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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1011963
審判番号 審判1998-12002  
総通号数 10 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-08-05 
確定日 1999-01-26 
事件の表示 平成8年特許願第30311号「情報処理装置」拒絶査定に対する審判事件(平成8年10月15日出願公開、特開平8-267854)について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.本願発明
本願は、平成3年3月20日に出願された特願平3年56369号の一部を特許法第44条第1項の規定により、平成8年2月19日に特許出願されたものであって、その請求項1に係る発明は、平成10年5月15日付手続補正書により補正された明細書および出願時当初の図面の記載からみて、その請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「上ケースと下ケースを組み合わせて構成される本体ケースと、本体ケースの手前側上面に配置され、文字入力や印刷指示入力するキーボード等の入力装置と、入力装置の後方部に位置し且つ前記本体ケースに開閉自在に取り付けた表示装置と、入力装置や表示装置を具備する前記本体ケースの内側後方に設けた印刷機構と、本体ケース内に配置され、入力制御や印字制御する制御基板と、前記本体ケース内にあって前記入力装置の下側で前記印刷機構まで延びるように設けられた送紙経路と、この送紙経路に印刷用紙を挿入するために前記本体ケースの前端側面に設けた水平挿入口と、前記送紙経路の前記入力装置の下側部分と前記印刷機構に設けられた送紙ローラと、前記送紙ローラによって送紙され印刷機構によって印刷された用紙を排出するために本体ケースの後方に設けられた排紙口とを備えた情報処理装置。」
II.引用例の記載
これに対して原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-169896号(実開昭62-78450号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には下記の事項が記載されている。
▲1▼「本体ケース上にキーボードを設けるとともに、このキーボードの後方に、印字機構を搭載したキャリアを、案内軸に沿い摺動可能に本体ケースに装着したキーボード付印字装置において、上記本体ケースの前面と後面に前後の用紙出入口を形成するとともに、本体ケース内に、上記前側の用紙出入口から上記印字機構による印字部分を経由して上記後側の用紙出入口に至るほぼ面一な用紙案内平面を設け、その中途に、用紙を送給する紙送りローラとこれに用紙を圧接させるぺーパーベイルとを対向させて配設したことを特徴とするキーボード付印字装置。」(第1頁第5〜16行;実用新案登録請求の範囲第1項)
▲2▼「本考案は、印字機構をキャリアに搭載し、キーボード上のキー操作に従って印字機構を作動するとともに、キャリアを摺動させて用紙に印字(文字、記号、図形等)を行うタイプライタ、プロッタ、ワードプロセッサ等のキーボード付印字装置に関する。」(第2頁第4〜9行)
▲3▼「本タイプライタはこのように構成されており、用紙19をセットするには、レバー29を解除側に設定してぺーパーベイル27を紙送りローラ25から離し、用紙19を後側用紙出入口2または前側用紙出入口4から挿入して紙送りローラ25とぺーパーベイル27との間に通した後、レバー29を押圧側に設定して用紙19をぺーパーベイル27と紙送りローラ25とで挟持する。この状態で紙送りローラ25が正転または逆転すると、これに従動してぺーパーベイル27も回転し、用紙19は、用紙案内平面23に沿って真直ぐ伸びたままキーボード31の下方において本体ケース1内を前後に貫通するように後方または前方へ直進される。」(第7頁第19行〜第8頁第9行)
▲4▼「第1図」には実施例の断面図が図示され、「第2図」にはその外観斜視図が図示されている。
▲5▼「蓋体33上にはさらに液晶等によるディスプレイ装置37も設けられている。」(第7頁第16〜18行)
また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-245320号公報(以下、「引用文献2」という。)には下記の事項が記載されている。
▲6▼「第1図および第2図において、1はワードプロセッサフレームの一部を兼ねる上ケース、2は下ケースを示し、ワードプロセッサユニットは、入力装置としてのキーボード3と、キーボード3の信号を処理する制御装置4と、制御装置4の一部であるメモリ内の文書情報を印字するための印刷装置5と、上ケース1に回動可能に係止された表示装置6とにとり構成されている。」(第3頁右上欄第1〜8行)
III.対比・判断
ここで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と上記引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明1」という。)とを対比する。
上記記載▲1▼の「本体ケース」はそこに入力機構、印字機構等を備えることによって印字装置を構成するものであるから、本願発明における情報処理装置の「本体ケース」に相当する。上記記載▲1▼の「キーボード」は、本願発明の「文字入力や印字指示入力するキーボード等の入力装置」に相当し、第1,2図の記載(上記記載▲4▼)より「本体ケースの手前側上面に配置され」ている点も一致していることがわかる。上記記載▲1▼の「印字機構」は本願発明の「印刷機構」に相当し、第1,2図より、「本体ケースの内側後方に設け」られている点も一致していることがわかる。また、上記記載▲1▼の「ほぼ面一な用紙案内路」は、第1,2図の記載から「本体ケース内にあって前記入力装置の下側で前記印刷機構まで延びるように設けられた」ものであることは明らかであるから本願発明の「送紙経路」に相当する。そして、上記記載▲3▼を参酌すれば、前側用紙出入口から用紙を挿入し、後側用紙出入口へ排出する形態も可能であることは明らかであり、その形態を想定すれば、上記記載▲1▼の「前側の用紙出入口」が本願発明の「本体ケースの前端側面に設けた水平挿入口」に相当し、「後側の用紙出入口」が「前記送紙ローラによって送紙され印刷機構によって印刷された用紙を排出するために本体ケースの後方に設けられた排紙口」に相当するものと認められる。また、上記記載▲1▼の送紙ローラは、第1図を参酌すれば、本願発明の「印刷機構に設けられた送紙ローラ」に相当する。上記記載▲2▼より、引用発明1の印字機構は「ワードプロセッサ等」に適用することも記載されており、本願発明同様「情報処理装置」が記載されているものと認められる。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「本体ケースと、本体ケースの手前側上面に配置され、文字入力や印刷指示入力するキーボード等の入力装置と、入力装置を具備する前記本体ケースの内側後方に設けた印刷機構と、前記本体ケース内にあって前記入力装置の下側で前記印刷機構まで延びるように設けられた送紙経路と、この送紙経路に印刷用紙を挿入するために前記本体ケースの前端側面に設けた水平挿入口と、前記印刷機構に設けられた送紙ローラと、前記送紙ローラによって送紙され印刷機構によって印刷された用紙を排出するために本体ケースの後方に設けられた排紙口とを備えた情報処理装置。」
である点で一致し、下記の4つの点で相違している。
(1)本願発明のケース本体が上ケースと下ケースを組み合わせて構成されているのに対して引用発明1のケースはそのようになっていない点。
(2)本願発明は入力装置後方に表示装置が本体ケースに開閉自在に取り付けられているのに対し、引用発明1の表示装置は本体ケースに対して開閉自在となっているか否か不明である点。
(3)本願発明においては、入力制御や印刷制御する制御基板が本体ケース内に配置されているのに対し、引用発明1ではその点が明確に記載されていない点。
(4)本願発明においては、印刷機構に送紙ローラを設けるとともに送紙路の入力装置の下側部分にも送紙ローラを設けているのに対し、引用発明1においては印刷機構に送紙ローラを設けるのみで入力装置の下側部分には送紙ローラを設けていない点。
上記相違点について検討する。
上記引用文献2には、第1図および第2図を参酌すれば、上記記載▲6▼から上記相違点(1)の「ケース本体が上ケースと下ケースを組み合わせて構成されている」点および上記相違点(2)の「入力装置後方に表示装置が本体ケースに開閉自在に取り付けられている」点の両者が記載されているものと認められる。すなわち、引用文献2にも記載されているいるように、上記相違点(1)、(2)に関する事項は、ワードプロセッサにおいては公知の技術である。そして、引用文献2記載の上記公知技術を、同じ技術分野に属する引用発明1に適用して本願発明のように構成することに格別の困難性は認められない。そして、該適用によって当業者の予測を越える格別の効果が生じるものとも認められない。
次に、上記相違点(3)については、ワードプロセッサ等の情報処理装置においては、「入力制御や印刷制御する制御基板が本体ケース内に配置されている」ことは周知の事項であり、上記相違点(3)は、当業者にとって自明な周知事項を明記したか否かの差にすぎない。すなわち、上記相違点(3)の特定に格別の困難性は認められない。
最後に、上記相違点(4)について検討する。本願発明と引用発明において、用紙をローラで送ることまでは共通しているのであるから、上記相違点(4)は、ローラの数およびローラの配置位置に関する事項の相違点である。しかしながら、一般に、印刷装置において小さなサイズの紙にも対応できるように送紙経路に多くの送紙ローラを適宜位置に配置することは周知の技術である。したがって、引用発明1の印刷機構においても該周知技術を適用し、小さなサイズの紙に対応するためにローラの数を増やし、「送紙路の入力装置の下側部分にも送紙ローラを設ける」構成を採用することに格別の困難性は認められない。そして、上記の構成の採用によって当業者の予測を越える格別の効果が生じるものとも認められない。
以上のとおり、上記4つの相違点の特定はいずれも当業者が容易に想到し得たことと認められるから、本件発明は上記の引用文献1および引用文献2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものと認められる。
IV.むすび
したがって、この出願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 1999-10-27 
結審通知日 1999-11-16 
審決日 1999-11-29 
出願番号 特願平8-30311
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上田 正樹中村 和夫  
特許庁審判長 佐藤 久容
特許庁審判官 森林 克郎
市野 要助
発明の名称 情報処理装置  
代理人 作田 康夫  

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