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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1010311
異議申立番号 異議1999-71490  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-11-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-04-22 
確定日 1999-12-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2814436号「気相成長方法及びその装置」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2814436号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2814436号(以下「本件特許」という。)は、昭和63年5月20日に特許出願されたものであって、特許権の設定の登録がなされた後、安藤純男より請求項1及び2に係る特許について特許異議の申立がなされ、その後、当審より特許取消理由の通知、特許権者より特許異議意見書及び訂正請求書の提出がなされたものである。
II.訂正について
(II-1)訂正の内容
訂正事項a(特許請求の範囲の訂正)
特許請求の範囲を、次のとおりに訂正する。
「(1)反応室を真空排気した後、原料ガスを導入して気相成長する方法において、真空排気した反応室に、原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する際に、分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)で昇圧した後、前記リークガスを原料ガスに切り換えることを特徴とする気相成長方法。
(2)基板を内部に設置する反応室と、原料ガス導入管と、真空排気系に接続する排気管とを有する気相成長装置において、原料ガス導入管に、分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続し、キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後、原料ガスヘの切り換えを可能にしたことを特徴とする気相成長装置。」
訂正事項b(特許請求の範囲以外の訂正)
(b-1)明細書第5頁第3〜18行の「本発明は・・・・である。」を、
「本発明は、(1)反応室を真空排気した後、原料ガスを導入して気相成長する方法において、真空排気した反応室に、原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する際に、分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)で昇圧した後、前記リークガスを原料ガスに切り換えることを特徴とする気相成長方法、及び
(2)基板を内部に設置する反応室と、原料ガス導入管と、真空排気系に接続する排気管とを有する気相成長装置において、原料ガス導入管に、分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続し、キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後、原料ガスヘの切り換えを可能にしたことを特徴とする気相成長装置である。」と訂正する。
(b-2)明細書第8頁第15行の「調べたとひころ」を、「調べたところ」と訂正する。
(II-2)訂正の目的、範囲、及び実質上の拡張又は変更について
訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、訂正事項bは明りょうでない記載の釈明(b-1)及び誤記の訂正(b-2)を目的とするものに該当する。そしてそれらは願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものとも認められない。
以下、訂正後の明細書を「訂正明細書」という。
(II-3)独立特許要件について
(II-3-1)本件発明
訂正明細書の請求項1及び2に係る発明(以下「訂正後の本件発明1」、「訂正後の本件発明2」という。)は、その請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。
「(1)反応室を真空排気した後、原料ガスを導入して気相成長する方法において、真空排気した反応室に、原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する際に、分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)で昇圧した後、前記リークガスを原料ガスに切り換えることを特徴とする気相成長方法。
(2)基板を内部に設置する反応室と、原料ガス導入管と、真空排気系に接続する排気管とを有する気相成長装置において、原料ガス導入管に、分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続し、キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後、原料ガスヘの切り換えを可能にしたことを特徴とする気相成長装置。」
(II-3-2)発明の新規性及び進歩性について
(ア)引用例の記載事実
取消理由通知に引用し、本件出願前に頒布された刊行物であることが明らかな下記引用例1及び2には、以下の事項が記載されている。
引用例1(特開昭60-169138号公報:特許異議申立の甲第1号証)
(1-1)「ガス供給装置と真空処理室とを連結するガス供給管にオリフィスを有するコントローラとストップバルブとが配設されたガス供給系と、前記コントローラと前記ストップパルブとの動作を制御する制御装置とを具備した真空処理装置において、前記真空処理室へのガスの供給停止後でガスの供給開始以前に前記コントローラの後流側の前記ガス供給管を真空排気することを特徴とする真空処理室へのガス供給方法。」(特許請求の範囲)
(1-2)「本発明の目的は、ガス供給系のストップバルブやガス供給管内のガスによる異物の飛散を防止して異物の被処理物への付着を抑制することで、被処理物の処理品質の低下を防止できる真空処理室へのガス供給方法を提供することにある。」(第2頁左上欄第9〜12行)
(1-3)「第1図で、ガス供給系10は、ガス供給装置20と真空処理室30とを連結するガス供給管11と、ガス供給管11に配設されたMFC12とストップバルブ13〜15とで構成され、MFC12とストップバルブ13〜15の動作は制御装置40で制卸される。MFC12の前流側にはストップバルブ13が後流側にはストップバルブ14が設けられ、ストップバルブ14の後流側にはストップバルブ15が設けられている。・・・・これによりMFC12の後流側のガス供給管11、この場合は、MFC12のオリフィスとストップバルブ14との間を真空に保つことができる。真空処理室30からの処理済みの被処理物の搬出及び真空処理室30への新たな被処理物の搬入、設置完了後、ストップバルブ14,15を開放し、その後、ストップバルブ13を開放する。MFC12に対して再び制御装置40により必要流量までガスを流通させるようにオリフィス開度指令のための信号が出され、ガスは真空処理室30へゆるやかに供給される。・・・・第2図は、本発明の他の実施例を説明するもので、ストップバルブ14,15間のガス供給管11にストップバルブ16が設けられた排気管50の一端が連結されている。排気管50の他端は、例えば真空処理室30を真空排気する排気装置・・・に連結されている。」(第2頁右上欄第4行〜左下欄第19行)
引用例2(特開昭61-217572号公報:特許異議申立の甲第2号証)
(2-1)「処理室を真空状態にするための真空排気部と、上記処理室を大気圧にするための大気導入部とを有する真空装置により被処理物を処理する方法において、上記真空排気部又は大気導入部に上記処理室における気体の乱れを生じさせないための流量調整手段を設けこの流量調整手段により処理室内で気体の乱れが生じないようにし、このような処理室を用いて被処理物を処理することを特徴とする真空装置による処理方法。」(特許請求の範囲)
(2-2)「本発明は・・・・その目的とするところは真空装置の処理室内での異物巻き上がりを抑え清浄な処理室内で半導体ウエーハを処理することができる真空装置による被処理物の処理法を提供するにある。」(第2頁左上欄第3〜8行)
(2-3)「この大気導入動作は、蒸着室2内の圧力(高真空)を大気圧にもどすためのもので、これは(b)に示すように、まずスローベントバルブ12で取り込む大気の粘性流領域での流量を気体が乱れない程度にしぼって、これをさらに流量コントロール・バルブ7で調節して蒸着室2に導入している。このあと、ベントバルブ10を開いてスローベント・バルブ12による導入量よりも大なる流量で大気を蒸着室2内にとり込むことにより、蒸着室2の圧力を高真空状態から大気圧状態にまでもどすことができる。」(第2頁右下欄第3〜13行)
(イ)対比・判断
(1)訂正後の本件発明1について
訂正後の本件発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1には訂正後の本件発明1の構成要件である、▲1▼:真空排気した反応室に原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する点、▲2▼:分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を式dP/dt=P0*a*t*10at-1(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)で昇圧する点、及び▲3▼:前記昇圧した後前記リークガスを原料ガスに切り換える点が記載されておらず、また、引用例1の記載からみて、これらの点が自明とも認められない。
したがって、訂正後の本件発明1は、引用例1に記載された発明ということはできない。
一方、引用例2には、真空装置による処理方法において、真空排気部又は大気導入部に処理室における気体の乱れを生じさせないための流量調整手段を設けて気体の乱れが生じないように処理を行なうことが記載されているが、訂正後の本件発明1の前記▲1▼〜▲3▼の構成に係る点についての記載はなく、したがって、引用例1及び引用例2に記載のものから、訂正後の本件発明1の構成が容易に想到できるとはいえない。
そして訂正後の本件発明1は、上記相違点▲1▼〜▲3▼に係る構成を含む前記認定のとおりの構成を有することにより、基板上に微細なダストを付着させることもなく、高真空状態から成長工程に移行することができ、その結果、表面品質の劣化を抑制し、高品質で結晶性の良い薄膜結晶を歩留まり良く気相成長させることができ、生産性を向上させるという、訂正明細書に記載の効果を奏したものと認められる。
したがって、訂正後の本件発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできない。
(2)訂正後の本件発明2について
訂正後の本件発明2は、気相成長装置において、▲4▼:原料ガス導入管に分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続した点、及びそれにより、▲5▼:キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後原料ガスヘの切り換えを可能にした点、を構成要件として有するものであるが、これら▲4▼及び▲5▼の構成に係る点は引用例1及び2のいずれにも記載がなく、またそれらの記載からみて自明とも認められない。
そして訂正後の本件発明2は、それら▲3▼及び▲4▼に係る構成を含む前記認定のとおりの構成を有することにより、前項(1)に指摘した効果を奏したものと認められる。
したがって、訂正後の本件発明2は、引用例1に記載された発明とも、また、引用例1及び2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができた発明ともいえない。
また、他に訂正後の本件発明1及び2について、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明とすべき理由を発見しない。
(II-4)訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、本訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き、及び同条第3項で準用する同法第126条第2項から第4項までの規定を満足し、また、他に訂正を認めるべきでない理由を発見しないので、当該訂正を認める。
III.特許異議申立について
(III-1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人安藤純男は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(引用例1)及び甲第2号証(引用例2)を提示して、訂正前の請求項1及び2に係る発明(以下「訂正前の本件発明1」及び「訂正前の本件発明2」という。)は、甲第1号証に記載された発明であり、また、甲第1及び2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であると主張している。
(III-2)証拠の記載事実
甲第1及び2号証には、上記(II-3-2)の(ア)「引用例の記載事実」の欄に指摘した事項が記載されている。
(III-3)判断
上記II-3項「独立特許要件について」の欄に記載したとおり、訂正後の本件発明1及び2は、甲第1号証に記載された発明とはいえず、また、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明ということもできない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び提示した証拠によっては、訂正後の本件発明1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件発明1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
気相成長方法及びその装置
(57)【特許請求の範囲】
(1)反応室を真空排気した後、原料ガスを導入して気相成長する方法において、真空排気した反応室に、原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する際に、分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)
で昇圧した後、前記リークガスを原料ガスに切り換えることを特徴とする気相成長方法。
(2)基板を内部に設置する反応室と、原料ガス導入管と、真空排気系に接続する排気管とを有する気相成長装置において、原料ガス導入管に、分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続し、キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後、原料ガスヘの切り換えを可能にしたことを特徴とする気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、熱分解反応や化学反応によって、GaAs系、InP系等の化合物半導体のエピタキシャル薄膜結晶、SiO2,Si3N4等の絶縁体薄膜、及びWSiX.TiSiX等の導電性多結晶薄膜を気相成長する方法及びその装置に関する。
(従来の技術)
従来、気相成長装置には、バレル型支持体を縦型反応室に内蔵するものや、パンケーキ型支持体を横型反応室に内蔵するものがあり、加熱方式も高周波加熱の外に、抵抗加熱や赤外線加熱もある。また、薄膜結晶の成長方法も、原料ガスやキャリアガスにより搬送されるガス状物質を、熱分解反応や化学反応により堆積させる方法がある。
第2図のバレル型気相成長装置を例にして以下説明する。基板1を搭載した縦型バレル2を回転軸3で反応室4の中央に支持し、反応室内を高真空に引いてから高周波加熱コイル7で基板1を成長温度まで加熱し、原料ガス系統12のブロックバルブ11の1カ所ないし数カ所を反応室側に切り換えることにより、導入管5から原料ガスを導入し、基板1の上に薄膜結晶を堆積させる。バレル2の周囲を流下する未反応物及び反応生成物は排気管6を介して系外に排出される。なお、8は冷却水を流す冷却ジャケットである。
(発明が解決しようとする課題)
これらの気相成長装置では、反応室に滞留する不純物等を成長前に排出するために、例えば、10-7〜10-6Torrの高真空状態に排気してから、マニホルドタイプのブロックバルブ等を切り換えることにより原料ガスを導入し、10〜100Torr程度の成長圧力で気相成長を行っている。従来使用されているバルブは、単にガス流路の切り替え機能を有するものであるため、分子流領域である高真空状態から粘性流領域である成長圧力に瞬間的に変換する。その結果、反応室の壁面やサセプタの表面に付着していた数μm以下の微細なダストが吹き飛ばされて落下する。その一部は、成長前の清浄な基板表面に付着し、その後の気相成長で薄膜の表面品質を劣化させる原因となる。表面品質の劣化には、エピタキシャル層では結晶欠陥やインクルージョン等があり、また、多結晶薄膜についてはさらにピンホールを生ずることもあり、デバイスプロセス等への適用を困難とする。この問題点はバレル型気相成長装置に特有のものではなく、上記の気相成長装置に共通するものである。
本発明は、上記の問題点を解消し、成長前の高真空状態から成長圧力の低真空状態に、成長室内の微細なダストを浮遊させることなく、円滑に移行することを可能とし、表面品質の優れた薄膜結晶を堆積させることのできる気相成長方法及びその装置を提供しようとするものである。
(課題を解決するための手段)
本発明は、(1)反応室を真空排気した後、原料ガスを導入して気相成長する方法において、真空排気した反応室に、原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する際に、分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)
で昇圧した後、前記リークガスを原料ガスに切り換えることを特徴とする気相成長方法、及び(2)基板を内部に設置する反応室と、原料ガス導入管と、真空排気系に接続する排気管とを有する気相成長装置において、原料ガス導入管に、分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続し、キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後、原料ガスヘの切り換えを可能にしたことを特徴とする気相成長装置である。
(作用)
第1図は、本発明の1具体例であるバレル型気相成長装置の概念図である。この装置は、第2図の装置の原料ガス導入管5に、精密にリーク制御をすることのできるリークバルブ10を介してリークガス導入管9を接続したものである。なお、原料ガス導入管5には、ブロックバルブ11を介して原料ガス系統12が接続されている。
この装置を用いて基板上に薄膜結晶を成長させるには、基板1をバレル型サセプタに搭載し、該サセプタを反応室にセットした後反応室を10-7〜10-6Torrの高真空状態に排気し、次いで、リークバルブを開けて水素、窒素、ヘリウム等のキャリアガスと同一のリークガスを導入して、分子流領域の高真空状態から成長圧力の粘性流領域への遷移する圧力領域(〜0.1Torr)を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)
の昇圧速度で通過させ、0.5〜100Torr程度の成長圧力まで昇圧してから、マニホルドタイプのブロックバルブ等を介して原料ガスを導入して気相成長を行う。このようにリークバルブを有するリークガス導入管を用いて、分子流領域から粘性流領域に遷移する圧力領域を上記のように昇圧することにより、反応室内の急峻な圧力変化を抑制し、その結果、微細なダストを浮遊させることなく、成長工程への円滑な移行を可能とする。
(実施例)
第1図の装置を用い、有機金属気相成長法で直径3インチのGaAs基板の上にGaAs単結晶をエピタキシャル成長させた。
まず、反応室内を1×10-6Torrの高真空状態に排気した後、精密なリークバルブを開けてキャリアガスである水素を徐々に導入し、特に、分子流領域の高真空状態から成長圧力の粘性流領域への遷移する圧力領域を
dP/dt=P0*t*10at-1
の昇圧速度で通過させ、最終的に10Torrの成長圧力にし、一方、高周波加熱コイルに通電して700℃の成長温度にしてから、ブロックバルブを開けてトリメチルガリウムを12sccm(0℃,1atmの標準状態における流量cm3/min)、アルシンを1SLM(0℃,1atmの標準状態における流量l/min)、及びキャリアガスとして水素を用い、全流量を10SLMに維持して1時間エピタキシャル成長を行った。
基板の上には2.0μmのGaAsエピタキシャル層が形成されていた。このエピタキシャル層を表面検査装置(パーティクルカウンター)により、0.06〜102.4μm2の大きさの表面欠陥及び表面パーティクルを調べたところ、10ケ/cm2以下であった。
比較のために、上記の実施例の中でリークバルブを用いずに、他の条件を変更せずにGaAs単結晶のエピタキシャル成長を行った。このエピタキシャル層を表面検査装置により、表面欠陥及び表面パーティクルを数えたところ、およそ1500ケ/cm2であった。
上記2つの実験において、成長前の高真空状態からリークガスを導入することにより、エピタキシャル層の表面品質を大幅に改善することができた。
また、上記実施例及び比較例で成長圧力を0.5〜100Torrの範囲で変化させて同様に実施したところ、上記と同様の表面品質のエピタキシャル層を得ることができた。
(発明の効果)
本発明は、上記構成を採用することにより、基板上に微細なダストを付着させることもなく、高真空状態から成長工程に移行することができ、その結果、表面品質の劣化を抑制し、高品質で結晶性の良い薄膜結晶を歩留まり良く気相成長させることができ、生産性を著しく向上させることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
第1図の本発明の1具体例であるバレル型気相成長装置の概念図、第2図は従来のバレル型気相成長装置の概念図である。
 
訂正の要旨 (訂正の要旨:別紙)
訂正事項a(特許請求の範囲の訂正)
特許請求の範囲を、次のとおりに訂正する。
「(1)反応室を真空排気した後、原料ガスを導入して気相成長する方法において、真空排気した反応室に、原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する際に、分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)で昇圧した後、前記リークガスを原料ガスに切り換えることを特徴とする気相成長方法。
(2)基板を内部に設置する反応室と、原料ガス導入管と、真空排気系に接続する排気管とを有する気相成長装置において、原料ガス導入管に、分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続し、キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後、原料ガスヘの切り換えを可能にしたことを特徴とする気相成長装置。」
訂正事項b(特許請求の範囲以外の訂正)
(b-1)明細書第5頁第3〜18行の「本発明は・・・・である。」を、
「本発明は、(1)反応室を真空排気した後、原料ガスを導入して気相成長する方法において、真空排気した反応室に、原料ガスラインとは別のリークラインからキャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力に昇圧する際に、分子流領域から粘性流領域への遷移する圧力領域の昇圧速度を次式
dP/dt=P0*a*t*10at-1
(P0:初期の真空排気状態の圧力、P:t分後の成長室内の圧力、a:0.5≦a≦2である定数)で昇圧した後、前記リークガスを原料ガスに切り換えることを特徴とする気相成長方法、及び
(2)基板を内部に設置する反応室と、原料ガス導入管と、真空排気系に接続する排気管とを有する気相成長装置において、原料ガス導入管に、分子流領域の高真空状態から粘性流領域の成長圧力への遷移を円滑に行える精密なリークバルブを介してリークガス導入管を接続し、キャリアガスと同一のリークガスを導入して成長圧力まで昇圧した後、原料ガスヘの切り換えを可能にしたことを特徴とする気相成長装置である。」と訂正する。
(b-2)明細書第8頁第15行の「調べたとひころ」を、「調べたところ」と訂正する。
なお、訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、訂正事項bは明瞭でない記載の釈明(b-1)及び誤記の訂正(b-2)を目的とするものに該当する。
異議決定日 1999-11-25 
出願番号 特願昭63-121992
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 113- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 池田 正人
中村 朝幸
登録日 1998-08-14 
登録番号 特許第2814436号(P2814436)
権利者 住友電気工業株式会社 日新電機株式会社
発明の名称 気相成長方法及びその装置  
代理人 内田 明  
代理人 安西 篤夫  
代理人 安西 篤夫  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 萩原 亮一  

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