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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1009752 |
審判番号 | 審判1998-19336 |
総通号数 | 9 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-07-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-12-10 |
確定日 | 2000-02-10 |
事件の表示 | 平成1年特許願第294672号「CPU停止監視方式」拒絶査定に対する審判事件(平成3年7月2日出願公開、特開平3-154938)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯及び本願発明の要旨 本願は、平成1年11月13日の出願であって、願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その発明(以下、「本願発明」という。)の目的ないし効果は、「CPUが正常動作をしているにもかかわらず、停止したと誤認識をすることがない」(発明が解決しようとする課題の欄及び発明の効果の欄)というものであり、発明の構成は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「D型端子、リセット端子、クロック端子を備えたD型フリップフロップと、リセット端子、クロック端子を備えたカウンタと、前記フリップフロップの出力を高い割込レベルで割込入力するCPUとを有し、前記フリップフロップとカウンタのクロック端子に一定周期のクロックを入力し、フリップフロップの出力でCPUに対して高い割込レベルで割込をかけ、前記CPUはその割込の応答として割込応答信号を前記フリップフロップ及びカウンタのリセット端子に返送し、前記カウンタはCPUよりの割込応答信号がない場合に一定時間カウントした後にオーバフローして、前記CPUが停止したことを示す信号を出力することを特徴とするCPU停止監視方式。」 2.引用例記載の発明 これに対して、原査定の拒絶理由に引用した特開昭58-68166号公報(以下、「引用例」という)には、「プログラムの障害やハードウエアの障害によるプロセッサの無限ループや割り込み無応答を監視するプロセッサ異常監視装置を提供するものである。」(公報第1頁右下欄第12行〜同欄15行目)という目的ないし効果を有する「プロセッサ異常監視装置」に関するものが記載されており、次の事項が記載されている。 (a)「プロセッサと、前記プロセッサに一定時間ごとに割り込み信号を送出するクロックパルス発生回路と、前記クロックパルス発生回路からのクロックパルスを計数するとともに前記割込み信号を前記プロセッサが受付けたとき前記プロセッサから送出される割込み確認信号によりリセットされる割込み応答状態監視回路と、前記クロックパルス発生回路からのクロックパルスを計数するとともに前記プロセッサがアイドル時にリセットされる暴走状態監視回路とを備えてなるプロセッサ異常監視装置。」(特許請求の範囲の欄) (b)「一定周期のクロックパルスを発生するクロックパルス発生回路3により、割込信号線5を通してプロセッサ1へ一定周期で割込をかけるようにすると、プロセッサ1はプログラムの制御によりカウンタリセット信号線6へ割込み確認信号を出力して、クロックパルス発生回路3より入力されるクロックパルスをカウントしているカウンタ4をリセットする。そこでこのカウンタ4の出力が加わるオーバフロー信号線7を監視することによりプロセッサ1が割込みに応答しなくなったことを検出する。」(第2頁左上欄第8行〜同第18行目) (c)「また、クロックパルス発生回路3より入力されるクロックパルスをカウントしているカウンタ8をプロセッサ1の処理がなくなってアイドリングになっている間一定時間毎にプロセッサ1によりカウンタ8のリセット信号線9を通じてリセットする。そこでカウンタ8のオーバフロー信号線10を監視することによりプロセッサ1が無限ループ等の暴走状態に陥っていないかを監視する。」(第2頁左上欄第18行〜同頁右上欄第6行目) (d)「このように本実施例によれば2つの監視を組み合わせることにより次のような異常を検出できる。 ▲1▼割込みは受け付けるが、プロセッサが無限ループ等の暴走状態にある。(ただし、プロセッサが一定時間に必らず処理がなくなりアイドリングに戻る場合) ▲2▼ハードウエアの故障によりプロセッサが割り込み処理をしなくなる。 ▲3▼ソフトウエアのバグによりプロセッサが割り込み受け付け不能状態となる。」(第2頁右上欄第12行〜同頁左下欄第1行目) ここで、引用例に記載された事項を、本願発明の表現を借りて纏めると、引用例の「プロセッサ1」、「割込み確認信号」は、割込信号線5を通して割込み信号を受付けて、割込み確認信号を出力することから、本願発明の「CPU」及び「割込応答信号」と同義であり、また、引用例の「カウンタ4」は、クロックパルス発生回路3より入力されるクロックパルスをカウントし、カウンタリセット信号線6を通してプロセッサ1から出力される割込み確認信号によりリセットされ、カウンタ4の出力をオーバフロー信号線7に出力しており、該オーバフロー信号線7を監視することによりプロセッサ1が割込みに応答しなくなったことを検出していることから、本願発明の「カウンタ」に相当する。 以上のことから、引用例には次の構成を有する発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 リセット端子、クロック端子を備えたカウンタとCPUを有し、カウンタのクロック端子に一定周期のクロックを入力し、該クロックによりCPUに対して割込をかけ、前記CPUはその割込の応答として割込応答信号を前記カウンタのリセット端子に返送し、前記カウンタはCPUよりの割込応答信号がない場合に一定時間カウントした後にオーバフローして、前記CPUが停止したことを示す信号を出力することを特徴とするCPU停止監視方式。 3.本願発明と引用例記載の発明との対比 本願発明と引用例記載の発明とは、目的ないし効果の点では基本的に一致し、構成上以下の点で相違するものと認められる。 (イ)本願発明は、D型端子、リセット端子、クロック端子を備えたD型フリップフロップを有し、該D型フリップフロップのクロック端子に一定周期のクロックを入力し、該D型フリップフロップの出力により、CPUに対して割込みをかけているのに対して、引用例記載の発明では、一定周期のクロックそのものにより、CPUに対して割込みをかける点。 (ロ)本願発明は、前記D型フリップフロップの出力で、CPUに対して高い割込レベルで割込みをかけるのに対して、引用例記載の発明では特に記載がない点。 4.相違点についての判断 相違点(イ)について検討すると、D型フリップフロップのクロック端子に割込みタイミング信号を入力し、該D型フリップフロップの出力によりCPUに対して割込みをかけることは、単なる周知技術(例えば、特開昭59-218560号公報、特開昭63-49855号公報等を参照されたい)に過ぎないから、引用例記載の発明においても、D型フリップフロップを設けて、そのクロック端子に前記一定周期のクロックを入力し、該D型フリップフロップの出力により、CPUに対して割込みをかける構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 次に、相違点(ロ)について検討すると、引用例記載の発明も、上記2.(a)、(b)に記載されているように、CPUに対しての割込みに対する応答の有無により、CPUの異常を監視するものである点で本願発明と差異はなく、また、一般に割込処理においては、処理レベルの高い処理が優先して実行されることは、引用例を示すまでもなく周知である。仮に、引用例記載の発明の割込みが、低い処理レベルの割込みであるとするならば、それよりも高い処理レベルの処理が行われていると、この割込みに対する割込応答信号を返送できず、CPUが正常であるにもかかわらず、カウンタがオーバーフローして停止したと誤認識する結果となることは自明であるから、引用例記載の発明においても、割込みの処理レベルを高いものとすることは、当業者ならば容易に想到し得ることである。 なお、請求人は、審判請求書において、「引用例1では、このような構成により、引用例1の第2頁右上欄第14行乃至同左下欄第1行に記載されているように、一定時間以内に必ずアイドリング状態に戻ることを前提にして、プロセッサが無限ループ等の暴走状態にあること、ハードウエアの故障によりプロセッサが割込み処理をしなくなること、及びソフトウエアのバグによりプロセッサが割込受付不能状態となることを検出することができます。しかしながら、引用例1では、単に一定周期の割込みをかけるだけであるため、本願の従技術同様の問題があります。すなわち、長時間処理が実行され、アイドリング状態に戻らない場合に、誤って故障と判断されることがありえます。そのため、引用例1では、一定時間以内に必ずアイドリング状態に戻ることを条件にしています。」(審判請求書第3頁第25行〜第4頁第8行目)と主張している。確かに、上記2.(c)、(d)に記載されているように、カウンタ8のオーバフロー信号による異常検出は、一定時間以内に必ずアイドリング状態に戻る場合に、プロセッサが無限ループ等の暴走状態にあることを検出できるものであるが、カウンタ4のオーバフロー信号による異常検出は、一定周期の割込みに対して、プロセッサが一定時間に必らずアイドリングに戻るという前提によらず、割込みに対してプロセッサ1が応答しなくなったことを、オーバフロー出力により検出するものであり、これにより上記「ハードウエアの故障によりプロセッサが割込み処理をしなくなること、及びソフトウエアのバグによりプロセッサが割込受付不能状態となること」を検出しているのであるから、「引用例1では、一定時以内に必ずアイドリング状態に戻ることを条件にしています。」との主張は採用することができない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-11-26 |
結審通知日 | 1999-12-10 |
審決日 | 1999-12-20 |
出願番号 | 特願平1-294672 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深沢 正志 |
特許庁審判長 |
内藤 照雄 |
特許庁審判官 |
大橋 隆夫 金子 幸一 |
発明の名称 | CPU停止監視方式 |
代理人 | 京本 直樹 |