相違点1について、コアの表裏面に接着される化粧単板等の表面単板と裏面単板の繊維方向を同じにすることは、刊行物2に記載されているように公知であり、しかも、刊行物1に記載の発明と刊行物2に記載の発明とは、床材という共通の技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明の構成に刊行物2に記載の発明の構成を適用して、上記相違点1における本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
相違点2について、床材などの建築板において、繊維方向のある板に対して、溝を刻設する場合に、繊維方向に直交する方向に溝を刻設することは、従来から周知(例えば、特開平1-247636号公報参照。)であるから、刊行物1に記載の発明において、上記相違点1で既述したように捨て単板に繊維方向のあるものを用いた場合に、上記周知の手段を適用して、上記相違点2における本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
相違点3について、床材に設ける溝の間隔を5.0〜30mmとすることは、刊行物3に記載されているように公知であり、また5.0〜30mmは35mm以下の範囲に当然含まれるものであり、しかも、刊行物1に記載の発明と刊行物3に記載の発明とは、床材という共通の技術分野に属するものであり、かつともに防音を目的として溝を設けたものであるから、刊行物1記載の発明の構成に刊行物3に記載の発明の構成を適用して、上記相違点3における本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
相違点4について、中層に対して、表裏層の硬度が高く、高比重である中質繊維板は、従来から周知(例えば、改訂3版「木材工業ハンドブック」(丸善株式会社、平成3年2月28日第3刷発行、第627〜636頁)、実願平2-10860号(実開平3-101626号)のマイクロフィルム、実公平3-43305号公報参照。)であり、床材としても用いられているから、刊行物1に記載の発明の繊維板として上記周知の中質繊維板を適用して、上記相違点4における本件発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
相違点5について、刊行物1に記載の発明の繊維板として中質繊維板を適用することは、上記相違点4についてで既述したように当業者であれば容易に想到しうることであり、中質繊維板を適用した場合、溝の上部は、当然に硬質層を有するものである。
そして、全体として、本件発明の効果は、上記刊行物1〜3に記載の発明及び周知手段から当業者が当然に予想できる程度のものである。
したがって、本件発明は、刊行物1〜3に記載の発明及び周知手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)むすび
以上のとおりであるから、訂正明細書の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、上記訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
本件の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2にそれぞれ記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】木質繊維板の表面に化粧単板が裏面に該化粧単板と繊維方向を同じくする捨て単板と、緩衝材とが貼着されてなる床板において、捨て単板を貼着された木質繊維板の裏面に、捨て単板の繊維方向と直交する方向に35mmピッチ以下で複数本の溝を刻設した、ことを特徴とする床板。
【請求項2】木質繊維板として少なくとも表面に比重の高い硬質層が設けられてなる請求項1記載の床板。」
(2)刊行物記載の発明
当審が平成10年11月26日付けで通知した取消理由において引用した、刊行物1(特開平4-11159号公報)及び刊行物2(実願昭63-103321号(実開平2-23641号)のマイクロフイルム)並びに刊行物3(特開平2-311659号公報)には、それぞれ上記2(3)の〈刊行物1〉及び〈刊行物2〉並びに〈刊行物3〉に記載のとおりの発明が記載されているものと認められる。
(3)対比・判断
(請求項1に係る発明について)
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は下記の相違点1〜3で相違し、その余の点では一致している。
相違点1
本件発明1が、木質繊維板の表裏面に貼着される化粧単板と捨て単板が繊維方向を同じくするのに対し、刊行物1には、繊維方向に関する記載がない点。
相違点2
本件発明1が、捨て単板の繊維方向と直交する方向に複数本の溝を刻設しているのに対し、刊行物1には、溝の方向に関する記載がない点。
相違点3
本件発明1が、溝の間隔が35mm以下であるのに対し、刊行物1には、溝の間隔が具体的数値で示されていない点。
上記相違点について検討する。
相違点1について、コアの表裏面に接着される化粧単板等の表面単板と裏面単板の繊維方向を同じにすることは、刊行物2に記載されているように公知であり、しかも、刊行物1に記載の発明と刊行物2に記載の発明とは、床材という共通の技術分野に属するものであるから、刊行物1記載の発明の構成に刊行物2に記載の発明の構成を適用して、上記相違点1における本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
相違点2については、床材などの建築板において、繊維方向のある板に対して、溝を刻設する場合に、繊維方向に直交する方向に溝を刻設することは、従来から周知(例えば、特開平1-247636号公報参照。)であるから、刊行物1に記載の発明において、上記相違点1で既述したように捨て単板に繊維方向のあるものを用いた場合に、上記周知の手段を適用して、上記相違点における本件発明2の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
相違点3については、床材に設ける溝の間隔を5.0〜30mmとすることは、刊行物3に記載されているように公知であり、また5.0〜30mmは35mm以下の範囲に当然含まれるものであり、しかも、刊行物1に記載の発明と刊行物3に記載の発明とは、床材という共通の技術分野に属するものであり、かつともに防音を目的として溝を設けたものであるから、刊行物1記載の発明の構成に刊行物3に記載の発明の構成を適用して、上記相違点3における本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
そして、全体として、本件発明1の効果は、上記刊行物1〜3に記載の発明及び周知手段から当業者が当然に予想できる程度のものである。
したがって、本件発明1は、刊行物1〜3に記載の発明及び周知手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(請求項2に係る発明について)
本件の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、上記請求項1に係る発明についてで示した相違点1〜3に加え、本件発明2が、木質繊維板として少なくとも表面に比重の高い硬質層を設けているのに対し、刊行物1には、そのような記載がない点(相違点4とする)で両者は相違する。その余の点では一致している。
上記相違点について検討する。
相違点1〜3については、上記請求項1に係る発明についてで検討したとおりである。
相違点4については、中層に対して、表裏層の硬度が高く、高比重である中質繊維板は、従来から周知(例えば、改訂3版「木材工業ハンドブック」(丸善株式会社、平成3年2月28日第3刷発行、第627〜636頁)、実願平2-10860号(実開平3-101626号)のマイクロフィルム、実公平3-43305号公報参照。)であり、床材としても用いられているから、刊行物1に記載の発明の繊維板として上記周知の中質繊維板を適用して、上記相違点4における本件発明2の構成とすることは、当業者であれば容易に想到しうることである。
そして、全体として、本件発明2の効果は、上記刊行物1〜3に記載の発明及び周知手段から当業者が当然に予想できる程度のものである。
したがって、本件発明2は、刊行物1〜3に記載の発明及び周知手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4.むすび
したがって、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第1項及び第2項の規定により、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 1999-08-31 
出願番号 特願平5-279995
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (E04F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 白樫 泰子
小野 忠悦
登録日 1997-08-22 
登録番号 特許第2687085号(P2687085)
権利者 株式会社ノダ
発明の名称 床板  
代理人 小根田 一郎  
代理人 岸本 瑛之助  
代理人 岸本 守一  
代理人 小山 廣毅  
代理人 前田 弘  
代理人 清末 康子  
代理人 日比 紀彦  
代理人 渡辺 彰  
代理人 ▲桑▼原 史生  

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