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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 D21H 審判 全部申し立て 2項進歩性 D21H |
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管理番号 | 1009105 |
異議申立番号 | 異議1998-75943 |
総通号数 | 8 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-06-03 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-12-11 |
確定日 | 1999-09-16 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2763868号「はがき用紙」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2763868号の特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第2763868号は、平成7年11月22日に特許出願され、平成10年3月27日にその特許の設定登録がなされ、その後、河野連より特許異議申立てがなされ、特許権者に対して審尋がなされ、その指定期間内である平成11年4月30日に回答がなされ、さらに、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年8月6日に訂正請求がなされたものである。 2.取消理由通知 取消理由通知の内容は、「特許明細書の特許請求の範囲請求項1の記載では、填料の配合率は、いかなるものに対する配合率であるか不明であるので、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項の規定に違反してなされたものである。」というものである。 3.訂正の適否についての判断 ア.訂正事項 ▲1▼特許請求の範囲の請求項1の記載中、「・・・填料を配合率5〜20%で配合し、」とあるのを、「・・・填料を対原料パルプ5〜20%の配合率で配合し、」と訂正する。 ▲2▼明細書段落番号【0013】の3〜4行にかけて「配合率5〜20%の配合率」とあるのを、「対原料パルプ5〜20%の配合率」と訂正する。 イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項▲1▼、▲2▼は明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 そして、上記の各訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 4.特許異議申立てについての判断 ア.申立ての理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証(特開昭63-118287号公報)、甲第2号証(特開平7-276788号公報)、甲第3号証(「サイロイド」のカタログ「SYLOID」富士デヴィソン化学株式会社、1978年12月2日発行)及び甲第4号証(日本ゴム協会ゴム工業技術員会第11分科会白色充てん剤特別委員会編「フィラーハンドブック」株式会社大成社、昭和60年11月25日初版発行、212〜215頁)を提出して、本件訂正明細書の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という)の特許は特許法第29条第1項第3号或いは同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件発明の特許を取り消すべき旨主張する。 イ.本件発明 本件発明は、訂正明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「パルプを主原料とした3層以上の多層抄で、少なくとも裏層に吸油量(JIS K 5101)80ml/100g以上の填料を対原料パルプ5〜20%の配合率で配合し、水性インクのニジミにつきJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.12の方法で5以上のペン書きサイズ度を施したはがき用紙。」 ウ.甲各号証 甲第1〜4号証には、次に示す発明及び技術的事項が記載されている。 甲第1号証; 水溶性染料を含むマーキング組成物を使用するインクジェット法で有用な2枚、或いは3枚重ね紙に関するもので、次のことが記載される。 (1)3頁左下欄には、発明の目的として、急速乾燥時間を有し、さらに高解像力、優れたカラー明度および像密度を有する像を与える無コーティング紙2枚重ね紙を提供することが記載される。 (2)特許請求の範囲第1項には、「第1層としての支持基層紙シート、およびその上の層であってその繊維に結合した添加剤を含む第2層とからなるインクジェット法用の2枚重ね無コーティング紙。」と記載され、 同第13項には、「支持基層が第2層と第3層の間にはさまれている特許請求の範囲第1項記載の無コーティング紙。」と記載され、 同第15項には、「第2および第3層がその繊維に結合した添加剤を含む紙シートからなり、この添加剤が合成シリカ、無機ケイ酸塩、アルミノケイ酸ナトリウムおよび無機酸化物からなる群より選ばれる特許請求の範囲第13項記載の無コーティング紙。」と記載される。 (3)4頁右上欄4行〜左下欄2行には、「・・・・該第2紙層の紙繊維に結合したサイロイド74(Syloid74:グレースーダビスン社より入手可能)のような合成無定形シリカ;・・・からなる群から選ばれた充填剤を含む無コーティング紙が提供される。」と記載される。 (4)4頁左下欄17行〜右下欄10行には、「さらに、本発明の別の実施態様においては、約5〜約50ミクロンの厚さおよびその繊維に結合した例えば約25〜約75重量%の充填剤添加物を含み、この充填剤添加物が合成シリカ、アルミノケイ酸ナトリウムのような無機シリカ、無機酸化物等から選ばれるところの第2層紙シートと、約5〜約50ミクロンの厚さおよびその繊維に結合した例えば約25〜75重量%の充填剤添加物とを含み、この充填剤添加物が合成シリカ、アルミノケイ酸ナトリウムのような無機シリカ、無機酸化物等からなる群より選ばれるところの第3層紙シートとの間にある第1層としての支持基層紙シートからなるインクジェット法用3枚重ね無コーティング紙が提供される。」と記載される。 甲第2号証; インクジェット記録用紙に関するものであって、次のことが記載される。 (1)発明の解決すべき課題の項中、4頁第5欄には、「【0014】・・・インクジェット用の記録用紙としての適性を有するためには、記録用紙の表面に付着したインクが紙層表面で平面方向に広がらないサイズ性を記録用紙の表面層に与えるとともに、インクが紙の厚さ方向に充分速く吸収されるような性質を記録用紙に与えるといった2つの相反する性質を記録用紙に付与する必要があるとの知見を得、これに基づきこの発明を完成するに至った。よって、この発明は、インクジェット記録方式による印字適性および静電記録方式による印字適性とを兼ね備えた記録用紙、特に、インクジェット記録方式において「文字・画像の滲み」、「赤み」、および「裏抜け」を抑え、インク定着性がよく、インク濃度が適正な記録用紙を提供することを目的としている。」と記載される。 (2)特許請求の範囲の請求項1には、 「パルプ繊維基紙中に、少なくとも多孔性填料を含有し、内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤または高分子サイズ剤を添加し、該基紙に澱粉とアクリル系樹脂を含有する表面サイズ剤が塗布されてなることを特徴とする記録用紙。」と記載され、 請求項2には、「多孔性填料が、2次凝集して凝集体構造となっている填料であり、該填料の吸油度が100ml/100g以上であることを特徴とする請求項1記載の記録用紙。」と記載される。 (3)4頁6欄には、 「【0018】多孔性填料としては、2次凝集して凝集体構造となっている填料であり、合成シリカ、合成アルミナ珪酸ソーダ、尿素樹脂等を用いる。合成シリカと合成アルミナ珪酸ソーダは直径0.01〜0.04μm程度の1次粒子が凝集し平均粒子径2μm〜15μm程度の凝集体構造の2次粒子となっているものが好ましく、また尿素樹脂は直径0.1〜0.3μm程度の1次粒子が凝集し平均粒子径5μm〜10μm程度の凝集体構造の2次粒子となっているものが好ましい。これらの多孔性填料はいずれも吸油度が100ml/100g以上であり、また同時に吸水性・保水性に優れたものである。そして、該填料の基紙中含有率は重量%で2〜10%が好ましく、特に4〜7%であることが望ましい。・・・・」と記載される。 (4)5頁8欄には、 「【0024】(実施例1)表1に示すように、L-BKP100%、フリーネ500ccのパルプ原液に、填料として合成シリカ(商品名ニップシールLP、日本シリカ工業社製)、内添サイズ剤として高分子サイズ剤(商品名NAサイズ、荒川化学工業社製)を、填料の基紙中含有率が3.2%、高分子サイズ剤が0.45%となるように混合・撹拌しツインワイヤー抄紙機で抄造した。プレス工程で搾水した基紙に、プレドライヤー工程とアフタードライヤー工程の間で、澱粉(商品名コーンスターチ、敷島スターチ社製)とアクリル系樹脂・・・・を水に混合・撹拌させ調整した表面サイズ剤混合溶液を塗工装置により塗布し、オンマシンで基紙の両面に表面サイジングを行い、表1の実施例1に示すような固形分の総量で澱粉とアクリル系樹脂が0.99g/m2、このうちアルリル系樹脂が0.034g/m2基紙に塗布された米坪67.5g/m2、紙厚92μmの記録用紙を得た。」と記載される。 甲第3号証; 4頁に、サイロイド74の物性の一つとしてのJIS規格による吸油量が210ml/100gであることが記載される。 甲第4号証; 212〜213頁の市販主要含水ケイ醸の物性一覧表には、たとえば日本シリカ工業社製ニップシールLPの吸油量が180〜200ml/100gであることが記載される。 エ.対比・判断 本件発明と甲第1、2号証に記載の各発明とを比較検討する。 申立人は、本件発明は、甲第3号証の記載内容からして、甲第1号証に記載の発明であるか、或いは甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであると主張するので、先ず、この点について検討する。 甲第1号証には、インクジェット法用3枚重ね無コーティング紙として、約5〜約50ミクロンの厚さおよびその繊維に結合した例えば約25〜約75重量%の充填剤添加物を含み、この充填剤添加物が合成シリカ、アルミノケイ酸ナトリウムのような無機シリカ、無機酸化物等から選ばれるところの第2層紙シートと、約5〜約50ミクロンの厚さおよびその繊維に結合した例えば約25〜75重量%の充填剤添加物とを含み、この充填剤添加物が合成シリカ、アルミノケイ酸ナトリウムのような無機シリカ、無機酸化物等からなる群より選ばれるところの第3層紙シートとの間にある第1層としての支持基層紙シートからなり、合成シリカとして、例えばサイロイド74(Syloid74:グレース-ダビスン社より入手可能)を使用することが記載されている。そして、甲第3号証の記載からして、サイロイド74は、JIS規格による吸油量が210ml/100gであることがわかる。 以上のことからして、甲第1号証に記載の「インクジェット法用3枚重ね無コーティング紙」は、本件発明でいう「パルプを主原料とした3層以上の多層抄で、少なくとも裏層に吸油量(JIS規格)80ml/100g以上の填料を配合した紙」に相当するが、次の(1)、(2)において本件発明と相違する。 (1)甲第1号証の填料は、紙シート中25〜75重量%添加される。これを、本件発明のように、「対原料パルプの配合率」として換算すると、33〜300%の配合率となり、本件発明の「対原料パルプ5〜20%の配合率」と著しく相違する。 (2)本件発明は「水性インクのニジミにつきJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.12の方法で5以上のペン書きサイズ度を施したはがき用紙」であることを必須要件とするが、甲第1号証には、このことについての記載はなく、それを示唆する記載もない。 したがって、本件発明は、甲第1号証に記載の発明であるとはいえない。 また、特許権者が平成11年4月30日付けで提出した回答書に添付された比較実験結果書の実験結果から判断して、本件発明は、甲第1号証のものに比較して、表面強度、ペン書きサイズ度などにおいて優れた効果を奏するものと認められる。 したがって、上記相違点(1)、(2)を有する本件発明が、甲第1号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるともいえない。 次に、本件発明は、甲第4号証の記載内容からして、甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであると申立人は主張するので、この点について検討する。 甲第2号証には、パルプ繊維基紙中に、少なくとも吸油度が100ml/100g以上の多孔性填料を2〜10%含有し、内添サイズ剤として中性ロジンサイズ剤または高分子サイズ剤を添加し、該基紙に澱粉とアクリル系樹脂を含有する表面サイズ剤が塗布されてなるインクジェット記録用紙が記載されているだけであって、「ペン書きサイズ度」について言及する記載はなく、まして、本件発明の必須要件である「水性インクのニジミにつきJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.12の方法で5以上のペン書きサイズ度を施したはがき用紙」とする記載はなく、それを示唆する記載もない。 したがって、本件発明は、甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものであるとはいえない。 また、甲第1号証記載の発明と甲第2号証記載の発明とを組み合わせて、本件発明が容易に想起し得るものともいえない。 オ.むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 はがき用紙 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 パルプを主原料とした3層以上の多層抄で、少なくとも裏層に吸油量(JIS K 5101)80ml/100g以上の填料を対原料パルプ5〜20%の配合率で配合し、水性インクのニジミにつきJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.12の方法で5以上のペン書きサイズ度を施したはがき用紙。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は水性インクによる描写特性を富有させた版画用はがき用紙に関する。 【0002】 【従来の技術】 官製はがき用紙は、わが国では明治6年にはがきが発行されたため、その用紙紙質についてはかなりの試行錯誤が繰り返された歴史がある。 【0003】 明治末期の官製はがき用紙には、晒稲わらパルプを主原料として、若干の亜硫酸パルプを配合し、紙面はスーパーキャレンダー仕上げされていた。 【0004】 この伝統が残り、化学パルプが主体となった現在でも、クッション性その他の筆記特性や淡褐色のわら色を求めて機械パルプが若干併用されている。 【0005】 その他の物性としては、筆記用インキに対する強サイズ度、両面の平滑性と相互の滑りやすさ、オフセット印刷によるオフセット適性が重視される。その他印刷作業における紙粉の排除、腰の強さ、ノンカール性などが求められている。このため、はがき用紙は、従来1層抄が主流である。 【0006】 このような従来のはがき用紙を用いて、最近、水性の版画を刷ったり、水彩画を描いたり、水性インクジェットプリンターで印字印画したりする場合が増えてきた。このような場合、現在のはがき用紙では水性インクのハジキ現象を生じることがあり、インクの不鮮明さ、インクの吸収及び乾燥の悪さ等についても不満を持たれているのが実状である。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 この発明は上記はがき用紙として、表面(宛名記載面)には従来のオフセット印刷適性を維持させながら、裏面(通信文記載面)には水性インクによる版画・水彩画の描写適性を持たせながら、用紙の色合い、クッション性、筆記性、耐インクニジミ性等、伝統的なはがき用紙の風合いを損なわない用紙の提供を可能にしている。 【0008】 【0009】 【課題を解決するための手段】 はがき用紙として従来のオフセット印刷適性を持った表面と水性インクによる版画・水彩画描写適性を持った裏面を要求されている場合、多層抄きにする抄紙方法が適している。 【0010】 表層・中層・裏面の3層抄きが基本となるが、4層抄き、5層抄き、6層抄き、7層抄き等、用紙の坪量、厚さ、各層の地合い、原料配合、付け量等で多層抄きの層数が決められる。各層は原料パルプ配合、フリーネス及びサイズ剤、硫酸バンド、填料等薬品の種類および添加率を変えることができるので、表面・裏面の品質特性を変えることができる。 【0011】 また例えば、表・中・裏の3層では中層に、表・表下・中・裏下・裏の5層では表下・中・裏下の各層に古紙再生パルプを夫々配合し、高価な薬品を全層に入れることは避けられるので、用紙のコスト面でも有利となることが多い。 【0012】 版画用はがき用紙の3層抄の場合、表層は従来のオフセット印刷適性および地合い等を維持させるとの要求があるため従来のはがき用紙を基本とした原料パルプ・薬品の処方とし、中層には晒クラフトパルプ(BKP)、機械パルプ(MP)、場合によっては古紙再生パルプ(DIP)を配合し、サイズ剤は無添加とする。 【0013】 他方、裏層は水性インクによる版画・水彩画の描写適性と耐インクニジミ性を持たせるため、従来のはがき用紙の原料パルプ・薬品処方に改良を加えて、JIS K5101による吸油量が80ml/100g以上の高吸油量の填料を対原料パルプ5〜20%の配合率で添加すると共に、水性インクのニジミにつきJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.12の方法で5以上のペン書きサイズ度を施した。 【0014】 高吸油量の填料には種々あり、性能と価格も様々であり、種類及び添加率と版画用はがき用紙の設計品質水準により選定される。 【0015】 例えば高吸油量の填料としてはケイ酸系填料類に含水無晶形二酸化ケイ素(ホワイトカーボン略してWC)、含水ケイ酸(WC)、アルミノケイ酸ナトリウム、モンモリロナイト族酸性白士があり、同有機填料には尿素樹脂填料があり、性能が良い。また、性能はやや劣るが焼成カオリン、未焼成珪藻士等がある。 【0016】 填料配合率は版画用はがき用紙の設計品質水準により変えるが、対原料パルプ5〜20%の配合率とすることにより水性インクのハジキ、インクの不鮮明さ、インクの吸収及び乾燥の悪さ等が改善されて、満足できる品質とする効果がある。 【0017】 インクニジミについては、ペン書きサイズ度試験方法(J.TARPINo.12)で5以上のニジミのないサイズ度を付与するのに、従来処方に準じてロジンサイズの添加と硫酸バンドの定着で行なう。但し、中層は硫酸バンドの添加で原料パルプのろ水性をコントロールするだけで、ロジンサイズは入れない。 【0018】 はがき用紙の表裏面処理はポリビニルアルコール(PVA)またはアクリルアミド(RAM)または両者の混合水溶液を塗布する。また、コストダウンのためにデンプンを併用することもある。この処理は通常、サイズプレスで行なわれる。これにより、表面の毛羽立ちをおさえ、オフセット印刷適性が向上し、版画・水彩画の適性もあり、インクジェットプリンターで印字・印画した場合もドットの再現性が良い。 【0019】 斯くして少なくとも裏面側の第1層に水性インクに対し吸い込み易く且つニジミのない背反する特性を併用する用紙とする。 【0020】 【発明の実施の形態】 本発明を実施例及び比較結果を示して説明する。なお、実施例1から3まではテーブルテストで行なったもので、実施例4は実抄紙機でテスト抄造したものである。 【0021】 実施例1 以下のような手抄紙作製方法により3層貼り合わせのはがき用白板紙を作った。 【0022】 A.表種(オフセット印刷面の原料)処方(表層の原料処方) ▲1▼パルプ配合:広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)83% 晒グランドパルプ(BGP) 17% ▲2▼填料:タルク2:カオリン1混合物を対パルプ12%添加。 ▲3▼サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿で対パルプ1.6%添加。 ▲4▼紙力増強剤:ポリアクリルアミドを有姿で対パルプ2.0%添加。 ▲5▼歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿で対パルプ0.8%添加。 ▲6▼硫酸バンド:Al2O3として8%の水溶液品を有姿で対パルプ3.5%添加。 【0023】 B.中種処方(中層の原料処方) ▲1▼パルプ配合:広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)50% 晒古紙再生パルプ(BWP) 50% ▲2▼紙力増強剤:ポリアクリルアミドを有姿で対パルプ2.0%添加。 ▲3▼硫酸バンド:Al2O3として8%の水溶液品を有姿で対パルプ3.5%添加。 【0024】 C.裏種(版画面の原料)処方(裏面の原料処方) ▲1▼パルプ配合:広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)83% 晒グランドパルプ(BGP) 17% ▲2▼填料:ホワイトカーボン(SiO2、吸油量約250ml/100g)を対パルプ8%添加(実施例1-1)と15%添加(実施例1-2)の2水準。 ▲3▼サイズ剤:ロジンエマルジョンサイズ剤を有姿で対パルプ1.8%添加。 ▲4▼紙力増強剤:ポリアクリルアミドを有姿で対パルプ2.0%添加。 ▲5▼歩留向上剤:高分子量ポリアクリルアミドを有姿で対パルプ0.8%添加。 ▲6▼硫酸バンド:Al2O3として8%の水溶液品を有姿で対パルプ3.5%添加。 【0025】 D.手抄き・プレス・乾燥処理 上記のように処方した裏種の填料添加を8%とした実施例1-1と同15%とした実施例1-2の原料を150メッシュワイヤーの角型シートマシンで表層は目標坪量40g/m2、中層は目標坪量110g/m2、裏層は目標坪量40g/m2に手抄きした。この湿紙を表層、中層、裏層の順に重ね、105℃のドラムドライヤーで3分間乾燥させて手抄き紙を得た。 【0026】 E.表裏面サイズ処理 用紙表裏面のサイズ液として酸化デンプン2.5%、ポリビニルアルコール1.1%、表面用ロジンサイズ剤有姿で0.8%の混合水溶液を作成した。この表裏面サイズ液をマイヤーバーで表面(オフセット面)に絶乾固形分で0.3g/m2、裏面(版画面)に0.3g/m2塗布した。 【0027】 F.キャレンダー処理 上記表裏面サイズ処理して風乾したものをロール面長30cmの小型キャレンダーでゲージ圧10kg/cm2で1回、50kg/cm2で2回通しを行なった。 【0028】 G.品質適性の評価方法 はがき用紙としての一般的紙質及び表面のオフセット印刷適性は従来のはがき用紙を基本としているので、ここで述べるのは省略する。ここでは、新しく付与する水性インクによる版画用適性、水彩画用適性、インクジェットプリンター用適性についての評価方法を述べる。これらの適性の評価は▲1▼インクニジミのないこと、▲2▼インクの吸い込み乾燥性の良いことが主になる。 【0029】 ▲1▼インクニジミについてはJ.TAPPI紙パルプ試験方法No.12の「ペン書きサイズ度試験方法」(a法)とインクジェットプリンター印字のニジミ、ヒゲの発生観察(b法)の2つの方法で行なった。 【0030】 ▲2▼インクの吸い込み乾燥性については、水性インクをインクジェットプリンターで印字し、シルボンC紙(非吸水紙)で40g/cm2の荷重下でこすり、尾引きの出ない時間を秒で表示する。よって、秒数が小さいほどインクの吸い込み乾燥性が良いといえる。 【0031】 実施例2 実施例1と同様の処方及び方法で、裏種(版画面の原料)処方のうち填料の種類だけを変え、焼成カオリン(SiO2とAl2O3、吸油量約80ml/100g)を対パルプ8%添加(実施例2-1)と20%(実施例2-2)の2水準のテストを行なった。 【0032】 実施例3 実施例1と同様の処方及び方法で、裏種(版画面の原料)処方のうち填料の種類だけを変え、尿素樹脂填料(ユーパール、吸油量約260ml/100g)を対パルプ8%添加(実施例3-1)と15%添加(実施例3-2)の2水準のテストを行なった。 【0033】 実施例4 版画用はがき用紙を実抄紙機で抄造した例である。 【0034】 5層抄きの抄紙機を用いて標準坪量190g/m2の試作紙を作成した。各層の付け量(各層の坪量)は表、表下、中、裏下、裏の各層に順に37g/m2、34g/m2、48g/m2、34g/m2、37g/m2とし、最終製品水分はは6.8%とした。 【0035】 填料は、版画面となる裏層にホワイトカーボン(NipSil NS-P(日本シリカ工業)、吸油量約250ml/100g)を対パルプ5%添加(実施例4-1)と10%添加(実施例4-2)の2種類を行なった。オフセット面となる表層にカオリンを対パルプ5%添加した。 【0036】 サイズ剤はロジンエマルジョンサイズ剤(ハリマ化成)を有姿・対パルプで、表層に1.7%、表下層に1.5%、裏層に1.7%添加した。中層、裏下層には添加しなかった。 【0037】 定着剤として、硫酸バンド(Al2O3 8%物)を有姿・対パルプで表層、表下層及び裏層へ2%添加し、中層及び裏下層へ1%添加した。パルプ配合は、表層及び裏層では針葉樹晒しクラフトパルプ20%、広葉樹晒クラフトパルプ80%とした。その他の3層は広葉樹晒クラフトパルプを70〜90%、晒サーモメカニカルパルプを30〜10%とした。 【0038】 各層の間には、層間剥離強度向上のためデンプン懸濁液を各ユニット抄き合わせ前に噴霧した。 【0039】 サイズプレスでは、ポリビニルアルコールとアクリルアミドの固形分比1:1としたものを2%濃度の水溶液として、紙の表面と裏面の両方に塗布した。塗布量は固形分で両面合計0.6g/m2とした。 【0040】 【比較結果】 実施例の効果は、従来のオフセット印刷面と比較すれば良いので、実施例で作成した版画用はがき用紙の表面(オフセット印刷面)と裏面(版画面)との比較を行なった。尚、いずれもはがき用紙として坪量(g/m2)、厚さ(mm)、平滑度<べック平滑度試験機>表・裏(秒)、白色度<ハンター白色度計>表・裏(%)、サイズ度<ステキヒト法>(秒)、表面強度<デニソンワックス法>表・裏、退色性、用紙外観は基準内に入っており、問題はなかった。あとは、水性インクのニジミと吸収性・乾燥性の評価を行ない、版画用、水彩画用、インクジェットプリンター用の用紙適性を判定することになる。 【0041】 【表1】 ※ 実施例は試料の裏面(版画面)を、比較例は試料の表面(オフセット面)を対象とする。 【0042】 ※ ペン書きサイズ度はニジム〜完全にニジマないまでを0〜6の7等級に分け評価した。 【0043】 ※ インクジェットプリンター印字のニジミ・ヒゲは悪い〜良いまでを1〜5の5等級に分け評価した。 【0044】 ※ 尾引きの秒数は前記の通り描写後表記の秒数を経過した後にこすった時に尾引きがないことを意味し、秒数が少ない程良好である。 【0045】 ※ 各実施例における填料の種類と配合率は下表の通りである。 【0046】 【表2】 |
訂正の要旨 |
▲1▼特許請求の範囲の請求項1の記載中、「・・・填料を配合率5〜20%で配合し、」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として、「・・填料を対原料パルプ5〜20%の配合率で配合し、」と訂正する。 ▲2▼明細書段落番号【0013】の3〜4行にかけて「配合率5〜20%の配合率」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として、「対原料パルプ5〜20%の配合率」と訂正する。 |
異議決定日 | 1999-08-25 |
出願番号 | 特願平7-327999 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(D21H)
P 1 651・ 121- YA (D21H) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 澤村 茂実 |
特許庁審判長 |
石井 勝徳 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 船越 巧子 |
登録日 | 1998-03-27 |
登録番号 | 特許第2763868号(P2763868) |
権利者 | 大昭和製紙株式会社 郵政大臣 |
発明の名称 | はがき用紙 |
代理人 | 小原 二郎 |
代理人 | 斉藤 晴男 |
代理人 | 斉藤 晴男 |