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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1010362
異議申立番号 異議1999-70453  
総通号数
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-02-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-12 
確定日 1999-11-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2786083号「玄関たたき部の配設構造」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2786083号の特許を維持する。 
理由 I.手続きの経緯
本件特許第2786083号に係る発明は、平成5年8月10日に出願され、平成10年5月29日にその特許の設定登録がされ、その後、平成11年2月12日に岡田芳子より、特許異議の申立てがなされ、平成11年7月27日(起案日)に取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成11年10月12日に特許異議意見書を提出と共に訂正請求がなされたものである。
II.訂正請求について
1.請求の趣旨及び訂正事項
訂正請求の趣旨は、特許第2786083号発明の明細書を請求書に添付した明細書の通り訂正することを求めるものであり、そして、その訂正事項は、以下(1)〜(3)のとおりのものである。
(1)訂正事項a
特許明細書の【特許請求の範囲】を以下のように訂正する。
「【請求項1】玄関ユニットに形成された玄関用開口部の建物内側に位置する玄関ユニット床梁上に、四周に立周壁部を備えた繊維強化プラスチック製の防水パンを設置し、この防水パンの前記立周壁部の外周まわりに木製の框を配設し、この框の周縁部と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設するとともに前記玄関用開口部に配設される沓摺と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に前記防水部材を配設したことを特徴とする玄関たたき部の配設構造。」
(2)訂正事項b
▲1▼特許明細書の段落【0007】(特許公報の第2頁第3欄第19行)に「立周壁部」とあるを、「、四周に立周壁部」に訂正する。
▲2▼特許明細書の段落【0007】(特許公報の第2頁第3欄第22行及び第24行)、段落【0008】(特許公報の第2頁第3欄第32行及び第34行)に「立周壁部との間」とあるを、「立周壁部の内周壁との間」に訂正する。
▲3▼特許明細書の段落【0008】(特許公報の第2頁第3欄第30行)に、「立周壁部」とあるのを、「四周に立周壁部」に訂正する。
▲4▼特許明細書の段落【0016】(特許公報の第2頁第4欄第18行)に、「立周壁部22を備え」とあるのを、「立周壁部22を四周に備え」に訂正する。
▲5▼特許明細書の段落【0020】(特許公報の第2頁第4欄第32〜33行)、段落【0021】(特許公報の第2頁第4欄第36行)及び段落【0023】(特許公報の第2頁第4欄第47行と第49〜50行)に、「立周壁部22との間」とあるのを、「立周壁部22の内周壁面との間」に訂正する。
(3)訂正事項c
▲1▼特許明細書の段落【0008】(特許公報の第2頁第3欄第36行〜第39行)に、「十分保証されたものとなる。……良好なものとすることができる。」とあるのを、「十分保証されたものとなるとともに、防水部材が隠蔽されて外観のよいものになる。しかも、その框は木製とされているので、玄関たたき部に要求される意匠的な外観性を木の質感とあいまって更に良好なものとすることができる。」に訂正する。
▲2▼特許明細書の段落【0023】(特許公報の第3頁第5欄第1〜4行)に、「十分保証されたものとなっている。……良好なものとすることができる。」とあるのを、「十分保証されたものとなっているとともに、防水部材が隠蔽されて外観のよいものになっている。しかも、框31は木製とされているので、玄関たたき部に要求される意匠的な外観性を木の質感とあいまって更に良好なものとすることができる。」に訂正する。
2.訂正の要件の適否
2-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「立周壁部」を「四周に立周壁部」に、「防水パンの立周壁部」を「防水パンの立周壁部の内周壁面」にそれぞれ限定して訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。そして、訂正事項aの「四周に立周壁部」を備えた防水パンは、願書に添付した明細書の段落【0016】に「防水パン21は……浴槽のような立周壁部22をそなえている。」及び図1の「立周壁部22」からみて、記載されていると認められ、さらに、框31の周縁部33と「防水パン21の立周壁部22の内周壁面」との間及び沓摺と「防水パン21の立周壁部22の内周壁面」との間に防水部材37を配設することは、図1の記載から明らかであり、訂正事項aは、全体として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということができ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(2)訂正事項bについては、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、その必要な箇所の「立周壁部」とあるを「四周に立周壁部」に、「立周壁部との間」とあるを「立周壁部の内周壁面との間」に等訂正するもので、明りようでない記載の釈明を目的とし、また、上記(1)訂正事項aについて述べたように、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということができ、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)訂正事項cについては、訂正事項aの特許請求の範囲の減縮に伴い、効果の記載を構成事項と対応させたもので、明りようでない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書の段落【0008】及び【0026】の作用及び発明の効果の記載より、直接的かつ一義的に導き出せる事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるということができ、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
2-2.独立特許要件についての判断
上記訂正事項aにおいて、訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により構成される発明は、後述する「III.特許異議申立てについて」の「4.対比・判断」でしたように、取消理由及び特許異議申立ての理由では、特許を受けることができないとすることができず、また、他に特許を受けることができないとする理由も発見できないから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正請求は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によって適用される特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項乃至第4項の規定に適合し、当該訂正は認められる。
III.特許異議申立てについて
1.本件請求項1に係る発明
本件訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件請求項1に係る発明」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】玄関ユニットに形成された玄関用開口部の建物内側に位置する玄関ユニット床梁上に、四周に立周壁部を備えた繊維強化プラスチック製の防水パンを設置し、この防水パンの前記立周壁部の外周まわりに木製の框を配設し、この框の周縁部と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設するとともに前記玄関用開口部に配設される沓摺と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に前記防水部材を配設したことを特徴とする玄関たたき部の配設構造。」
2.特許異議申立ての理由及び取消理由の概要
2-1.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証(特開昭55-111556号公報)、甲第2号証(特開平6-158824号公報)、甲第3号証[実願昭57-163820号(実開昭59-67437号)のマイクロフィルム]、甲第4号証[実願平2-43442号(実開平4-2829号)のマイクロフィルム]及び甲第5号証(実開昭54-239号公報)を提出し、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨主張している(なお、甲第2号証は、本件の出願(平成5年8月10日)後の平成6年6月7日に公開されたものであるから、特許法第29条第2項の規定する発明を構成する証拠として、採用できない。)。
2-2.取消理由の概要
取消理由は、上記特許異議申立人が提出した甲第1号証を刊行物1、同甲第3号証を刊行物2として、夫々引用し、本件請求項1に係る発明は、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、とした。
3.甲各号証及び刊行物1、2に記載の事項
甲第1号証(刊行物1)には、
その第1頁左欄第13行〜右欄第2行、第1頁右欄第9〜19行、第1頁右欄最終行〜第2頁右上欄第6行及び第3、4図の記載よりみて、
「玄関用開口部の建物内側に位置する根太13上に三辺に立上り片8を備えたFRP製の玄関用床パンAを設置し、この玄関用床パンAの前記立上り片8を覆うように玄関框22を配設し、玄関用開口部に配設される敷居6の戸当り部14と玄関用床パンAとの間にコーキング材7を配設し、隙間を塞ぎ防水した玄関用防水床パン装置。」という発明が記載され、
甲第3号証(刊行物2)には、
その明細書第1頁実用新案登録請求の範囲、同第3頁第6〜7行、同第3頁第14行〜第4頁第1行及び第2、3図の記載よりみて、
「玄関等の土間用防水パン1であって、防水パン1を設置した時に、床材15及び敷居19との隙間を封するため、対置する防水パン1三方の周り縁5下面と周り縁5を有しない一方の床体7の外面にパテ材8を設け、防水すること。」という発明が記載され、
甲第4号証には、
その明細書第1頁実用新案登録請求の範囲、同第6頁第2〜7行及び第2、3図の記載よりみて、「玄関回りの構造において、防水床パン12の側壁部12b部分に上がり框13を設けること」という発明が記載され、
甲第5号証には、
第2、3図の記載からみて、
「防水パン1の端部に防水部材であるコーキング材8を施すこと。」という発明が記載されていると認められる。
4.対比・判断
4-1.取消理由について
本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、
刊行物1記載の発明の「根太」、「立上り片」、「FRP」、「玄関用床パン」、「覆うように」、「玄関框」、「コーキング材」及び「玄関用防水床パン装置」は、本件請求項1に係る発明の「玄関ユニット床梁」、「立周壁部」、「繊維強化プラスチック」、「防水パン」、「外周まわりに」、「框」、「防水部材」及び「玄関たたき部の配設構造」に相当し、また、刊行物1記載の発明の「敷居の戸当り部」は、本件請求項1に係る発明の「沓摺」に対応しているから、
本件請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で相違しているが、その余の点では実質上一致していると認められる。
相違点
(1)本件請求項1に係る発明は、框の周縁部と防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設するとともに玄関用開口部に配設される沓摺と防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設しているのに対して、刊行物1記載の発明は、そのようになっていない点。
(2)防水パンは、本件請求項1に係る発明では、四周に立周壁を備えたものであるのに対して、刊行物1記載の発明では、三辺に立周壁を設けている点。及び
(3)本件請求項1に係る発明の框は、木製であるのに対して、刊行物1記載の発明の框には、材料の限定がない点。
そこで、相違点(1)について検討すると、
刊行物2(甲第3号証)には、防水のため、防水パンを設置した時、パテ材からなる防水部材を、玄関用開口部の敷居との間に施し、床材と対置する周り縁の下面にも施し、防水パンの全周を防水することが記載されているが、この刊行物2記載の発明によれば、防水部材は、防水パンの床体7の立壁の外面及び周り縁の下面に施したもので、本件請求項1に係る発明のように、防水部材を防水パンの立周壁部の内周壁面に配設したものではなく、また、刊行物1記載の発明の玄関用防水床パン装置は、立上り片8(立周壁部)は三辺に設けられ、残り一辺と敷居6の戸当り部14との間に防水部材を充填したもので、過剰な水は、残り一辺から玄関の外に流れる構造のものと認められ、防水パンの立周壁部と該立周壁部を覆う框との間に防水部材を配設し、防水を行う必然性が認められないから、刊行物1記載の発明に刊行物2記載の発明を適用すること又は適用して、相違点(1)における本件請求項1に係る発明の事項が、容易に想到できるものということができない。
加うるに、本件請求項1に係る発明は、相違点(1)における事項を構成要件とすることにより、「防水性は十分保証されたものとなっているとともに、防水部材が隠蔽されて外観のよいものになる。」(段落【0008】【作用】、【0026】【発明の効果】参照)という刊行物1、2記載の発明からは期待できない作用、効果を奏するものと認められる。
したがって、相違点(2)、(3)について検討する迄もなく、相違点(1)により、本件請求項1に係る発明は、刊行物1、2記載の発明より、当業者が容易に発明できたものとすることができず、上記取消理由は、理由がないものとなったというべきである。
4-2.特許異議申立ての理由について
本件請求項1に係る発明の構成要件となっている「框の周縁部と防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設するとともに玄関用開口部に配設される沓摺と防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設している」点は、取消理由で引用した証拠以外の甲第4、5号証にも、記載がなく、また、甲第4、5号証記載から容易に想到できるとすることもできない。
そして、その他の甲第1、3号証は、刊行物1、2として取消理由で引用したもので、その判断は、上記「4-1.取消理由について」でしたとおりである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1、3〜5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることはできず、特許異議申立ては、理由がないものであるというべきである。
5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立ての理由並びに証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
玄関たたき部の配設構造
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】玄関ユニットに形成された玄関用開口部の建物内側に位置する玄関ユニット床梁上に、四周に立周壁部を備えた繊維強化プラスチック製の防水パンを設置し、この防水パンの前記立周壁部の外周まわりに木製の框を配設し、この框の周縁部と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設するとともに前記玄関用開口部に配設される沓摺と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に前記防水部材を配設したことを特徴とする玄関たたき部の配設構造。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、玄関たたき部の配設構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、住宅などの玄関たたき部は、外部に直接通じる部分であるため、雨水などが入りやすい。このため、とくに2階以上の上階に玄関を設ける場合には、下階への雨漏りなどを防止する必要性があり、その玄関たたき部には十分な防水性が要求される。また、訪問者などはまず玄関に入ったところでその建物の内部の第一印象を受けることが多い。このため、玄関たたき部には意匠的な外観性も要求される。
【0003】
従来より、このような制約のある玄関たたき部の配設構造として、施工現場にていわゆる湿式モルタル造りによってたたき部の基礎を造り、そのたたき部にタイルを貼り付けるというものが多かった。また、例えば、実公昭61-33164号公報に示されるように、防水パンに框を一体に設けたものも知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ユニット住宅などのユニット建物は、建物ユニットや各種の部材の多くを工業化生産することによって、工期の短縮化、人件費などの経費の削減、品質の安定化などを図っているものである。
【0005】
しかし、このようなユニット建物にあって、上記のような玄関たたき部の配設構造を採用することは、工期の長期化、人件費などの経費の増大、品質の不安定化を招きやすいという不具合がある。
【0006】
この発明は、このような実情を背景としてなされたもので、ユニット建物における工期の短縮化、人件費などの経費の削減、品質の安定化などを妨げることの少ない玄関たたき部の配設構造を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る玄関たたき部の配設構造は、上記の目的を達成するため、玄関ユニットに形成された玄関用開口部の建物内側に位置する玄関ユニット床梁上に、四周に立周壁部を備えた繊維強化プラスチック製の防水パンを設置し、この防水パンの前記立周壁部の外周まわりに木製の框を配設し、この框の周縁部と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設するとともに前記玄関用開口部に配設される沓摺と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に前記防水部材を配設したことを特徴とする。
【0008】
【作用】
この発明に係る玄関たたき部の配設構造によれば、玄関ユニットに形成された玄関用開口部の建物内側に位置する玄関ユニット床梁上に設置される防水パンは、四周に立周壁部を備えた繊維強化プラスチック製のものとされ、この防水パンの前記立周壁部の外周まわりに配設される框の周縁部と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間には防水部材が配設されるとともに前記玄関用開口部に配設される沓摺と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間には前記防水部材が配設されるので、玄関たたき部に要求される防水性は十分保証されたものとなるとともに、防水部材が隠蔽されて外観のよいものになる。しかも、その框は木製とされているので、玄関たたき部に要求される意匠的な外観性を木の質感とあいまって更に良好なものとすることができる。
【0009】
そして、防水パンと框とは別体なものとなっており、いずれも工業化生産できるものなので、ユニット建物における工期の短縮化、人件費などの経費の削減、品質の安定化などを妨げることが少ない。
【0010】
【実施例】
以下、この発明に係る玄関たたき部の配設構造の実施例を図面に基づいて説明する。
【0011】
まず、その構成を説明する。図1において、1は2階玄関ユニットの構造体で、構造体1は床梁2、3とこれらの床梁2、3間に配設される玄関ユニット床梁としての小梁4、5とを備えている。これらの梁材にはいずれも型鋼が採用されている。
【0012】
構造体1の建物外側には、踊り場6が設けられている。この踊り場6と床梁2との間には、玄関ドア沓摺7が配設されている。
【0013】
床梁3の上部には、床根太8が配設され、この床根太8の上部には、床材9が敷設されている。この床材9は、床板としてのパーチクルボード10と床化粧材11とから構成されている。
【0014】
符号21は、防水パンで、この防水パン21は2階玄関ユニットの構造体1に形成された玄関用開口部、つまり玄関ドア沓摺7の上側よりも建物内側に位置する床梁としての小梁4、5上に設置されている。
【0015】
防水パン21と小梁4、5との間には、2階玄関床パネル23が敷設されている。この2階玄関床パネル23は、普通合板24の上にパーチクルボード25を積層した構成となっている。
【0016】
防水パン21は、繊維強化プラスチックを素材とした成形品で、浴槽のような立周壁部22を四周に備えている。この立周壁部22によって囲まれた底部は、補強ベニヤ26、繊維強化プラスチック27、接着層28、タイル29とから構成されている。
【0017】
31は、防水パン21の立周壁部22の外周まわりに配設された木製の框である。この框31は、床化粧材11と面一となる框面部32と防水パン21の立周壁部22に対向する周縁部33とを備えている。
【0018】
框面部32は、防水パン21の取付片30を支持固定する床根太34、下地合板35に鉄丸釘36によって固定されている。
【0019】
この框31は、防水パン31の外周のうち、玄関ドア沓摺7が位置する以外の3辺部にわたって連続して配設されている。
【0020】
框31の周縁部33と防水パンの立周壁部22の内周壁面との間には、防水部材37が周まわりに連続して配設されている。
【0021】
また、玄関ドア沓摺7に設けられている下枠38と防水パン21の立周壁部22の内周壁面との間にも前記防水部材37が配設されている。なお、この下枠38は、パッキン39を備えた取付金具40によって玄関ドア沓摺7に取り付けられているものである。
【0022】
次に、このような構成からなる玄関たたき部の配設構造の作用を説明する。
【0023】
玄関ユニットの構造体1に形成された玄関用開口部の建物内側に位置する床梁としての小梁4、5上に設置される防水パン21は、立周壁部22を備えた繊維強化プラスチック製のものとされ、この防水パン21の立周壁部22の外周まわりに配設される框31の周縁部33と防水パン21の立周壁部22の内周壁面との間には防水部材37が配設されているとともに、前記玄関用開口部に配設される玄関ドア沓摺7と防水パン21の立周壁部22の内周壁面との間にも前記防水部材37が配設されているので、この玄関たたき部に要求される防水性は十分保証されたものとなっているとともに、防水部材が隠蔽されて外観のよいものになっている。しかも、框31は木製とされているので、玄関たたき部に要求される意匠的な外観性を木の質感とあいまって更に良好なものとすることができる。
【0024】
そして、防水パン21と框31とは別体なものとなっており、いずれも工業化生産できるものなので、ユニット建物における工期の短縮化、人件費などの経費の削減、品質の安定化などを妨げることが少ない。
【0025】
なお、この実施例では、玄関ユニットとして2階玄関ユニットを例に挙げたが、1階玄関ユニットに適用できることはいうまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る玄関たたき部の配設構造によれば、玄関たたき部に要求される防水性は十分保証されたものとなる。しかも、玄関たたき部に要求される意匠的な外観性も木の質感とあいまって良好なものとすることができる。さらに、防水パンと框とをそれぞれ工業化生産することにより、ユニット建物における工期の短縮化、人件費などの経費の削減、品質の安定化などを妨げることが少ないという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明にかかる玄関たたき部の配設構造の実施例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 構造体(2階玄関ユニット)
4、5 小梁(玄関ユニット床梁)
21 防水パン
22 立周壁部
31 木製の框
37 防水部材
 
訂正の要旨 訂正の要旨は、以下のとおりである。
(1)特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲を、下記の通り訂正する。
「【請求項1】玄関ユニットに形成された玄関用開口部の建物内側に位置する玄関ユニット床梁上に、四周に立周壁部を備えた繊維強化プラスチック製の防水パンを設置し、この防水パンの前記立周壁部の外周まわりに木製の框を配設し、この框の周縁部と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に防水部材を配設するとともに前記玄関用開口部に配設される沓摺と前記防水パンの立周壁部の内周壁面との間に前記防水部材を配設したことを特徴とする玄関たたき部の配設構造。」
(2)特許請求の範囲の記載を訂正したことにより、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りようでない記載の釈明を目的として、
▲1▼特許明細書の段落【0007】(特許公報の第2頁第3欄第19行)に「立周壁部」とあるを、「、四周に立周壁部」に訂正する。
▲2▼特許明細書の段落【0007】(特許公報の第2頁第3欄第22行及び第24行)、段落【0008】(特許公報の第2頁第3欄第32行及び第34行)に「立周壁部との間」とあるを、「立周壁部の内周壁との間」に訂正する。
▲3▼特許明細書の段落【0008】(特許公報の第2頁第3欄第30行)に、「立周壁部」とあるのを、「四周に立周壁部」に訂正する。
▲4▼特許明細書の段落【0016】(特許公報の第2頁第4欄第18行)に、「立周壁部22を備え」とあるのを、「立周壁部22を四周に備え」に訂正する。
▲5▼特許明細書の段落【0020】(特許公報の第2頁第4欄第32〜33行)、段落【0021】(特許公報の第2頁第4欄第36行)及び段落【0023】(特許公報の第2頁第4欄第47行と第49〜50行)に、「立周壁部22との間」とあるのを、「立周壁部22の内周壁面との間」に訂正する。
(3)特許請求の範囲の記載を訂正したことにより、明りようでない記載の釈明を目的として、
▲1▼特許明細書の段落【0008】(特許公報の第2頁第3欄第36行〜第39行)に、「十分保証されたものとなる。……良好なものとすることができる。」とあるのを、「十分保証されたものとなるとともに、防水部材が隠蔽されて外観のよいものになる。しかも、その框は木製とされているので、玄関たたき部に要求される意匠的な外観性を木の質感とあいまって更に良好なものとすることができる。」に訂正する。
▲2▼特許明細書の段落【0023】(特許公報の第3頁第5欄第1〜4行)に、「十分保証されたものとなっている。……良好なものとすることができる。」とあるのを、「十分保証されたものとなっているとともに、防水部材が隠蔽されて外観のよいものになっている。しかも、框31は木製とされているので、玄関たたき部に要求される意匠的な外観性を木の質感とあいまって更に良好なものとすることができる。」に訂正する。
異議決定日 1999-11-08 
出願番号 特願平5-198242
審決分類 P 1 651・ 121- YA (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 樋口 靖志
特許庁審判官 鈴木 憲子
小野 忠悦
登録日 1998-05-29 
登録番号 特許第2786083号(P2786083)
権利者 積水化学工業株式会社
発明の名称 玄関たたき部の配設構造  

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