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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C10M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C10M
管理番号 1009110
異議申立番号 異議1997-72221  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-03-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-05-12 
確定日 1999-07-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2554668号「内燃機関用潤滑油基油および組成物」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2554668号の特許請求の範囲第1項、第3項に記載された発明についての特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2554668号発明は、昭和62年9月22日に特許出願され、平成8年8月22日に特許の設定登録がなされ、その後、渡辺洋子、関口憲雄、宮川浩二およびエクソン・ケミカル・パテンツ・インクより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成10年11月16日に訂正請求がなされたものである。
II.訂正の適否について、
本件訂正請求に係る訂正事項は以下のとおりである。
(1)特許明細書の特許請求の範囲における記載中、請求項1および3における「100℃における動粘度が2〜20cStであるポリオレフィン」を、「100℃における動粘度が2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン」にそれぞれ訂正する。
(2)特許明細書(特許公報第3欄30行)における「100℃における動粘度が2〜20cStであるポリオレフィン」を、「100℃における動粘度が2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン」に訂正する。
(3)特許明細書(同公報第3欄49〜50行)における「2〜16の範囲、好ましくは」を削除する。
(4)特許明細書(同公報第4欄1〜2行)における「エチレン,プロピレン,ブテン-1,ペンテン-1,ヘキセン-1,ヘプテン-1,」を削除する。
(5)特許明細書(同公報第5欄23行)における「マウネシウムスルホネート」を「マグネシウムスルホネート」に訂正する。
そこで、これらの訂正について検討するに、
(1)の訂正は、請求項1および3における内燃機関用潤滑油基油および同組成物にそれぞれ使用するポリα-オレフィンをさらに限定するものであるから、この訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、(2)〜(5)の訂正は、上記(1)の訂正により、訂正後の特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明中の記載とにおいて不整合が生じることを解消するものであるから、これらの訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、(6)の訂正は、明らかな誤記を訂正するものである。
そして、これら訂正は、特許請求の範囲を実質的に拡張・変更するものでもなく、また、特許明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、さらに、後記することから明らかなように 訂正後の特許請求の範囲に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けられない発明とすることはできないものである。
したがって、以上の点からみて、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2-4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.異議申立てについて、
(1)本件訂正後の発明の要旨は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1および3に記載されたとおりのものと認める。
ところで、訂正明細書の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】 (a)100℃における動粘度が2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン75〜95重量%および(b)100℃における動粘度が2〜20cStであるとともに水酸基価が10mgKOH/g以下のポリオールエステル25〜5重量%からなる内燃機関用潤滑油基油。【請求項2】ポリオールエステルが、ネオペンチル構造を有する多価アルコールと、脂肪酸、ナフテン酸および芳香族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸のエステルである特許請求の範囲第1項記載の内燃機関用潤滑油基油。
【請求項3】(a)100℃における動粘度が2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン75〜95重量%および(b)100℃における動粘度が2〜20cStであるとともに水酸基価が10mgKOH/g以下のポリオールエステル25〜5重量%からなる基油に、少なくともジチオリン酸亜鉛,清浄分散剤および粘度指数向上剤を添加してなる内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項4】ポリオールエステルが、ネオペンチル構造を有する多価アルコールと、脂肪酸、ナフテン酸および芳香族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸のエステルである特許請求の範囲第3項記載の内燃機関用潤滑油組成物。」
(2)一方、各特許異議申立人の主張の概要は以下のとおりである。
ア.特許異議申立人渡辺洋子は、証拠として甲第1号証(特開昭51-86668号公報)、甲第2号証(「LUBRICATION ENNGINEERING」Vol.35 No.2(1979)P.80〜90)、甲第3号証(「油化学」第29巻第9号(1980)第627〜635頁)および甲第4号証(「潤滑」第32巻第2号(1987)第111〜116頁)を提出し、本件請求項1ないし請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。
証拠の記載内容
甲第1号証(特開昭51-86668号公報);ネオペンチル構造を有するポリオールエステルの部分エステルと炭素原子数が2〜14個のオレフィン系炭化水素とを基油とした合成潤滑油組成物について記載され、実施例として、水酸基価が3mgKOH/gであるネオペンチル構造を有するポリオールエステルと、134mgKOH/gである部分エステルを試験した結果が記載されている。
甲第2号証「LUBRICATION ENNGINEERING」Vol.35 No.2(1979)P.80〜90);ポリオールエステルとポリオレフィンの混合物について、パネルコーカ・ー試験の結果が良好であったことが記載されている。
甲第3号証(「油化学」第29巻第9号(1980)第627〜635頁);1976年以来発売されている合成エンジン油(合成炭化水素:ポリオ-ルエステル=3:1,SE/CC級)は、米国,欧州において各種のマルチグレード油に比べて平均5%、日本車でも10W-50油に比べて約5%の燃費節約効果を示すことが記載されている。
甲第4号証(「潤滑」第32巻第2号(1987)第111〜116頁) ;分子内に極性基を持つニトリルゴムやアクリルゴムなどの場合、ジエステルやポリオールエステルは膨潤し、α-オレフィンオリゴマ-のような合成炭化水素は収縮する傾向にある。相反する合成炭化水素とエステルを混合したものを基油とすれば、鉱油に近いゴム適合性が得られる旨の記載がある。
イ.特許異議申立人関口憲雄は、証拠として甲第1号証(特許異議申立人渡辺洋子の甲第1号証と同じ)、甲第2号証([Emery Synthetic Lubricant Basestocks」1986年、Emery Chemicals,Div.of National Distillers&ChemicalCorp.)および甲第3号証(特開昭58-8798号公報)を提出し、
i)本件請求項1および請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の発明に該当するから、これらの特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、あるいは、ii)本件請求項1ないし請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している。
証拠の記載内容
甲第1号証(特開昭51-86668号公報);省略
甲第2号証(「Emery Synthetic Lubricant Basestocks,1986年、Emery Chemicals」Div. of National Distillers&ChemicalCorp.);ジエステル、ダイマ-エステル、ポリオ-ルエステルポリアルファオレフィンなどの合成潤滑油基油について記載されている。
甲第3号証(特開昭58-8798号公報);主要量の潤滑粘度の油と、(I)アルケニルスクシンイミドまたはアルケニルスクシネ-トまたはこれらの混合物、(II)ジヒドロカルビルチオ燐酸の第II族金属塩、(III)中性または過塩基のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のヒドロカビルスルホネ-トまたはこれらの混合物、(IV)中性または過塩基のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のアルキル化フエネ-トまたはこれらの混合物、及び(V)グリセリンのボレ-ト化脂肪酸エステル減磨剤を含む内燃機関用潤滑油について記載されている。
ウ.特許異議申立人宮川浩二は、証拠として甲第1号証(「ファインケミカル事典」(株式会社シ-エムシ-、昭和57年発行)第449〜450頁)、甲第2号証(「石油学会誌」第20巻第12号(1977)第62〜68頁)、甲第3号証(「潤滑」第23巻第8号(1978)第565〜571頁)、甲第4号証(「潤滑通信」1978年7月号第30〜37頁)、甲第5号証(「潤滑通信」1985年11月号第50〜52頁)、甲第6号証(Unichema International(ユニケマ・インターナショナル)社が1986年5月に刊行頒布した「Oleochemicals Nickel catalysts(オレオケミカルズニッケルキャタリスツ)」と題するパンフレットの第30〜31頁)、甲第7号証(「潤滑」第32巻第2号(1987)第7〜10頁)、甲第8号証(Encyclopedia of Chemical Technology「エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノジ-」第3版、第14巻第496〜497)、第9号証(ファインケミカル事典(株式会社シ-エムシ-、昭和57年発行)第717〜718頁)および甲第10号証(「石油製品添加剤」(幸書房、昭和49年刊行)第378〜379頁)を提出し、本件請求項1ないし請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している。
証拠の記載内容
甲第1号証(「ファインケミカル事典」(株式会社シ-エムシ-、昭和57年発行)第449〜450頁);ポリオールエステル系合成潤滑油はジエステル系合成潤滑油の欠点の改善のために開発された多価アルコールと脂肪酸とのエステルであって、ヒンダ-ドエステルとも呼ばれていて、耐熱性に優れていること、ポリオレフィン系合成潤滑油としては、α-オレフィンオリゴマ-が代表的であって、航空機潤滑油や自動車エンジン油などに使用されていることが記載されている。
甲第2号証(「石油学会誌」第20巻第12号(1977)第62〜68頁);自動車用エンジン油としての合成油の選択について、α-オレフィンオリゴマー等の合成炭化水素は、自動車に広く用いられているアクリルゴム等を収縮させ、一方、ポリオールエステルは膨潤させ、この問題を解決するためには相反する性質を持った合成油を混合することによって解決する旨の記載があり、また、ポリオールエステル及びα-オレフィンオリゴマーについて、熱、酸化安定性に優れること及び該エステルの代表例として、ペンタエリスリトールエステル、トリメチロールエステル及びネオペンチルグリコールエステルが挙げられている(第2表)。
甲第3号証(「潤滑」第23巻第8号(1978)第565〜571頁);合潤のゴムシール材に対する適合性も心配される点であり、オレフィンオリゴマ-はシ-ル材を収縮し、エステルは膨潤が大きすぎて良くないので両者をまぜればよい旨の記載がある。
甲第4号証(「潤滑通信」1978年7月号第30〜37頁);一般工業油として使用可能な主要な合成潤滑油として、ポリオ-ルエステル(POE)、二塩基酸エステル、リン酸エステル、ポリアルファオレフィン(PAO)があること、米国で1976年3月以来発売されている自動車用合成潤滑油はPAO:POE=3:1の混合物を基油とするものであることが記載されている。
甲第5号証(「潤滑通信」1985年11月号第50〜52頁);二種類の合成ポリ-α-オレフィン(PAO)の100℃における粘度(ASTM-D445による動的粘度)が5.85cStと7.79cStであることが記載されている。
甲第6号証(Unichema International(ユニケマ・インタ-ナショナル)社が1986年5月に刊行頒布した「Oleochemicals Nickel catalysts(オレオケミカルズニッケルキャタリスツ)」と題するパンフレットの第30〜31頁);合成潤滑油の製品リストが掲載されており、ヒンダ-ドエステルの製品例が記載されており、全製品の100℃の動的粘度が4.4〜18.5cStであること、2製品の水酸基価が5および3mgKOH/gであることが記載されている。
甲第7号証(「潤滑」第32巻第2号(1987)第7〜10頁);アルコール側の2番目の炭素(Cβ)が4級の多価アルコールと1価の脂肪酸エステルをネオペンチ-ルポリオ-ルエステルあるいはポリオ-ルエステルという旨記載されている。
甲第8号証(Encyclopedia of Chemical Technology「エンサイクロペディア・オブ・ケミカル・テクノジ-」第3版、第14巻第496〜497);合成潤滑油にも、石油系オイルの添加剤と同じタイプのものが一般的に使用される旨記載されている。
甲第9号証(ファインケミカル事典(株式会社シ-エムシ-、昭和57年発行)第717〜718頁);石油系潤滑剤に、清浄分散剤、粘度指数向上剤、酸化防止剤などの添加剤が用いられることが記載されている。
甲第10号証(「石油製品添加剤」(幸書房、昭和49年刊行)第378〜379頁); チオりん酸亜鉛が典型的な酸化防止剤であり、エンジン油の酸化防止剤として広く使用されていることが記載されている。
エ.特許異議申立人エクソン・ケミカル・パテンツ・インクは、証拠として甲第1号証(「ペトロテック」第8巻第2号(1985)第159〜164頁)、甲第2号証(「自動車技術」第39巻第8号(1985)第922〜926頁)、甲第3号証(「化学と工業」、第29巻第10号(1976年)、第867〜868頁)、甲第4号証(「Synthetic Engine Oils-A New Concept」1974年、2月25日乃至3月1日、Automotive Engineering Congress Society of Automotive Engineers,Inc.発行)、甲第5号証(「Chemische Industrie,第31巻(1981年4月)、第212〜214頁)、甲第6号証(化学便覧(1986年)第1220頁)、甲第7号証(「ペトロテック」第8巻第5号(1985)第443〜448頁)および甲第8号証(「出光石油技術」第29巻第4号(1986)第402〜419頁)を提出し、本件請求項1ないし請求項4に係る発明は、甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張している
証拠の記載内容
甲第1号証(「ペトロテック」第8巻第2号(1985)第159〜164頁);C6〜14のα-オレフィンの重合体(PAO)が自動車エンジン油等として使用されること、及びPAOの物性として210°F(98.9℃)で、粘度が3.79〜4.07cSt(第2表)及び3.70〜9.62cSt(第3表)のものが記載され、また、PAOはシ-ル材を収縮すること、合成エンジン油としてポリオ-ルエステルと配合することも記載されている。
甲第2号証(「自動車技術」第39巻第8号(1985)第922〜926頁);自動車用エンジンオイルに使用するポリオールエステルの100℃粘度が2〜10cStであることが記載され、これらは熱安定度および酸化安定性が良好である旨の記載がある(第1表)。
甲第3号証(「化学と工業」、第29巻第10号(1976年)、第867〜868頁);ポリオレフィン基油の潤滑油の問題点は、エンジンに使われているゴム-シール材を収縮することであり、これは膨潤する傾向のある合成油を加えることによって解決できる旨の記載がある。
甲第4号証(「Synthetic Engine Oils-A New Concept」1974年、2月25日乃至3月1日、Automotive Engineering Congress Society of Automotive Engineers,Inc.発行);合成HC流体を鉱油と比較してゴムシール膨潤可能性について評価したこと、付加的なシール膨潤が必要であることが決定されたこと、合成されたHC流体の特徴は、他の選択された合成物質の添加により容易に改良された旨記載されている。
甲第5号証(「Chemische Industyie、第31巻(1981年4月)、第212〜214頁);多価アルコールエステルは自動車分野において、とりわけ、ポリα-オレフィンや鉱物油の混合成分として、部分合成のエンジンオイルやギアオイルの製造に適している、それらは、その揮発性を高めることなくその粘度を減少させ、またポリα-オレフィンでの、そのガスケットの多少縮む傾向に抵抗することが記載されている。
甲第6号証(化学便覧(1986年)第1220頁);エンジン油のSAE粘度番号に相当する粘度は、100℃で3.8乃至21.9cStであることが記載されている。
甲第7号証(「ペトロテック」第8巻第5号(1985)第443〜448頁);自動車用エンジンオイル等として使用する各種のネオペンチル構造を有するポリオールエステルについて、その100℃粘度が2.4〜12.9cStであるものが記載され(第1表)、その熱、酸化安定性が他の潤滑油基油に比べ優れていることが記載され、170℃における清浄性に優れることが示されている(第2表)。また、ポリオールエステルは慣用上ヒンダードエステルに限られ、ヒンダードエステルはアルコール基に対してβ位に水素のついていないネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどである旨記載されている。
甲第8号証(「出光石油技術」第29巻第4号(1986)第402〜419頁);潤滑油添加剤として、ジチオリン酸亜鉛、清浄分散剤および粘度指数向上剤が記載されている。
(3)そこで、これら異議申立人の主張について以下順次検討する。
異議申立人渡辺洋子の主張について、
甲第1号証の発明は、ネオペンチルアルコールの部分エステルとポリオレフィン油とを基油とする発明に係り、この部分エステルについては、表1に記載されているようにヒドロキシル価が134mg(KOH/g)とかなり高く、本件訂正後の請求項1の発明(以下本件発明1という。)の水酸基価が10mg(KOH/g)以下のものとは異なるものであることは明らかである。もっとも、甲第1号証においては、ヒドロキシル価が3mg(KOH/g)のネオペンチルアルコールのエステルを使用する試験例も記載されてはいるが(表2および3)、この試験例は、上記部分エステルの比較例として記載されたものであり、ポリオレフィンと配合した場合の物性は、部分エステルを使用する場合に比して劣っていることが示されている。また、ヒドロキシル価が3mg(KOH/g)のエステルとポリオレフィンの配合割合はそれぞれ30重量%および70重量%であるから、本件発明の配合割合とは相違している。さらに、このエステルに配合されたポリオレフィンはヘキセン-1、オクテン-1およびデセン-1の混合物の重合体であるのに対して、本件発明1のポリα-オレフィンは炭素数8〜12のα-オレフィンの重合物からなるのであって、このようなヘキセン-1を重合体成分として含まないものであるから、この点でも相違する。
甲第2号証においては、ポリオールエステルとポリオレフィンの混合油がパネルコーカー試験の性能において優れる旨記載され、甲第3号証においては、1976年以来発売されている合成エンジン油が合成炭化水素:ポリオールエステルを3:1である点および甲第4号証においては、ゴムの収縮膨張について相反する性質を有する合成炭化水素とエステル油を混合して基油とする旨の記載はあるが、これらの記載においては、どのようなポリα-オレフィン、合成炭化水素あるいはポリオールエステルを使用しているのか具体的には明らかになっていないのであるから、これら甲各号証は本件発明のような特定のポリα-オレフィンおよびポリオールエステルを併用することは示しておらず、当然これらを本件発明1における上記特定割合で使用することも示唆していない。
したがって、甲第2〜4号証においても、本件発明の構成は示されてはいない。そして、そもそも甲第1号証においては、ヒドロキシル価が3mg(KOH/g)のエステル油は、ヒドロキシル価が134mg(KOH/g)のエステノレ油に比べ劣っている旨記載されているのであるから、甲第2〜4号証の記載をみても、甲第1号証の組成物において、わざわざ効果の劣るヒドロキシル価が低いエステル油を使用して、本件発明1の組成物の組成に変更することは当業者においても容易にはできないとするほかない。
しかも、本件発明1においては、特定のポリα-オレフィンおよびポリオールエステルを特定の配合割合で用いることにより、内燃機関用潤滑油基油として、良好なゴムシール性と優れた高温清浄性をを同時に満たすという効果を奏するものである。そして、このゴムシール性と高温清浄性とは、互いに関連する効果とはいえないのであるから、ゴムの収縮膨張の抑制については良好な基油の組成を得たとしても、該組成が高温清浄性においても良好な組成であるということはできず、本件発明1の上記効果は、甲第1〜4号証の上記記載からでは、当業者においても予測することはできないものとせざるを得ない。
したがって、以上の点からみると、本件発明1は、甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとはいえない。
また訂正後の請求項3の発明(以下、本件発明2という。)は、本件発明1の構成に加えさらにジチオリン酸亜鉛、清浄分散剤および粘度指数向上剤を添加した内燃機関用潤滑油組成物に関するものであるから、同様に甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものではない。なお、訂正後の請求項2および4の事項も、本件発明1あるいは2をさらに限定したものであるから、同様に、甲第1〜4号証の記載から当業者が容易には想到できないものである。
異議申立人関口憲雄の主張i)について、
「上記異議申立人渡辺洋子の主張について、」において明ちかにしたように、甲第1号証においては本件発明1の構成は記載されてはおらず、また同異議申立人が指摘する甲第1号証に記載されたポリブテンは、訂正により、もはや、本件発明1のポリα-オレフィンに含まれるものではないことは明らかである。したがって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。なお、訂正後の請求項2の事項は、本件発明1をさらに限定したものであるから、この事項も甲第1号証に記載されたものではない。
同ii)について、
甲第2号証は、Emery社のポリオールエステルには2mg(KOH/g)以下のものがある旨示すだけであり、また甲第3号証も、潤滑油基油にジチオリン酸亜鉛と清浄分散剤および粘度指数向上剤を配合することが記載されているのみであって、これら甲号証および甲第1号証には、本件発明1における特定のポリα-オレフィンおよびポリオールエステルを特定の割合で配合することを示してはおらず、また、本件発明1の効果も、これら甲1〜3号証の記載からでは予測できたものとすることはできない。したがって、本件発明1は甲第1〜3号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできないし、本件発明1にさらに構成を加えた本件発明2も同様に当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
なお、請求項2および3の事項も、本件発明1あるいは2をさらに限定したものであるから、当然これら甲各号証の記載から当業者が容易に想到できたものではない。
異議申立人宮川浩二の主張について、
甲第1号証〜甲第10号証の記載は上記したとおりであり、これら甲各号証において、ポリα-オレフィンとポリオールエステルとの併用を示すのは、甲第2〜4号証のみである。
甲第2、3号証においては、ポリα-オレフィンおよびポリオールエステルポリオールがシール等に使用するゴムを収縮あるいは膨潤性させる相反する性質を有するためにこれらを混合使用すべきことを示唆し、また甲第4号証においては、米国において1976年以来発売されている自動車用合成潤滑油は、ポリα-オレフィンおよびポリオールエステルポリオールを3:1で混合したものである旨記載されてはいるが、これら甲号証においては、本件発明1のように特定のポリα-オレフィンおよびポリオールエステルポリオールを特定の配合割合で配合する点については記載されてはいない。
しかも、本件発明1の効果は、前述したように甲第2、3号証に示されるようなシール等に使用するゴムの収縮、膨潤性を抑制するだけではなく、高温清浄性をも併せて奏するものであり、この効果は特定のポリα-オレフィンおよびポリオールエステルポリオールを特定の配合割合で配合することによりもたらされると解するのが相当である。
そして、甲第2号証においては、ポリα-オレフィンおよびポリオールエステルポリオールが高温安定性および熱、酸化安定性にそれぞれ優れる旨の記載はあるが、これらを配合した場合の高温清浄性に関する記載は全くなく、甲第2号証に加え他の証拠をみても、本件発明1の上記効果は、当業者において容易に予想できるものとすることはできない。したがって、これらの点からみれば、本件発明1は甲第1〜10号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできない。また、本件発明2は、本件発明1の構成に加えさらにジチオリン酸亜鉛、清浄分散剤および粘度指数向上剤を添加した内燃機関用潤滑油組成物に関するものであるから、同様に甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものではない。なお、訂正後の請求項2および4の事項も、本件発明1あるいは2をさらに限定したものであるから、同様に、甲第1〜4号証の記載から当業者が容易には想到できないものである。
特許異議申立人エクソン・ケミカル・パテンツ・インクの主張について、
甲第1、3〜5においては、シール材等に使用されるゴムの収縮、膨張を抑制するために、ポリα-オレフィンとポリオールエステルとを混合使用することを示す記載はあるが、これら甲各号証の記載においては、本件発明1のように特定のα-オレフィンとポリオールエステルポリオールとを特定の配合割合で使用する旨の記載はない。また、甲第2および7号証においては、ポリα-オレフィンおよびポリオールエステルが、熱安定性等が良好である旨記載され、さらに甲第6号証および甲第8号証においては、それぞれエンジン油の粘度および潤滑油添加剤についての記載はあるが、これら甲各号証においても、本件発明1のように特定のα-オレフィンとポリオールエステルポリオールとを特定の配合割合で使用する旨の記載はない。したがって、これら甲第1〜8号証においては本件発明1の構成は示されてはいない。
しかも本件発明1は、特定のポリα-オレフィンおよびポリオールエステルを特定の配合割合で用いることにより、内燃機関用潤滑油基油として、良好なゴムシール性と優れた高温清浄性をを同時に満たすという効果を奏するものである。そして、このゴムシール性と高温清浄性とは、互いに関連する効果とはいえないのであるから、ゴムの収縮膨張の抑制において良好な基油の組成であっても、該組成が高温清浄性においても良好な組成であるということはできず、甲第1、3〜5の記載からでは本件発明1の効果は予想することはできない。また、甲第2および7号証の記載は、ポリα-オレフィンとポリオールエステルを混合使用した場合において、高温清浄性にどのような影響を与えるのかを示すものではないから、これら甲第1、3〜5号証に加えさらに甲第2および7号証の記載を加えてみても、本件発明1の構成に基づく効果を当業者が予想できるとはいえない。さらに、甲第6号証および8号証は、本件発明1の効果を全く示してはいない。
したがって、以上の点からみれば、本件発明1は甲第1〜8号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものとすることはできない。
また、本件発明2は、本件発明1の構成に加えさらにジチオリン酸亜鉛、清浄分散剤および粘度指数向上剤を添加した内燃機関用潤滑油組成物に関するものであるから、同様に甲第1〜4号証に記載された発明から当業者が容易に発明できたものではない。なお、訂正後の請求項2および4の事項も、本件発明1あるいは2をさらに限定したものであるから、同様に、甲第1〜4号証の記載から当業者が容易には想到できない。
IV.むすび
したがって、本件訂正請求は認めることができ、
また、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件請求項1および請求項3に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件請求項1および請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
内燃機関用潤滑油基油および組成物
(57)【特許請求の範囲】
(1)(a)100゜Cにおける動粘度が2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン75〜95重量%および(b)100゜Cにおける動粘度が2〜20cStであるとともに水酸基価が10mgKOH/g以下のポリオールエステル25〜5重量%からなる内燃機関用潤滑油基油。
(2)ポリオールエステルが、ネオペンチル構造を有する多価アルコールと、脂肪酸、ナフテン酸および芳香族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸のエステルである特許請求の範囲第1項記載の内燃機関用潤滑油基油。
(3)(a)100゜Cにおける動粘度が2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン75〜95重量%および(b)100゜Cにおける動粘度が2〜20cStであるとともに水酸基価が10mgKOH/g以下のポリオールエステル25〜5重量%からなる基油に、少なくともジチオリン酸亜鉛,清浄分散剤および粘度指数向上剤を添加してなる内燃機関用潤滑油組成物。
(4)ポリオールエステルが、ネオペンチル構造を有する多価アルコールと、脂肪酸、ナフテン酸および芳香族カルボン酸から選ばれる少なくとも一種のカルボン酸のエステルである特許請求の範囲第3項記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は内燃機関用潤滑油基油および組成物に関し、詳しくは高温清浄性ならびにゴムシール性にすぐれた内燃機関用潤滑油基油、およびこの基油に各種添加剤を配合した内燃機関用潤滑油組成物に関する。
〔従来の技術及び発明が解決しようとする問題点〕
最近の自動車は三元触媒等の還元触媒を装着することにより、排ガス対策が完成したことから、高速走行や高出力化に力点が注がれ、内燃機関をより苛酷に運転するようになってきている。
一方、省エネルギーの観点から燃費改善を目的として、自動車車体の軽量化が推進され、従ってクランクケースも小型化される傾向にあり、それに伴ってクランクケース油(内燃機関油)の量も減少してきている。その結果、単位油量当たりの熱負荷も増大しており、また高速走行や高出力化に伴って油温の上昇が顕著になり、しかも長時間高い油温が持続する傾向が大きい。
そのため、鉱油を基油とした従来の内燃機関油では、耐熱性が不足する場合が生じてきており、特に耐熱性が不足することによる清浄性の不足の問題が深刻化してきている。これに対しては、従来公知の内燃機関油に各種添加剤を増量して加えても、もはや対処できなくなってきている。
また、上述したような苛酷な状況下で運転される内燃機関の潤滑油として、特公昭60-39715号公報に示される合成潤滑油が知られているが、高温の酸化安定性が悪く、清浄性が充分でないという問題がある。
〔問題点を解決するための手段〕
そこで、本発明者は上記従来の内燃機関の潤滑油の問題点を解消し、高温清浄性のすぐれた潤滑油を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、ポリα-オレフィンに、水酸基価の小さい特定のポリオールエステルを一定割合で混合した合成油系の基油が、上記課題を達成しうることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。すなわち、本発明は(a)100℃における動粘度が2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン75〜95重量%および(b)100゜cにおける動粘度が2〜20cStであるとともに水酸基価が10mgKOH/g以下のポリオールエステル25〜5重量%からなる内燃機関用潤滑油基油を提供すると共に、上記潤滑油基油に、少なくともジチオリン酸亜鉛,清浄分散剤および粘度指数向上剤を添加してなる内燃機関用潤滑油組成物を提供するものである。
本発明の潤滑油基油は、(a)ポリα-オレフィンと(b)ポリオールエステルからなる合成油系の基油であるが、ここで(a)成分であるポリα-オレフィンは、100゜Cにおける動粘度が2〜20cSt1好ましくは3〜15cStのものであれば各種のものを使用することができる。例えばα-オレフィンを原料として、チーグラー触媒を用いる方法,ラジカル重合による方法,塩化アルミニウム触媒を用いる方法,フッ化ホウ素とアルコールからなる触媒を用いる方法など様々な方法によって重合(特に低重合)あるいは共重合して得られる三量体以上のオリゴマーが主成分であるポリα-オレフィンが好適に使用される。この原料α-オレフィン(即ちポリα-オレフィンの構成単位)としては、炭素数8〜12の範囲の一種または二種以上のオレフィン用いられる。具体的には、オクテン-1,ノネン-1,デセン-1,ウンデセン-1,ドデセン-1などから選ばれる一種または二種以上を使用する。特に好ましくはオクテン-1,ノネン-1,デセン-1,ドデセン-1である。
なお、ポリα-オレフィンの100℃における動粘度が20St未満のものでは、蒸発減量が多いという不都合があり、また20cStを越えるものでは粘性抵抗による動力損失が大きすぎるので好ましくない。
一方、本発明の潤滑油基油の(b)成分であるポリオールエステルは、100℃における動粘度が2〜20cSt、好ましくは3〜15cStであるとともに、水酸基価が10mgKOH/g以下、好ましくは8mgKOH/g以下のものであれば、様々なものが使用可能である。
このポリオールエステルは多価アルコール(ポリオール)とカルボン酸との反応により得られるが、この多価アルコールとしては、各種のものがあるが、例えばネオペンチル構造を有する多価アルコール(つまり、2〜4個のメチロール基が第四級炭素原子に結合した構造を持つもの)、具体的には炭素数5〜19のジアルキルプロパンジオール(ネオペンチルグリコール;2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール;2-ブチルー2-エチル-1,3-プロパンジオール;2--ブチル-2-へキシル-1,3-プロパンジオールなど),炭素数5〜15のトリメチロールアルカン(1,1,1-トリメチロールエタン;1,1,1-トリメチロールプロパン;1,1,1-トリメチロールブタンなど),ペンタエリスリトール,ジペンタエリスリトール等があげられる。
また、上記カルボン酸としては、脂肪酸(直鎖又は分枝の飽和あるいは不飽和),ナフテン酸,芳香族カルボン酸など各種のものがあるが、これらのうち酢酸;吉草酸;カプロン酸;エナント酸;カプリル酸;ペラルゴン酸;カプリン酸;ラウリン酸;ミリスチン酸;パルミチン酸;ステアリン酸;2-エチルへキシル酸;3,5,5-トリメチルへキシル酸およびこれらに対応する不飽和酸などの脂肪酸、特に炭素数3〜18の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。
本発明の潤滑油基油の(b)成分であるポリオールエステルは、上記の多価アルコールとカルボン酸とから形成されるものであるが、そのエステル化の程度は水酸基価(OH価)が10mgKOH/g以下、好ましくは8mgKOH/g以下となるようにする。つまり、このポリオールエステルは、完全なエステルでなく、ポリオールの部分エステルであってもよいが、そのエステル化の程度は比較的高く(即ち、残存する水酸基が少なく)ければならない。ここで、ポリオールエステルの水酸基価が、10mgKOH/gを越えるものでは、高温での酸化安定性が悪く、清浄性が不足する。
また、このポリオールエステルは、その水酸基価が10mgKOH/g以下であると共に、100℃における動粘度が2〜20cSt、好ましくは3〜15cStであることを要する。ここで動粘度が2cSt未満では蒸発減量が多いという不都合があり、また100cStを越えるものでは粘性抵抗による動力損失が大きすぎるので好ましくない。
本発明の潤滑油基油は、上述の如き(a)ポリα-オレフィンと(b)ポリオールエステルとから構成されるが、その配合割合は、(a)ポリα-オレフィン75〜95重量%、好ましくは75〜90重量%、(b)ポリオールエステル25〜5重量%、好ましくは25〜10重量%である。この配合割合が上記範囲を逸脱すると、高温清浄性が悪化し、ゴムシール性が低下するという問題が生ずる。
次に、本発明の潤滑油組成物は、上記(a),(b)成分を所定割合で配合してなる基油に、各種の添加剤を加えてなる組成物である。ここで加える添加剤のうち少なくともジチオリン酸亜鉛,清浄分散剤および粘度指数向上剤を加えることが必要である。
このジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)は、酸化防止剤,摩耗防止剤,極圧剤,腐食防止剤等の機能を併せ持つ添加剤であり、本発明の潤滑油組成物では必須の成分である。
また、清浄分散剤としては、金属系のものや無灰系のものなど各種のものが使用可能である。例えばカルシウムスルホネート,マグネシウムスルホネート,バリウムスルホネート等の金属スルホネート;フェネート;サリチレート;コハク酸イミド;酸アミド;ベンジルアミン;コハク酸エステルなどをあげることができる。
さらに、粘度指数向上剤は様々なものが使用できるが、通常はポリメタクリレート,ポリイソブチレン,オレフィン重合体,オレフィン共重合体(エチレン-プロピレン共重合体など),ポリアルキルスチレン,フェノール縮合物,ナフタレン縮合物,スチレン-ブタジエン共重合体及びこれらの分散型重合体等が使用される。
本発明の潤滑油組成物では、上記の添加剤の配合量は該組成物に対する要求特性,基油の種類,添加成分の種類などに応じて適宜選定すればよい。
本発明の潤滑油組成物には、そのほか必要に応じて耐摩耗剤,極圧剤,酸化防止剤,油性剤,防錆剤,消泡剤,などを適量配合することもできる。
〔実施例〕
次に、本発明を実施例および比較例により更に詳しく説明する。
実施例1
デセン-1の3,4量体を主成分とするポリα-オレフィン(100゜Cにおける動粘度が6cSt)88.2重量%とトリメチロールプロパンエステル(カルボン酸としてC6〜C12のカルボン酸(植物油脂)を使用、100℃における動粘度4cSt,水酸基価5mgKOH/g)11.8重量%とを混合して潤滑油基油を調製した。
次に、この潤滑油基油85重量部に、粘度指数向上剤として分散型オレフィン共重合体を5重量部、ZnDTP及び清浄分散剤(金属系,無灰分系の両者)並びに若干の他成分を合計10重量部配合して潤滑油組成物を調製した。
更に、この潤滑油組成物を用いてパネルコーキング試験及びゴム膨潤試験を行ったところ、パネルコーキング試験は70mg、ゴム膨潤試験の硬度変化は0であった。
なお、パネルコーキング試験は、Federal TestMethod 791B-3462に準拠し、パネル温度320℃,油温100℃,テスト時間3時間としてアルミニウムパネルに付着するカーボン量(mg)を評価することにより行い、また、ゴム膨潤試験は、JIS K 6301に準拠し、120℃,70時間後のニトリルゴムの硬度変化(膨潤の程度)を評価することにより行った。
実施例2
実施例1において、ポリα-オレフィン76.5重量%とトリメチロールプロパンエステル23.5重量%とを混合して潤滑油基油を調製したこと以外は、実施例1と同様に操作して、潤滑油組成物を調製し、更に同様にパネルコーキング試験及びゴム膨潤試験を行った。その結果、パネルコーキング試験は90mg、ゴム膨潤試験の硬度変化は-2であった。
比較例1
実施例1において、潤滑油基油として鉱油系の溶剤精製基油(%CA:8)を82重量部用いたこと及び粘度指数向上剤としての分散型オレフィン共重合体を8重量部配合したこと以外は、実施例1と同様に操作して、潤滑油組成物を調製し、更に同様にパネルコーキング試験及びゴム膨潤試験を行った。その結果、パネルコーキング試験は180mg、ゴム膨潤試験の硬度変化は-2であった。
比較例2
実施例1において、ポリα-オレフィンのみから潤滑油基油を調製したこと以外は、実施例1と同様に操作して、潤滑油組成物を調製し、更に同様にパネルコーキング試験及びゴム膨潤試験を行った。その結果、パネルコーキング試験は60mg、ゴム膨潤試験の硬度変化は+4であった。
比較例3
実施例1において、潤滑油基油としてトリメチロールプロパンエステルを83重量部用いたこと及び粘度指数向上剤として分散型オレフイン共重合体を7重量部配合したこと以外は、実施例1と同様にパネルコーキング試験及びゴム膨潤試験を行った。その結果、パネルコーキング試験は200mg、ゴム膨潤試験の硬度変化は-5であった。
〔発明の効果〕
以上の如く、本発明の潤滑油基油ならびに潤滑油組成物は、内燃機関の潤滑油として使用した際に、すぐれた清浄性、特にすぐれた高温清浄性を発揮し、またすぐれたゴムシール性をも示す。しかも低温流動性にもすぐれたものである。
したがって、本発明の潤滑油基油ならびに潤滑油組成物は、各種内燃機関(ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン,ガスエンジンなど)用の潤滑油として幅広くかつ有効に利用される。
 
訂正の要旨 ▲1▼訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1に係る記載(特許明細書第1欄2〜3行目)において、「2〜20cStのポリα-オレフィン」を「2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン」と訂正する。
▲2▼訂正事項b
特許請求の範囲の請求項3に係る記載(特許明細書第1欄12〜13行目)において、「2〜20cStのポリα-オレフィン」を「2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン」と訂正する。
▲3▼訂正事項c
特許明細書第3欄30行目において、「2〜20cStのポリα-オレフィン」を「2〜20cStで、かつ炭素数8〜12のα-オレフィンの重合体からなるポリα-オレフィン」と訂正する。
▲4▼訂正事項d
特許明細書第3欄49〜50行目において、「2〜16の範囲、好ましくは」を削除する。
▲5▼訂正事項e
特許明細書第4欄1〜2行目において、「エチレン,プロピレン,ブテン-1,ペンテン-1,ヘキセン-1,ヘプテン-1,」を削除する。
▲6▼訂正事項f
特許明細書第5欄23行目の「マウネシウムスルホネート」を「マグネシウムスルホネート」に訂正する。
異議決定日 1999-06-22 
出願番号 特願昭62-236175
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C10M)
P 1 651・ 121- YA (C10M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平山 美千恵  
特許庁審判長 吉村 康男
特許庁審判官 谷口 浩行
小島 隆
登録日 1996-08-22 
登録番号 特許第2554668号(P2554668)
権利者 出光興産株式会社
発明の名称 内燃機関用潤滑油基油および組成物  
代理人 岡田 希子  
代理人 大谷 保  
代理人 大谷 保  
代理人 山崎 行造  
代理人 木村 博  

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