• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1009674
審判番号 審判1996-9076  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-09-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1996-06-13 
確定日 2000-02-10 
事件の表示 昭和63年特許願第48319号「データ読み出し禁止回路」拒絶査定に対する審判事件(平成1年9月5日出願公開、特開平1-222354)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯及び本願発明
本件出願は、昭和63年2月29日にされたものであって、請求項に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成8年7月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、該明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりの次の事項により構成されるものと認める。
「複数の紫外線消去型の第1のメモリセルからなり所定数の選択アドレスを有するプログラム可能な読み出し専用メモリ領域と、入力されるアドレスをデコードした前記第1のメモリセルヘの前記選択アドレスを出力するアドレスデコーダと、複数の前記紫外線消去型の第2のメモリセルからなり前記選択アドレスが入力され前記選択アドレスに対応して設けられた前記所定数の第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットであって、前記選択アドレスによって選択される第1のメモリセルのデータの読み出しを禁止するときは前記選択アドレスに対応する前記第1のプロテクトアドレス選択ビットに論理データを書き込むことなく前記選択アドレスに対応する前記第2のプロテクトアドレス選択ビットに前記論理データが書き込まれ、前記読み出し禁止に設定された前記選択アドレスからの前記データの読み出しを許可するときは前記選択アドレスに対応する前記第1のプロテクトアドレス選択ビットに前記論理データが書き込まれる第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットと、前記選択アドレスに対応して選択された第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットの値が同一のときに前記第1のメモリセルからのデータ読み出しを許可し、前記第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットの値が異なるときは前記第1のメモリセルのデータ読み出しを禁止するゲート手段とを備えることを特徴とするデータ読み出し禁止回路」
(なお、“単一のビット”或いは“複数のビット”という表現がある(例えば、特開昭62-165253号公報の特許請求の範囲の欄には、「複数ビットのセキュリティビット」との記載がある。)ことを考慮すると、前記「第1および第2のプロテクトアドレス選択ビット」における「ビット」は、“1ビットの”或いは“単一の”との限定がされていないから、“1ビット”に限定されないものと解するのが相当である。更に、後記5を参照されたい。)
2 引用発明
(1) 原審において引用されたところの本件出願前に頒布された刊行物である特開昭61-278951号公報(昭和61年12月1日特許庁発行)には、EPROM(Erasable Progammable Read Only Memory)に格納された情報を保護する記憶情報保護回路が記載されており、これについて、次の各事項が図面と共に記載されている。
▲1▼「6は照合用コードを格納するための第1の格納手段としてのレジスタで、FAMOS構造の8個のEPROMセルから構成されている。7は被照合用コードを格納するための第2の格納手段としてのレジスタで、FAMOS構造の8個のEPROMセルから構成されている。8は前記照合用および被照合用コードを比較するための比較手段としての一致回路、9、10はそれぞれ前記レジスタ6、レジスタ7への書き込み線、11は前記一致回路8の状態出力線、12はAND機能素子、13はEPROMセル群1の最終出力線」(2頁右上欄12行〜左下欄3行)
▲2▼「各EPROMセルは消去状態での論理値を「1」、書き込み状態での論理値を「0」とする。」(2頁左下欄7行〜8行)
▲3▼「前記レジスタ6、レジスタ7の内容(コード)が一致しているとき、すなわち、読み出し可能状態のときは、前記一致回路8の状態出力線11の論理値は「1」、一方、前記レジスタ6、レジスタ7の内容(コード)が一致していないとき、すなわち、読み出し不可能状態のときは、前記一致回路8の状態出力線11の論理値は「0」である。」(2頁左下欄9行〜16行)
▲4▼「レジスタ6、7のうち、レジスタ6に書き込み線9を介して読み出しコード(例えば、「8AH」)を書き込むと、レジスタ7のデータは「FFH」であるから、レジスタ6とレジスタ7の内容は一致せず、一致回路8の状態線11には論理値「0」が出力される。従って、EPROMセル群1のデータは、出力線13へ出力されなくなる。」(2頁右下欄17行〜3頁左上欄4行)
▲5▼「前記レジスタ6を消去状態にするため、レジスタ6に紫外線を照射すると、EPROMセル群1にも紫外線が照射されることになり、前記レジスタ6の消去と同時に、EPROMに格納されたデータも消去され、EPROMに格納されていたデータは読み出されない。」(3頁左上欄10行〜15行)
▲6▼「レジスタ7に読み出しコード(この場合は、「8AH」)を書き込むと、レジスタ6、7の内容は、ともに「8AH」となって一致し、一致回路8の状態出力線11には、論理値「1」が出力される。その結果、EPROMセル群1に格納されたデータは、出力線3を介して最終出力線13に伝達され、ついで、出力バッファ4を介して外部に出力される。」(3頁右上欄16行〜左下欄3行)
(2)そして、前記事項にこの分野の技術常識を加味すれば、更に、次の技術事項を指摘することができる。
▲7▼ EPROMセル群1は、所定数の選択アドレスを有するものであること
▲8▼ 入力されるアドレスをデコードした選択アドレスを出力するアドレスデコーダを備えること
(3)以上▲1▼ないし▲8▼の事項を本願発明の構成に準じて整理すると、前記刊行物には、次の事項により構成される発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
複数の紫外線消去型の第1のEPROMセルからなり所定数の選択アドレスを有するEPROMセル群と、入力されるアドレスをデコードした前記第1のEPROMセルヘの前記選択アドレスを出力するアドレスデコーダと、複数の前記紫外線消去型の第2のEPROMセルからなる被照合用コードおよび照合用コードであって、前記第1のEPROMセルのデータの読み出しを禁止するときは前記被照合用コードに読み出しコードを書き込むことなく前記照合用コードに前記読み出しコードが書き込まれ、前記読み出し禁止に設定された前記第1のEPROMセルからの前記データの読み出しを可能とするときは前記被照合用コードに前記読み出しコードが書き込まれる被照合用コードおよび照合用コードと、前記被照合用コードおよび照合用コードが一致しているときに前記第1のEPROMセルのデータの読み出しを可能とし、前記被照合用コードおよび照合用コードが異なるときは前記第1のEPROMセルのデータの読み出しを禁止するAND論理素子とを備える記憶情報保護回路
(なお、前記刊行物には、データを格納するEPROMセルおよび被照合用コードおよび照合用コードを格納するEPROMセルについて、それぞれ、“第1のEPROMセル”および“第2のEPROMセル”とする記載はないが、データを格納するEPROMセルと被照合用コードおよび照合用コードを格納するEPROMセルが別のものであることはその全記載から明らかであるから、この違いを簡明に表現する便宜上、前記認定の表現を採用した。)
3 本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明の「紫外線消去型の第1のメモリセル」および「紫外線消去型の第2のメモリセル」が、それぞれ、引用発明の「紫外線消去型の第1のEPROMセル」および「紫外線消去型の第2のメモリセル」を包摂するものであることは明らかである。
(2)また、引用発明の被照合用コードおよび照合用コードが、“プロテクトビット”として機能するものであることも明らかであるから、本願発明の「第1および第2のプロテクトアドレス選択ビット」と引用発明の「被照合用コードおよび照合用コード」とは、“第1のメモリセルの読み出しを禁止するときは第1のプロテクトビットにあるデータを書き込むことなく第2のプロテクトビットに前記データが書き込まれ、前記読み出し禁止に設定された前記第1のメモリセルの読み出しを許可するときは前記第1のプロテクトビットに前記データが書き込まれる第1および第2のプロテクトビット”である点で一致し、また、本願発明の「ゲート手段」と引用発明の「AND論理素子」とは、“前記第1および第2のプロテクトビットの値が同一のときに前記第1のメモリセルからのデータ読み出しを許可し、前記第1および第2のプロテクトビットの値が異なるときは前記第1のメモリセルのデータ読み出しを禁止するゲート手段”である点で一致する。
(3)更に、本願発明の「プログラム可能な読み出し専用メモリ領域」および「データ読み出し禁止回路」は、それぞれ、引用発明の「EPROMセル群」および「記憶データ保護回路」と同義である。
(4)よって、本願発明と引用発明とは、構成上、
複数の紫外線消去型の第1のメモリセルからなり所定数の選択アドレスを有するプログラム可能な読み出し専用メモリ領域と、入力されるアドレスをデコードした前記第1のメモリセルヘの前記選択アドレスを出力するアドレスデコーダと、複数の前記紫外線消去型の第2のメモリセルからなる第1および第2のプロテクトビットであって、第1のメモリセルのデータの読み出しを禁止するときは前記第1のプロテクトビットにあるデータを書き込むことなく前記第2のプロテクトビットに前記データが書き込まれ、前記読み出し禁止に設定された第1のメモリセルからの前記データの読み出しを許可するときは前記第1のプロテクトビットに前記データが書き込まれる第1および第2のプロテクトビットと、前記第1および第2のプロテクトビットの値が同一のときに前記第1のメモリセルからのデータ読み出しを許可し、前記第1および第2のプロテクト用ビットの値が異なるときは前記第1のメモリセルのデータ読み出しを禁止するゲート手段とを備えるデータ読み出し禁止回路
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉
本願発明では、第1および第2のプロテクトビットが、複数の前記紫外線消去型の第2のメモリセルからなり前記選択アドレスが入力され前記選択アドレスに対応して設けられた前記所定数の第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットであって、前記選択アドレスによって選択される第1のメモリセルのデータの読み出しを禁止するときは前記選択アドレスに対応する前記第1のプロテクトアドレス選択ビットに論理データを書き込むことなく前記選択アドレスに対応する前記第2のプロテクトアドレス選択ビットに前記論理データが書き込まれ、前記読み出し禁止に設定された前記選択アドレスからの前記データの読み出しを許可するときは前記選択アドレスに対応する前記第1のプロテクトアドレス選択ビットに前記論理データが書き込まれるものであると共に、ゲート手段が、前記選択アドレスに対応して選択された第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットの値が同一のときに前記第1のメモリセルからのデータ読み出しを許可し、前記第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットの値が異なるときは前記第1のメモリセルのデータ読み出しを禁止するものであるのに対して、引用発明では、第1および第2のプロテクトビットが、複数の前記紫外線消去型の第2のEPROMセルからなる被照合用コードおよび照合用コードであって、前記第1のEPROMセルのデータの読み出しを禁止するときは前記被照合用コードに読み出しコードを書き込むことなく前記照合用コードに前記読み出しコードが書き込まれ、前記読み出し禁止に設定された前記第1のEPROMセルからの前記データの読み出しを可能とするときは前記被照合用コードに前記読み出しコードが書き込まれるものであると共に、ゲート手段が、前記被照合用コードおよび照合用コードを格納するレジスタの内容が一致しているときに前記第1のEPROMセルのデータの読み出しを可能とし、前記被照合用コードおよび照合用コードが異なるときは前記第1のEPROMセルのデータの読み出しを禁止するものである点
4 相違点についての判断
(1)前記相違点は、データを記憶するメモリセルの選択アドレス対応にプロテクトビットを設けるか否かの差異に帰着するものと認められる。
(2)よって、これに沿って検討すると、引用発明における紫外線消去型のEPROMセルについて、セルの選択アドレス対応にプロテクトビットを設けることに対する格別の阻害要因は見いだせないところ、引用発明と同様の技術分野に属するEEPROM(Electrically Erazable and Programmable Read Only Memory)セルについて、メモリセルの選択アドレス対応にプロテクトビットを設けることが、例えば、原審において引用されたところの本件出願前に頒布された刊行物である特開昭61-249156号公報に記載されているように、本件出願前に当業者に周知の事項であると認められるから、引用発明において、前記周知の事項を適用し、前記相違点に係る構成を、本願発明のようにすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
5 請求人の主張についての検討
(1)請求人は、審判請求書において、本願発明について、「第1および第2のプロテクトアドレス選択ビットは、1つの選択アドレスに対応して1ビットずつ設けられている。」(3頁4行〜6行)と主張する。
(2)しかしながら、前記1に記したとおり、前記「第1および第2のプロテクトアドレス選択ビット」は、“1ビット”に限定されないものと解するのが相当であるところ、仮に、請求人が主張するとおりのものであるとしても、プロテクトビットの数をどのようにするか(例えば、1ビットにするか或いは複数ビットにするか)は、必要とするプロテクトのレベル或いは深さに応じて当業者が適宜に決めるべき設計的事項に過ぎないから、結局のところ、請求人の前記主張は採用に由ない。
6 結び
以上総合判断すると、本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-11-29 
結審通知日 1999-12-10 
審決日 1999-12-20 
出願番号 特願昭63-48319
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 野仲 松男  
特許庁審判長 内藤 照雄
特許庁審判官 大橋 隆夫
金子 幸一
発明の名称 データ読み出し禁止回路  
代理人 福田 修一  
代理人 京本 直樹  
代理人 河合 信明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ